« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »

2011年4月29日 (金)

原子力、火力、水力発電のコスト比較

4月27に書いた有価証券報告書からみる原子力発電コストの最後に、次回は、他の火力、水力等と比較すると述べました。同じように、有価証券報告書のデータから比較することとする。なお、今回は、沖縄電力と電源開発を対象に加える。

一般電気事業者10社と卸電気事業者である日本原子力発電と電源開発の12社の2008年度と2009年度の発電量(GWh)は次の表の通りである。

Generation20114a 

1) 原子力発電のコスト

kWh当たりのコスト単価で、各社の原子力発電をあらわすと以下の通りである。

Generation20114nuclear

2) 火力発電コスト

2008年度と2009年度の各社火力発電コストは次のグラフの通りである。

Generation20114thermal

原子力とコストの内訳が大きく異なっている。燃料費の占める割合が大きい。上のグラフで2008年度がコスト高であったが、燃料費コストが、その原因であったことが読み取れる。なお、発電コストは、電源開発が一番低い。その理由としては、同社の火力発電設備が全て石炭火力発電であることがあげられる。但し、単純な単価のみで、全てを論じることができず、負荷変動への対応や、夜間停止あるいは夜間低負荷運転の対応等も考慮する必要がある。

3) 水力発電のコスト

次に水力発電のコストを示す。

Generation20114hydro

火力からは再度一変した。当然であるが、燃料費がない。一方で、コストはほとんど一定であるが、発電量が出水量で変化する。水が多い年は、発電量も多く、コスト単価は下がる。

なお、揚水発電も、この中に入っている。揚水発電の評価としては、一種の大規模電池であるとも言える。現実には、原子力を出力一定で運転していることから、揚水動力は原子力による電力を使用しているとも言える。即ち、揚水発電に関わる設備修繕費、減価償却費、支払利息・金融費用等は全て原子力の発電コストとして考え、発電電力を原子力に加えると共に、揚水動力を差し引いて評価することも考えられる。有価証券報告書では、そこまでの情報は得られないため、計算していない。なお、揚水の発電量は、揚水動力より必ず低い。

4) ディーゼル発電

最後に、ディーゼル発電についても、見ておく。ディーゼル発電は離島において使用されているが、多くの離島にも海底ケーブルにより電力供給がなされるようになり、ディーゼル発電がほとんどない電力会社もある。

Generation20114diesel

上のグラフはガスタービンも含むが、基本的には、軽油を燃焼するディーゼル発電であり火力発電とほぼ同じコスト構成である。設備のスケールは、一般火力やガスタービン複合火力と比較して小規模であり、そのためもありコスト高になっている。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2011年4月28日 (木)

堀江貴文の懲役2年6月実刑確定

やはり、この事件については、触れておかねばと思った。

日経 4月26日 堀江被告の実刑確定へ ライブドア事件 証取法違反罪 最高裁、上告を棄却

何故か、ホリエモンは悪いことをしておらず、特捜部が悪いかのようなホリエモン・シンパ論もあったように思える。しかし、弁護側の主張は論点をはぐらかし、認めてはならないことを述べていた。重大な罪を、ホリエモンは犯しており、刑事罰は当然と考える。

ホリエモンの罪とは、何であるか?弁護士主張の「問題となった会計処理が違法であることは、会計の専門家でなければ容易に知り得なかった。」に誤魔化されてはならない。

自社株式を売買して利益を出して良いでしょうか?自社株式の売買で利益を出すとは、自社株式を安く買って、高く売ることです。ホリエモンがしたことは、究極のインサイダー取引です。会社なので、意思はなく、取締役達が、自分の会社の株式の買い取りや売却を決めるのです。バカをみるのは、一般株主、投資家です。当然、法で禁止されており、香港の投資組合の名前等を使って偽装する。

自社が株主の株式購入資金で利益を出しても、株主資本になるだけなので、罪ではないとするのが、弁護士主張でした。しかし、それは、余りにも、法を無視した悪徳論法と思える。まず第一に、何を目的として、そのような究極のインサイダー取引をしたかは、ホリエモンや宮内、熊谷他の個人の利益獲得です。次の記事に、堀江貴文が208億7千万円相当の資産をLDHに引き渡す条件で既に和解とありますが、この208億円は、どのようにして稼いだかといえば、究極のインサイダー取引を利用して、個人が手にした利益が多く含まれているはずです。

47ニュース 2010年3月23日 堀江氏に続き6人と和解 LDHと旧経営陣ら

会社法において、自己株式の取得は155条他によらねばならず、例えば定款に従い取締役会の決議で自己株式の取得を実施する場合でも、分配可能額を超えて取得することはできない(461条)。一方、取得した自己株式の消却や処分はあっても、売却の概念はない。また、子会社による親会社株式の取得も禁止されている(135条)。会社法なので、非上場であっても適用され、このように自社・自己株式の取得、消却、処分に制限がある。上場会社が、自己株式を売買することは、法で許された範囲を超えては、あってはならないことである。

一方で、ホリエモンの悪を許したのは、社会であったのだろうか?マスコミを利用して、あぶく銭を手にした。よくある話というより、当時の社会の世相にうまく乗った結果だと思う。2005年衆院選で、亀井静香に対抗して立候補した。無所属であったが、自民党支援。しかし、武部勤を初め、自民党から反省の声は全く聞こえてこない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月27日 (水)

有価証券報告書からみる原子力発電コスト

東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連して、様々なことが言われています。原子力について、やはり、これを機会に検討すべき課題については、十分に国民的な広い範囲で、議論されるべきと思う。しかし、時には専門的すぎて、あるいは情報が少なすぎて、有効な議論が容易ではない面もある。調べた結果を、できる限りブログに書いて、お役に立てればと思います。

原子力発電のコストに関して、東京電力のみならず、全社の有価証券報告書からみた結果を、以下に記載するので、参考にしていただければと思います。

1) 対象会社

日本では、一般電気事業者10社のうち沖縄電力を除く9社が、原子力を保有しており、それ以外に、日本原子力発電株式会社が3基を運転中で、電源開発株式会社が1基を建設中。日本原子力発電は、1957年に設立され、日本で最初の商業用原子炉東海1号を建設・運転した。株主は、発電電力売電先の東京電力、関西電力、中部電力、北陸電力、東北電力を含め9電力会社と電源開発並びに三菱重工、日立製作所他であり、非上場会社であるが、社債発行の関係で有価証券報告書を発行している。

ちなみに、各社の原子力発電所の認可出力及び2008年度と2009年度の発電量(送電端)は以下の通りです。

Nuclear20114a

2) 2008年度と2009年度の原子力発電のコスト

2008年度と2009年度における各社の原子力発電のコストは次のグラフの通り。

Nucleargeneca

グラフの元とした数字を記載した表はこの2008年度の表この2009年度の表です。

kWh当たりの単価で、表示したグラフが次です。

Nucleargenecb2008_2 

Nucleargenecb2009_2 

3) 原子力発電コストの特徴

原子力発電はウラン235の核分裂により発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換することです。燃焼するのではなく、核分裂であり、ウラン235がセシウムやヨウ素等の別の元素に変化したり、放出した中性子がウラン238にぶつかりプルトニウムになったりする。核燃料減損額としているのが燃料費です。この燃料費が、発電コストの中では、小さいのです。

一方、大きな割合を占めているのが、減価償却費と修繕費です。即ち、設備費が非常に大きい。例えば、東京電力の原子力に関する有形固定資産の取得原価は、有価証券報告書では5兆1千億円です。燃料費(核燃料減損額)より、減価償却費や修繕費の方が大きいのです。従い、固定資産税も10社合計すると、435億円です。

固定費が、ほとんどで、変動費はわずかです。原子炉の定期保守が長引くと、修理費用が増加するが、発電はせず、しかも減価償却費を初め他の固定費も発生する構造です。一旦、設置すると、修理・保守に巨額を要するが、問題なく保守をして、発電することに専念する設備です。

なお、kWhあたりのコスト単価は、発電機の発電端ではなく、発電所の所内動力を控除した発電所送電端の送電電力量で割り算して算出している。また、支払利息・金融費用は社債、借入金を含む全ての有利子負債の平均利子率に原子力関係の有形固定資産期末残高をかけ算して算出している。

4) 燃料再処理、格破棄物、廃炉関係

バックエンド費用と呼ばれており、(1) 使用済燃料再処理等発電費、(2) 使用済燃料再処理等既発電費、(3) 使用済燃料再処理等準備費、(4) 破棄物処理費、(5) 原子炉等設備解体費が該当する。但し、いずれも、現実に発生している費用ではなく、将来の見積もり費用であり、引当金処理です。

(1)の使用済燃料再処理等発電費とは、六ヶ所村と海外でMOX燃料に加工するための費用です。(2)の使用済燃料再処理等既発電費は、同じ燃料再処理費用でも費用計上が過去になされていなかった分に対する費用処理です。(3)の使用済燃料再処理等準備費は、六ヶ所村の再処理施設の能力不足のために、再処理の予定が立っていない燃料に対する費用です。何故、そんな予定がないのに費用計上するかというと、日本は国策が全量再処理となっているからです。国策が破綻しているように思えるのですが、これらの会計処理は全て法令に決められており、法令遵守の結果です。その法令とは、電気事業法、電気事業会計規則、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律等です。

原子炉等設備解体費は、これまで引当金処理をしていたが、資産除去債務として処理していくことになります。

なお、これらバックエンド会計処理が、正しい会計処理かというと、正しい会計処理です。何故なら、日本国の法令を遵守しているからです。しかし、適切かというと、余りにも大きな問題があります。福島第一原子力発電所の津波問題と全く同じです。法の想定を超えて、対応することに困難さが大きい。

日本の原子力は、トイレのないマンションだと言う人がおられます。放射性破棄物の処分方法が決まっていない。原子力発電をするからには、絶対必要である処分方法が宙ぶらりんです。それで、処分費用を見積もって、引当金を積んでも、根本問題は何も解決していないのですから。使用済燃料の再処理も同じで、再処理を行う目処がないにも拘わらず、全量再処理という国家方針です。上の、費用からみても分かるように、MOX燃料に加工する方が、ウラン燃料より高いのです。では、MOX燃料として利用した後の、使用済み燃料は、どうするか?全く解りません。

原子力発電の費用とは、恐ろしい側面を持っています。仮にある時に、原子力を中止したとしても、その時点以降も費用が発生し続けるのです。福島第一原子力発電所の1号基から4号基を廃炉にしても、今後何10年か、あるいは更に長期間か、費用が発生し続けるのです。便益なしのコストのみの発生です。

私は、だから原子力を中止すべきだとは言いません。当然ですが、良い点と悪い点があります。そこを解って、評価して、コントロールできる範囲で利用すべきと考えます。では、その範囲とは、他のエネルギー源との相対関係もあり、単純ではないが、原子力に関しての情報を公開し、広く議論すべきです。日本のような放射性破棄物の処分場所がない国には、原子力は適切か、あるいは利用するとすれば、その範囲を幾らで限定すべきか等の問題もあります。

今回は、この辺で止めておきます。次回は、他の火力、水力等と比較することとします。そして、原子力は、多くの論点を持っています。やはり、しばらくの間は、原子力についても書くこととします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月24日 (日)

東日本大震災復旧・復興のための補正予算

こんな補正予算案でよいのだろうかと思います。1次補正予算案の閣議決定ニュースと財務省の予算案のWebです。

日経 4月22日 1次補正予算案、震災復旧へまず4兆円 閣議決定

財務省 平成23年度補正予算フレーム

復興には政府予算からの支出が必要であるとして、何でもよいから提案している案なのだと思います。即ち、4兆円のうち2兆5千億円を基礎年金国庫負担の年金特別会計へ繰入の減額で賄っている。それでは、基礎年金国庫負担の年金特別会計への繰入は、どうするか不明です。引き算が必要だから、持ってきたというだけ。

現在、税と社会保障改革の案を検討しており、その中で、きちんと見直すというメッセージを明確に出すべきです。さもなくば、国民を欺すことになる。与謝野馨経済財政担当相は、そのようなことを述べたと報道があるが、税と社会保障改革の実施に関して同時に閣議決定をするか、改革案が不明状態では困難であるなら、首相発表で行って基本方針は明確にしておくべきです。

日経 4月23日 与謝野氏「税・社会保障改革、予定通り6月に結論」

日経記事には「財源は財政規律を守る観点から国債を増発せず、民主党の目玉施策を見直した。当初予算を3兆7000億円減らして捻出した。」とあるが、基礎年金の全額国庫負担は、民主党の基本政策であったはず。ODA予算を減額するというのも、何故ここでODAなのか、全く不明。弱い途上国には、文句を言わせないみたいに感じます。

これから先は、私のつぶやきです。

1) 2004年(平成16年)

2004年6月の国民年金法の一部改正(法律第104号)で、保険料の値上げと年金支給開始年齢の引き上げが決まった。保険料の値上げは、国民年金で月額13,300円から段階的に16,900円(2017年)へ27%アップ。厚生年金は13.58%から18.3%(2017年)へと35%のアップ。そして、年金の支給開始年齢は60歳から65歳へと引き上げられた。(65歳からの完全実施は、2025年度から)年金給付額については、政府は「老後生活の基本部分を支える給付水準を確保します。」と説明しているが、本当の答えは給付金額の据え置きです。

100年安心という誇大広告をしても、国民を欺し、欺く必要に迫られていた。何故なら、寿命が延び、保険料収入が増加しない一方で給付額は大幅増加が見込まれ、年金を支払える見込みが立たなくなったからです。しかし、財政破綻を防いだとも言えます。保険料を高くして、給付金額を据え置いたら、国民にとって魅力がなくなる。強制加盟の年金として制度を維持するとしても、給付(リターン)との関係で将来の楽しみとして払える保険料(投資)にする必要がある。そこで、保険料の1/2国庫負担を2004年6月の国民年金法改正で定めたのです。(国民年金法第85条)

但し、実施時期については、附則15条の「基礎年金については、平成十七年度及び平成十八年度において、我が国の経済社会の動向を踏まえつつ、所要の税制上の措置を講じた上で、別に法律で定めるところにより、国庫負担の割合を適切な水準へ引き上げるものとする。」のように複雑であった。

2) 2009年改正による1/2国庫負担の実現

民主党が勝利した衆議院選挙が2009年8月31日であり、その直前の6月に麻生内閣の時にやっと2009年度から1/2国庫負担を実現する国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成21年法律第62号)が成立した。但し、1/2の国庫負担が定められたのは、2009年度と2010年度のみで、財源は、財政投融資特別会計からの繰入金活用であった。なお、2009年の法改正は、衆議院で可決、参議院で否決、そして衆議院で2/3以上の再可決で成立した。自公与党の民主野党でのねじれ国会なるも、衆議院2/3以上を与党が確保していた。

3) 2011年度の対応(東日本大震災前)

2011年度については、財源が確保されておらず、最終的には次の財源を使うことで、基礎年金国庫負担1/2を保った。

・(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構特例業務勘定の利益剰余金(1.2 兆円)
・財政投融資特別会計財政融資資金勘定の積立金・剰余金(1.1 兆円)
・外国為替資金特別会計の剰余金(進行年度分:0.2 兆円)

4) 現状

どうなるのでしょうか?工面した2.5兆円をあっさりと震災復興に振り向けました。結果は、年金保険料の増額か、年金給付額の減額か、どちらか、あるいは両方になります。奥の手の、増税もあります。

実は、1/2国庫負担を実現しても、ヤバイのです。2008年度について、単年度収支を国民年金、厚生年金、共済組合を合計した公的年金合計で、保険料収入28.8兆円と国庫負担金からの収入8.0兆円に対して、年金給付支出は46.0兆円です。現実から目をそらせて、都合のよい空想を真実だと思っていたら、年金についても近い将来に津波被害と原発事故が再現される。

与謝野さんって、まだ誠実に事故を防ごうとして戦っておられるのだなと思います。

最後に、「続きを読む」に2009年国民年金法等の一部改正の附則第3条(検討)の条文を掲げておきます。附帯決議でなく、附則です。法の一部です。これについて、国会議員も総理も大臣も役人も、この附則を遂行する義務を有しています。

続きを読む "東日本大震災復旧・復興のための補正予算"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月22日 (金)

身近な誤解は、意外と多い(エネファーム)

誤解は、多い。人と人の間の誤解はよくある。人についてだけではなく、物についても、誤解をする。活字になっていると、さも真実のように思えて、しかも、それを人に伝えたくなってと、尾ヒレがつくことがある。次の記事は、そのように思いました。

週刊実話 4月21日 問い合わせ殺到! 自家発電ブームで「東京ガス」が招いた “大チョンボ” 

4月5日に停電時の燃料電池で書いたように、エネファームは、停電時には使用できません。それは、週刊実話の記事の通りですが、「ところが『電気事業法』の制約で、電力会社の電気を使い、停電時に停止するようにしている。ただ、これは大義名分で、簡単に言えば『電力会社の客を取るな!』というお上のお達しに逆らえないということ。国の法律は、どこまでも電力会社に都合がいいようにできているのです」は、誤解・間違いです。読者の興味を引くかも知れないが、読者に混乱を与える。

1) エネファームの実態

エネファームとは、燃料電池であり、発電設備と思ってしまうが、実はこの東京ガスの製品仕様説明のように、発電出力0.75kWと熱出力0.94kWが、同時に発生し、出力では熱の方が大きいのです。プロセスとしては、都市ガス(CH4)を空気中の酸素(O2)と反応させ二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を発生し、この発生した水素を燃料電池のエネルギー源として電気を発生する。電気発生機械と考えるか、熱発生機械と考えるか、どちらにせよ、同時に熱と電気が出てきます。そのため、60℃で200リットルのお湯を貯蔵する貯湯タンクが備わっている。

電気自動車の燃料電池は、燃料として水素(H2)を使用するので、発熱反応がないし、CO2も排出しない。しかし、エネファームとは、CO2を発生し、熱を出す装置です。この点を理解せずに、エネファームを設置すると失敗する。なお、お湯の1日の消費量を200リットルとして、計算すると、それに対応する発電電気量は冬で1日10kWh、夏だと2-3kWhのこともあり得るのではと思います。お湯を捨てるなら、1日15kWh位発電できるかも知れない。実際に使用になっておられる方から、お話を聞くのが、確実と思います。

なお、太陽光発電のように、別に独立した自立運転コンセントを備え、停電時にもバッテリーで動かせるようにすることは可能であり、そのような機種の開発計画もあると聞きますが、どれほど効果があるか、疑問点はあると思います。

2) エコウィル

エコウィルとは、ここに東京ガスの案内があり、エンジンに廃熱回収湯沸かし器をを備えた、コジェネレーション装置です。従い、停電時にも、全く問題なく使用可能です。この製品は、163cc、1,950rpmのエンジンに電気出力1.0kWの発電機を設置し、24号の給湯能力なので、エネファームと比べ3倍以上の給湯能力がある。但し、ガス消費量は4.92kWとエネファームの場合の2.1kWの2.34倍である。

メンテナンス費用もエコウィルの方が高いと想像する。

いずれにせよ、停電時に発電できる設備を東京ガスも販売しており、「お上のお達しに逆らえない」というのは、真っ赤な嘘(”大チョンボ”)です。

追記

ともサンから6月12日に「エコウィルも停電時には、利用できない」とコメントを頂きました。東京ガスのQandAには、確かにそう書いてあり、私の誤解でした。但し、同じガスエンジンと廃熱回収湯沸かし器を組み合わせたジェネライトは、メリット8 停電時にも対応に書いてあるように、停電時にも発電を行い電気を使うことができます。ジェネライトは、一番小さい設備でも製品情報のように5.0kWであり、家庭用には大きすぎます。

エコウィルが、何故停電対応できないかというと、QAの2番目にあるように「自立運転できるようにすることは可能ですが、コストアップになってしまいます。」ということで、小型のエコウィルには装備していなかったと理解します。

3) ソラモ

太陽熱利用ガス温水システムSOLAMO(ソラモ)というのも、この東京ガスのWebにあります。バルコニーの手すりで太陽熱を集め、給湯やお風呂のお湯に使う、太陽熱温水器です。「台所リモコンの運転スイッチを「切」にすると、ガスを使用することなく、太陽熱で温めたお湯をそのまま使うことができるので食器洗い等、ぬるめのお湯を利用する際に便利です。」ということで、夏は、ガス代の節約が可能と思います。

CO2を全く排出せず、あるいはCO2排出を少なくすることと、燃料費の節約が同時に可能で、環境エコと(初期コストとのかねあいで)経済性エコの両立が期待できます。何故、ガス会社が販売するかというと、ガス湯沸かし器による追い炊きを組み合わせ、望む温度のお湯を作るのに、最適だからと思います。

色々の組合せやシステムの中で、自分の住居や生活スタイルに、最適なものを、お財布と相談しつつ選べばよいと思います。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2011年4月21日 (木)

中小企業倒産増加回避への課題

多くの人が思っている懸念に、中小企業の倒産の増加や失業の増加が、あると思う。回避のためには、震災復興として政府が巨額の国債発行で対応すればよいかと言えば、そう単純ではない。やはり政府の対応は適当・適切でなければならない。

そのように、再度思わせたのが、次のニュースです。

日経 4月20日 返済猶予申請後の倒産148件、2.5倍に急増 10年度民間調べ

帝国データバンクのレポートや資料は、次のWebにあります。

株式会社帝国データバンク 2011年4月18日特別企画 :金融円滑化法などによる返済猶予後の倒産動向調査 2010年度の返済猶予後倒産148件、2.5倍に急増~ 負債総額は3029億円、前年度の5倍超に膨らむ ~

中小企業金融円滑化法とは2009年12月公布の「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」であり、2011年3月までの時限立法であったが、2011年3月31日に2012年3月までの延長が成立した法律です。(条文や概要等はこの金融庁のWebにあり。期限延長の官報はここ

今回の東日本大震災は、被害規模が非常に大きい。しかも、経済に対する影響が被災地域のみに限られるのではなく、相当広範囲にわたり、海外での経済活動・企業活動にも及んでいる。昔であれば、地域限定で終わる所が、今や地球規模で考える必要性すら感じる。生産拠点の分散・移転・再編成に海外生産も含まれ、過去の経験プラス新時代を切り開く感覚が、将来の復興に向けた課題と挑戦になると思う。そのような再編成が自企業で手を付ける前に、取引相手や市場で先に生じ、自らは、その対応に追われることさえあり得る。

そのような中で、政府の政策は、どうあるべきか、何が有効かは、結構難しい課題であると思う。例えば、中小企業金融円滑化法で返済猶予の対象となっているのは、中小企業の借入金のみならず個人の住宅ローンも含まれており、1年延長は適切であったと思う。しかし、帝国データバンクのレポートが示すように、破綻企業の倒産を単純延長しても傷が深まるだけで、それより新規分野の産業活動を支援することが、政策としては正しいと思う。

中小企業金融円滑化法については、将来その効果についての調査と検証がなされ報告される必要があるが、税金を使わない企業支援である。単純に税金を支出するより、新規成長産業への事業進出を、企業活動のためのインフラ整備で支援するほうが効果が大きい。何が効果的且つ適切か、具体策が浮かび難くはあるが、そのような政策検討をシンクタンクやコンサルタントに競争させるのも一案と思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

被災者の人体放射能汚染トラブル

このニュースには、驚いた次第です。

読売 4月20日 放射能検査問題、配慮足りなかった…つくば市長

1) 厚生労働省からの都道府県や市区町村保健所への連絡

厚生労働省から保健所に対する3月21日付け事務連絡は次です。

放射線の影響に関する健康相談について(依頼)(一部修正及び追加)

証明書等の発行を希望する方もおられると想定されますが、このような証明書等を発行することは、健康相談の趣旨にそぐわず、サーベイ実施施設に過剰な負担をかけるため、望ましくないと考えているので、そのように対応願います。

と書いてあります。この文書は、放射線の健康相談に対する保健所の対応であり、希望者については、測定することで対応すべきであると述べている。範囲を拡大して、それ以上の解釈を、すべきではない。

また、厚生労働省からの3月18に付け事務連絡には「③受入れに際し、放射線の除染証明書を提示することなどを条件として付さないこと」と書いてあります。

2) サーベイメータによるサーベイ結果

福島県の緊急被ばくスクリーニングの活動状況についてによると、 4月17日(日)までに実施したスクリーニングした結果で、159,269人中に100,000CPM以上であった人は、102人であり、すべて3月中に測定した人であった。そして、健康に影響を及ぼす事例は見られなかったとあります。

3) 100,000CPMの意味

厚生労働省の事務連絡に添付された原子力安全委員会の3月20日付書類には、「実効性に鑑み、国際原子力機関(IAEA) が「放射線緊急事態の初期対応者へのマニュアル」において規定した一般住民の体表面汚染に対する除染の基準である1μSv/h(10cm離れた場所での線量率)というスクリーニングレベルに変更します。この変更によりスクリーニングレベルは、100,000cpmとなります。」と書いてあります。IAEAのマニュアルというのがこのマニュアル Manual for First Responders to a Radiological Emergency です(74ページ?)。

では、100,000CPM以上の値が出たらどうするかですが、放射線医学総合研究所の医療機関等における放射線緊急モニタリング対応マニュアルに書いてあります。3月18日10時現在なので変更があるかも知れませんが、大きな変更はないと思います。

即ち、数10万CPM以下であれば、自宅等でシャワーならびに洗髪するのです。着ていた衣服は洗濯し、排水はそのまま下水に流してよいとあります。

放射線医学総合研究所のこの説明第25項目には、100,000CPMは400Bq/cm2に相当するとあり、金町浄水場の水、1リットルあたり210Bqと比較すると大きいように思ったが、そうでもないと思われます。このあたり、私には未だ難しそうですが、口から体内に入って被爆する内部被爆と、皮膚への吸収線あるいは外部被爆の違いがあるのだと思う。なお、皮膚(深さ70μm)の吸収線量率は0.53(mGy/h)とありますが、単純にカロリーに熱量換算すると時間当たり0.00013カロリーです。

最後に、CPMとはCount per Minuteであり、1分当たりの放射線の数ですが、今回の100,000CPMは計測部分が直径5cmの広窓GMサーベイメータで計測する場合の値です

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月19日 (火)

日赤義援金とふるさと納税(追記)

3月31日の日赤義援金とふるさと納税に、あぶ 様からコメントを頂いた結果による、訂正と追加です。

(追記)
日本政府に対する東日本大震災に係る義援金についても、ふるさと納税の扱いとなることが、総務省のWeb(こちら)で、出されています。従い、ふるさと納税の扱いとなるのは、地方自治体に対する寄附金と東日本大震災に係る義援金のうちで日赤、中央共同募金会そして(又は)政府に対して寄附をする場合です。

1) 東日本大震災についての日赤義援金はふるさと納税の扱いとなる

訂正すると共にお詫びいたします。

法令を全く変更せずに、解釈で対応するようです。即ち、あぶ 様からご指摘があった3月31日付の総務省発表あなたの『ふるさと寄付金』が被災者支援に活かされます!です。

被災地の県や市町村に直接寄附する場合のほか、日本赤十字社や中央共同募金会などに東北関東大震災義援金として寄附する場合にも、『ふるさと寄附金』として所得税と個人住民税で控除(還付)が受けられます。

総務省発表に「参考2」として添付されている総務省自治税務局市町村税課長からの通知があり、理由は、次の部分です。

「ふるさと寄附金」に係る控除の適用を受けようとする納税者が個人住民税申告書(確定申告書の住民税に関する事項を含む。)に寄附金額を記載した場合の確認方法は、原則として地方団体が発行する受領書によるものですが、今回の平成23 年東北地方太平洋沖地震に係る義援金等については、その被害の状況にかんがみて、次のいずれかによることとして差し支えないものとします

・・・・・・省略・・・・・・

2 この場合において、当該募金団体に対する義援金等が、最終的に次のア又はイに拠出されることが新聞記事、募金要綱又は募金趣意書等で明らかにされていることが必要です。
ア 被災地方団体
イ 災害対策基本法(昭和36 年法律第223 号)第40 条又は第42 条に規定する地域防災計画に基づき地方団体が関係機関と組織する義援金配分委員会等

被災地方自治体に直接寄附金が支出されなくても、信頼しうる特定の募金については、その最終的な募金の使途が地方自治体に対して、或いは地方自治体が実質的に交付金を支出して支援していると認められる義援金への寄附金であれば、間接的であっても実態を捉えて地方自治体宛の寄附金として扱うと言うことです。

表面よりも実態・実質を重視することで、役所仕事のお手本かと思いました。

2. 補足説明

地方税法37条の2(県民税の寄附金税額控除)と314条の7(市町村民税の寄附金税額控除)が住民税の寄附金税額控除を定めている。その対象となる寄附金は、1項の1号で地方自治体に対する寄附金、2号でその都道府県にある共同募金会または日赤支部に対する寄附金、3号で県条例、市町村条例で定める寄附金(例えば、その県又は市町村にある認定NPO法人等)であり、所得税と比較すると、対象となる寄附金が限定されています。例えば、日本ユネスコ協会に対する寄附金は、所得税では所得控除が可能でも、地方税では認められない。認定NPO法人も、住んでいる市町村にあり、条例で認められている必要があります。同じ県内でも、別の市町村であれば、県民税についてのみの寄附金税額控除となってしまいます。

ふるさと納税(ふるさと寄附金)の扱いを受けるには、地方税法37条の2や314条の7第1項第1号の地方自治体に対する寄附金であることが必要で、この場合に特例控除額が認められる。但し、特例控除額は、住民税の10%で頭打ちとなる。東日本大震災への寄附金の扱いについては1)の通りです。

東日本大震災への寄附金でない日赤への寄附金は、3月31日の日赤義援金とふるさと納税に、戻ってしまいます。即ち、ふるさと納税(ふるさと寄附金)の扱いは受けられません。一般の住民税寄附金控除について、2002年3月31日までは、日赤への寄附金は、その都道府県支部への寄附金でないと住民税の税額控除は受けられなかったが、2003年3月31日までは、日赤本部であっても可能な対象が広がりました。(総務省告示第115号により、地方税法施行令第七条の十七第3項の「日本赤十字社に対して支出された寄附金で、日本赤十字社が当該寄附金の募集に当たり総務大臣の承認を受けたもの 」を官報で承認を発表した。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月18日 (月)

福島第一原発事故避難者の帰宅予想

政府が、東京電力の「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」についてを4月17日に発表したが、概ね妥当な内容であろうと思いました。

従い、早ければ、10月頃、遅くとも年末までには、第1回目の帰宅者の地域と時期を発表すると予想します。その後の、モニタリングにより放射能レベルが上がれば、再度避難要請を行うような条件がつくと思うし、原発の間近の人が最終的に帰宅できるのは、数年先になるかも知れないと思います。

そのように考えたことを書いてみます。

1) 事故前と事故後の放射線レベル

福島第一原子力発電所の事故前の放射線レベルは、どれぐらいであったかをみると、3月11日の東京電力発表によれば11日午後7時で60nGy/hであった。渋谷電力館の放射線レベルの値を東京電力のこのWebからみると0.03μSV/hから最大は0.1μSV/h位である。nGy/hとμSV/hは単位が異なる(エネルギー単位と人体影響単位)ので、換算が必要であるが、μGy/hはμSV/hにほぼ等しいとして換算すると、60nGy/hは0.06μSV/hであり、事故前は放射能レベルは、原発とはほぼ無関係に近い状態であったと言える。

4月12日における放射能レベルは、この東京電力計測結果によれば、正門で80μSV/hであり、1000倍ほどの高い放射能レベルであった。

2) 目標は事故前の放射線レベル

60nGy/h(0.06μSV/h)というレベルは、原発がなく、自然界の放射線のみと同じレベルである。目標としては、原発がないと同じ状態を目指すべきである。それが、今の工程表における6月~9月後になると考える。即ち、この東京電力の福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋の対策55の原子炉建屋カバーの設置完了である。

原子炉をすっぽりカバーし、内部を負圧にし、排気筒からフィルターを通して排出換気するようにすれば、事故前と同じレベルが可能と期待できる。但し、工事のために、現在の放射能レベルを下げる必要があり、その前には、海水冷却が熱交換機を介在して可能とする必要がある。対策27として、熱交換機の設置による冷却があり、ステップ2が開始する頃に熱交換機が完成し、ステップ2では使用が可能と理解する。

そう考えると、ステップ1に3月間、そしてその後のステップ2に3月というのは、妥当であり、遅れるとしてもステップ2の完了までに9月、即ち年末というのは、順当かと思える。但し、原子炉建屋カバーという表現からして、台風が来ると、折りたたんで、台風から避難する必要があると思える。仕方がない範囲と思うが、一旦帰宅された住民の方にとっては、台風避難も大変だなと思います。

3) 実際の帰宅はモニタリング結果で判断

何が一番信頼できるかと言えば、当然計測結果です。計測対象や計測地点をどうするかは、専門家や住民の方をまじえて決定すべきであり、地方自治体も積極的に関わるべきと思います。多分、一斉帰宅ではなく、徐々に範囲を拡大していくことになると思います。

4) 何十年も発電所に駐在

対策56に、本格的措置(コンテナ(コンクリート等による屋根・外壁))とあり、実際の工事はステップ2が終了した後になるが、放射能レベルを事故前と同じレベルに保つには、排気筒からの排気を継続せねばならず、人員が常駐すべきと考えます。その意味では、ディーゼル発電機も小容量であれ、津波対策ができた物を設置するのだと思います。

核燃料の取り出しを急ぐよりは、放射能漏れがないことに万全を期するのが、本筋と思います。廃炉だからといって更地にして、更地にすることにより別のリスクが高まるのは、本末転倒と思います。もしかして、安全な状態にして、そのまま保全することが、我々に将来にわたり警鐘を発し続けてくれてよいのではと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月16日 (土)

原子力災害賠償法と農業損害

次の主張が全国農業新聞にあった。

全国農業新聞 4月15日 原子力損害賠償 農家一人残らず補償を

当然、補償はされるべきです。しかし、「民民の枠組」と言ってしまうと、支持を失うと私は思いました。東京電力が、法令通りに建設し、運転しており、法令においても想定されていなかった高さの津波により事故となったとすると、「民民の枠組」という概念で、説得力があるか、正しいか疑問を持つ。

日本の農業の将来を考えれば、多くの人に支持や賛同を得られる主張をすべきです。日本振興銀行の預金は、預金保険で保護されました。農業への福島原発被害についても、預金保険の適用はなくても、社会的に重要であるから保護されるべきと考えます。農業は、食料を供給する産業であり、安全で安心できる農産物を国民に供給してきた。今後とも国民はそれを期待します。

報告書が出ていないので、何も言えないのですが、法令の要求以上の必要性についても東京電力は検討すべきであったと思います。しかし、法令の要求以上のことを実施する義務があったのか、今回の津波が法令の義務を遵守していても防げなかったとしたら、そのことについて損害賠償の成立範囲はどうなるか。

しかし、実際には、原子力損害の賠償に関する法律(原子力損害賠償法)が適用され、このような議論はありえません。重要なのは、次の第3条により、過失がなくても賠償責任があるとしている無過失責任であること。そして、但し書きにより、「異常に巨大な天災地変」については、この限りではないとしている。なお、「この限りではない。」について、「責任がない。」を意味すると、私は解釈しません。しかし、東日本大震災は、やはり「異常に巨大な天災地変」に該当すると考えます。

第3条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない

このような不思議な法律が制定されたいきさつについて、国会議事録から質疑を紹介します。

1) 昭和35年5月17日 衆議院-科学技術振興対策特別委

この委員会で、原子力損害賠償法が最初に審議された。当時の科学技術庁長官中曽根康弘氏による法案の説明です。(アンダーラインは、ブログ主による

以下、本法律案の内容につきまして、その重要な点を御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、原子炉の運転、核燃料物質の加工、使用及び再処理等の行為を行なうことによって、方々一放射能等、原子力による被害を第三者に与えました場合、その損害の賠償に関する基本的制度を定めて、被害者の保護に遺憾なきを期することにより住民の不安を除去し、同時に、原子力事業者に損害賠償措置を講じさせることにより原子万事業経営の基盤を安定化し、原子力事業の健全な発達に寄与しようとするものであります。
 第二に、原子力事業者の賠償責任につきましては、民法の不法行為責任の特例として無過失責任とし、かつ、原子力事業者に責任を集中することといたしたのであります無過失責任といたしましたのは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について故意、過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上不可能と認められるからであり、一方、近代科学の所産である危険を内包する事業を営む者は、よって生ずる損害については故意、過失の有無を問わず責任を負うべしとして無過失責任を課している各国の例に徹しても妥当であると考えられるからであります。また、原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります。ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります。
 第三に、損害賠償のための一定の措置を講じない限り、原子炉の運転等を行なわせないこととし、損害賠償責任を担保するための措置を原子万事業者に強制することといたしたのであります。この措置は、原子力損害賠償責任保険にかけるか、または供託をするか、あるいはこれらに相当するその他の方法により、一事業所または一工場当たり五十億円(注)を損害賠償に充てることができるようにしなければならないものであります。ただし、教育用の小型原子炉等、大規模の損害の発生が予想されないものにつきましては、その規模内容に応じてこの金額を引き下げることといたしておるのであります。
 第四に、現在の原子力損害賠償責任保険につきましては、その大半を外国保険市場の再保険に依存しているのでありますが、一定の事由、たとえば日本における地震、正常運転等による損害は外国保険業者がこれに応じないという実情にあるため、保険のみをもってしては賠償責任の全部はカバーしきれない場合があるのであります。このような場合における損害賠償の履行を確保するため、政府といたしましては、原子力損害賠償補償契約を原子力事業者との間に締結し、被害者の保護の完全を期することといたしたのであります。なお、この補償契約の詳細につきましては、さらに検討の上、別に法律をもって定めることといたしておるのであります。
 第五に、ただいま申し上げましたように、五十億円までの損害賠償につきましては完璧を期待し得るのでありますが、五十億円をこえる損害がかりに生じた場合いかにこれに対処するかという問題が残るわけであります。政府といたしましては、このような場合はまずあり得ないと考えておりますが、万々一このような事態に至りました場合は、被害者の保護と原子力事業の健全な発達をはかるというこの法律案の目的を達成するため必要と認められますときは、国会の議決により、政府に属させられた権限の範囲内において、原子力事業者に対し、賠償に必要な援助を行なうことといたしたのであります。また、原子力損害が異常に巨大な天災地変等によって生じたため原子力事業者が損害賠償の責任を負わないような場合におきましても、政府は、原子力損害の被災者の救助や被害の拡大防止のために必要な措置を講ずるものとして、住民の不安に対処することとしているのであります。
 さらに、原子力損害に関する国民的関心、損害、の特殊性等にかんがみ、万々一相当規模の原子力損害が発生いたしましたような場合には、わが国原子力政策の帰趨にもかかる問題でありますので、国家的規模において、すなわち、国民の代表たる国会の意思が十分反映されるような形態で処理されるのが適当であろうと考えるものであります。このため、政府は、相当規模の原子力損害が生じました場合には、できる限りすみやかに損害の状況及びこの法律に基づき政府のとりました措置を国会に報告するものといたしたのであります。また、原子力損害が生じました際、専門的立場から、原子力委員会が損害の処理、損害の防止等につき内閣総理大臣に意見書を提出いたしましたときは、政府は、当該意見書を国会に提出しなければならないものといたしたのであります。
 第六に、原子力損害の賠償につき紛争が生じました場合、その迅速な処理をはかり、被害者の保護に資するため、紛争に関し和解の仲介及びそのための損害の調査評価を行なう特別の機関として、原子力損害賠償紛争審査会を必要に応じ設置するものといたしたのであります。
 第七に、原子力損害につきまして国の特別の措置を講じておりますゆえんのものは、その未知の要素に基づく不安を除くところにその一半の理由があるわけでありまして、今後研究が進み、未知の点が究明されるに従い、国による特別の措置の必要性は減少する方向にあると言えるのであります。アメリカ、西ドイツ等におきましても、国の措置は一応十年程度としている点も参考とし、この法律案におきましても、国の補償契約及び事業者に対する援助措置につきましては、現段階において、一応今後十年に限るものといたしたわけであります。
 以上が原子力損害の賠償に関する法律案の提案の理由並びに要旨であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願いいたします。

(注) 50億円は、現在1200億円に改正されています。

2) 昭和35年5月18日 衆議院-科学技術振興対策特別委

翌日の委員会です。前田正夫委員(自民)の質問が、2011年を見越していたみたいです。

前田(正)委員 ・・・・それから、次に問題となりますのは、第二条の原子力の損害であります。原子力の損害というものは、これは今後非常に広範な問題が予想されるのでありまして、たとえば、もしも災害が起こった場合の放射能の影響する範囲というようなことから退避命令を出すとか、あるいは近所に放射能の汚染を受けたために野菜類とか魚介類の損害も出るとか、こういうようなものが出た場合は、前にもマグロの漁船が補償を受けたようなものもあるようでありますが、そういうような例から見て、こういうような広範にわたったものは全部原子力損害の中に入っておるのかどうか、これを一つ御答弁を願いたいと思います

少し、答弁を飛ばすこととなるが、次のように、明解です。

・・・・・・
○佐々木(義)政府委員
 事故が発生した場合の退避の際に要した費用等に関しましては、もちろん、相当因果関係を持っている場合には賠償額の中に入りますが、ただいま御指摘になりました、いわゆる原子力損害とは何ぞやという損害そのものの定義の中には、そういう費用は入っていないというふうに解釈しております。

○前田(正)委員 そうすると、損害の中には入ってないけれども、補償の中には、民法の相当因果関係の範囲のものは全部入る、こう解釈していいわけですか。

○佐々木(義)政府委員 その通りでございます。

蛇足であるが、岡良一委員(社会党)が、日英動力協定について言及しているので、その部分を書いておきます。原子炉の運転等に係る原子力事業者に責任を集中している法律ですが、その背景の一つとして、例えば原子炉供給者と燃料供給者について、この法律が制定される前に免責としています。当時、日本原子力発電の東海一号用コールダーホール原発を英国GECから輸入することとしたのです。

○岡委員 ・・・・それから奥村政務次号に特にこの機会にお願いをしておきたいのですが、大蔵大臣にぜひ私は御出席を願いたいと思う。特に昨年、日英動力協定の際、私は大蔵大臣にこの点についても若干質疑をいたしました。私の記憶によると――記憶というよりも、こういう問答があったわけです。あの日英動力協定では、英国側から買った炉については、万一事故が起こっても英国は責任をとらない、こういうように政府と政府との門で英国側を免責しておる以上は――しかも、日英交渉の議事録を見ると、向こう側ははっきり議事録の中で言っておる。原子炉の燃料については、万一にも瑕疵があると災害が起こり、それは予想すべからざる大きなものになるのである。だが、英国側は、これに対して完全であることを努力するが、しかし責任は持てませんよと言っておる。そういう交渉の過程であの免責条項ができておる。だから、政府と政府との間で、責任を持たないでよろしいといって日英動力協定を結んだ。そこで今度は、日本の方でその炉を受け入れたということになると、万一事故が起こった場合、政府としても政治的な責任があるのではないか、だから、国は万一の場合に補償するのかという点を、私は大蔵大臣に御出席を願ってるる申し上げた。そのときの大蔵大臣の御答弁は、どの程度のものが災害として起こってくるのかというようなことについては、まだ何の資料もない。であるから、もっと具体的に数字が固まる段階にくれば、政府としてもやはり明確な態度を申し上げられるのだが、今のところ、入れるか入れないか、協約を結ぼうという段階だから、まだはっきりしたことは言えないかというような御答弁であった。しかし、こうした法律の上で、先ほど中曽根長官の御答弁を聞いておると、原子力事業者は、一応保険なら保険で、政府との補償契約で五十億までは損害賠償をやる、あとは国が援助するということになると、そしてどの程度のものが予想されるかという数字が出てくれば、政府としてもやはりそれについての補償の限界もあろうし、またその態度もあろうと思うので、大蔵大臣にぜひ御出席を願って、その際はっきりとした御答弁を伺いたいと思います。そういう点でぜひ一つ大蔵大臣の御出席を、これは委員長もぜひお取り計らい願いたい、そう思います。

原子力は、国家のエネルギー政策の一環として推進されてきた。当然、それに伴うリスクも、付随していた。一部分のみを取りだして、都合よく扱おうとしても、原子力とは、そのようなことができないお化けみたいなものであると思います。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2011年4月15日 (金)

統制経済派は民主党都議会の人達ですか

「民主党がめざす統制経済」と直前のブログで書きましたが、やはり民主党でも意義を唱える方が、おられるようです。

テレ朝ニュース 4月15日 「経済に影響」夏の自販機規制に蓮舫大臣が反論

大いにやって下さい。自分が正義だと思ってしまうと、社会に大きな迷惑をかけるかも知れません。様々な意見を聞き、正しい検討結果に従って、判断することが重要です。さもなければ、再選された知事と同じです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月14日 (木)

民主党がめざす統制経済

こんなニュースに接すると、ファシズムと統制経済へ日本は進むのかと思います。

時事ドットコム 4月14日 飲料自販機の節電条例案提出へ=今夏の施行目指す-都議会民主

法律(この場合は、都条例ですが)で、需給を規制するのは、極力避けるべきです。これほど酷い悪魔の政党とは、思いませんでしたが、甘すぎたようです。

ニュースには、「既に省エネ対策として、7月から9月にかけ、午後1時から同4時まで冷却装置を停止し、保冷機能で製品を冷やしている。」と書いてあります。それを、午前10時から午後9時に拡大して、どれほどの効果と意味があるのか、おそらくそのような研究はされていないと思います。選挙で負けたついでに、ポピュリズムで何でもしようとするのか。いや、昔から、そんな政策ばかりであったと思います。

2008年1月には、こんな揮発油税の扱いなんて書いたが、無節操で、近視眼で、政策を考えられない人達です。選挙に勝てばよい。国民は、不幸でよい。経済の発展は不要である。もし、変な条例を提案しようとするなら、現行の午後1時から同4時までを拡大することにより、どれだけの省エネが得られ、また夏の停電対策になるのか、その費用と効果をあわせ、詳細レポートを示すべきです。ムードで、統制経済を実施することは、ファシズムです。

今年の夏に実施するには、間に合わないが、実はスマートグリッドにすれば、電力市場取引が広範囲に可能となります。スマートグリッドについては、改めて、きちんと書きますが、全ユーザーに電子式で通信機能を持ったメータを付けるのです。そうなると、ピーク時の価格は高くなる。市場の作り方によっては、自分の持っている買取権を売却して、高くても必要なユーザーが電力を市場で得ることも可能です。例えば、家庭やオフィスでも全体の需給をモニターし、自分の需要をメータで見て、供給力の限界に近づいたり、価格が上がると、電気の消費量を抑えたりします。

検針の仕事かなくなるので、その仕事を現在されておられる方のことは考える必要はあります。なお、30分毎の消費量を測定するメータは、実は大口ユーザーには既についていると思います。従い、夏場対策の重要部分は既にあります。そして、3月の時も、それがやはり働いたと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月13日 (水)

復興のグランドデザインには、地元住民の参加を

政府は4月11日に、持ち回り閣議により、東日本大震災復興構想会議の開催について閣議決定をしたと発表した。

この4月11日(月)午後 .官房長官記者発表の2番目の表題

これに関して、日経は、次の記事を掲載していた。

日経 4月12日 大胆かつ地域に目配りした復興計画を

私の思うことは、「楽しい生活がおくれるまちむらを建設すべきである。」です。

「楽しい」のみならず「安心して」やあるいは多くの言葉がつくのではと、批判を受けると思うが、安心がなければ、「楽しい」にはならないと思う。だから、ここでは「楽しい」に全てを代表してもらう。

ところで、その「楽しい」の意味や内容については、そこに住む人が決定すべきであり、住民ではない人が、口を差し挟むべきでないと思う。価値観は、人により異なる。それを画一の基準で押しつけるべきではない。

一方、ほとんどの住民にとって、地域開発のようなことは、経験もなく、素人である。道路は、元のルートで、そっくり復元すべきか、あるいは直線的にし、幅を広くすべきか、仮にそうするならどの範囲を対象とするか等々様々な課題に直面する。意欲はあっても、現実には無理。しかし、コンサルタントを雇い、図面を引き、設計図書を作成し、工事費、予算を見積もることが、政府補助金により実施可能であるなら、どうだろう。 最善の復興計画を作成し、また地域を震災前以上に活気づけることが可能と思う。

ハコモノ批判が、少し前までの日本であった。しかし、東日本大震災は、ハコモノを壊したのであり、インフラとしてのハコモノは建設する必要がある。このハコモノを従来と同じ手法で進めるのではなく、住民が参加した形で進めるべきと考える。

震災にあった東北東海岸は美しい所である。一方、それぞれ地域により特徴は異なるのであり、画一的な復興はふさわしくない。復興計画に自分たちの意見が取り入れられる場合は、住む人達に大きな希望や勇気そして活力を与えると思う。例えば、津波に対して、避難が容易な街と言っても、集落毎に異なると思う。単に、地形だけではなく、その集落の人口構成や仕事・生活スタイルによっても異なる可能性がある。海から離れて、適当な丘があれば、その丘に住居を移す人と、海の側に住む人のためには、丘への避難が短時間で可能なようにしたり、さまざまな工夫が考えられる。

今回の東日本大震災復興構想を考えるにあたっては、住民参加を取り入れてもらいたいと思う。楽しい生活を考えること、それは、とても楽しいことです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月12日 (火)

震災復興ファンドの提案

震災復興ファンドの創設を思いついたので、書いてみます。

1) 震災復興ファンド

震災被害を受けられた方々を支援するファンドです。寄附金ではなく、貸付金とし、金利もお支払いいただき、元本も返済願う消費者金融の一種です。地方自治体等からの支援はあるが、生活費の支えとして、あるいは一時的なつなぎのための資金が必要なかたもおられると思います。貸付は、原則個人むけの融資とし、無担保で、返済期間は、借入人の状態に応じて、決定する。貸付審査が、最大の問題であると思うが、借入人・個人が信頼できるか、どうかで全てを判断する。

イメージとしては、マイクロクレジットの日本版です。復興支援をしておられ、寄附金や義援金を集め、それを必要な相手先に対して寄附をしたり、あるいは自分たちの活動費に充てているNPO法人等が、義援金のみならず復興ファンドへの出資を募るのです。ファンドの運営者としてそのNPO法人自身がなるのか、あるいは別に共同でファンドを立ち上げることも可能と思います。そして貸付業務及び審査は、そのファンド運営者が承認可能な、支援NPO等で頑張っておられる方が実施する。

貸付は無担保ではあるが、本当に必要なお金の場合は、返済されると思うし、万一の場合には生命保険による回収もありうると思う。ビジネスとして成立するかの問題については、ファンドへの出資者が、通常の出資ではなく、被災地で困った人への貸付であり、元本保証はなく、リターンが不明であることを納得していれば、成立可能と思う。また、ファンド運用費用は最低限で済むと思う。但し、出資者に対しては、会計報告をすることを義務とし、月次で簡略版、四半期でそれなりの財務諸表と活動報告、年次では詳細報告をする。更には、どのような相手に対して貸付を行ったかも、個人名をどうするかは別にして、何人に一人幾らで、その目的等詳細な情報を、出資者はパスワードを入れればWebで見れるようにすることも考えてよいのではと思う。

政府の復興支援や様々な義援金はあるが、それに加えて、このようなファンドがあれば復興の手助けになると思う。

2) 問題点

法的な関係が、気になります。2006年12月に公布された改正貸金業法の規制の対象になると思う。過剰借入・多重債務者保護を目的として制定されたことから、貸金業者に該当する場合は、純資産額規制、取扱主任制度、指定信用情報機関制度他が適用され、随分厳しくなり、NPO法人が設立したファンドでは、個人向けの貸付は困難な気がする。

私も、貸金業法の専門家ではないので、本当にダメなのか、あるいは一定の条件下であれば可能か、確信は持てないものの、困難が伴うことは予想される。何故なら、NPO法人に許されるなら、NPO法人そのものは簡単に設立可能であり、悪徳業者・悪貨が高利貸しとして参入すると思うからである。2006年12月の改正貸金業法は何であったかに戻ってしまう。

例えば、生協がローンをすることが認められているが、借入人は組合に限られ、信用生協の場合は、岩手県消費者信用生活協同組合のように、活動が県内という制限を受け、県外の人は組合員になれず、出資も借入もできない。

ところが、2010年6月に改正貸金業法の総量規制等が適用されることになり、借入の手続きに年収証明が必要になったり、金額制限があったりで、フレキシビリティーがなくなった。クレジットカードを物品購入でなく、ローンで利用しようとしても、大変なこともある。そのような状態で、震災の結果、ヤミ金融が手を伸ばしたら、被害者が出る気がする。

法律が、こうだからではなく、震災被害者救援をより効果的に進めるための金融制度を、検討してみてよいと考える。

3) 野村證券、大和総研

復興ファンドと称して、野村が東日本復興支援債券ファンド1105というファンド(投資信託)の募集を始めた。(ここ)信託報酬が、年0.43575%で、償還5.2年、AA格付、利回り0.83%ということで、手元に入ってくる利子は、税引後で年0.3154%である。信託報酬の中から、年0.2%程度をNPO法人等に寄附をするという投資信託である。

資金使途は、復興支援のための国債購入30%、地方債5.2%、被災企業の社債等63.5%というが、しっくりと来ない面がある。即ち、AA格付けを維持するためと理解するが、相手先の候補に、新日鐵、トヨタ、日立、丸紅・・・と書いてある。わざわざ支援などせずとも、資金調達に支障がない会社である。結局は、 年0.43575の信託報酬が欲しいから、NPO法人等に0.2%寄附するとしている様にさえ思える。

大和総研は、ファンド(基金)創設の提案です。(ここからダウンロードできます。)私のファンド案と異なるのは、法的には問題がない仕組みで、相手先の主体は地方自治体です。但し、返済キャッシュフローが見込める貸付としており、おもしろいアイデアと思いました。即ち、単純に政府が国債を発行し、その資金を地方自治体に貸し付けるやり方では、有効性に問題が残る可能性がある。一方、このような民間資金のファンドを作れば、償還の可能性についての審査は厳しくなるのであり、効果が期待できると思う。必要な額の資金調達を確実にするために政府保証は付ける。

但し、私が思うには、政府に口を出させないようにすることが重要である。ファンド管理委員会を作り、政府委員が入ってもよいが、公正・公平な運用ができ、与信審査も合理的に実施できるような体制作りが重要と思う。即ち、政府が国債を発行し、手がける復興支援があってよいのであり、逆にキャッシュフローを生まないが重要な復興支出も沢山ある。全てが、政府でなく、民間資金と投資リターンがうまく結びついたファンドによる復興も検討されるべきと考える。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2011年4月10日 (日)

原子力施設地元の地震恐怖 4月7日宮城県沖地震

福島第一原子力発電所事故の以前であれば、そうでもなかった可能性があるが、原発について、いつもは大丈夫と思うが、地震があると、もしかしたらとの気持ちで、特に地元の人は、おられると思います。そんな中で、4月7日の午後11時32分頃、宮城県沖で地震が発生し、多少のトラブルが発生していた。

仙台市に本社がある河北新報のニュースです。

河北新報 4月9日 頼りない命綱 安全に疑問 女川原発、冷却一時停止

私なりに、チェックをしてみました。

1) 東北電力東通原子力発電所

Webで東北電力の会社プレスリリースを見たが、4月7日の地震に関する発表を発見できず、原子力発電所に関するプレスリリースのページを見ると、ここここにあった。経済産業省の発表は、第1報 4月7日12時00分現在第2報 4月8日 午前1時00分現在第3報 4月8日 午前9時30分現在第4報 4月8日 午後4時00分現在第5報第6報 4月10日08時00分現在とある。

東通原子力発電所の設備は、1,100MWが1基のみ。本年2月6日から定期検査のため停止中であった。多分、この定期検査にあわせて、2基あるディーゼル発電機(DG)のうち1基を検査停止していた。この状態で、地震があり、送電線は3系統の全てが機能しなくなり、受電できず。しかし、8日午前3時30分に、送電線1回線が復旧した。点検中ではない1基のDGは、稼働していた。しかし、8日13時55分頃に燃料循環ポンプ付近から軽油が漏えいしていることが発見され、14時06分に停止させた。そして、14時59分に送電線3回線全てが復旧した。放射能の値に異常は認められていない。DGは、9日7時に復帰した。従い、電源については、地震から午前3時30分までの約4時間はDGで、それ以後は外部電源から。なお、14時59分まで外部電源は1回線のみ。14時06分から9日7時までは、DGは使用できず。

経済産業省は、この東通原子力発電所の事象を受け、4月9日 経済産業省プレスリリース 非常用発電設備の保安規定上の取扱いについてのとおり、原子炉が冷温停止中であっても、2基のDGを動作可能な状態で確保することを求めた。

整理すると、上のようになった。発電機が定期点検の停止中であったので、福島第一原子力発電所と異なるが、それでも福島第一原子力発電所4号基は、停止中でしかも原子炉内に核燃料が存在しないにも拘わらず、爆発事故を起こしたのであり、安全性については情報を開示し、多くの人、特に地元の人が納得いくように説明すべきと考えます。

2) 東北電力女川原子力発電所

5回線ある送電線のうち、工事停止中の1回線を除く4回線のうち3回線が遮断。使用済燃料プールの冷却系統は、一度停止したが、復旧。送電線は、停止した1回線及び工事停止中の1回線を復旧し、3回線の受電となったが、1回線の碍子に不具合が発見され、それを停止。8日14時01分にもう1回線が復旧、更に8日18時45分にも1回線が復旧し、その時点で4回線で受電。

女川原発について、東北電力の発表は見つけられず、上記は全て経済産業省のプレスリリース。

深夜の地震なので、会社としても、発表する体制は手薄になるが、東北電力も、もう少し目立ってプレスリリースをしてよいように思う。

3) 北海道電力泊原子力発電所

1号基(579MW)、2号基(579MW)、3号基(912MW)のそれぞれが最大定格熱出力で運転中であり、電気出力2,130MW-2,150MWで運転中であった。地震の揺れをほとんど受けず、津波の影響もなかったが、北海道電力と東北電力を結ぶ北海道本州海底直流送電系統が、地震を感知して、あるいは東北電力内の送電線遮断を検知して、自動停止した。結果、短時間北海道電力管内の発電は需要を超過し、周波数が上昇した。これを自動関知した発電所は、出力を自動的に下げた。泊原発も発電機出力、原子炉出力を下げた。

北海道電力 4月8日 プレスリリース 宮城県沖地震による泊発電所1、2号機の運転上の制限逸脱および解除について

電力系統の運用面では、安全装置が働いた。一方、軸方向中性子束出力偏差が目標値からの逸脱については、どう評価すべきか判りません。

4) 日本原燃六ヶ所再処理事業所他

外部電源が遮断され、DGによる電力供給となったが、4月8日午前9時44分に外部電源を受電できた。再処理工場では8日14時58分までに、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターでは10時46分までに、ウラン濃縮工場では13時05分、低レベル放射性廃棄物埋設センターでは16時00分までにと、それぞれ外部電源に戻した。

日本原燃のプレスリリースは、分かりつらいところにあり、ここです。なお、どうなっているのか、日本原燃の事業活動もよくわかりません。再処理については、試験運転中であり、ウラン濃縮については、現在、生産運転停止中と理解する。

地震と津波のリスクは、あるはず。どのような仕組みで放射能汚染を防止しているのか、日本原燃のホームページを見てもよく解りませんでした。適切な情報開示を求めます。

5) 福島第一原子力発電所1~4号基と5、6号基の地面高さ(GL)・・・蛇足

東京電力が津波の調査結果を発表した。4月9日プレスリリース 当社福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所における津波の調査結果についてです。

1~4号基と5、6号基の間には400m-500mの距離があるが、地面の高さ(GL)が、異なっていることが、4月9日プレスリリースに添付されている添付1の図面で分かります。タービン建屋の海側で、1~4号基と5、6号基で津波高さが、それぞれOP14~15mとOP13~14mと約1mの差があるが、その時の浸水深が1~4号基で4~5mであるが、5、6号基では0~1mである。この差は、地面(GL)が、1~4号基では10mで、5、6号基では13mであった。

添付2の図面が、福島第二原子力発電所で、地面(GL)がOP12mで、津波高さが12.3m、浸水深は0.3mとなっている。但し、福島第二については、敷地内の場所により津波高さの差が大きい。

(注:OPとは、小名浜港平均海面からの標高)

福島第一が運転を開始したのが、1971年から1979年、第二が1982年から1987年。単純に、地面の高さと津波高さが、全てを決したのではないはずだが、人間の考えることには、どこかで限界があるというか、原子力発電所であっても、これで大丈夫と考える所で妥協せざるを得なかったのだと思います。そりゃ、そうです。人間だから、どこかで手を打つ。一部の人だけが、それを分かっているのではなく、情報公開をして、批判を真摯に受け止めることにより、発展があるのだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 9日 (土)

菅首相と福島原発ベント遅れの関係

福島第一原子力発電所1~3号基のベント遅れの原因に関して、産経は、次のようなことを述べている。

MSN産経 4月9日 原発事故1カ月…水失った原子炉、崩れた「神話」

の、3ページ目です。

「午前7時には菅が、後にベント作業の妨げになったと批判された視察に到着する。東電には首相に放射能を浴びせないよう配慮するような余裕はなかった。電源喪失で東電は弁を開けたくても開けられなかったのだ。ベント開始は、午後2時30分。海江田の指示から10時間が経過していた。」

この記事からすると、電源喪失で弁が開かなかったのであり、首相の訪問が直接の原因ではない。ベント開始の時間は、経済産業省発表の12日14:30と一致する。

真実は、やがて作成し、発表される事故報告書を待ちたいと思う。これだけの重大事故であり、早い時期の暫定報告を含め相当多くの報告書が公表されるはずである。また、IAEAも報告書を出す。日本政府報告書のみならずIAEAが発表する報告書も読まねばならない。特にIAEA報告書は、世界に向けて、今後の原子力利用と政策について重要な指針を与えるものであり、多くの議論がなされていく基礎となる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

福島第一原子力発電所ベント遅れの他の可能性

一つ前のブログで、地震翌日の3月12日の朝に菅首相が福島第一原子力発電所をヘリコプターで視察したことが、ベント開始の遅れにつながった可能性について書いた。

他の可能性について、その後に思い当たったのが、住民避難を待ってベントが遅れた可能性である。ビデオニュース・ドットコムにすごい映像があり、4月3日に福島第一原子力発電所の30km、20km圏内に入り、最終的には原発から1.5kmの地点まで、行っているのです。次の映像です。

ビデオニュース・ドットコム スペシャルリポート (2011年04月06日) 原発避難区域は犬や牛の群れが闊歩する無法地帯に

こんな取材は、普通にはまねのできないことで、敬服します。この映像を見て、改めて気付いたのが、地震と津波による福島第一原子力発電所近辺の道路の被害です。通行できない道路があり、政府から避難指示が出ても、避難にも相当苦労をする状態であっただろうと思ったのです。その上、通信・連絡手段にも障害があったと思うし、発電所への外部電源も供給されていなかったのだから、周辺の地区は停電で、しかも夜。そして、交通信号も消えていた。厳しい状況であったと思います。

政府は、対象となる市町村長と知事に伝えたはず。その時に、ベントとそのベントによる放射能の放出をどの程度正確に伝えたか、不明ですが、受けた方としては、安全と聞かされていた原発から放射能を放出せざるを得ないような危険な状態に陥ったとの連絡であった。市町村長は、当然のこととして、ベントは全員避難後、少なくとも、住民を見捨てるようなことはできないとある一定の余裕は要求せざるを得なかったのではと思う。現地の道路が被害を受けていたことを含め、現地の状態や住民の気持ちは、誰よりも知っていると確信していたはず。

そのような結果、ベントが遅れた可能性があると思った。そりゃ、そうです。防災の日の避難訓練はあっても、原発放射能漏れ退避訓練なんて、なかったのだから。

参考までに、退避とベントについて、発表資料を見てみると、次のことが浮かんできた。

1) 住民避難

住民の避難状況について、経済産業省原子力安全・保安院のニュースリリースが少し述べている。それを纏めたのが、次の表です。

Fukushimangp20114a

3月12日の昼頃まで要したのだろと思います。5万人が一斉に移動するとなると、容易ではありません。本当に大変だっただろうと思います。

2) ベント

ベントが何時実施されたか、経済産業省原子力安全・保安院の発表には明確に書かれている部分を発見できなかった。しかし、ニュースリリースの中に、プラント関連パラメータと称する資料があり、地震被害情報(第32報)より古い分ではないと思うのですが、1号基のみ「12日14:30ベント開始」と記載がある。

そうなるとしんぶん赤旗の「10時17分 1号機ベント開始」と異なってくるし、「1時30分 枝野官房長官がベント(蒸気排出)指示」についても、経済産業省は触れていない。

そこで、東京電力福島第一原子力発電所のプレスリリースを見ると、この発表には、12日11時現在で1号基、2号基、3号基について「原子炉格納容器内の圧力を降下させる操作を現在実施しております。」と書いてある。「圧力を降下させる操作」とはベントのはず。そして、ベント実施の決定については、このプレスリリースが、「福島第一原子力発電所原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置の実施について」であり、これからベントを実施すると発表している。時間は、書かれていないが、次のプレスリリースが「午前4時現在」であるから、その前と思われる。

東京電力の発表としんぶん赤旗の記述は一致する。そうなると、経済産業省は真実を曲げていると思わざるを得なくなる。住民避難よりも、原子炉の安全性を優先したと非難されないために、真実を曲げたのであろうか?そうなると、東京電力は、原子炉の安全を確保することを経済産業省に妨害されたこととなる。そして、枝野氏の怒りが、理解できる。

実は、IAEAも”starting at 12 March 9:00 am local Japan time, they have started the preparation for the venting of the containment of the Unit 1 reactor at the Fukushima Daiichi plant through a controlled release of vapour”となっており、しんぶん赤旗と東京電力が正しいとしか思えない。そうなると、原子力安全・保安院が信じられなくなる。

やはり、最後には、原子力委員会に言いたい。その時の政権に任命されたとしても、国民のために身を挺して働く必要がある。首相や内閣に対し原子力に関連する行政について発言しなければいけない機関は原子力委員会である。必要な、正しい情報が公開されておらず、適切に公開されるべきである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 7日 (木)

福島第一原子力発電所事故の背景

福島第一原子力発電所事故が重大なことになっている背景には2つのことがあるように思えてならない。1つは、初動対応に不十分な点が無かったかという点と津波対策・電源対策の万全さは、どうであったかの点です。

福島原発ばかり書いていて、止めたいと思うのですが、次の朝日の記事を目にすると、やはり気になってしまった。

朝日 4月7日 電源喪失、認識の甘さ陳謝 保安院・安全委トップら

6日の衆院経済産業委員会で共産党吉井英勝衆院議員の質問に答えていうことで、しんぶん赤旗も見てみた。

しんぶん赤旗 4月7日 原発事故集中審議 吉井議員質問

1) 菅首相ヘリコプター訪問とベント開始の遅れは関係あり?

地震翌日の3月12日の朝に菅首相が福島第一原子力発電所をヘリコプターで行ったことが、私には、引っかかってならなかったのですが、上のしんぶん赤旗の記事の下半分ぐらいに11日と12日の政府首脳の行動等が時間軸で、書いてある。

その中の3月12日が次のようになっている。

1時20分 第1原発1号機・格納容器圧力異常上昇
1時30分 枝野官房長官がベント(蒸気排出)指示
2時30分ごろ 首相が福島原発視察を決定
5時54分 第2原発1、2号機・圧力抑制機能喪失
6時00分すぎ 枝野官房長官が東電に「どうしてベントがすすんでいないのか」
6時14分 菅首相が原発視察にヘリ出発
★首相、安全保安委員長が不在に
6時50分 経産相が東電に第1原発1、2号機原子炉格納容器内の圧力抑制を命令
7時45分 第2原発に原子力緊急事態宣言。避難・屋内退避指示
★10時間以上東電に命令せず
10時17分 1号機ベント開始

ベントとは、格納容器内のガスを外部に放出し、圧力を下げることであり、原子力発電所の写真で写っている煙突(厳密には煙を出さない排気筒)からフィルターを通して行う。格納容器内のガスは、通常放出している建屋内の空気より放射のレベルが高く、フィルターを通しても、やはり外部には放射能が排出されることとなる。

枝野官房長官がベントを12日の1時30分に指示したにも拘わらず、ベントの開始が9時間近く遅れた10時17分であった。この遅れは、極めて重大と考える。首相が、ヘリコプターで上空を飛ぶ時に、ベントがなされていれば、首相は被爆の危険性にさらされる。首相が、ベントを遅らせるように指示することはなかったと信じるが、首相が上空を飛ぶことから、それを思って誰かがベントの実施を躊躇した可能性はあるかも知れない。

そもそも、首相は1時30分の官房長官のベント決定を知っていた。むしろ、発表前に知らされ、承認をしていたはず。それなら、福島第一原子力発電所視察など、するべきでなかった。無能首相どころか、おじゃま虫首相かな?

ところで、ベントの遅れと緊急避難との関係では、3km圏避難、10km圏屋内退避指示が11日21時30分で、20km圏内避難指示が12日18時25分となっており、ベントの遅れには結びつかないはず。ベントを決断した直前のいきさつは、次の通りであり、1時30分のベント決定はうなずける。うなずけないのは、実施が、9時間近く遅れたことである。

19時03分 第1原発に原子力緊急事態宣言
21時23分 第1原発半径3キロ圏避難、10キロ圏屋内退避指示
22時00分 原子力安全・保安院「2号機炉心露出か燃料棒被覆管破損」の予測発表

参考に、IAEAが当時のことを伝えているFukushima Nuclear Accident Update Logは、次である。くどいようだが、電源車の記述もある。

11 March 2011, 21:10 UTC(日本時間12日 8時10分)
.......Mobile electricity supplies have arrived at the site. .....the officials have decided to vent the containment to lower the pressure.

12 March 2011, 06:30 UTC(日本時間12日15時30分)
......starting at 12 March 9:00 am local Japan time, they have started the preparation for the venting of the containment of the Unit 1 reactor at the Fukushima Daiichi plant through a controlled release of vapour

2) 津波対策・電源対策

不十分であったことは、間違いないと思います。しんぶん赤旗の記事は、吉井議員が原子力発電所の安全対策に関して質問を行った委員会に2010年5月26日の経済産業委員会と2006年3月1日の予算委員会があると書いている。そこで、この2つの委員会の議事録を読んでみると、鋭い感覚で指摘していると思った。参考に、議事録を「続きを読む」に入れておきます。時間があれば、目を通してみてください。

吉井議員には、衆議院議員などせずに、原子力委員になって欲しいとも思う。しかし、原子力委員は誠実に国民のために働ける人であればなれるのであり、やはり衆議院議員の方が、もっと国民のために働いてくれるかなと期待します。(おそらく、ここまで、突っこんでくれる人は、議員の中にはいないと思うから。)

続きを読む "福島第一原子力発電所事故の背景"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

低レベル放射性廃液の海洋放出から思う

福島第一原子力発電所における低レベル放射性廃液の海洋放出については、事前了解なしで実施されたと批判がある。

産経MSN 4月6日 汚染水放出で、与野党から政府に批判噴出 保安院「反省している」 実務者会合

排出された放射性物質の量が少量でも、意図しない事故による放射能排出ではなく、バルブを開けて、人為的に海洋に放出した。それ故に、事後報告では納得がいかないとするのは、当然です。しかし、この件については、原子力に関するガバナンス問題が隠れているように思う。

1) 海洋放出

経済産業省は4月4日発表 福島第一原子力発電所からの低レベル廃液の海洋放出についで、「標記事案に関し、東京電力(株)が別添の通り公表しましたので、お知らせします。」と発表した。(福島第一原子力発電所からの低レベル廃液の海洋放出について

東京電力のプレスリリース 福島第一原子力発電所からの低レベルの滞留水などの海洋放出については、「原子炉等規制法第64条1項に基づく措置として、準備が整い次第、海洋に放出することといたします。」となっている。

原子炉等規制法第64条1項には、「原子力事業者等・・は、・・・地震、火災その他の災害が起こつたことにより、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに、主務省令(・・・)で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。」となっている。そうであれば、東京電力は、法に従い実施する義務を有するのであり、選択の余地はないと思う。勿論、評価や解釈が入るのであり、常に原子力安全・保安院をはじめ関係者と相談をしているはず。

IAEAのFukushima Nucelar Accident Update Log 4 April 2011を見ると”NISA have advised the IAEA that TEPCO have been given permission by the Government of Japan to discharge 10 000 ton of low level contaminated water from their radioactive waste treatment facility to the sea.”と書いてある。NISAとは、Nuclear and Indstrial Safety Agencyの略称で、原子力安全・保安院のことである。IAEAは、原子力安全・保安院を主語として、文章を作っている。

経済産業省の4月4日発表にも放射性廃棄物集中処理設備(集中環境施設)の概要が添付されており、この原子力安全・保安院の文書には「大きな危険を回避するためにやむを得ないものと判断した。」と書いてある。

2) 責任者・主体者

1)にリンクを掲げた4つの文書を読んで、1番目の「東京電力(株)が別添の通り公表」という表現は、責任放棄、義務不履行と思ってしまう。

ここに福島第一原子力発電所に関する3月11日19:03に発表された原子力緊急事態宣言があるが、この結果、原子力災害対策本部が設置されている。首相が本部長であるが、実務を取り仕切る責任者がいなければ、形骸化された意味のない組織になっている可能性がある。

原子力緊急事態宣言が出されている時に、1)の状態でよいとは思えない。政府が実務を取り仕切れる人やチームを選任し、お願いして、対処すべきである。緊急事態であり、民間企業で対応するよりは、政府が乗り出して、関係者との調整をする必要があると判断したから原子力緊急事態宣言をしたと理解する。例えば、民間企業が、地方自治体にあるいは漁協に通告して、承認を得ようとしても、そのような権利を保有しているのか、あるいは保有すべきかの問題があるはず。韓国政府に連絡するなら、それは政府の仕事である。

ところが、経済産業省は、この文書を4月5日付けで東京電力に出して、影響を与える可能性のある地方公共団体に事前の通報連絡をすることを要求している。連絡であって、了解を取れと書いてはいないと経済産業省は述べるかも知れないが、もし、そうなら、感覚がずれていると思う。

この4月6日官房長官記者発表には、東京電力という言葉は入っていない。前任者は、尖閣問題での船長釈放に関して海上保安庁と述べて、非難を受けたが、経済産業省は、未だそのレベルのようである。

3) 実態

推測になるが、原子力安全・保安院に止まらず、少なくとも大臣、可能性としては原子力災害対策本部長である首相にも話は事前に伝わっていたと思う。何故なら、水バランスなんて簡単に計算できる。各タンクの容量も貯水量も水の発生量も、相当正確に把握できているはず。従い、ある程度前に事態が予測でき、東京電力は原子力安全・保安院に話をしたはず。その結果は、政府内部に伝えられたはずである。

低レベル放射性廃液を約1万トン(滞留水)と低レベルの地下水(延べ1,500トン)を合計12,000トンとして排出された放射能の量を推定してみる。低レベルの具体的な数字が、見あたらないが、この日経の報道によれば基準の約100倍とある。そこで、基準をヨウ素131で4/10^2Bq/cm3の原子炉規則の濃度の100倍とする。基準の100倍とは、どの程度かというと、リットルに換算すると約4,000Bq/lである。即ち、飲料水の限度300Bq/kgの約10倍であり、12,000トンは大量ではあるが、海水中で拡散することを考えると、幼児に対する飲料水限度100Bq/kgより小さな値になるような気もする。海水は飲んだりしないが、その海水中の魚を食べる訳で、蓄積等複雑で、この辺りで深入りは止める。

むしろ、2号基で4月2日から4月6日まで取水口付近の亀裂から流れ出ていた高濃度の放射性物質で汚染された水と比べることとする。こちらの高濃度汚染水は、2号基のスクリーン脇ケーブルピットの水の濃度5.2x10^6Bq/cm3と同じであると仮定し、48時間海に流れ出たとする。一方、流量が不明であるが、47ニュース 4月6日 原発、高濃度汚染水の流出止まる 爆発予防へ窒素ガス注入の写真からして、10リットル/秒程度と仮定する。この前提で計算すると、放出した水からの放射能は1.8x10^12Bqである。一方、低レベル放射性廃液は12,000トンの4,000Bq/lでは、4.8x10^10である。即ち量としては、40分の1程度となる。

リスクを考えれば、低レベル放射性廃液の海洋放出は、妥当な判断であったと思う。しかし、放出しない場合のリスクを含め、数字を示しての説明がないのは、不満である。このような情報開示をしない状態で、原子力を推進してよいのか疑問を持つ。原子力を直ちに中止することは、困難と思うし、適切に利用してよいと思う。しかし、それは、適切な情報開示なしでは、絶対に困る。

原子力委員会は、無能な委員会と思える。原子力政策の立案とは、管理組織や制度を含めて立案することである。原子力工学の中に止まってはいけない。現在の事故が発生している中で、原子力委員会は何をしているか?無能な委員会と思う。本来であれば、もっと出てきてよいと思うが、全く顔を出さず、隠れているように思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 6日 (水)

ふるさと納税による地震義援金寄附(補足と訂正)

3月29日にふるさと納税で地震義援金募金を寄附をするを書いたのですが、誤りがあり、その訂正をすると共に、補足をします。

1) 間違い

「納付する税額を超えて寄附金を支出しても、自己負担」と書いたが、納付する年の住民税の20%が住民税の寄附金税額控除の上限であり、「納付する住民税額の20%を超えて寄附金を支出しても、自己負担」に訂正します。

2) ふるさと納税の税軽減額

計算結果をグラフにしてみました。

20113a_2 

所得金額が多い人ほど、税額も多いので、ふるさと納税で寄附金を支出した際も、その軽減額は大きい。税の軽減は、住民税だけではなく所得税でも受けられる。上のグラフは、住民税と所得税の合計額で作成しています。年間給与額が1100万円の人の場合は、ふるさと納税による寄附金額が10万円の付近でカーブが折れ曲がります。10万円以内であれば、ほぼその寄附金額に近い金額の税が軽減され、10万円以上になると、それより超える金額はカーブが寝て寄附金額の約30%の税軽減となる。

赤の破線は、ふるさと納税の適用がない、すなわち地方自治体に対する寄附金ではないが住民税の寄附金税額控除の対象となる寄附金を支出した場合の、税の軽減額です。これは、日赤義援金とふるさと納税で紹介した日赤義援金があてはまります。黒の破線は、所得税の軽減にはなるが、住民税の軽減にはならない寄附金の場合です。これには、例えば、報道機関が呼びかけている義援金が、そうです。

3) 5千円以内の負担となる上限金額

2)で、1100万円の人の場合は、ふるさと納税による寄附金額が10万円以内であれば、ほぼその寄附金額に近い金額の税が軽減されると書いた。住民税の5千円に所得税の所得控除による軽減額が加わり、実質負担額は5千円より、少し減る。

そこで、このような5千円以内の実質負担となるふるさと納税寄附金額の参考グラフを作成したのが、次です。

20113b

なお、このグラフの金額を超えて寄附をしないようにと呼びかける意図はありません。100億円の寄附を発表されておられる方もいるし、寄附は、その人の自由です。勿論、その逆に、寄附を強制することも、してはならないと考えます。対価としてでない場合でも、金銭の強制的な拠出を要請できるのは税です。その意味で、寄附ではなく、復興増税を提唱するのも一つの考え方です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 5日 (火)

停電時の燃料電池(および夏の停電参考予想)

家庭用の太陽光発電については、1500W以下は使用可能であると3月16日に太陽光発電は、計画停電に有効かで書いたのですが、エネファームのような家庭用燃料電池は、どうであるかも触れておく必要があると思いました。

1) 家庭用燃料電池の停電時対応

答えは、極めて簡単で「使用できません」が正解です。この家庭用燃料電池(エネファーム)設置・導入 Q&Aを見てください。

停電あるいは断水、どちらか一方が生じると運転できません。停電の場合の一つの理由は、燃料電池が、制御他に電気を利用しているはず。それ故、停電時に運転できないと思います。もう一つ、燃料電池として安定して安全に作動させておく必要があり、そのためには、ある一定量の電気を発生する必要がある。電力会社の電線とつながっていれば、電力会社との電気のやりとりで、安定的に燃料電池を運転することができるが、停電とは、どこかで電気回路が切れた状態であり、安定運転ができない場合には、運転しないことが望ましい。

断水については、余談になるかも知れないが、家庭用燃料電池が、都市ガス等に含まれている水素を使っての燃料電池である。都市ガスはメタンガス主体の炭化水素であり、炭素も含まれている。水素を取り出す反応が発熱反応であり、この熱で温水を作り出すようにしている。温水は、暖める相手の水が存在して、温水を作れるのであり、断水では温水が作れない。

実際には、停電あるいは断水時には、安全装置が働いて、家庭用燃料電池は動かないと思います。無理して働かせると、危険です。メーカが、自らのQ&Aで、使用できないと言っているので、動こくことを期待するのが無理と考えます。

燃料電池には、ガス、電気、水道が必要である。ハイテク機器だから当然のこと。災害に強いのは、ローテクの薪炭。さらに火打ち石でもあれば、完璧なのでしょうか。

2) 東京電力停電予想

私は、梅雨明けまで、停電はないと思います。3月22日の東京電力需給見通しの予想で、4月の中旬には5,000MWは回復し、40,000MWの供給力になるのではないかと書いたのですが、見事に外れました。4月4日の東京電力プレスリリースは、4月5日の供給力を40,000MWの予定と発表しました。私の予想自身、無責任予想とは言ったものの、多少はコンサバにした面はあるが、やはり以外と早かったと思います。私は、40,000MWにするには、広野火力、常陸那珂火力は無理なるも、鹿島火力2、3、5、6号機のどれかは復旧する必要があると思っていましたから。

いずれにせよ、停電がないのはよいことで、停電でなければ燃料電池も発電できます。太陽光からの余剰電力も供給される。そして、安全面の機器、設備が稼働するので、安心できます。

なお、3月27日以降の東京電力の需要の1日の推移グラフを書いてみました。(4月2日のデータは取れていません。)

Tepco20113i

3月27日以降で計画停電があったのは、3月28日の9:20頃~13:00頃まで第2グループ約155万軒のみであった。グラフで赤線の部分です。4月4日を黒線で表示したのですが、いずれにせよ40,000MWあれば、大丈夫と予想できる。

今後については、3月22日にも掲げた下の2010年の最大電力のグラフを参照下さい。7月になるまでは、減少傾向なので、よほどのことがない限り計画停電にはならないと予想します。夏については、気温と取り組み方次第だと思います。余り、計画停電と騒がないで、理性的に取り組むべきと思います。東京電力が騒いでいるのか、あるいは政府か、政治家か、しっぽを掴めていませんが。

そう言えば、下のグラフで原子力は最大を記録した2010年7月で10,702MWでした。全体が59,988MWであったので、17.8%でした。別の観点では、柏崎刈羽原子力発電所が8,212MWなので、他の火力発電所が稼働できれば、それほど大きな電力供給力不足になるとは思えません。大変だと騒ぐ人達は、数字を示してくれないので、困った人達ですが、皆で苦労をして工夫をすれば、それほど大変ではないと私には思えます。

Tepco20113b

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 4日 (月)

電力供給は民間企業による市場経済を貫け

4月1日付で日経Web版は、次の記事を掲載していた。

東電「一時国有化」論、市場で独り歩き

国・東電は市場の不安鎮め電力事業守れ

毎日は、次の記事を掲載していた。

東京電力:政府管理へ 公的資金を投入

福島第一原子力発電所の事故に起因しての損害賠償問題に端を発するが、国営化をして何の解決にもならないし、得る物は何もないと思うので書いてみます。

1) 東京電力の賠償義務

3月31日のブログに書いたように、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)第3条は、一般的な賠償義務である民法709条の「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」より広い無過失責任の賠償義務を定めている。例えば、イレッサ裁判の東京地裁判決はアストラゼネカと政府に賠償義務があると判断したが、その理由は添付文書等により副作用について十分な警告をする注意義務についての過失があったとしたからである。(イレッサ裁判東京地裁判決そのものについての評価は、今回のテーマではないので、別とする。)

東京電力に過失があったかどうかは、今後の検証によるのであるが、源賠法は無過失であっても、賠償義務があるとしている。賠償をするために国営化というのは、納得がいかない。責任追及は、すればよいが、その前に国営化というのは、論理的におかしいし、間違ったことをする可能性がある。原子力発電所は、厳しい政府の管理下にある。国家規格・基準に合致して、建設・運転されているとして、その規格・基準が不合理部分があった時にも原賠法は、東京電力に全ての賠償義務があるとしている。国会で定めた法であり、法に従って解決せねばならないが、同時に同じ源賠法第3条の但し書きと第16条の政府援助義務を正しく運用し、国民の利益になるようにしなければならない。

2) 民間事業者による電力供給

日本では、明治なって電気産業が始まり、民間事業として電気供給事業が始まった。しかし、満州事変・五・一五事件・二・二六事件・日中戦争と戦争への流れの中で、政府による人・物の統制運用を可能とする国家総動員法が1938年(昭和13年)に制定され、電力事業の国家統制についても同時期に「電力管理法」・「日本発送電株式会社法」・「電力管理に伴う社債処理に関する法律案」が制定された。そして、1939年に国営会社の日本発送電株式会社が設立され発電設備と送電設備の接収が行われた。1941年8月には配電統制令が発布された。日本発送電は、戦後の電気事業再編政令による1951年の9電力会社(北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州)設立まで続いた。9電力会社は、設立から3月~20月を経て、株式上場会社となった。

ユニバーサルサービスが提供され続けるなら、国営企業や政府サービスにする理由はない。政府が事業計画を立て、料金を徴収して、サービスを提供すると、逆に非効率、コスト高の事業となり、利用者にとって不利になると思う。民間事業として成立しない分野であれば、政府の関与が必要であるが、市場競争による発展で社会に貢献する産業は、民間事業者による産業としなければならない。

例えば、日本は50KWで6000V以上の電力は自由化されている(沖縄は2000kW)。弱者への供給としてのユニバーサルサービスを確保せねばならないが、家庭用の100V-200Vも自由化すべきと考える。誰もが電力供給者を選択でき、電力供給者間の市場競争により最も合理的な投資が市場競争の結果として生まれる。そんな姿を目指して、電気事業法の改正が行われ、2000年の電気事業法改正があった。当初自由化電力は2000kWであったが、2004年に500kWに引き下げられ、2005年4月に50kWとなった。これと逆行した動きには、私は反対する。

例えば、日本には日本卸電力取引所が存在し、現実に取引がされている。

朝日新聞は、3月27日に「電力不足―計画節電へ政府は動け」と社説を出し、4月2日に電力使用制限令、ピークを抑制 冷房集中の昼間狙うと、電気事業法27条による経済産業大臣による電気の使用制限を報道している。ちなみに、27条による場合は、施行令第2条が500kW以上の受電電力の容量と規定している。自由化電力の大口を電気事業法27条で脅かして、需要抑制しようというのか理解に苦しむが、電力統制に私は反対する。

3) 原子力問題

東京電力に福島事故の賠償責任はあると考える。しかし、事故について、東京電力にのみ責任があるとは思わない。

例えば、毎日は次の記事を3月30日に掲載していた。

毎日 3月30日 福島第1原発:設計に弱さ GE元技術者が指摘

源賠法第4条は、製造物責任法の規定は適用しないとしている。GEに賠償を求めることはできない。また、「設計上の問題は、米原子力規制委員会の専門家も指摘し、GEは弁を取り付けて原子炉内の減圧を可能にし、格納容器を下から支える構造物の強度も改善。GEによると、福島第1原発にも反映された。」とある。それで、十分であったのかという問題も残っているが、日本政府の原子力安全委員会がこの対策で対応可能と判断したら、民間企業が、特別の理由が無くて、それ以上の対策をできるであろうか?人間の作った物である以上、欠陥は存在する。欠陥に気付いたとして、その対策は、どこまですべきか、その時に考え得る、これなら問題ないと判断できることを超えて要求することは困難である。

原子力委員会や原子力安全委員会及びその理事長や理事に責任はないのだろうか?今回の事故の詳細を明らかにして、事故に対する関与を調査すべきである。国家の原子力政策を実践しているのが電力会社という側面がある。電力会社に原子力を採用するか、しないかのオプションはなかったと思う。何故なら、規模が小さい沖縄電力を除く9電力の全てが保有・運転しているからである。原子力を採用しないという電力会社が1社でもあれば、電力会社の方針かも知れないが、この横並びは、政府が許認可権を武器に電力会社に強制した部分もあると疑う。現実は、双方の利害の一致であったのであろうが、そうであれば、電力会社のみに強くあたっても片手落ちのはず。

ところで、源賠法第3条、第4条で、賠償責任を原子炉の運転等に係る原子力事業者としたことから、政府も賠償責任から逃れたことになる。源賠法が制定された経緯の参考として、昭和34年3月11日の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案についての衆議院科学技術振興対策特別委員会でなされた満場一致の附帯決議が参考になるので、次に掲げます。

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案

原子力の研究開発を推進するためには、災害の予防とその補償が特にわが国の現実にかえりみて緊要である。従って、政府は最も速やかなる機会に左の各項の実現を期すべきである。
 一、原子炉に関する万一の災害に対し、その責任の所在を明確にし、民間保険の負担の限度を超える分については、国家の補償責任を明かにするため、立法その他必要な措置を講ずべきである。
 二、国家補償に関連して、大型実用原子炉の安全性に対しては、資料の公開、公聴会の開催等の手続を経て決定すべきである。併しながら、教育訓練用小型原子炉については、政府において、安全性等に関し国民の理解と協力を求むるよう措置を講じて原子力の研究、開発及び原子炉の設置を積極的に推進すべきである。
 三、国際原子力機関憲章の趣旨に基き、原子力災害の賠償については、国際的規模における保険プールの設定に努むべきである。
  右決議する。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »