福島第一原子力発電所ベント遅れの他の可能性
一つ前のブログで、地震翌日の3月12日の朝に菅首相が福島第一原子力発電所をヘリコプターで視察したことが、ベント開始の遅れにつながった可能性について書いた。
他の可能性について、その後に思い当たったのが、住民避難を待ってベントが遅れた可能性である。ビデオニュース・ドットコムにすごい映像があり、4月3日に福島第一原子力発電所の30km、20km圏内に入り、最終的には原発から1.5kmの地点まで、行っているのです。次の映像です。
ビデオニュース・ドットコム スペシャルリポート (2011年04月06日) 原発避難区域は犬や牛の群れが闊歩する無法地帯に
こんな取材は、普通にはまねのできないことで、敬服します。この映像を見て、改めて気付いたのが、地震と津波による福島第一原子力発電所近辺の道路の被害です。通行できない道路があり、政府から避難指示が出ても、避難にも相当苦労をする状態であっただろうと思ったのです。その上、通信・連絡手段にも障害があったと思うし、発電所への外部電源も供給されていなかったのだから、周辺の地区は停電で、しかも夜。そして、交通信号も消えていた。厳しい状況であったと思います。
政府は、対象となる市町村長と知事に伝えたはず。その時に、ベントとそのベントによる放射能の放出をどの程度正確に伝えたか、不明ですが、受けた方としては、安全と聞かされていた原発から放射能を放出せざるを得ないような危険な状態に陥ったとの連絡であった。市町村長は、当然のこととして、ベントは全員避難後、少なくとも、住民を見捨てるようなことはできないとある一定の余裕は要求せざるを得なかったのではと思う。現地の道路が被害を受けていたことを含め、現地の状態や住民の気持ちは、誰よりも知っていると確信していたはず。
そのような結果、ベントが遅れた可能性があると思った。そりゃ、そうです。防災の日の避難訓練はあっても、原発放射能漏れ退避訓練なんて、なかったのだから。
参考までに、退避とベントについて、発表資料を見てみると、次のことが浮かんできた。
1) 住民避難
住民の避難状況について、経済産業省原子力安全・保安院のニュースリリースが少し述べている。それを纏めたのが、次の表です。
3月12日の昼頃まで要したのだろと思います。5万人が一斉に移動するとなると、容易ではありません。本当に大変だっただろうと思います。
2) ベント
ベントが何時実施されたか、経済産業省原子力安全・保安院の発表には明確に書かれている部分を発見できなかった。しかし、ニュースリリースの中に、プラント関連パラメータと称する資料があり、地震被害情報(第32報)より古い分ではないと思うのですが、1号基のみ「12日14:30ベント開始」と記載がある。
そうなるとしんぶん赤旗の「10時17分 1号機ベント開始」と異なってくるし、「1時30分 枝野官房長官がベント(蒸気排出)指示」についても、経済産業省は触れていない。
そこで、東京電力福島第一原子力発電所のプレスリリースを見ると、この発表には、12日11時現在で1号基、2号基、3号基について「原子炉格納容器内の圧力を降下させる操作を現在実施しております。」と書いてある。「圧力を降下させる操作」とはベントのはず。そして、ベント実施の決定については、このプレスリリースが、「福島第一原子力発電所原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置の実施について」であり、これからベントを実施すると発表している。時間は、書かれていないが、次のプレスリリースが「午前4時現在」であるから、その前と思われる。
東京電力の発表としんぶん赤旗の記述は一致する。そうなると、経済産業省は真実を曲げていると思わざるを得なくなる。住民避難よりも、原子炉の安全性を優先したと非難されないために、真実を曲げたのであろうか?そうなると、東京電力は、原子炉の安全を確保することを経済産業省に妨害されたこととなる。そして、枝野氏の怒りが、理解できる。
実は、IAEAも”starting at 12 March 9:00 am local Japan time, they have started the preparation for the venting of the containment of the Unit 1 reactor at the Fukushima Daiichi plant through a controlled release of vapour”となっており、しんぶん赤旗と東京電力が正しいとしか思えない。そうなると、原子力安全・保安院が信じられなくなる。
やはり、最後には、原子力委員会に言いたい。その時の政権に任命されたとしても、国民のために身を挺して働く必要がある。首相や内閣に対し原子力に関連する行政について発言しなければいけない機関は原子力委員会である。必要な、正しい情報が公開されておらず、適切に公開されるべきである。
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