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2011年4月24日 (日)

東日本大震災復旧・復興のための補正予算

こんな補正予算案でよいのだろうかと思います。1次補正予算案の閣議決定ニュースと財務省の予算案のWebです。

日経 4月22日 1次補正予算案、震災復旧へまず4兆円 閣議決定

財務省 平成23年度補正予算フレーム

復興には政府予算からの支出が必要であるとして、何でもよいから提案している案なのだと思います。即ち、4兆円のうち2兆5千億円を基礎年金国庫負担の年金特別会計へ繰入の減額で賄っている。それでは、基礎年金国庫負担の年金特別会計への繰入は、どうするか不明です。引き算が必要だから、持ってきたというだけ。

現在、税と社会保障改革の案を検討しており、その中で、きちんと見直すというメッセージを明確に出すべきです。さもなくば、国民を欺すことになる。与謝野馨経済財政担当相は、そのようなことを述べたと報道があるが、税と社会保障改革の実施に関して同時に閣議決定をするか、改革案が不明状態では困難であるなら、首相発表で行って基本方針は明確にしておくべきです。

日経 4月23日 与謝野氏「税・社会保障改革、予定通り6月に結論」

日経記事には「財源は財政規律を守る観点から国債を増発せず、民主党の目玉施策を見直した。当初予算を3兆7000億円減らして捻出した。」とあるが、基礎年金の全額国庫負担は、民主党の基本政策であったはず。ODA予算を減額するというのも、何故ここでODAなのか、全く不明。弱い途上国には、文句を言わせないみたいに感じます。

これから先は、私のつぶやきです。

1) 2004年(平成16年)

2004年6月の国民年金法の一部改正(法律第104号)で、保険料の値上げと年金支給開始年齢の引き上げが決まった。保険料の値上げは、国民年金で月額13,300円から段階的に16,900円(2017年)へ27%アップ。厚生年金は13.58%から18.3%(2017年)へと35%のアップ。そして、年金の支給開始年齢は60歳から65歳へと引き上げられた。(65歳からの完全実施は、2025年度から)年金給付額については、政府は「老後生活の基本部分を支える給付水準を確保します。」と説明しているが、本当の答えは給付金額の据え置きです。

100年安心という誇大広告をしても、国民を欺し、欺く必要に迫られていた。何故なら、寿命が延び、保険料収入が増加しない一方で給付額は大幅増加が見込まれ、年金を支払える見込みが立たなくなったからです。しかし、財政破綻を防いだとも言えます。保険料を高くして、給付金額を据え置いたら、国民にとって魅力がなくなる。強制加盟の年金として制度を維持するとしても、給付(リターン)との関係で将来の楽しみとして払える保険料(投資)にする必要がある。そこで、保険料の1/2国庫負担を2004年6月の国民年金法改正で定めたのです。(国民年金法第85条)

但し、実施時期については、附則15条の「基礎年金については、平成十七年度及び平成十八年度において、我が国の経済社会の動向を踏まえつつ、所要の税制上の措置を講じた上で、別に法律で定めるところにより、国庫負担の割合を適切な水準へ引き上げるものとする。」のように複雑であった。

2) 2009年改正による1/2国庫負担の実現

民主党が勝利した衆議院選挙が2009年8月31日であり、その直前の6月に麻生内閣の時にやっと2009年度から1/2国庫負担を実現する国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成21年法律第62号)が成立した。但し、1/2の国庫負担が定められたのは、2009年度と2010年度のみで、財源は、財政投融資特別会計からの繰入金活用であった。なお、2009年の法改正は、衆議院で可決、参議院で否決、そして衆議院で2/3以上の再可決で成立した。自公与党の民主野党でのねじれ国会なるも、衆議院2/3以上を与党が確保していた。

3) 2011年度の対応(東日本大震災前)

2011年度については、財源が確保されておらず、最終的には次の財源を使うことで、基礎年金国庫負担1/2を保った。

・(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構特例業務勘定の利益剰余金(1.2 兆円)
・財政投融資特別会計財政融資資金勘定の積立金・剰余金(1.1 兆円)
・外国為替資金特別会計の剰余金(進行年度分:0.2 兆円)

4) 現状

どうなるのでしょうか?工面した2.5兆円をあっさりと震災復興に振り向けました。結果は、年金保険料の増額か、年金給付額の減額か、どちらか、あるいは両方になります。奥の手の、増税もあります。

実は、1/2国庫負担を実現しても、ヤバイのです。2008年度について、単年度収支を国民年金、厚生年金、共済組合を合計した公的年金合計で、保険料収入28.8兆円と国庫負担金からの収入8.0兆円に対して、年金給付支出は46.0兆円です。現実から目をそらせて、都合のよい空想を真実だと思っていたら、年金についても近い将来に津波被害と原発事故が再現される。

与謝野さんって、まだ誠実に事故を防ごうとして戦っておられるのだなと思います。

最後に、「続きを読む」に2009年国民年金法等の一部改正の附則第3条(検討)の条文を掲げておきます。附帯決議でなく、附則です。法の一部です。これについて、国会議員も総理も大臣も役人も、この附則を遂行する義務を有しています。

法律第百四号(平一六・六・一一)

国民年金法等の一部を改正する法律 附則第3条

(検討)

第三条 政府は、社会保障制度に関する国会の審議を踏まえ、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行いつつ、これとの整合を図り、公的年金制度について必要な見直しを行うものとする。

2 前項の公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行うものとする。

3 短時間労働者に対する厚生年金保険法の適用については、就業形態の多様化の進展を踏まえ、被用者としての年金保障を充実する観点及び企業間における負担の公平を図る観点から、社会経済の状況、短時間労働者が多く就業する企業への影響、事務手続の効率性、短時間労働者の意識、就業の実態及び雇用への影響並びに他の社会保障制度及び雇用に関する施策その他の施策との整合性に配慮しつつ、企業及び被用者の雇用形態の選択にできる限り中立的な仕組みとなるよう、この法律の施行後五年を目途として、総合的に検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるものとする。

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