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2011年6月28日 (火)

B型肝炎被害者救済増税

B型肝炎被害者の救済には増税しか手段がないと思うが、日経は次の記事を掲載していた。

日経 6月25日 肝炎和解、すぐ増税は筋違い

1) 誤魔化しは許せない

日経記事は、「是正を怠った旧厚生省幹部、実際に予防接種を手がけた医療界や医師などが、まず責めを負うのが筋だ。」と述べている。その主張は、正しいと思える。 しかし、実効性には困難があると思う。責めを負うべきだとする人や団体に、損害賠償訴訟を求めて、裁判で勝てるだろうか?日経が原因負担者であるとする厚生省幹部にしても、その当時の政策の妥当性についての反論が必ずあるはず。不毛の争いと思える。予防接種を実施した医師にしても、厚生省の指示や見解に従って、実施したのであり、責任はないとの主張をすると思う。

「施設や官舎を売ったり、必要性が薄くなった事業をやめたり」とも言うが、これもB型肝炎問題とは関係なく既に取り組み済みと思う。事業仕分けもあったし、増税前の税源確保は、むしろ、民主党の公約であったはず。実効性のない絵空事を並べるのは、よくない。

原発事故で「一義的責任は東電にあり」と述べているのと似通っていると思う。

2) 情報公開が最も重要

原発事故で現政権は独裁と情報非公開を選んでいるが、同じことをB型肝炎被害者救済でも実施しようとしている。情報公開をして増税する以外に方法はないにも拘わらず、責任逃れと選挙での不人気を避けるようとし、逆に、国を破綻させ、国民を将来の大増税に巻き込もうとするように思える。私が、調べた結果でも、次のように複雑であり、十分に説明・解明して欲しい。

B型肝炎ウィルスは、2010年10月20日のどうするB型肝炎訴訟に書いたように、1973年(昭和48年)に発見された。一方、B型肝炎被害者救済の対象と推計されている人達(日経報道では45万人)は、1973年より以前に予防接種を受けた人が大部分と思います。複雑です。

A) 1948年予防接種法制定

1948年7月以前には、国会賠償を行うべき被害者は存在しない。何故なら、予防接種がなければ、感染もないからです。B型肝炎訴訟北海道弁護団も、提訴の条件として、「集団予防接種を昭和23年7月1日以降に受けていること」をあげている。

B) B型肝炎ウィルスの発見は、それほど古くない

このCleveland ClinicのWebには、”Hepatitis B was first discovered in 1963 by Dr. Baruch Blumberg and colleagues, who identified a protein (the “Australia antigen” that reacted to antibodies from patients with hemophilia and leukemia. The association of this protein with infectious hepatitis was discovered 3 years later by several investigators, and the virus was specifically seen by electron microscopy in 1970.”とあり、抗原が初めて発見されたのが1963年であり、ウィルスが電子顕微鏡により観察されたのは1970年である。

C) 予防接種個人毎注射器の使用

予防接種実施規則3条2項「注射筒、注射針、多圧針及び経口投与器具は、被接種者ごとに取り換えなければならない。」の条文が追加されたのは、何時であったのか。この厚生省令は、1963年に制定され、3条は、1964年厚令一七、1970年厚令四四、1976年厚令四三、1979年厚令四五、1988年厚令二五で改正された。それぞれの改正の内容については、調べ上げることが私にはできていない。

5人に対する損害賠償を命じた2006年6月16日の最高裁判所の判決では、連続使用について、北海道の状況を、「1969年、1970年頃以降は、集団BCG接種については管針法による1人1管針の方法が大勢を占めていたが、集団ツベルクリン反応検査については、注射針、注射筒とも連続使用されており、その他の集団予防接種については、注射針は1人ごとに取り替えられたものの、注射筒、種痘針等は連続使用されていた。1969年、1970年頃以前では、注射針、注射筒、種痘における種痘針、乱刺針とも、1人ごとに取り替えられずに連続使用されていた。また、一人の原告の集団予防接種では、集団BCG接種では1人ごとに管針が取り替えられたが、集団ツベルクリン反応検査では注射針は1人ごとに取り替えられたものの、注射筒については連続使用されていた。」のように述べている。

私が、調査した範囲において、注射針と注射筒の被接種者ごとに取り替を指示した文書は、この昭和六三年一月二七日 健医結発第六号・健医感発第三号という1988年の厚生省通達である。この頃から、予防接種で、使い捨て針の使用が始まったようである。

D) 予防接種のリスクと効用

2006年6月16日の最高裁判所の判決は、「昭和23年厚生省告示第95号において、注射針の消毒は必ず被接種者1人ごと」とか「昭和25年厚生省告示第39号において、1人ごとの注射針の取替」とか述べているが、基となる厚生省告示を私は探し当てることができていない。逆に、40年も経過した通達がC)に掲げた通達であり、これを読む限りでは、そんな昔に、被接種者1人ごと述べているように思えない。

昭和23年、昭和25年の告示を見せて欲しい。集団予防接種は、厚生省であったかも知れないが、学校行事として強制的に実施された可能性があると思う。そうであれば、文部省、地方自治体、学校法人、校長、教師の責任は、どうするのかと問いたい。私の感覚であれば、そのような重要な通達は、教育関係者にも出される。

ある時期まで、日本人の寿命は短く、多くの人が肺結核で亡くなった。予防接種法が制定された1948年当時と今とで疾病や伝染病に関する感じ方、感覚、考え方は、相当違ったと思う。予防接種を実施できるなら、全員にであり、感染リスクは、ほとんど考慮になかったと思う。冒頭の日経の記事に反発を覚えたのは、そのような面を無視しているように思えたことがある。リスクは、最高裁が述べる頃から認識されていたのであろうが、どの程度であったのか。

冷静に、予防接種とそのリスク、そして、我々としての取り組み方について教えて欲しいと思う。

E) B型肝炎の他の感染ルート

B型肝炎は、血液や体液により感染する。このWHOのHepatitis B Fact sheet N°204 は、”In many developed countries (e.g. those in western Europe and North America), patterns of transmission are different than those mentioned above. Today, the majority of infections in these countries are transmitted during young adulthood by sexual activity and injecting drug use. HBV is a major infectious occupational hazard of health workers.”と述べており、先進国(欧米)では、性行為、注射薬物と医療者の医療中の事故による感染が多いとしている。

いずれにせよ、B型肝炎ウィルスは、HIVよいも50倍から100倍感染力が強いのである。日本での感染の実態は、どうであるのか?

3) 結論

予防接種によるB型肝炎被害者には、補償をすべきである。何故なら、集団予防接種により多くの人は伝染病から逃れることができたのであるから。集団予防接種に伴う、リスク・コストであったと考える。予防接種の効用により疾病にならなかった人は、予防接種が原因でB型肝炎になった人に補償をすべきである。

国民の多くが効用を受けたのであるから、税金により補償をするのは、当然と考える。消費税、所得税、法人税、相続税の全てを増税するのが正しいと思う。東日本大震災の復興資金、年金、医療保険の現状を考えれば、消費税20%-30%は、もしからしたら当然かも知れないと思う。真実を見つめないで、空想を見ていると、実は、何年かして、日本政府の財政破綻が生じ、その結果、IMF救済になり、はるかに高い税の制度を実施しなければならないかも知れない。

不透明性が多すぎて、何が正しいのか、考えられなくなる。正しい情報開示が、なされるべきで、こんな悪い内閣は欲しくない。せめて、官僚の反乱で、情報を開示して欲しい。政府財政についても、同様である。

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2011年6月26日 (日)

回らない風力発電風車

朝日新聞の6月25日夕刊に次の記事があった。(Webでは、見つけることができなかったので、記事のイメージを掲載する。クリックすると拡大するが、全文は新聞を見てください。)

Asahiwindpower2011625 

自治体設置の風力発電が稼働していないことは、関係者には、以前から知れ渡っていた。政府(国)から補助金がもらえる、過疎のムラに観光(人寄せ)のモニュメントができると、飛びつく地方自治体があったようです。そして、これに発電機を売る業者が、宣伝(接待)攻勢をして、時には保安林解除までして、建設する。山の尾根上なんて、風が強くて、風力発電には魅力的であるが、景観上、自然保護上、災害防止上、下手な開発は、マイナスの方が大きいが、自治体が事業主であると、審査が甘くなるし、そもそも、風力発電は、つい最近まで環境アセスメントも不要であった。建設には、トラックが必要で、山林を壊して、建設のための道路が必要な場合もあるのだが。

風力発電のビジネスはと言うと、新エネルギー・再生可能エネルギー(自然エネルギーというと、水力や地熱も入り、複雑なので)の中で、唯一経済的に成立する発電方式になったと言うべきか、なりつつあると言うべきか、そのような状態です。何故、風力が経済優位になったのかは、大型風車が実用化したからです。例えば、このページは三菱重工業の「風車の大型化」を説明しているが、大型化の激しさがよく分かります。

大型化によって経済性をあげたと言えるし、世界における激しい競争の結果、これほどまでに大型化が進んだとも言える。政府補助があったからと言うのではなく、風車メーカの激しい競争結果と言える部分が大きい。当然、小型風車は、競争力を全く失うし、修理品の調達さえ容易でなくなる。自治体風力発電が、稼働しないのは当然の結果です。その顛末は、税金の無駄遣いであり、その自治体の行政サービスの低下にもなる。撤去すれば、政府補助金の返還と撤去費が必要で、どうすることもできない。

政府や地方自治体がすべきことは、事業ではなく、正常に機能するためのルール作りであるはず。実は、そのルール作りが大変であり、ムダを少なくするには、ルール作りのために予算を投入すべきと考えます。私も、コンサルタントであり、依頼があれば、ルール作りの為に、懸命に働きます。政治家は、選挙の為に仕事をする傾向にあるが、官僚は、国民のためのルール作りに奮闘すべきと考えます。私自身は、風力発電の拡大に賛成します。但し、むやみに拡大することには反対するし、必要・十分な配慮をすべきです。例えば、ここに東北電力の平成22年度風力発電募集要項に関わる「系統アクセス検討 申込みの手引き」があるが、風力は発生エネルギーが変動し、その電力系統への影響も考慮する必要がある。景観影響を含め、自然影響、社会・生活影響も考えねばならない。

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2011年6月25日 (土)

岩手、宮城、福島の自治体病院

東日本大震災の被害は極めて大きく、特に岩手、宮城、福島の3県の被害は大きかった。

このブログで、過去に自治体病院のデータを書いたが、今回は、岩手、宮城、福島の3県に絞り、総務省自治財政局の地方公営企業年鑑の病院事業に関する一部のデータを2007年度、2008年度と2009年度の3年間について記載する。地方公営企業年鑑は、ここにあります。

東日本大震災は、医療崩壊が叫ばれている中での震災であり、過疎化と高齢化も進んでいた。そして、特に東北地方は、震災の前から、その傾向が強かった地域と言える。自治体病院が、これからどのようになるか、どのように震災から復興していくか、被災地での医療は、どのようになっていくか、そんなことを記録することも東日本大震災が発生した今に生きる我々の使命である気がする。

ブログのコメント欄に多くの人が、情報や意見を書き込み、震災と医療に関する記録を残す場を提供することに役立つのであれば、嬉しい限りである。

なお、本ブログ・ページへの書き込み欄は、全般的な事項とし、個別の病院・医療機関については、個別のページを設けたので、個別のページへの書き込みをお願いします。多くの人がコメントを書いて下さることを期待します。

以下が、岩手、宮城、福島の3県の自治体病院のリストであり、該当する個別ページの箇所をクリックすると個別のページに飛びます。(未だ、工事中の個別ページあり。)

個別ページに記載したのは各病院の病床数合計、看護の基準、全職員数、医師数、看護師数、1日平均入院患者数、1日平均外来患者数、総収益(百万円)、医業収益(百万円)、総費用(百万円)、医業費用(百万円)、純利益(純損失)(百万円)、繰越累積損益(百万円)、他会計繰入金(百万円)です。

この中で、他会計繰入金について補足すると、医業収益に含まれている救急医療、精神科病院、リハビリテーション医療などの不採算医療及び周産期医療などの高度・特殊医療に対する繰入金、そして医業外収益に含まれている企業債償還金及び企業債を充当しない建設改良費に対する繰入金他があると理解する。ほとんどの病院は、赤字経営で累積損失を抱えているのが実態です。東日本大震災で、経営は一層悪くなるはず。地方自治体も、増加する医療費の下での国民健康保険の赤字を抱えている。震災復興としての住宅や産業の復興は重要ですが、医療も放置しておく訳にはいかず、やはり重要です。

所在県 経営主体 病院名 病床数 個別ページ
岩手 岩手県 中央病院 685 クリック
岩手 岩手県 大船渡病院 489 クリック
岩手 岩手県 釜石病院 272 クリック
岩手 岩手県 宮古病院 387 クリック
岩手 岩手県 胆沢病院 351 クリック
岩手 岩手県 磐井病院 315 クリック
岩手 岩手県 遠野病院 199 クリック
岩手 岩手県 高田病院 136 クリック
岩手 岩手県 久慈病院 342 クリック
岩手 岩手県 江刺病院 150 クリック
岩手 岩手県 千厩病院 194 クリック
岩手 岩手県 中部病院 434 クリック
岩手 岩手県 二戸病院 300 クリック
岩手 岩手県 一戸病院 325 クリック
岩手 岩手県 大槌病院 121 クリック
岩手 岩手県 山田病院 60 クリック
岩手 岩手県 沼宮内病院 60 クリック
岩手 岩手県 軽米病院 105 クリック
岩手 岩手県 大東病院 121 クリック
岩手 岩手県 東和病院 68 クリック
岩手 岩手県 南光病院 408 クリック
岩手 盛岡市 盛岡市立病院 268 クリック
岩手 八幡平市 八幡平市国民健康保険西根病院 60 クリック
岩手 奥州市 奥州市総合水沢病院 235 クリック
岩手 奥州市 奥州市国民健康保険まごころ病院 48 クリック
岩手 葛巻町 国保葛巻病院 78 クリック
岩手 西和賀町 国保沢内病院 40 クリック
岩手 藤沢町 国保藤沢町民病院 54 クリック
岩手 洋野町 国保種市病院 96 クリック
宮城 宮城県 循環器・呼吸器病センター 200 クリック
宮城 宮城県 精神医療センター 345 クリック
宮城 宮城県 がんセンター 383 クリック
宮城 宮城県地方独立行政法人 宮城県立こども病院 160 クリック
宮城 石巻市 石巻市立病院 206 クリック
宮城 石巻市 石巻市立雄勝病院 40 クリック
宮城 石巻市 石巻市立牡鹿病院 286 クリック
宮城 塩竈市 塩竈市立病院 161 クリック
宮城 気仙沼市 気仙沼市立病院 451 クリック
宮城 気仙沼市 気仙沼市立本吉病院 38 クリック
宮城 登米市 登米市立佐沼病院(市民病院) 300 クリック
宮城 登米市 登米市立米谷病院 49 クリック
宮城 登米市 登米市立豊里病院 99 クリック
宮城 登米市 登米市立よねやま病院(診療所) 53(0) クリック
宮城 栗原市 栗原市立栗原中央病院 300 クリック
宮城 栗原市 栗原市立若柳病院 120 クリック
宮城 栗原市 栗原市立栗駒病院 75 クリック
宮城 大崎市 大崎市民病院 466 クリック
宮城 大崎市 大崎市民病院鳴子温泉分院 170 クリック
宮城 大崎市 大崎市民病院岩出山分院 95 クリック
宮城 大崎市 大崎市民病院鹿島台分院 70 クリック
宮城 蔵王町 蔵王町国民健康保険蔵王病院 38 クリック
宮城 川崎町 国民健康保険川崎病院 60 クリック
宮城 丸森町 丸森町国民健康保険丸森病院 90 クリック
宮城 涌谷町 涌谷町国民健康保険病院 121 クリック
宮城 美里町 美里町立南郷病院 50 クリック
宮城 女川町 女川町立病院 98 クリック
宮城 南三陸町 公立志津川病院 126 クリック
宮城 白石市外二町組合 公立刈田綜合病院 308 クリック
宮城 黒川地域行政事務組合 公立黒川病院 170 クリック
宮城 加美郡保健医療福祉行政事務組合 公立加美病院 90 クリック
宮城 大河原町外1市2町保健医療組合 みやぎ県南中核病院 300 クリック
福島 福島県 喜多方病院 50 クリック
福島 福島県 南会津病院 100 クリック
福島 福島県 宮下病院 32 クリック
福島 福島県 大野病院 150 クリック
福島 福島県 会津総合病院 309 クリック
福島 福島県 矢吹病院 206 クリック
福島 いわき市 総合磐城共立病院 880 クリック
福島 いわき市 常磐病院 305 クリック
福島 南相馬市 南相馬市立総合病院 230 クリック
福島 南相馬市 南相馬市立小高病院 99 クリック
福島 伊達市 伊達市立梁川病院 50 クリック
福島 猪苗代町 猪苗代町立猪苗代病院 65 クリック
福島 三春町 三春病院 86 クリック
福島 公立藤田病院組合 公立藤田総合病院 311 クリック
福島 公立岩瀬病院組合 公立岩瀬病院 335 クリック
福島 公立小野町地方綜合病院組合 公立小野町地方綜合病院 149 クリック
福島 相馬方部衛生組合 公立相馬総合病院 240 クリック

2007年度から2009年度の間で、病院から診療所になった医療機関は、岩手県立伊保内病院と岩手県立大迫病院が2007年4月に19床診療所となり、2009年4月に無床化。岩手県立住田病院、宮古市国民健康保険田老病院及び宮城県登米市立登米病院が、2008年4月から診療所となった。釜石市民病院は、2007年4月1日に県立釜石病院と統合。福島県国保泉崎村立病院は、2009年4月1日より介護老人保健施設 泉崎南東北リハビリテーション・ケアセンターとなった。福島県立喜多方病院と会津総合病院は、2013年2月開所予定の新病院「会津統合(仮称)病院」に統合予定。常磐病院は、2010年4月から(財)ときわ会に引き継がれ、民間病院となった。

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2011年6月21日 (火)

東京電力の財務諸表

kaikeinewsさんのブログで知りました。毎日新聞が、6月20日に福島第1原発:東電、遮蔽壁費用公表せず 債務超過懸念でという記事を掲載していたのですね。記事についての意見は、kaikeinewsさんと全く同じです。

何らかの遮蔽壁は、建設が必要であると思います。地下への放射性物質の漏洩は、あり得るわけであり、漏洩対策は必要と思う。しかし、どのような工事が適切であるかは、検討をすればよいと考える。また、その時期については、急ぐべき事が他にありすぎるので、時期についても、検討をすればよいと思う。

以上は、技術的な部分。しかし、会計的には、工事の時期によるのではなく、原因発生時期が計上基準と思う。ちなみに、負債についての、企業会計基準委員会の財務会計の概念フレームワークとIFRS2011年の財務報告のための概念フレームワーク(このIFRSのWebにある参考訳)を掲げてみます。

企業会計基準委員会の財務会計の概念フレームワーク

負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物をいう

IFRS2011年の財務報告のための概念フレームワーク

負債とは、過去の事象から発生した企業の現在の債務で、その決済により、経済的便益を有する資源が当該企業から流出することが予想されるものをいう。

東京電力の財務諸表においては、福島第一原子力発電所に関して将来支払うこととなるあらゆる金額を全て債務および費用として認識する必要があると、私は思います。事故は、過去の事象であり、遮蔽壁には、資産価値はなく、もし50年しか耐用年数がなく、一方放射性物質を閉じこめておく必要がある期間が1000年であるとするなら、1000年分の支出金額を見積もって計上する必要があると思います。

4月27日の有価証券報告書からみる原子力発電コストで、電力会社の財務諸表には、使用済燃料再処理等発電費、(2) 使用済燃料再処理等既発電費、(3) 使用済燃料再処理等準備費、(4) 破棄物処理費、(5) 原子炉等設備解体費が引当金処理されていると書いた。原子炉等設備解体費は、今年から資産除去債務となるが、廃炉とする1~4号機は、全ての費用を債務認識しているのではと思う。

放射性物質を適正に管理する義務は東京電力にあるのであり、原子力損害賠償法第3条は適用されない。管理能力があるか、財政的に問題がないかをチェック可能とするために、国民の前に情報は正しく公表されねばならない。もし、問題があるのであれば、対策を講じないと、日本では原子力発電を実施できないのみならず、理性あることは、何もできないこととなる。その検討のために正しい財務諸表は不可欠である。「義務は、一義的には、東京電力にある。」なんて、バカの政治家が言うことを、国民がFollowしても何の利益にもならない。実態を正しく見て、正しく判断することにより将来の発展となる。

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電力・エネルギー政策の議論のための必要な情報開示・公開を望む

東洋経済2011年4月9日号掲載の《日本激震!私の提言》送電網は新規業者に開放を 原発は政府が管理すべき――八田達夫・大阪大学名誉教授が6月21日にWebに掲載されており、この記事を読んで、そう思いました。

八田氏の意見には、賛成する部分があるが、細かい部分では、私の意見とはかみ合わない。例えば、八田氏は、次のように述べているが、実態は、新規の託送契約を認めていないのか、理由があり、新規契約を受けられないのか分からない。

電力を止められた大口需要家にはほかに調達の手だてがある。2005年の電力自由化で新規参入した事業者(PPS、特定規模事業者)と新たに契約すれば電力供給を受けられる。しかし震災以後、電力会社は新たな送電の「託送供給」契約を認めていない。すぐにも送電線を自由に使えるよう、開放させるべきだ。

次のグラフは、資源エネルギー庁の電力調査統計から作成した。3月11日の東日本大震災後、3月14日から計画停電が東京電力圏内であった。グラフ対象としたのは、自由化部分の6000V以上である。東京電力のみとせず、全国とした。理由は、PPSの供給統計が、全国一本であり、電力会社を超えての電力託送もあり得るからである。

Electricityconsump20116g

折線グラフが右軸であり、月間消費量を年平均で割った指数である。3月の供給量の落ち込みは、一般電気事業者の方が、PPSより大きく、PPSの指数は自家発とほぼ同じであった。自家発についての統計は、速報値となっているが、一般電気事業者とPPSの比較は、統計上は問題がないはず。統計上の分析としての結論は、八田氏が言うようなPPSが困難とはならない。八田氏が、何を根拠に述べたのか分からず、3月末・4月始めの時点における推測であったかも知れない。いずれにせよ、適正な情報公開を望む。

八田氏が述べている「震災後、日本卸電力取引所(前日市場)が停止している。」については、電気新聞 6月1日 JEPX東京市場が再開 1日渡し約定量が急増に報道されているように、5月20日から再開されている。

なお、八田氏と、意見が最も異なる部分は、次の部分であり、以下が私の意見である。

1) 発電・送電・配電の分離は、方向としては正しいかも知れないが、無理に推進することによる不都合の発生があり得る。十分な検討なしに推進することには反対する。むしろ、送配電網の自由化・解放を、スマートグリッドの推進により、一層の進展を図り、市場競争が正常に機能するようにすることが重要と考える。その結果として、発送配電分離の望むべき姿が浮かび上がってくると期待する。

2) 株式会社は利益追求と市場競争により高い効率を得られる。しかし、原発は、それと馴染まない部分があり、一般電気事業者による発電事業とするには問題があると思う。一方、政府管理の政府事業が良いかというとそうは思わない。情報開示がなされ、国民の民主的な管理下が良いのであり、安全を重視し、合意されたルールに基づいて運転された時に、最も利益があがる仕組みの民間事業が良いように思う。なお、一般電気事業者からは、切り離すべきと考える。

なお、現在の自由化は、不十分と思える面が多く、その部分について多くの国民が参加した議論が必要と考える。電気の供給義務は、一般電気事業者のみが負っており、その義務は自由化されていない100V/200Vの低圧供給のみと私は理解する。(参考:電気事業法18条1項)しかし、一般電気事業者と卸電気事業者は供給計画を経済産業大臣に提出する義務がある。(電気事業法29条1項)6000V以上の電圧供給を停止してでも、100V/200Vの電力供給を維持する義務が一般電気事業者にあると理解する。これが絶対的に正しいかどうかは別にして、法を無視してまで、3月に政府は計画停電を実施したと理解する。国民の理解と制度改正・法改正を棚上げして、国民を無視した独裁政権と思っている。

2010年度において自家発以外の売買されている電力中、6000V以上の自由化電力は62%(574,936GWh)である。自由化部分なので、電力調査統計で需要家数・契約数は公表されていないが、大口需要家であり、ほとんどかスマートメータのような30分毎の計測機能を備えたメータが設置されていると思う。これを利用して、合理的な需要管理や個別需要家に対する電力供給強制停止が可能なはず。是非合理性を持って取り組んで欲しいと思う。

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2011年6月19日 (日)

社説としては錬成足りないと思う朝日の自然エネルギー論

朝日新聞の次の社説は、錬成が足りず、不十分であると思いました。

朝日 6月19日社説 電力買い取り―今国会で成立させよう

文章の中に、「標準的な家庭で月150円から200円ほど負担が増えそうだ。電力を大量に使う企業にとっては、大きな負担になりかねない。」とある。果たして、幾らなのか、自分の説を発表するなら、自分なりの計算や見通し、経済的影響等も述べるべきである。単純に、経済産業省の試算でとすることは、無責任であると思う。経済産業省の試算が甘いとか、厳しすぎるとか、前提条件が不十分とか等の意見を述べることが可能なくらいに、自らも検証して、自説を述べるべきである。

自然エネルギーの利用推進・拡大については、多くの人が賛成しているはず。電力供給者による電力の高値での強制買取をするとして、その価格が問題である。高すぎれば、自然エネルギー側の人達が有利になり過ぎ、電気消費者には不利になり過ぎる。太陽光を初めとして、その利用技術は革新的に進んでいる。即ち、近い将来には、もしかして半額以下になるかも知れない。投資をどのように行うのかも考えねばならない。今は、設備に投資するよりも、技術革新に投資をすべきなのかもしれない。

バランスの取れた適正な価格が良いのであり、単純に国会での法案成立の後押しをするよりは、真の問題点を指摘したり、参考となる情報を提供するのが、報道機関の役割と考える。ちなみに、私は、技術革新への投資に重点を置くべきであり、市場原理のみで成立が困難な部分を後押しすることについては、その必要な程度とすべきと考える。そして、この夏の電力需給予測(その1)昨年度実績からで述べたように、スマートグリッドの推進による電力市場取引を推進すべきと考える。

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2011年6月18日 (土)

インネクスト粉飾決算の発表

次の日経ニュースです。

日経 6月17日 インネクストが不正経理 札証、監理銘柄に指定

会社も次の適時開示を行っています。

インネクスト 平成23 年6月17 日 不正経理および第三者調査委員会設置に関するお知らせ

何が、すごいかって、売上と利益の大部分が真っ赤な嘘をであったのです。適時開示には、有価証券報告書等で発表された金額の記載がないので、どの程度か判断がつかず、表を作成しました。

20116

第7期については、売上の70%が粉飾であり、毎期損失を計上していた会社と言うことです。従業員22人の液晶製造装置や検査装置等の輸入販売会社ですが、実際の売上は30%でしかなっかったなんて、どのようにして会社は資金繰りをし、監査を誤魔化していたのだろうかと思います。投資家他を誤魔化し、被害を生じさせている犯罪ですが、何故このような粉飾が可能であったのか、ここまでの犯罪になったのかも糾明しないと、証券市場の正常な発展にならないと思う。

そう言えば、エフオーアイの粉飾も47NEWS 2010年9月16日 エフオーアイ専務ら2人逮捕 115億円粉飾決算の疑いのように、「有価証券届出書に、2009年3月期の売上高を水増しして、実際の売上高は3億1956万円だったが、118億5596万円と記載していた。」なんて、すごい粉飾でした。

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この夏の電力需給予測(その1)昨年度実績から

この2011年夏の電力不足が懸念されている。しかし、感覚のみで考えてしまうとパニックになる恐れがあると思う。社会的な混乱を引き起こすことは、避けるべきであり、十分な情報開示を行えば、恐れることはないと考える。原子力発電所にしても、電力不足解消に必要であれば、国民合意の下に運転すればよいと思う。

数字による検証が重要と考えるのであり、資源エネルギー庁電力調査統計が2011年3月までの2010年度における毎月の統計データが公表されているので、このデータを使い、需要実績を検証することとする。資源エネルギー庁電力調査統計は、このWebからDownload可能です。

1) 2010年度の電力消費

次のグラフが日本における2010年度の供給者別の電力消費です。(自家発電は速報値)

Electricityconsump20116a

単位のGWhは、Giga Watt Hourであり、GigaはMegaの1000倍、Kiloの百万倍なので、百万kWhです。(注:当初グラフ作成時に、2010年度の電力消費の合計量を誤って、114,026GWhとしていた。1,045,084GWhが正しく、訂正した。誤った数字を記載したいたことにつき、お詫びします。)

電力消費と言った場合は、自家発電も含めた方が、合理的と考え、自家発電も加えています。PPSとは、特定規模電気事業者(PowerProducer&Supplier)のことであり、一般電気事業者10社以外の電力供給事業者です。あれっと思われるかも知れませんが、日本は電気事業が自由化されている国であり、届出のみで、誰でも電力供給をすることができます。送配電線を保有する必要はなく、電力会社(一般電気事業者)と電力託送契約を締結して、電力会社の送配電線網を使って電力を供給することができます。

この会社の宣伝をするわけではないが、参考としてこの宣伝のように、お安く電気を販売しますと言っています。ちなみに、どのような会社があるかというと、ここをクリックすると、PPS各社の2010年電力供給実績の表がでてきます。合計19,955GWhなので、沖縄電力の7,521GWhより多く、北陸電力や四国電力の30,000GWhのほぼ2/3の規模です。(グラフで、PPSが23,210GWhとなっているのは、大王製紙他の自家消費も含んでいるため)

PPSについても念頭に置いておかないと、将来の日本における電力供給のあり方や、原子力について誤って考えてしまうかも知れないので、あえてここに記載した。なお、PPSの対象となるのは、6000V以上で50kW以上の供給契約です。マンションの場合は、管理組合で契約すれば、PPSから電力供給を受けることが可能です。その場合、100V/200Vに降圧するための変圧器はマンション側の負担となり、また各戸毎のメータ検針や集金もマンション側ですることとなる。一戸建ての場合は、100V/200V供給を受けねばならず、また50kWのような大容量は不要なので、難しいです。

なお、特定電気事業も一般電気事業者以外の電気供給ですが、電力託送ではなく、自前の送配電網を使用するので、限られた場合のみです。2010年度は5社のみで、最大供給者は、六本木エネルギーサービスでした。

2) 2010年度における毎月の電気消費

2010年度(2010年4月~2011年3月)における月ごとの電気消費は次のグラフです。

Electricityconsump20116a

8月と9月が最大で、次いで2011年1月でした。6月がボトムの78,861GWhで、最大が9月の97,923GWhであり、1.24倍であった。現在東京電力の最大電力が供給力の約80%なので、荒っぽい感覚では、今年の夏は大丈夫であると考えられる。しかも、2010年は異常高温の記録年であったので、それより気温が低いとなると、ほぼ大丈夫となる。しかし、これは今後の続くシリーズで考えていくこととする。

電力会社毎に毎月の消費・供給電力の推移を見たのが次のグラフです。

Electricityconsump20116c

北と南で、様子が少し異なります。沖縄では8月・9月が非常に高く、12月から3月の冬は年平均より消費は少ない。一方、北海道では、8月・9月は年平均より消費量は小さいが、逆に12月・1月は大きい。今、夏のことが言われているが、冬のことも忘れてはならない。原子力の稼働状況によっては、冬の方が厳しいこともあり得る。

3) 需要種別毎の電力消費

何に夏の電力が消費されているかを見れば、需要を抑えようとする場合の検討が容易なはず。資源エネルギー庁の電力調査統計は、電力供給約款で整理されており、次のグラフも、その区分で作成した。

Electricityconsump20116d 

高圧とは、6000Vでの供給で、ユーザーが変圧器を持つ。特別高圧とは、6000Vを超える電圧での供給で40,000Vやそれ以上の60,000Vの場合もある。いずれにせよ、特別高圧と高圧は自由化されている電気供給です。従い、PPSは、特別高圧と高圧のどちらかになる。電力とは、200V三相供給で、主として小規模の工場やビルです。電灯とは、100V/200V単相供給で、一般家庭向けが主体ですが、街路灯や農業用電力の場合もある。

上のグラフでは、夏ピークの状態が分かりつらいので、月平均の消費量を年平均の消費量で割った指数グラフを作成したのが次です。

Electricityconsump20116e

特別高圧は、月ごとの変動量はさほど大きくはない。大工場の大口ユーザーが多いと考えられ、年間を通して大きな変動がないと理解する。家庭の需要は、夏よりも冬の方が多い。高圧ユーザーについては、夏需要が年平均の1.2倍あり、夏が多い。一般のビルやスーパーが、このユーザーであると推測するが、夏の冷房需要と思う。

夏の電気消費需要の抑制が、どうしても必要な場合、一番先に対象とすべきは高圧ユーザーが有効と思う。何故なら、増加率が最も大きく、しかも問題なく実施できる。多分、ほとんどのユーザーにはスマートメーターが装備されており、30分ごとの電力計測がなされる。ターゲットを設けて、違反すれば高い料金徴収を行い、一定以上消費を押さえれば、割引料金の適用をすることも可能である。

自由化された電気ユーザーなので、契約で自由に取り決めが可能である。一般家庭に15%電力削減を政府は呼びかけているが、その前に、高圧ユーザーへの取り組みが必要である。もし、30分ごとの電力計測可能なメーターが高圧ユーザーに装備されていないなら、直ちに全ユーザーに装備すべきである。ユーザー自身がパソコンで電気消費をモニターしながら電気需要をコントロールでき、また一定以上の超過消費については、電力供給者の方から強制供給遮断をすることも可能である。要は、スマートグリッドである。

スマートグリッドの導入に最適な夏がこれから来ようとしている。スマートグリッドと電力自由化の拡大。PPS参入の促進。政策として実施すべきことは、確定していると思う。しかし、現内閣、現政府は、方向違いのことばかり。最後に、2009年4月から24月分の需要種別毎の電気消費量のグラフを掲げる。どうですか?高圧ユーザーは、夏需要が大きいのです。

Electricityconsump20116f

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2011年6月11日 (土)

震災復興のための株式会社農業参入特例

東日本大震災から3月を経過した。津波の大きさが過去にないほど大きく、復興は、期待したほど進んでいない現状と思う。むしろ、避難生活、なお9万人…大震災から3か月 (6月11日 読売)生活保護200万人突破へ…被災地、申請増も (5月12日読売)のようなニュースもあり、そして「地元に戻りたい」大幅減…岩手・宮城の被災者 6月11日 読売といった復興が容易ではないと考えさせるような現実も出てきている。

被災地復興のための税優遇や規制緩和のための復興特別措置法が近々国会に提出されるようである。(参考:復興特区、企業に税優遇 特別措置法案 6月11日 日経

産業振興・発展がないと雇用や働く場が確保できず、産業の振興と発展は、重要と考える。産業とは、第2次産業や第3次産業のみならず、第1次産業である農林水産業の振興や発展も忘れてはならず、特に東北地方は、次の表のように、第1次産業の経済活動に占める割合は、全国平均と比べて大きい。

120116

経済特区を作ることが検討されているが、農業を株式会社に解放する経済特区が、今回の津波・震災復旧に関しては、許されてよいように思う。日本の農業は様々な形で守られてきたし、今後とも守る必要がある。しかし、衰退や破滅に向かうのを、ただ手をこまねいて見ているだけでは、余りにも無策である。株式会社の参入を認める場合は、どのような条件の場合に、どのような形態で、また期間・期限の制限等をどうするか様々なことに関して、積極的に検討して良いと思う。

認めたからと言って、多くの会社が名乗りを上げるか不明であるし、農業の経験がないと簡単ではない。しかし、株式会社は、資本と経営の分離が可能であり、例えば、大手スーパーが地元の熱心な農業後継者を支配人として高給で雇い、業績比例でボーナスを支払うといった形も可能かも知れない。株式会社による土地の保有は認めず、期間を定めた土地使用契約のみとすることもありうると思う。

耕作放棄地が増加したり、農地の他用途への転用が進むことは、将来に対し禍根を残すことになる気がする。津波による農地の塩分除去が、株式会社参入特例により合理的に進み、少ない政府補助金でも推進可能になるなら、日本全体から見ても好ましいことと思う。

東北大震災農業株式会社参入特例が、今の日本で進んでいる耕作放棄地の増加や農業就業者の高齢化を解決する参考にもなると思う。やってみないと分からないことはあり、実践する良い機会と思う。今回の法律に間に合わなくとも、東北大震災関連の法は、まだまだ作らねばならず、次回になっても構わないと思う。

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2011年6月10日 (金)

村上裁判インサイダー取引有罪確定(最高裁上告棄却)に思う

村上世彰被告と彼が実質経営者である(株)MACアセットマネジメントが、証券取引法違反に問われた刑事裁判で、被告人の上告が6月6日に最高裁で棄却され、東京高裁の懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金11億4900万円の二審判決が確定した。判決の裁判所Web及び判決文は次の所にある。

裁判所Web 最高裁判所判決文

日経は、この判決について、次のような記事を掲載していた。

日経 6月8日 村上裁判が市場に残した課題

1) 判決文を読む際の参考

どのように考えるか、時間があれば、判決文を読むことをお奨めします。(もしかすると、実話なので、小説よりおもしろい。)その際、Webで公開されている判決文は固有名詞がA、Bのようにアルファベット大文字になっている。一方、本事件は、報道等で何度も取り上げられており、固有名詞で読む方が、頭に入りやすく、推測が入るが、A~Gまでの判決文の固有名詞を書いておきます。

A (株)MACアセットマネジメント
B 村上世彰
Bファンド 村上ファンド
C ニッポン放送
D フジテレビジョン
E 堀江貴文
F ライブドア
G 宮内亮治

東京高裁の判決は、裁判所Web 判決文にある。

2) 経緯

本件の経緯を、村上インサイダー取引に直接的に関係ない出来事も参考として加え、時系列で並べると次の通り。

2001年頃より、村上世彰は、村上ファンドによるニッポン放送株式取得を開始

2004年9月10日 フジテレビジョンは、銀行5行からのニッポン放送株式取得を発表

2004年9月14日 村上世彰は、ニッポン放送株式の取得が、更に大きな投資利益拡大につながると判断し、追加購入を決定。

2004年9月15日 村上世彰は堀江貴文、宮内亮治と会談し、ニッポン放送株式について、村上ファンドが18%保有していることから、ライブドアがニッポン放送株式を3分の1取得すれば、ニッポン放送の経営権を掌握でき、たとえ失敗してもフジテレビジョンによるニッポン放送株式の公開買付けなどに応じればリスクはないとして、ニッポン放送株式の大量買い集めを働き掛けた。また、ニッポン放送はフジテレビジョンの株式22.5%を保有しており、フジテレビジョンが複雑に絡み合っていることも説明した。なお、この時点で、村上ファンドが実際に保有しているニッポン放送株式は、11.93%であった。(高裁判決文)

堀江貴文、宮内亮治は、ニッポン放送株式取得のための資金調達検討に入った。

2004年11月8日 この日の会議で、村上世彰は堀江貴文、宮内亮治から、資金の目処が立ったとして、ニッポン放送株式の3分の1取得を目指す旨の決意表明をするのを聞いた。

2004年11月9日~2005年1月26日 村上世彰は、MACアセットマネジメントが運用する投資事業組合等の名義で、ニッポン放送株式合計 193万3100株を合計約99億5千万円で買い付けた。

2005年1月17日 フジテレビジョンは、ニッポン放送株式の5950円でのTOBを発表。

2005年2月8日 ライブドアは、転換社債型新株予約権付社債(MSCB)800億円の発行を発表。引受先はリーマン・ブラザーズ証券。

2005年2月8日 ライブドアは、ニッポン放送株式5%取得を発表

2005年2月8日 ライブドアは、ToSTNeT-1による時間外市場内取引でニッポン放送株式972万270株(29.6%)を取得。(うち、300万株強は村上ファンドより6050円/株で取得)

2005年2月10日 村上ファンドは、ニッポン放送株式157万8220株を市場で平均8747円/株で売却。

2005年2月23日 ニッポン放送は、フジテレビジョンに新株予約権の発行することを発表

2005年3月11日 東京地裁による新株予約権の発行差止仮処分 3月23日東京高裁差止命令

2005年3月24日 ニッポン放送は、保有しているフジテレビジョン株式をソフトバンク・インベストメントに貸出(フジテレビジョンのライブドア支配を当面回避することが目的)

2005年3月25日 ライブドアは、ニッポン放送株式の50%超取得に成功

2005年4月18日 フジテレビジョンとライブドアは、業務提携に合意。結果、ライブドアはニッポン放送株式をフジテレビジョンに譲渡。(譲渡価格は、TOB価格5950円より350円高い6300円/株で、1034億円)フジテレビジョンは、ライブドアの440億円の第三者割当増資を引き受け、12.75%株主となる。

3) インサイダー取引

インサイダー取引とは、内部の人間しか知らないことを利用して、有価証券の売買で利益をあげることです。東証の説明はここにありますが、取締役等が、会社の公表前に、自社の株式を有利に売買するようなことで、当然禁止されている。村上事件では、対象となった株式はニッポン放送株式であり、ライブドアが大量買い付けすることを知って(ライブドアを焚き付けて、そう仕向けたと言えるが)、ニッポン放送株式を買付し、有利に売り抜いたことが問われたのであり、少々複雑である。

しかし、一般の投資家がアクセス不可能な情報を、自分の投資で有利に売買し、言わば、一般投資家にババを引かせる行為は、禁じられるべきであり、罰則の対象にすべきであると私は考える。さもなくば、金融市場、証券市場の正常な発展につながらず、投資家に不利になり、それは同時に企業の資金調達にも不利益をもたらす。そのような観点で、今回の最高裁判決は、歓迎すべきと考える。

一方、日経が指摘した主張・論点は変であると考える。日経は最高裁判断として「公開買い付けなどを会社の業務として行う旨の決定があれば足り、実現可能性があることが具体的に認められることは要しない」と書いているが、最高裁判決文では「上記1(5)から(8)記載の事実に照らし,公開買付け等の実現可能性が全くあるいはほとんど存在しないという状況でなかったことは明らかであって,上記「決定」があったと認めるに十分である。」と述べられており、日経の記述は、少し言い過ぎと考える。

もう一点で、日経は「最高裁が示した基準には、インサイダー規制の範囲が広がり過ぎる」と書いているが、これも上の読み方の問題と、何を実質的な判断基準とするかであると考える。一般投資家にとっては、杞憂に属するが、その会社以外の上場株式への投資行為・活動を目的として、特定の会社の経営者に接近し、懇親を深めることは、問題があると考える。

「もの言う株主」については、私は、大いにものを言って良いと考える。しかし、基本的には、その会社の事業に関してであり、その会社以外の上場株式への投資についてあれこれ言うことは、インサイダー取引に関係する場合があると考える。

4) 市場主義・株式投資

市場主義に賛成であり、発展させていくべきと考える。しかし、ルールなき市場主義は存在してはならないのであり、適正なルールを常に追求し、発展させていかねばならないと考える。

一方で、このライブドア・ニッポン放送株式事件については、村上インサイダー取引以外にも考えさせられることは多い。インサイダー取引の結果、村上世彰、MACアセットマネジメント、村上ファンドは巨額の利益を手にした。最低50億円、もしかして最大100億円位あったかも知れない。

リーマン・ブラザーズも大もうけをしたはず。MSCBで10%以上利益確保したはずと思うから、やはり100億円は手にしただろうと思う。(もしかして、他のInestment Bankや証券会社で、資金使途を知った時に、他の取引への影響を恐れて、尻込みしたところが、あったかも知れないが)

これらの利益は、どこから生み出されたかと言えば、一般投資家の損失でしかなかったはず。ニッポン放送株式は、上場廃止の懸念から株価は下がった。ライブドアは、MSCBの株式転換により発行株数は増加し、株式価値は希釈化した。

では、どのようなルールがと言っても思いつかない。リーマン・ブラザーズがしたことはライブドアとの合意による資金提供であって、2者間の合意である。もし不満なら、そんな合意をするような経営者がいる会社の株を保有しているのを止めればよい。それが市場原理だと言える。投資の判断に経営者についての評価が含まれるのは、当然である。

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2011年6月 9日 (木)

原子力事故調査委員会への要求

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の初会合が6月7日にあった。

日経 6月7日 首相「原子力の閉鎖性検証を」 事故調が初会合 初動対応を検証、提言作成へ 原発事故調委員長「100年後に見ても恥ずかしくない中身に」

この事故調査委員会に期待したいが、問題がありそうな気もする。批判を受けて、正しい調査とその報告を是非お願いしたいと思う。

1) 日本の原子力政策

通常であれば、事故調査委員会は、福島第一原子力発電所の事故が対象になるのであろうが、5月18日の首相記者会見で、首相は「近くスタートする今回の事故の調査委員会においては、この長年の原子力行政の在り方そのものも十分に検討していただき、その根本的な改革の方向性を見出していきたいと考えております。」と述べている。

しかし、行政についてのみならず、原子力政策についても、調査・報告をして欲しい。行政とは、制定された法に従い、政府が執行する活動であるなら、それ以上に、現行法に問題点や矛盾点がないかの検討も含めてであり、当然のこととして政令、省令が適正な内容であるか、必要な立法措置が講じられ、政令や省令が適正に出されているかも是非調査・報告して欲しい。

例えば、原子力基本法の第二章は次の通りである。原子力委員会が、その機能を発揮していないと思えて仕方がない。基本法は設置の理由として、「原子力の・・・利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため」と定めている。この原子力委員会のWebを読んでも、同じことである。

   第二章 原子力委員会及び原子力安全委員会
設置
第四条  原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、内閣府に原子力委員会及び原子力安全委員会を置く。
任務
第五条  原子力委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項(安全の確保のための規制の実施に関する事項を除く。)について企画し、審議し、及び決定する。
 原子力安全委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、及び決定する。
組織、運営及び権限
第六条  原子力委員会及び原子力安全委員会の組織、運営及び権限については、別に法律で定める。

本来であれば、政府とは一線を引き、公聴会を常に開催し、原子力利用政策の基本方針を立案する委員会であるはずが、骨抜きになっているのかも知れない。是非、解明して欲しい。機能を果たしていないなら、その理由を事故調査委員会は明らかにすべきである。

また、原子力安全委員会を別の組織とすべき理由があるのかも検討して欲しい。基本法で「安全の確保のための規制の実施に関する事項を除く。」と安全については、原子力委員会の企画、審議、決定事項から外れ、安全員会に移った。本来、開発や利用と安全とは一体のものである。安全を理由に方針を変更することがあって良いはずが、安全を外すことは奇妙に思えて仕方がない。例えば、公聴会で、原子力利用と安全を、同時に話をしてはならないとなると、国民を欺いているように思える。

5月18日の記者会見で、首相は「日本の原子力行政は、原子力を進めていく立場と、言わばそれをチェックする立場が安全・保安院という形でともに経産省に属している・・」と述べている。経産省という行政機関は、原子力を推進する機関ではないはず。法に従って、行政事務を執行する機関である。原子力の政策は、原子力委員会が立案し、安全・保安院は制定された法に従い、実施されているかを審査したりする行政事務を行う機関のはず。安全・保安院を調査対象とすることに異議はないが、ずっと重要な組織・機関が存在する。

なお、原子力神話と言われるが、もしあるとすれば誰が作ったのか?国民かも知れないという部分があると思う。1973年に第1次石油ショックがあった。多くの原子力発電所が日本各地に建設され、原発依存が増加したのと一致するように思えて仕方がない。1979年のスリーマイル島事故後でも、原発の建設は続いた。1986年のチェルノブイリ事故の後も、続いた。1987年8月に運転を開始した浜岡3号以後2009年12月の泊3号まで数えて24基ある。平均1年1基である。2004年以降についての期間を限定して、世界における原発建設数を数えると21基ある。一番多いのが、中国とインドの5基で、次いで日本が4基。他は、ロシア、韓国、ウクライナが2基で、ルーマニアが1基である。この背景についても、できれば踏み込めないかと思う。

2) 事故原因の究明

正しく究明して欲しい。組織的な面や法的な部分もそうであるが、技術的な面についても正しく追求して欲しい。単純に想定を超えた津波と結論づけて欲しくなく、次のような点も追求して欲しい。

A. 外部電源が長期間失われた原因。夜の森線で鉄塔倒壊があったが、他の大熊線と東北電力線では鉄塔は倒壊していない。発電所の遮断機が地震で壊れた。外部電源が利用できなかった原因に津波は関係していない。地震である。地震の揺れは、想定範囲に入っているのではないのか。また、5号機と6号機のディーゼル発電機は稼働した。詳細は、分かっていないが、5号機と6号機のディーゼル発電機から1号機~4号機が電源を得られなかったのか?電源車についても、全く同じである。

B. 事故対応ヒューマンファクター。ヒューマンファクターが入ると間違いが生じる可能性あり、自動制御で安全方向に向かうよう制御する。しかし、今回の場合は、交流電源喪失により、自動制御が効かなくなったはず。想定外の大きさであれば、対応できないのが当然とも言える。しかし、一方で、例え、想定外であっても、人間であれば、フレキシビリティーがある。電源車が来れば、電気工事関係者が電線路を新設してでも電力を確保できる可能性がある。4号機~6号機は定期点検で停止中であり、工事関係者が発電所にいた。人間が作った機械である以上は必ず故障する。想定外の事態は発生する。最後に頼れるのは、その機械設備をお守りしている人達の能力である。要は、原子力発電は巨大技術でありすぎ、最早ヒューマンファクターで立ち向かうことができないのか、このことについも検討を挑んで欲しいと思う。

3) 原子力事故調査委員会の人選

原子力関係者が含まれておらず、欠陥委員会であると思う。原子力関係者がいると、身内の利益を重んじ、正確な事故原因究明が困難との発想と思う。しかし、素人では、専門家が述べることに対して、それを批判できず、また問題点指摘もできず、間違っていても訂正できない。真実が浮かんでこない恐れがある。

専門家も入れて、正しい人選をすることが重要である。ちなみに、現在のメンバーを官房長官5月27日発表で、書き上げると次の通りであり、偏った人選のように思う。

畑村洋太郎:東京大学名誉教授、工学院大学教授
尾池和夫:前京都大学総長地震学の専門
柿沼志津子:放医研
高須幸雄:元外交官
高野利雄:元東京地検特捜部検察官
田中康郎:刑事裁判を中心とした元裁判官
林陽子:弁護士
古川道郎:福島県の川俣町長
柳田邦男:作家
吉岡斉:九州大学の副学長で科学史や科学基礎論が専門

4) 公開

飛行機事故や列車事故の事故調査より重要な事故調査である。「100年後に見ても恥ずかしくない、よその国から見ても納得してもらえる中身(の報告)にしたいと」畑村委員長が述べたと報道されている。100年後ではなく、現在の我々に対する報告書でなければならない。もし、100年後と述べたのであれば、委員長を辞任いただいた方が良いように思う。よその国についても、同様である。

日本国民が自らの選択を実行するに辺り、高い信頼性を置いて判断できる材料を与える報告書を作成願いたいのである。

原子炉は事故が起こると、その被害は重大であり、これは真理であるはず。事故の可能性をゼロにはできない。ゼロに近づけることはできる。どれだけゼロに近づいているかは、評価による。正しい評価を国民は欲している。そのための、信頼できる情報を与えて欲しいのである。

どうすればよいか。公開である。国民から質問や情報公開請求を受け、それに全て答えるのである。もし、その回答を公開することに支障が生じる場合は、その支障が生じる理由を答える。会議も、特別な事情がない限りは、公開する。今回の福島事故は、多くの人が、政府・内閣は情報操作をし、真実を隠したと思っている。事故調査報告は、信頼性に依存することを忘れてはならない。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の事務局は内閣府におかれる。そう思って、内閣府のWebを探したが、何も見あたらなかった。やはり失格調査委員会と思える。

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2011年6月 5日 (日)

石巻市立大川小学校の悲劇を繰り返さない

東日本大震災の津波により、全校児童108人中74人、教員13人のうち10人が死亡又は行方不明になった石巻市立大川小学校の保護者説明会が4日夜にあった。

毎日6月4日 東日本大震災:児童68人死亡、不備認める 大川小説明会

命を亡くされた学童と先生のご冥福、あの世での幸せを、お祈りします。

児童の69%と教員の77%という多くの人命が学校という場所で失われたことに衝撃を受ける。亡くなった児童の親や保護者からすれば、学校であるが故に、その悲しさは、通常よりはるかに大きいことと思います。やり場のない思いで、謝罪だけでは済まされない。明確な謝罪すらなければ、感情の持って行く行き場のない思いのはず。それ故、ネットやその他でも、避難・誘導が適切でなかったと、教師を避難する声が多いと感じます。

しかし、児童69%と教員77%の死亡率が、我々に語りかけていることに、もっと大きな学ぶべきことがあるし、我々は将来に、これを生かす義務があるように思うので、以下少し書き連らねます。

1) 石巻市立大川小学校の位置

北上川の河口付近(河口から約4km上流)にあり、一番下流の1976年完成の新北上川大橋のたもとの直ぐ近くで、右岸(上流側から見て右)に位置する。Yahoo Mapで表示すると次の通りである。+や-ボタンで拡大・縮小して付近を見れば位置がより正確に掴めます。

地形図は、次であり、地形を考えてみる。

1map 

校庭の標高は、おそらく海抜1m程度であり、校舎の図面を見ていないが、2階の床面がGL+4mであったとして、海抜5m程度と思います。小学校の校門は、北の道路側にあるはずで、校門を出て左に250mで、新北上大橋の右岸となる。この新北上大橋右岸地点の標高も多分海抜5m程度と推定される。地形図上で、新北上大橋左岸上流側900m、右岸上流側2100mの堤防上の道路、右岸下流の堤防上に標高点があり、いずれも5mとなっている。学校から北東は海まで全て水田であり、標高は1m以下と推定される。学校の南は、山であり、斜面の傾斜は傾斜角40度位の急な斜面である。

なお、大川小学校の緯度経度は北緯38度32分45.63秒、東経141度25分41.65秒であり、この緯度経度を参考にしてGoogle検索等が可能です。

2) 津波被害

現地を視察して書くべきであるが、Google Earthを見て、驚きました。

1gooearth 

一番上のYahoo地図を航空写真に切り替えて、比較すると分かります。あったはずの集落が消えており、学校は廃墟になっている。新北上大橋は、津波で一部流された。このPanoramioの写真を見ても分かります。

3) 避難場所

先ずは、津波前に避難場所の一番の候補として考えられていた新北上大橋の実際の標高は堤防よりも1m位高い6m-7mあったかも知れない。しかし、津波の最高到達高さは、それよりも高かったと思う。何故なら、橋の欄干に漂流物が付着している写真も見受けられるからである。

では、南の山に避難することができたかについても、急斜面であり、100人を超える児童を、どう誘導できたか、私には分からない。津波の後に実際に現地を視察し写真も撮影して書いておられるこのブログには、「裏山(人工的な斜面&林床の草の少ない森)が確かにあるのだが,これらがとっさの判断で逃げ道になりえたか,かなり難しいと感じた.」と書いてある。校舎の屋根は、傾斜付きで、屋上構造ではなかったので、避難には使用できなかったはず。

次の写真は、大川小学校の1.5km上流の右岸にある大川中学校をGoogle Earthである。大川中学校は、ほぼ真ん中で、その右(下流側)の住宅は流されているが、左(上流側)は、被害はあるとは思うが、流されてはいないようである。少しのことで、天地を分けるような差があるのだと思う。

2gooearth 

4) 将来のために

色々なことがネットで言われています。通学バスに早く乗せて避難させるべきだったというのもあった。いずれにせよ、大川小学校の津波災害は、事故調査がなされ、教訓を学ぶ必要があると思う。

例えば、校舎の一部を3階建てにして、3階を最悪の場合の避難場所とすることは、どうであったか。裏山を避難場所とし、階段や児童他の避難者が一時的に避難できる広場を整備することはできなかったか。

大川小学校が地区の避難場所になっていたとの報道もあり、そうであれば、先生方は児童の避難より、避難場所に避難してくる地区の人達の対応で大変だったかも知れない。

大川小学校の歴史は、分かっていないが、国土地理院の空中写真閲覧で1948年10月13日米軍撮影の航空写真を見ると、大川小学校が現在の位置にある。1960年のチリ地震津波を経験しているはずだが、被害は学校に及んでいなかったのだろうと想像する。

一番思うことは、最悪自体に対する研究であるが、従来はともすれば、防潮堤、防波堤、堤防、ダムのようなハード面の対応で防ぐことに力を入れすぎていなかっただろうか。確かに、高ければ、高いほど、防潮堤の能力は高いであろう。しかし、それだけでは完全にならない。むしろ、ソフト面、即ち、避難場所、避難経路、避難手段の確保が重要と感じる。

大川小学校より下流側・海側の人達の避難や生存状態は、どうであったのだろうか。どの様な場合に、助かり、どのような場合に、被害に巻き込まれてしまったのか、詳細を調査して欲しいと思う。

大川小学校の69%や77%という死亡率をムダにしては、ならないと思う。

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2011年6月 4日 (土)

訳が分からない-お茶の放射性物質出荷制限

現在の内閣とはバカばかりと思っていますが、本当に理解不可能なことばかりです。そんな中、お茶の出荷制限とは、浜岡原発停止と同じ構造なのだろうと思います。

毎日 6月2日 福島第1原発:茨城などの茶、出荷停止に

政府は2日、食品衛生法の暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたとして、茨城県全域と神奈川、千葉、栃木県の一部地域で生産する茶の出荷停止を各県に指示した。」とあり、この政府の指示とは、6月2日午後 官房長官記者発表である。「生葉のみならず、荒茶及び製茶についても適用する」と言っている。しかし、その根拠は発表されていない。

見事な独裁政権です。

1) 根拠のない規制はすべきでない

人体の安全性と言えども、根拠のない規制は、独裁政権、ファシズム政権がすることである。現内閣が、そうなので仕方ないと言えるが、もし日本が民主主義の国であるなら、一刻も早く政権を倒さねばならない。

ここに、食品安全委員会の「東北地方太平洋沖地震の原子力発電所への影響と食品の安全性について(第50報)-6月2日更新-」があり、「食品衛生法に基づく飲食物に関する暫定規制値」の記載もある。お茶はないので、野菜としてあてはめると、放射性ヨウ素2000Bq/kgあるいは放射性セシウム500Bq/kgです。しかし、乾燥野菜をこの数字で運用するのは、根拠なしのバカのはず。

食品安全委員会の第50報の中に放射性セシウムの被爆量についての参考計算がある。

500Bqの放射性セシウム137が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響は、500×1.3×10^-5(※)=0.0065mSvとなります。

”1.3×10^-5”は、内部被ばくに関する実効線量係数であり、セシウムについての、ICRP Publ.72に勧告された成人の一般公衆が経口または吸入摂取した場合の実効線量係数は、次の表の通りです。数字が10^3小さくなっているのは、mSVとSVの違いです。

核種半減期経口摂取(Sv/Bq)吸入摂取(Sv/Bq)
Cs-134 2.06年 1.9×10-8 2.0×10-8
Cs-136 13.1日 3.0×10-9 2.8×10-9
Cs-137 30.0年 1.3×10-8 3.9×10-8

年間1mSV以内に押さえようとすると、年間150kg以内の摂取にしておけばよいのです。

即ち、500Bq/kg自体、相当な安全性を見込んでおり、しかも大量に食べる野菜を念頭にしているのであり、お茶を同じ基準であてはめてよいのか、まず疑問がある。

ここに、本年3月に食品の暫定基準を決めた食品安全委員会の「放射性物質に関する緊急とりまとめ」がある。そこに、飲食物摂取制限措置を実施する際の回避線量の基準として対策が常に必要とされる線量レベルが50mSV/年となっており、これ以下では対策が正当化されない線量レベルが5mSV/年となっている。

5mSV/年から野菜類に対する放射性セシウム500Bq/kgが導き出されている。となると、年間770kgとなり、体重の10倍以上の野菜を食べるので、別の障害が出そうである。

2) 荒茶と飲用茶

乾燥すれば、水分が飛び、重量当たりの数字は大きくなる。一方、お茶として飲む場合には、お茶がらは捨てて、お湯に溶けた物を摂取する。冒頭に掲げた毎日の記事には、「生葉で1キロあたり500ベクレルの場合、乾燥させた荒茶は重量が約5分の1になり、相対的に1キロあたりの濃度は5倍の2500ベクレルに上がるが、湯で抽出した飲用茶では数十ベクレルにまで減る。」となっている。

いよいよバカさ加減が板についている。毎日の記事に、「一部の荒茶が抹茶アイスなどの加工食品に使用されている」とあり、これを理由に荒茶で規制すると言うが、大臣とは抹茶アイスを食べたこともない浮き世の人であるようだ。1日、何個抹茶アイスを食べて、その中に荒茶が幾ら含まれるか、アホは計算すらできない。

3) 悪影響

政治が悪いと国民は不幸になる。日経メディカルオンラインに次の記事があった。

2011. 5. 17 チェルノブイリの健康被害、最も深刻なのは精神面への影響 エビデンスありは小児の甲状腺癌のみ Lancet Oncology誌から

2011. 4. 6 「放射性セシウム汚染で疾患は増えない」 チェルノブイリ事故調査結果を基に長崎大の山下俊一教授が明言

どうでしょうか?根拠なく政府が不安をかき立てることは、許されざるべきことです。国民を鬱に陥れ、経済を破壊し、国民の生活を苦しめることになりかねない。根拠を示し、国民と考えならがら対策を立てるのが政府です。従い、私は、独裁政権と現政権を呼ぶ。

放射性セシウムについては、分からないことが多いが、チェルノブイリ事故でも、放射性セシウムによる疾患増のエビデンスが掴めていない。調査研究をしている研究者や専門家の人の言うことにも、耳を傾ける必要があると思います。

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2011年6月 2日 (木)

国民不在政治の解決方法

国民不在の茶番劇に思えてしまうのです。

日経 6月2日 菅内閣不信任案は否決 賛成152、反対293

内閣不信任決議案を提出した3党から、成立した後の案は、示されていなかった。採決前に開かれた民主党代議士会で、菅首相が述べた「東日本大震災への対応に一定のめどがついた時点での退陣」もよく分からない。この民主党代議士会は、とりあえず不信任案成立を防ぐことが目的であったはずなので、不明確なのは当然とも言える。

首相に対する批判が出ている時に、議員のみで騒いでいる姿は、国民のことを考えていないとしか思えない。一般党員との集会や討論会を開いて、政策論争をしてはどうかと思うが、そのようなことをする気がないと見える。本年初めには、税社会制度の一体改革や国民番号制を唱えていた。本当は、税社会制度と番号制に目処を付けての退陣が正しいと思う。東日本大震災への対応は、実は、簡単であり、変な組織を大量生産するより、最も適切な人を選び、その人に多くのことをお願いして、その人が人選を含め実務を行う。首相は、それをバックアップすれば良いと思う。

しかし、根本的な最大の問題は、衆議院の小選挙区比例代表制にあると思う。中選挙区制か大選挙区制を採用すればよいと考える。小選挙区制で1人しか当選できないから、2大政党の実力者に認められる必要が生じる。さもなければ、立候補と当選はおぼつかない。比例代表も、政党に所属していないと立候補して当選することは困難である。

自らの考えや、個人の努力で、国会議員になれるようにすべきと思う。大きな選挙区制にするとタレント議員が増加すると懸念する人がいると思います。でも、国民を信じるなら、懸念する必要はないと思います。いずれにせよ、国会は遠い世界ではなく、国民の近くにあるようにする。議員の活動が不満なら、それを批判し、聞き入れられないなら、自らが立候補する。

政党についても、思想や考えが似通っているとして政党を作ったり、入ったり自由にすればよいと思います。次々に党を変わる議員がいても良いと思うのです。全ては、自由。政党助成金は止めて、議員活動助成金として、議員個人に支払い、助成金については支出に対する領収書添付の報告を受け、公認会計士の監査報告も提出願う。議員活動は、政党の中での活動で終わらせてはならず、議員個人が自ら秘書を雇い、コンサルタントやシンクタンクを活用して、自発的に政策研究をして政治活動をするように仕向けなくてはと思います。

現在の日本の閉塞感は、議員活動が政党活動となっており、国民から遊離してしまったことにあるように思います。その原因の一つと思うのが、小選挙区比例代表制選挙です。

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2011年6月 1日 (水)

IAEA暫定報告書を読む

IAEAの東日本大震災原発事故調査団が、6月1日に暫定報告書を提出した。その報告書は次の所にある。(英文のみと思う。)

Preliminary Summary - IAEA INTERNATIONAL FACT FINDING EXPERT MISSION OF THE NUCLEAR ACCIDENT FOLLOWING THE GREAT EAST JAPAN EARTHQUAKE AND TSUNAMI (24 May- 1 June 2011)

1) 日本側の対応を評価

The main preliminary findings and lessons learned are”として、今回の結論が書かれているが、その冒頭は、日本の関係者の協力を得て、調査が進んだとの文章である。また、発電所の現地での安全確保についても、高い評価をしている。

The response on the site by dedicated, determined and expert staff, under extremely arduous conditions has been exemplary and resulted in the best approach to securing safety given the exceptional circumstances. This has been greatly assisted by highly professional back-up support, especially the arrangements at J-Village to secure the protection of workers going on sites.

日本政府の国民を放射能汚染から守ることについても、同様に良い評価をしている。

The Japanese Government’s longer term response to protect the public, including evacuation, has been impressive and extremely well organized. A suitable and timely follow-up programme on public and worker exposures and health monitoring would be beneficial.

勿論、総合評価であり、問題がないわけではないが、それらの問題点については、今後の詳細な検証の報告書を待たざるを得ない。

2) 今後の復興

次の部分であるが、冷静な見方であり、その通りと思う。現時点では、今後の工程やスケジュールは誰も正確に分からない。今や、世界の関心は、福島原発事故の放射能汚染ではなく、避難した人達が、どのように戻れるか、どのように汚染除去が可能かであり、特に原発保有国が関心を持っていると思う。各国の援助を受けてでも、避難した人達ができる限り早く戻れるようにすべきと考える。

The planned road-map for recovery of the stricken reactors is important and acknowledged. It will need modification as new circumstances are uncovered and may be assisted by international co-operation. It should be seen as part of a wider plan that could result in remediation of the areas off site affected by radioactive releases to allow people evacuated to resume their normal lives. Thus demonstrating to the world what can be achieved in responding to such extreme nuclear events.

3) 津波リスクを過小評価

報道は、この日経6月1日 「福島原発、津波被害を過小評価」 IAEA報告書案のように、IAEA報告書の津波についてが大きく報道されている。津波だけではなく、protection against the risks of all natural hazardsと全ての自然の驚異に対する備えであり、periodically update these assessments and assessment methodologiesと、定期的に見直しをすることの必要性を強調している。

The tsunami hazard for several sites was underestimated. Nuclear designers and operators should appropriately evaluate and provide protection against the risks of all natural hazards, and should periodically update these assessments and assessment methodologies in light of new information, experience and understanding.

4) 原子力管理制度

報道は「規制」と読んでいるが、Regulatoryという言葉は、規制よりも管理が正しく、私は管理と使います。そして、この日経6月1日 細野補佐官、IAEA調査団報告「規制当局の組織再編は不可避」 あたりは未だ良いのですが、一部の報道には、「原子力安全・保安院の独立が不十分だった」などとした報告書の概要を日本政府に手渡しました。と述べているのもあります。

報告書は、次の文章です。固有名詞をあげていません。IAEAの安全基準に則した独立性を確保したNuclear Regulatory System(原子力管理制度)を確立すべきと言っている。私は、内閣府の原子力委員会と原子力安全委員会を、経産省の原子力安全・保安院より問題視すべきと考えています。原子力委員会は政策立案機関です。原子力安全委員会は、安全に関する規則を作り、許可を出す機関です。原子力安全・保安院は、行政機関であり、規則通りに建設され運転されているかをチェックする行政組織です。誰が責任重大かを見誤ってはなりません。原子力安全・保安院と言っているのは、IAEAではなく、細野豪志首相補佐官です。もし、政治的な意図を持っているとすると、恐ろしいと思う。

Nuclear regulatory systems should address extreme external events adequately, including their periodic review, and should ensure that regulatory independence and clarity of roles are preserved in all circumstances in line with IAEA Safety Standards.

5) その他

随分引用を書いてしまったが、まだ多くあります。一度読んでみるとおもしろいかも知れません。福島第一原発の放射能汚染が大きくなってしまった最大の原因は水素爆発と思います。津波同様に、次の文章からすれば、水素爆発も過小評価されていたのではと思います。

Hydrogen risks should be subject to detailed evaluation and necessary mitigation systems provided.

電源喪失を考えていなかったから、それ以上の非常事態は、考慮の範囲外であったのかも知れない。しかし、それでもIAEAが指摘しているon-site Emergency Response Centres(現地緊急連絡体制)の確立や、マニュアルを超えた緊急事態への備えが、もう少し、できていたらと思う。普通であれば、マニュアル通りの行動を訓練する。しかし、原発のような施設は、マニュアルを超えた事象を研究する人間を社内組織に置く。そして、その人間は、非常事態のシナリオを沢山つくることを業務とする。それを、空想と批判せずに、対応を関係者が検討し、訓練する。そのようなことも、対策として重要と考える。

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