B型肝炎被害者救済増税
B型肝炎被害者の救済には増税しか手段がないと思うが、日経は次の記事を掲載していた。
1) 誤魔化しは許せない
日経記事は、「是正を怠った旧厚生省幹部、実際に予防接種を手がけた医療界や医師などが、まず責めを負うのが筋だ。」と述べている。その主張は、正しいと思える。 しかし、実効性には困難があると思う。責めを負うべきだとする人や団体に、損害賠償訴訟を求めて、裁判で勝てるだろうか?日経が原因負担者であるとする厚生省幹部にしても、その当時の政策の妥当性についての反論が必ずあるはず。不毛の争いと思える。予防接種を実施した医師にしても、厚生省の指示や見解に従って、実施したのであり、責任はないとの主張をすると思う。
「施設や官舎を売ったり、必要性が薄くなった事業をやめたり」とも言うが、これもB型肝炎問題とは関係なく既に取り組み済みと思う。事業仕分けもあったし、増税前の税源確保は、むしろ、民主党の公約であったはず。実効性のない絵空事を並べるのは、よくない。
原発事故で「一義的責任は東電にあり」と述べているのと似通っていると思う。
2) 情報公開が最も重要
原発事故で現政権は独裁と情報非公開を選んでいるが、同じことをB型肝炎被害者救済でも実施しようとしている。情報公開をして増税する以外に方法はないにも拘わらず、責任逃れと選挙での不人気を避けるようとし、逆に、国を破綻させ、国民を将来の大増税に巻き込もうとするように思える。私が、調べた結果でも、次のように複雑であり、十分に説明・解明して欲しい。
B型肝炎ウィルスは、2010年10月20日のどうするB型肝炎訴訟に書いたように、1973年(昭和48年)に発見された。一方、B型肝炎被害者救済の対象と推計されている人達(日経報道では45万人)は、1973年より以前に予防接種を受けた人が大部分と思います。複雑です。
A) 1948年予防接種法制定
1948年7月以前には、国会賠償を行うべき被害者は存在しない。何故なら、予防接種がなければ、感染もないからです。B型肝炎訴訟北海道弁護団も、提訴の条件として、「集団予防接種を昭和23年7月1日以降に受けていること」をあげている。
B) B型肝炎ウィルスの発見は、それほど古くない
このCleveland ClinicのWebには、”Hepatitis B was first discovered in 1963 by Dr. Baruch Blumberg and colleagues, who identified a protein (the “Australia antigen” that reacted to antibodies from patients with hemophilia and leukemia. The association of this protein with infectious hepatitis was discovered 3 years later by several investigators, and the virus was specifically seen by electron microscopy in 1970.”とあり、抗原が初めて発見されたのが1963年であり、ウィルスが電子顕微鏡により観察されたのは1970年である。
C) 予防接種個人毎注射器の使用
予防接種実施規則3条2項「注射筒、注射針、多圧針及び経口投与器具は、被接種者ごとに取り換えなければならない。」の条文が追加されたのは、何時であったのか。この厚生省令は、1963年に制定され、3条は、1964年厚令一七、1970年厚令四四、1976年厚令四三、1979年厚令四五、1988年厚令二五で改正された。それぞれの改正の内容については、調べ上げることが私にはできていない。
5人に対する損害賠償を命じた2006年6月16日の最高裁判所の判決では、連続使用について、北海道の状況を、「1969年、1970年頃以降は、集団BCG接種については管針法による1人1管針の方法が大勢を占めていたが、集団ツベルクリン反応検査については、注射針、注射筒とも連続使用されており、その他の集団予防接種については、注射針は1人ごとに取り替えられたものの、注射筒、種痘針等は連続使用されていた。1969年、1970年頃以前では、注射針、注射筒、種痘における種痘針、乱刺針とも、1人ごとに取り替えられずに連続使用されていた。また、一人の原告の集団予防接種では、集団BCG接種では1人ごとに管針が取り替えられたが、集団ツベルクリン反応検査では注射針は1人ごとに取り替えられたものの、注射筒については連続使用されていた。」のように述べている。
私が、調査した範囲において、注射針と注射筒の被接種者ごとに取り替を指示した文書は、この昭和六三年一月二七日 健医結発第六号・健医感発第三号という1988年の厚生省通達である。この頃から、予防接種で、使い捨て針の使用が始まったようである。
D) 予防接種のリスクと効用
2006年6月16日の最高裁判所の判決は、「昭和23年厚生省告示第95号において、注射針の消毒は必ず被接種者1人ごと」とか「昭和25年厚生省告示第39号において、1人ごとの注射針の取替」とか述べているが、基となる厚生省告示を私は探し当てることができていない。逆に、40年も経過した通達がC)に掲げた通達であり、これを読む限りでは、そんな昔に、被接種者1人ごと述べているように思えない。
昭和23年、昭和25年の告示を見せて欲しい。集団予防接種は、厚生省であったかも知れないが、学校行事として強制的に実施された可能性があると思う。そうであれば、文部省、地方自治体、学校法人、校長、教師の責任は、どうするのかと問いたい。私の感覚であれば、そのような重要な通達は、教育関係者にも出される。
ある時期まで、日本人の寿命は短く、多くの人が肺結核で亡くなった。予防接種法が制定された1948年当時と今とで疾病や伝染病に関する感じ方、感覚、考え方は、相当違ったと思う。予防接種を実施できるなら、全員にであり、感染リスクは、ほとんど考慮になかったと思う。冒頭の日経の記事に反発を覚えたのは、そのような面を無視しているように思えたことがある。リスクは、最高裁が述べる頃から認識されていたのであろうが、どの程度であったのか。
冷静に、予防接種とそのリスク、そして、我々としての取り組み方について教えて欲しいと思う。
E) B型肝炎の他の感染ルート
B型肝炎は、血液や体液により感染する。このWHOのHepatitis B Fact sheet N°204 は、”In many developed countries (e.g. those in western Europe and North America), patterns of transmission are different than those mentioned above. Today, the majority of infections in these countries are transmitted during young adulthood by sexual activity and injecting drug use. HBV is a major infectious occupational hazard of health workers.”と述べており、先進国(欧米)では、性行為、注射薬物と医療者の医療中の事故による感染が多いとしている。
いずれにせよ、B型肝炎ウィルスは、HIVよいも50倍から100倍感染力が強いのである。日本での感染の実態は、どうであるのか?
3) 結論
予防接種によるB型肝炎被害者には、補償をすべきである。何故なら、集団予防接種により多くの人は伝染病から逃れることができたのであるから。集団予防接種に伴う、リスク・コストであったと考える。予防接種の効用により疾病にならなかった人は、予防接種が原因でB型肝炎になった人に補償をすべきである。
国民の多くが効用を受けたのであるから、税金により補償をするのは、当然と考える。消費税、所得税、法人税、相続税の全てを増税するのが正しいと思う。東日本大震災の復興資金、年金、医療保険の現状を考えれば、消費税20%-30%は、もしからしたら当然かも知れないと思う。真実を見つめないで、空想を見ていると、実は、何年かして、日本政府の財政破綻が生じ、その結果、IMF救済になり、はるかに高い税の制度を実施しなければならないかも知れない。
不透明性が多すぎて、何が正しいのか、考えられなくなる。正しい情報開示が、なされるべきで、こんな悪い内閣は欲しくない。せめて、官僚の反乱で、情報を開示して欲しい。政府財政についても、同様である。
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