この夏の電力需給予測(その1)昨年度実績から
この2011年夏の電力不足が懸念されている。しかし、感覚のみで考えてしまうとパニックになる恐れがあると思う。社会的な混乱を引き起こすことは、避けるべきであり、十分な情報開示を行えば、恐れることはないと考える。原子力発電所にしても、電力不足解消に必要であれば、国民合意の下に運転すればよいと思う。
数字による検証が重要と考えるのであり、資源エネルギー庁電力調査統計が2011年3月までの2010年度における毎月の統計データが公表されているので、このデータを使い、需要実績を検証することとする。資源エネルギー庁電力調査統計は、このWebからDownload可能です。
1) 2010年度の電力消費
次のグラフが日本における2010年度の供給者別の電力消費です。(自家発電は速報値)
単位のGWhは、Giga Watt Hourであり、GigaはMegaの1000倍、Kiloの百万倍なので、百万kWhです。(注:当初グラフ作成時に、2010年度の電力消費の合計量を誤って、114,026GWhとしていた。1,045,084GWhが正しく、訂正した。誤った数字を記載したいたことにつき、お詫びします。)
電力消費と言った場合は、自家発電も含めた方が、合理的と考え、自家発電も加えています。PPSとは、特定規模電気事業者(PowerProducer&Supplier)のことであり、一般電気事業者10社以外の電力供給事業者です。あれっと思われるかも知れませんが、日本は電気事業が自由化されている国であり、届出のみで、誰でも電力供給をすることができます。送配電線を保有する必要はなく、電力会社(一般電気事業者)と電力託送契約を締結して、電力会社の送配電線網を使って電力を供給することができます。
この会社の宣伝をするわけではないが、参考としてこの宣伝のように、お安く電気を販売しますと言っています。ちなみに、どのような会社があるかというと、ここをクリックすると、PPS各社の2010年電力供給実績の表がでてきます。合計19,955GWhなので、沖縄電力の7,521GWhより多く、北陸電力や四国電力の30,000GWhのほぼ2/3の規模です。(グラフで、PPSが23,210GWhとなっているのは、大王製紙他の自家消費も含んでいるため)
PPSについても念頭に置いておかないと、将来の日本における電力供給のあり方や、原子力について誤って考えてしまうかも知れないので、あえてここに記載した。なお、PPSの対象となるのは、6000V以上で50kW以上の供給契約です。マンションの場合は、管理組合で契約すれば、PPSから電力供給を受けることが可能です。その場合、100V/200Vに降圧するための変圧器はマンション側の負担となり、また各戸毎のメータ検針や集金もマンション側ですることとなる。一戸建ての場合は、100V/200V供給を受けねばならず、また50kWのような大容量は不要なので、難しいです。
なお、特定電気事業も一般電気事業者以外の電気供給ですが、電力託送ではなく、自前の送配電網を使用するので、限られた場合のみです。2010年度は5社のみで、最大供給者は、六本木エネルギーサービスでした。
2) 2010年度における毎月の電気消費
2010年度(2010年4月~2011年3月)における月ごとの電気消費は次のグラフです。
8月と9月が最大で、次いで2011年1月でした。6月がボトムの78,861GWhで、最大が9月の97,923GWhであり、1.24倍であった。現在東京電力の最大電力が供給力の約80%なので、荒っぽい感覚では、今年の夏は大丈夫であると考えられる。しかも、2010年は異常高温の記録年であったので、それより気温が低いとなると、ほぼ大丈夫となる。しかし、これは今後の続くシリーズで考えていくこととする。
電力会社毎に毎月の消費・供給電力の推移を見たのが次のグラフです。
北と南で、様子が少し異なります。沖縄では8月・9月が非常に高く、12月から3月の冬は年平均より消費は少ない。一方、北海道では、8月・9月は年平均より消費量は小さいが、逆に12月・1月は大きい。今、夏のことが言われているが、冬のことも忘れてはならない。原子力の稼働状況によっては、冬の方が厳しいこともあり得る。
3) 需要種別毎の電力消費
何に夏の電力が消費されているかを見れば、需要を抑えようとする場合の検討が容易なはず。資源エネルギー庁の電力調査統計は、電力供給約款で整理されており、次のグラフも、その区分で作成した。
高圧とは、6000Vでの供給で、ユーザーが変圧器を持つ。特別高圧とは、6000Vを超える電圧での供給で40,000Vやそれ以上の60,000Vの場合もある。いずれにせよ、特別高圧と高圧は自由化されている電気供給です。従い、PPSは、特別高圧と高圧のどちらかになる。電力とは、200V三相供給で、主として小規模の工場やビルです。電灯とは、100V/200V単相供給で、一般家庭向けが主体ですが、街路灯や農業用電力の場合もある。
上のグラフでは、夏ピークの状態が分かりつらいので、月平均の消費量を年平均の消費量で割った指数グラフを作成したのが次です。
特別高圧は、月ごとの変動量はさほど大きくはない。大工場の大口ユーザーが多いと考えられ、年間を通して大きな変動がないと理解する。家庭の需要は、夏よりも冬の方が多い。高圧ユーザーについては、夏需要が年平均の1.2倍あり、夏が多い。一般のビルやスーパーが、このユーザーであると推測するが、夏の冷房需要と思う。
夏の電気消費需要の抑制が、どうしても必要な場合、一番先に対象とすべきは高圧ユーザーが有効と思う。何故なら、増加率が最も大きく、しかも問題なく実施できる。多分、ほとんどのユーザーにはスマートメーターが装備されており、30分ごとの電力計測がなされる。ターゲットを設けて、違反すれば高い料金徴収を行い、一定以上消費を押さえれば、割引料金の適用をすることも可能である。
自由化された電気ユーザーなので、契約で自由に取り決めが可能である。一般家庭に15%電力削減を政府は呼びかけているが、その前に、高圧ユーザーへの取り組みが必要である。もし、30分ごとの電力計測可能なメーターが高圧ユーザーに装備されていないなら、直ちに全ユーザーに装備すべきである。ユーザー自身がパソコンで電気消費をモニターしながら電気需要をコントロールでき、また一定以上の超過消費については、電力供給者の方から強制供給遮断をすることも可能である。要は、スマートグリッドである。
スマートグリッドの導入に最適な夏がこれから来ようとしている。スマートグリッドと電力自由化の拡大。PPS参入の促進。政策として実施すべきことは、確定していると思う。しかし、現内閣、現政府は、方向違いのことばかり。最後に、2009年4月から24月分の需要種別毎の電気消費量のグラフを掲げる。どうですか?高圧ユーザーは、夏需要が大きいのです。
| 固定リンク
コメント