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2011年7月31日 (日)

原子力安全・保安院とプルサーマル問題

原子力安全・保安院とプルサーマル問題については、そのうち改めて書いてみたいが、原子力の推進と規制の双方を同じ原子力安全・保安院がやっているから問題が生じたかのような報道が、中にはあると感じる。それほど、単純ではないはず。日経の報道を掲げておきますが、そのうち、きちんと書きたいと思うので、今回は少しだけ。

日経 7月29日 保安院、やらせ質問を中部電に依頼 プルサーマルのシンポで

1) 原子力安全・保安院

原子力安全・保安院(以下「保安院」とする。)は経済産業省の中の組織です。この組織図を見てみるのも参考になります。保安院は、原子炉建設計画を立案するような原子力の推進をしていないと考えます。業務の主体は、原子力であれば、電気事業法で定められた経済産業省の役割、特に技術的事項に関して経済産業省が実施することを担当していると理解します。推進と規制の双方を行っていると言うのは、私には、しっくりとこないのです。

例えば、次の記述が、電気事業連合会原子力発電四季報第17号[2001年度 第1・四半期(4月~6月)] の01年6月~8月の原子力関係の動き に書いてあります。

【01年6月】

1日 ▽平沼赳夫経済産業大臣が、太田宏次電気事業連合会会長、南直哉東京電力社長、石川博志関西電力社長と会談、プルサーマル計画について、電力業界、電力各社の住民への理解活動のための抜本的な対策を講じるよう要請。太田会長らは全電力で取り組んでいく考えを伝えた。

5日 ▽政府のプルサーマル連絡協議会が初会合を開催。新潟県刈羽村の住民投票結果に対して、国として核燃料サイクル政策の重要性を改めて確認。広く国民への説明と理解を求めるため関係省庁が協力していくことで一致。

大臣が、このような動きをしている中で、保安院が、それに反するような活動はしないのが当然だと思います。しかも、決して、大臣のみならず、政府の大コンセンサスで動いているという感がある。

原子力委員会を内閣から外し、どの大臣にも属さないようにする。そして、委員は国民の直接投票によって選出する。無理なら、最高裁裁判官のように国民の信任投票を受けることとする。単純に、保安院を経済産業省から分離しても、解決にはならないと思う。

2) プルサーマル

和製英語のようですが、このように熱中性子炉でプルトニウムを利用することで、軽水炉におけるプルトニウム利用と同義になってしまったとのことです。そもそも、核燃料サイクルについて理解しないと、根本的な部分が、吹っ飛ぶと思う。核燃料サイクルの計画の実現性が、あるのか?同時に、使用済み核燃料を、放射性破棄物としていないのは、核燃料サイクルという絵に描いた餅かもしれない計画を維持しているからと思う。プルトニウムが含まれたMOX燃料を軽水炉で使用することの問題点もあるが、大事なことは、核燃料サイクルについて、国民が理解していることと思う。私にとっても、必死に勉強しても、難しすぎる部分があり、もし安全を取るなら、原子力を止めるのが一番確実である。核燃料サイクルを進めても、使用済み核燃料を含め放射性破棄物は増加する一方であるのだから。福島第一で飛び出した放射性物質の量なんて、全体から考えれば、ごく微量ですから。

それと、勉強をすればするほど、原子力平和利用と核兵器は紙一重であるとの確信をいだくようになる。

きちんと原子力について書いてみたいと思うが、決して単純ではないし、報道等が充分伝え切れていない部分が多いと思う。ところで、今年の広島、長崎の原爆の日は、福島事故の年であり、どうなるのだろうかなと思う。極端であるが、日本は核兵器を持つべきではないが、万一の場合には、短期間に核兵器を持てる力を備えておくべきと考えている人もおられるかも知れない。実は、プルサーマル・核燃料サイクルは、日本の潜在的核武装能力保有には好都合なのである。プルトニウムは、ウランより核兵器に利用が容易なのだから。核兵器は、誰も売ってくれず、自分で製造する以外に保有方法はない。プルトニウムの保有は、核燃料サイクル方針ということで、米国を始め他国が日本に、査察を条件に、許してくれている。他国に干渉されずに、プルトニウムを保有できるのは、核不拡散条約で許された米英仏露中国の5国のみであるから。

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2011年7月28日 (木)

粉飾決算は許されるべきではない

ニイウスコーの巨額粉飾を書いていて、粉飾決算は許されざるべき犯罪と思いました。しかも、被告は「違法な粉飾決算に加担しているという認識はなかった」と、罪の意識も感じていないような報道であった。

1) ニイウスコーは140億円をだまし取った

一つ前のエントリーにニイウスコーの決算短信の訂正を表にして書いたが、訂正をした2003年6月以降全て純利益は赤字であり、2005年6月期以降は、債務超過であった。ところが、2005年6月期と2006年6月期に増資をして140億円を手にした。そして、2008年5月に民事再生法の適用を申請し、その年の11月には100%原資となった。140億円をだまし取って、出資者には無価値とした。

140億円は泡と消えたが、何に使ったかと言えば、役員報酬や役員賞与を含む会社の支出である。次の表が、有価証券報告書から抜き出した数字です。取締役は、大村紘一、末貞郁夫と割方美奈子のたった3人でした。監査役が3人いるので、単純に3で割れないが、それでも年間2億円近い金を3人が各自取って行くのです。赤字会社ですよ。

単位 2005年
6月期
2006年
6月期
合計
資本金 百万円 5,346 8,564 -
株式発行による収入 百万円 7,500 6,435 13,935
期末発行済み株式数 633,452 686,452 -
発行株式数 347,192 53,000 -
役員報酬 百万円 431 378 809
役員賞与金 百万円 156 156 311

2) 誰からだまし取ったか

一般投資家が一番に考えられる。しかし、ニイウスコーの株主には、証券・金融関係も多い。但し、固定されているのは、最大株主の野村證券。野村證券もうまく欺されたのかも知れないが、外資証券・金融も多い。1部上場株であったので、投資信託や年金資産に組み込まれていた可能性もある。年金資産に組み込まれていたなら、被害者は相当多いこととなる。ちなみに、ニイウスコーの株価は、以下のような推移であった。(Yahooチャートより。)

ニイウスコーは、コンピュータ・ソフトの会社であった。成功していなかったのかも知れないが、コンピュータ・ソフトについても悪事を働いた可能性はある。コンピュータ・ソフトとは、性能や価格を評価することが極めて困難なものであり、メンテナンス、将来の拡張性、他システムとの融通性等があり、価格はあって無きのごとし。だから、1円入札もあり、結局は、その業者の信頼性が評価基準の大きい位置を占める。ニイウスコーはどのような売り込みをしたか、想像できる。まさか、欺された地方自治体等は、ないだろうと思うが、心配でもある。もし、欺されていたら、その地方自治体の住民も被害者である。国庫補助金が出ていれば、日本国民全員が被害者。

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ニイウスコー事件で検察は懲役5年、罰金1千万円を求刑

横浜地裁で、ニイウスコーの元代表取締役大村紘一被告の刑事裁判が結審し、検察は懲役3年、罰金500万円を求刑したとニュースがあった。神奈川新聞の記事を掲げます。

神奈川新聞 7月5日 ニイウスコー事件、懲役3年などを元副会長に求刑/横浜地裁

ニイウスコー事件については、3年以上前になるが、2008年5月14日にニイウスコーの推理で取り上げたことがあるので、今回少し書きます。

1) 300億円、400億円を超える粉飾

神奈川新聞の記事には、「2年間の粉飾額は売上高ベースで274億円、経常利益ベースで115億円に上るとされる。」となっており、300億円、400億円より少額です。(これを少額というと、常識がないと言われそうですが)

ニイウスコーが民事再生手続きの開始を申請したのが、2008年4月30日で、その時に同時に過去5年間(2002年7月1日から2007年6月30日まで)の決算短信の訂正を発表しています。(ここにあります。)この訂正発表に、5年間の合計欄を付け加えたのが、次の表です。

Photo_3

決算短信の訂正発表にもあるように売上高の粉飾額合計は、連結で682億円、単体で373億円、当期純利益で連結276億円、単体419億円です。(純利益は、単体が何故こんなに金額が増加するのか不明ですが)

神奈川新聞が伝えている274億円、115億円は、記事の中にも「2004年7月以降」とあり、2004年6月以前については時効により刑事罰の対象とならなかったのではと、勝手に想像します。

要は、ライブドアなんて、チャッチイ粉飾ではなく、欺しに欺した419億円(単体の純利益粉飾額)だと思います。報道では「違法な粉飾決算に加担しているという認識はなかった」と主張したのだから、相当なものです。最も、そうであるから、こんな大粉飾が可能であったのかも知れませんが。

2) 何故大粉飾が可能であったか

そのようなことができる人物であったというのが一つだと思う。そして、2008年5月14日に書いたように、日本アイビーエムと野村総研と言う名前を、最大限利用したのでしょう。ちなみに、大村紘一は、日本アイビーエム昭和41年入社です。同じく、起訴された末貞郁夫も日本アイビーエム昭和46年入社です。刑事責任を問われたかどうか不明であるが、割方美奈子も日本アイビーエム昭和63年入社です。

宣伝文句として「当社は、日本IBMと野村総合研究所(NRI)によって設立されたニイウスは、最先端のハード、アプリケーション、それに高度なSEサービスを組み合わせた事業展開のもと、情報システムを構築するソリューション・プロバイダです。」と言って、仕事を取っていくやりかたです。循環取引をして、金を払わない時に、随分役に立ったのでしょう。東証2部上場が、2002年4月、第1部銘柄になったのが2003年6月であり、上場するなり大規模粉飾に精を出したというすごい会社・人達です。(上場したら粉飾しかしなかった)

3) 監査法人トーマツは

粉飾の5年間の全期間が、トーマツであったか確認できていないが、トーマツの2010年9月期の貸借対照表の重要な係争事件としての注記を見てみると、奇妙なことがあります。ニイウスコーの株主たる3事業体及び個人株主3名から合計15,636百万円の損害賠償を受けて係争中であることが書かれているが、1年前の2009年9月期は、同じ注記の金額は1,199百万円であったのです。10倍以上も膨らんだ。

ソフトウェアって、本当に難しくて分かりづらいですね。それが、最近はクラウドの世界なんて、ついて行くのも大変になってきた。でも、何とかついて行かないと、取り残されてしまう。そして、挙げ句の果てには、欺されてしまう危険性があるのかも。

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2011年7月27日 (水)

再生可能エネルギー特別措置法、つくるなら良い法律を!

再生可能エネルギー特別措置法が、国会に提出され、審議が始まっているが、6月9日のブログに書いたように、拙速ではない国民と社会を幸福にする法律を作って欲しいと思います。

1) 菅首相退陣を法律作成の理由にするのは、本末転倒

どう考えても、本末転倒です。首相退陣と新たな法をつくることは、全く関係のないことです。首相の退陣も新たな法律制定も、本来は国民が決めることで、関連づけることは、国民をないがしろにしていると思う。

再生可能エネルギー特別措置法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は、その内容や条文が、国民と社会を幸福にするかという点で、議論を行い、必要と認められるなら、修正をして、立法をすべきである。

しかし、現実には、次のような読売の報道がある。

読売 7月26日 退陣3条件、満たしても首相居座りも…自民懸念

2) 経済産業省による価格決定は、目指すべき方向なのか

再生可能エネルギー特別措置法の法案は、3月11日の経済産業省 報道発表 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案についての発表資料にあります(あるいはここにもある。)。やはり、問題が多いと思います。例えば、次の第3条1項と第29条が買取価格と電気料金についての条文です。

(調達価格及び調達期間)
第3条
 経済産業大臣は、毎年度、当該年度の開始前に、電気事業者が次条第一項の規定により行う再生可能エネルギー電気の調達につき、経済産業省令で定める再生可能エネルギー発電設備の区分ごとに、当該再生可能エネルギー電気の一キロワット時当たりの価格(以下「調達価格」という。)及びその調達価格による調達に係る期間(以下「調達期間」という。)を定めなければならない。

(再生可能エネルギー源の利用に要する費用の価格への反映)
第29条
 国は、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用の円滑化を図るためには、当該利用に要する費用を電気の使用者に対する電気の供給の対価に適切に反映させることが重要であることに鑑み、この法律の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得るよう努めなければならない

第3条5項で、買取価格について、総合資源エネルギー調査会の意見を聴くことになっているものの、決定は経済産業大臣です。多くの法律で、政令や省令で詳細を決めることにしている場合はあります。しかし、このような制度の根幹部分を大臣が決定するとし、しかも、その詳細な手続きについても定めがない。これでは、政府による統制経済です。市場原理では成立しないから、政府が価格を統制するというのは、行き過ぎです。市場主義の良さを残しつつ、ルールで育成すべき分野を優遇したり、補助金を出すのが本当の姿のはずです。この案は、補助金という名前を使っていないだけで、実は、消費者が電気料金の値上げという名目で負担をし、再生可能エネルギーへの投資者に補助金を支出する仕組みです。

その仕組みついての議論をすると横に逸れそうなので、やめるとし、せめて値上げ幅や買取料金ついては、消費者も参加する価格委員会を設立し、価格委員会が決定するとすべきと考えます。毎日新聞は、7月25日に再生エネ法案:価格は「第三者が決定」--民主・安住氏で、NHKの討論番組で述べたと報道していますが、そうであれば、価格決定メカニズムについて、必要な時間をかけ、消費者・産業界・電気事業者・再生可能エネルギーのディベロパーを含めた関係者と討論会をする等をして、国民が納得できる価格決定方式で進めるべきです。今のままでは、一部の者に有利で、国民の多くは高い電気料金に苦しみ、産業は安い電気を求めて海外移転をしというような悪夢が出てくるかも知れない。

3) 現行のRPS法

似通った名前ですが、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」という法があり、RPS法と称され、2002年6月に公布された。資源エネルギー庁のRPSホームページがここにあります。この法律は、電気事業者による電気供給のうちの一定量を再生可能エネルギーにより発電した電気とすることを義務づけています。その一定量は、毎年増加し、2010年度は全電気事業者の合計で11,015GWhでした。日本の電気の供給量は自家発を含めこれのように1,045,084GWhなので、1%がRPS法による再生可能エネルギーです。でも、小さい数字ではありません。沖縄電力の供給量より大きいし、125万kWの原発が1年間フル稼働して発電する量より大きいのです。

RPS法で義務となる再生可能エネルギーによる一定の発電(又は買電)量は経済産業大臣が決定することとなっているが、購入価格は市場原理です。義務を果たせずペナルティーを払うか、高値で買うか、いずれにせよ低コストを目指して、電気事業者もディベロパーも頑張ります。電気料金への跳ね返りも、市場競争原理です。

RPS法の方が、よっぽど好きです。ところが、このRPS法を廃止するのです。再生可能エネルギー特別措置法附則第7条です。現行の太陽光発電の買取については、RPS法の別枠による推進です。電気事業者のRPS追加購入義務を解放したいとして、廃止するのでしょうが、市場経済から統制経済への移行に思えて仕方がないのです。

4) その他

5月31日に問題多い休耕田や耕作放棄地での太陽光発電で、安易に国土を太陽光発電に振り向けることの危険性を書いた。農業・食料生産は、人が生きていくために、どうしても必要です。耕作放棄地で太陽光発電をするなら、株式会社が耕作放棄地で農業をすることを認めて良いように思います。仕事が減少した地元の土建屋さんが耕作放棄地で農業をすることが良いように思います。

7月26日の英Guardianの記事です。Engineers race to design world's biggest offshore wind turbinesは、10MWの洋上風力発電について書いている。何故、そんな大きさにするかは、スケールメリットによるコストダウンです。今や、風力は海洋に移ったようにも思える。最も、日本で、風力発電をする場合に、山林破壊には十分注意すべきと考えます。風力発電により山崩れが発生することは嫌です。景観破壊もあります。

RPS法のホームページから様々な資料がダウンロードできます。そこで、2010年度のRPS法による再生可能エネルギーによる発電(買取対象の太陽光を除いて)を見ると、風力が46%で、バイオマスが42%だったのです。これが意味することは、風力とバイオマスはコスト的に有利なのです。バイオマスは、このRPS Webにあるように破棄物が多いが、間伐材を利用できないかと思います。あるいは、割り箸推奨運動をして、割り箸燃料による発電は、どうでしょうか?

なお、コストに関しては、電気事業者の隠れたコストがあり得えます。例えば、風力発電設備が100MWあったとして、同じ規模の別の発電設備が必要です。風力は、風の都合で発電量が変動するのであり、風が止んだ時のためのバックアップが必要だからです。この場合、設備のみならず運転要員や保守要員も、必要である。太陽光も同じことが言えるが、この三菱電機の資料には「天候変化の影響を受けやすい太陽光発電の発生電力は雲の移動でも変化し、普及がこのまま進展すると、配電系統の電力の流れが分刻みで急変します。電力の流れの急変は系統電圧の変化となり、従来の配電機器だけでは適正電圧(95~107V)の維持は困難となることが懸念されます。」と書いてあり、電圧等が不安定になる可能性があり、対策の検討は必要です。発電が需要と無関係である場合は、それを調整する何かが必要であり、その為のコストは発生する。地産地消と簡単にはいかない部分がある。ドイツで多くの風力があるのは、ノルウェイの水力があるからだと耳にしたことがあります。

電力の自由化・市場取引・自由取引を推進し、スマートグリッドを追求し、市場経済による合理性の追求が、どうしても欠かせないと思います。それと自然エネルギーという言葉は嫌です。石炭・石油・原子力全て自然エネルギーのはずです。化石エネルギー、原子力、再生可能エネルギーと正しく言葉を使うべきと考えます。大規模水力も、世界標準を適用して、言葉としては再生可能エネルギーと呼ぶべきです。

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2011年7月26日 (火)

今夏の関西地区における電力需給

7月25日から関西電力管内において政府が要請した節電期間が始まった。

読売 7月24日 関電の節電、25日スタート…ピーク時6%不足

読売 7月25日 政府も要請、関西の節電目標値3本立てに

政府の要請とは、ここにある7月20日の電力需給に関する検討会合が出した「西日本5社の今夏の需給対策について」であるが、読んでみても、ピンと来ず、頭に余り入ってこない。とりあえず今夏の関西地区の電力需給について考えてみる。

1) 原子力発電

日本の原子力発電54基(合計48,847MW)のうち、稼働中は16基(14,355MW)です。これには、調整運転中の泊3号も含む。稼働中の16基は次の原発であり、稼働中または停止中の全原発は、この日本原子力技術協会のWebを見ると分かります。

Npower20117a

半数稼働していて、出力合計が24,423MWであったとしても、それより10,000MW少ないので、やはり今の電力供給体制は、供給力不足気味であり、発電所で自然災害を含め、事故があれば、不足する危険性はあるように思える。ちなみに、東日本(60Hz地区)と西日本(60Hz地区)で分けると、稼働中は、東日本6,403MWと西日本7,952MWです。

2) 関西電力の昨年度(2011年3月まで)電力供給

関西電力の2010年度の電力供給源は、次の通りであった。(資源エネルギー庁の電力調査統計による。)単位は、MWhであり、MWhを千倍するとkWhになる。なお、この表で各電源の発電量は、発電に際して消費した発電所内動力を控除した、発電所からの送電電力量としている。

Kansai2010m

グラフにすると次の通りです。このグラフは、揚水動力を差し引いていない数字です。

Kansai2010mc

2010年度は、2010年8月が電力供給が最も大きかった。ところで、各月の電力供給源別の構成割合で見たのが次のグラフです。なお、このグラフでは、揚水用動力を水力発電から差し引いた。その理由は、揚水発電で発電した電力は、水力で発電したのではなく、他の電源の電力で揚水した水で発電しているので、「揚水発電とは、蓄電池である。」と考え、蓄電池からの電力は計算から除外したのです。

Kansai2010ms

関西電力の場合は、原子力発電による電力供給が少ない月でも4,000,000MWhあり、多い月は6,000,000MWhを超えていることもある。4,000,000MWhを30日間と24時間で割り、所内動力比率を4.5%で考えれば、発電機出力は5,817MWとなる。現在の関西電力の稼働中原発は、3,371MWであり、2,500MW低い。

なお、関西電力には休止中であった石油火力発電所が多くあり、石油火力発電所を使用して、かなりカバーできると考える。実際に、どうかは、情報を余り持っておらず、何とも言えないが、参考として、関西電力の火力発電所のリストを掲げます。

Kansai20117thermal

3) 西日本の2010年度電力供給源

60Hzの西日本で、沖縄電力は電力網がつながっていないが、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の6電力会社の間は、送電線がつながっている。50Hzと60Hzも、周波数変換設備により相互融通があるが、同じ60Hzの場合は、電気の方から流れてしまう。単純に、西日本6社合計での2010年度月別電源構成比は、次のグラフです。

Nishinihonnpower2010

原子力の割合は、西日本6社合計の方が、関西電力単独より低い。しかし、6社で融通すれば、大丈夫と言えるほど、単純ではなく、様々な要素が関係する。少なくとも、この夏がというより、その先の冬はどうか、そして、来年の夏、2~3年後はどうか、また10年、20年先がと考えていかないとならない。目先のことだけ考えて、大丈夫とか、あるいは節電とか、そんなレベルではないと考える。

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2011年7月22日 (金)

気になった事件 「弘南バス生協使い込み」

あり得ることですが、何故防止できなかったのかと思います。

陸奥新報 7月21日 職員1億超着服か、弘南バス生協破産手続きへ

「口座には帳簿上約1億7000万円が入っているはずだったが、1000万円程度しか残っておらず、ほとんどが着服されたとみられる。弁済のめどは立っていない。」とのことであり、同生協の女性職員が着服を認めておりとのことで、1億6000万円が着服されたのだと思う。

1) 監査

独立した公認会計士監査が、最も信頼性がおけるでしょうが、それでなくとも監査制度はあったはず。監査人は、少なくとも期末には、帳簿残高と実際有り高をチェックしたはずと思うが、もし、それに抜かりがあったなら、監査人に対して、損害賠償を求められるか、求めるべきかと思う。

そして、それは、この生協理事長や理事に対しても、言えるのではないか。例えば、実印や銀行印は、どのような管理で、どうであったか。月次決算、毎月や適宜の帳簿と実際残高の突き合わせは、どのようにしていたか。「帳簿を2種類作成するなど隠ぺい工作をしていた」と記事にあるが、2重帳簿にすると、それは、それで、合わない部分が出てくる。変だと思ったら、外部の税理士、コンサルタントや会計士等を雇ってでも、解明すべきであったはず。無策でいて、理事会で破産手続きの申請を決定というのは、情けない話である。

ガバナンスとか内部統制なんて、言葉以前の実務問題があると思います。

2) 組合員が積み立てる貯蓄とは?

生活協同組合は、預金業務が認められていないはず。にもかかわらず、記事には「組合員が積み立てる貯蓄を管理していた女性職員が着服」とあり、これは何と思いました。

生協が扱う保険や共済があり、貯蓄型に近い商品もあると理解する。保険証券は、その保険の事業者から発行される。COOP共済なら、全国労働者共済生活協同組合連合会から保険証券が発行されると理解する。

生活協同組合というと、善意の団体でありと、信用しがちになるが、基本点はしっかり押さえるべきと思います。不安がある場合は、ブログ主でもお呼び下さい。

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首相発言への批判の批判

菅首相の発言についての、海江田大臣の7月21日の参院予算委員会での発言は、どう考えるべきなのかと思いました。

時事ドットコム 7月21日 「忍」の字も利かず?=「鴻毛より軽い」と首相を酷評-海江田氏

7月14日のこのエントリーで「本日も記者会見で、無責任思いつき発言をしておられるようです。」と書いたが、この発言を、まさか経産大臣が「本当に閣内一致しての発言なら『泰山より重い』が、一私人の言葉なので『鴻毛より軽い』」と述べるとは、思ってもいなかった。

菅首相の発言とは、この政府インターネットテレビにもあるように、正式な首相記者会見での発言です。例えば、米国オバマ大統領は、2009年4月5日に、チェコ共和国プラハのフラチャニ広場で、 核廃絶へ向けての演説を行った。これを、米国政府内での手続きを踏んでいないので鴻毛より軽いとは言えないはず。米国大統領という肩書きを持った人が、米国を含め世界に向けて発した言葉であると理解する。

私的な場で、友人に対して述べたのなら、一私人の言葉であり、鴻毛より軽いとすることは、一向に構わない。しかし、公式な記者会見で述べ、その内容は、公式に記録され、日本を含め、世界の人に公開されることを前提としての発言であったのだ。海江田大臣の批判は、根本的に狂っていると思う。

菅首相の発言について、私は、「思いつき」と表現した。公式な記者会見で述べることについては、責任を持たねばならない。即ち、責任が持てること、例えば、そうすべきであり、実行可能であることを述べるのが重要である。呼びかけることもあってよい。しかし、無責任発言は、許されてはならない。政治家は、言葉が職業である。その発言したこと、書いたことについて重い意味を持つ。無責任政治家は、退任すべきである。民主党とは、無責任政党と思えて仕方がない。

ふりかえれば、沖縄普天間・辺野古問題も、そうであったのかな。沖縄・日本国民に発言したことと、米国の当事者に発言したこととは、異なった二枚舌を使ったような気がする。社会保障・年金改革は、民主党の主張ではなく、それ以前の政策をほぼ踏襲する内容になりつつある。ムダを省いて政府財源を捻出することの真意は、選挙のための方便であった。ロイター7月22日 マニフェストに不十分な点があったことはお詫びしたい=菅首相とある。本当に、民主党が、反省し、詫びるなら、誤りを訂正したマニフェスト改正版を、直ちに発行し、党員と国民の批判を受け、更に洗練された、日本国民の幸福を目指すマニフェストを作成すべきただと思う。

しんぶん赤旗は、7月24日日曜版に、「名古屋 減税日本どころか“ゲンメツ日本” 河村市長の責任重大 公約と違う公金私用、薬事法違反も」との記事を掲載するようです。減税日本も民主党とほぼ同じか、それ以上と感じます。

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2011年7月17日 (日)

橋下知事、最高裁で、勝ったのか、負けたのか

7月15日の最高裁判決で、広島の弁護士4人が訴えた橋下徹に対する損害賠償請求が棄却されたので、損害賠償はなくなり、勝ったと言えるが、そう単純ではないと思いました。日経の記事と最高裁判決を掲げます。

日経 7月15日 橋下知事が逆転勝訴 弁護団への懲戒請求発言で最高裁

平成23年07月15日 最高裁判所第二小法廷 判決 (全文

要約すると、日経の記事の「同小法廷は橋下知事の発言を「配慮を欠いた軽率な行為」としながらも、懲戒請求の呼びかけによって「被告弁護団側の弁護士業務に多大な支障が生じたとまではいえず、その精神的苦痛が受忍限度を超えるとはまでは言い難い」と結論付けた。」で、正しいと思います。

判決文を読む際の固有名詞

時間があれば、判決文を読むのが、一番正しく理解する方法なので、お奨めしますが、判決文を読む際に、次の固有名詞をあてはめて読むと、頭に入りやすいと思います。(下の引用では、置き換えた文章としている。)

第1審被告: 橋下徹

第1審原告: 光市事件の第2次控訴審弁護団(22名)のうちの弁護士4名(広島弁護士会所属)

以下、私の感想です。

1) 表現の自由と賠償義務

判決文の13ページに「表現の自由という憲法的価値を考慮してもなお金銭で償わなければならないほどの損害が生じたといえるかどうかということによってその違法性の有無が決せられるというべきである」と書いてあります。違法性の有無は、即ち、賠償義務の有無と考える。表現の自由は重要であり、全ての人に、誰にでも認められるべきである。

どこで線を引くべきかは、難しいが、名誉毀損が簡単に成立するのは、問題であると思う。その面で、この判決は、国民の表現の自由についての権利を重要視した判決と思う。

2) 須藤正彦裁判官補足意見

須藤正彦裁判官の補足意見に次の文章がある。(アンダーラインは、ブログ主による。)

特に,橋下徹は弁護士であって,専門家として,上記の自律的懲戒制度の元来の趣旨や懲戒請求が刑事弁護活動の当否につき多数なされた場合の由々しき影響などを慮るべき立場にあったのだから,懲戒請求の勧奨をテレビで不特定多数の視聴者に向かって行うようなことは差し控えるべきであったというべきである。ところが,第1審被告は,本件弁護活動に関する重要な情報を有しないままに,高視聴率のテレビ番組における視聴者に向かって,「何万何十万っていう形で」とか,「1万2万とか10万とか,この番組見てる人が」懲戒請求かけたら「弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかないですよ」などと述べて,懲戒請求は安直になし得,かつ,あたかも多数の懲戒請求がなされれば弁護士会によって懲戒処分がなされるものと受け取られかねない外観を呈する発言をもって,一斉に弁護士会に懲戒請求することを呼び掛けたのである。以上よりすると,本件テレビ番組が,放談形式でのもので,気楽な面があり,その内容が重視される程度はより小さいとの性格を有していることを考慮しても,本件呼び掛け行為は,不適切さを免れない

本件は,弁護士同士の相互論争としての性格も否めず,その点からすると,弁護士会,日本弁護士連合会の自治,自律の下での内部処理に委ねられるべき(国家権力に頼るには適しない)側面もあろう(なお,橋下徹の発言につき,その所属の大阪弁護士会が同人を懲戒したことは官報をもって公告され(弁護士法64条の6第3項),当裁判所に顕著な事実である。)。以上のとおり,橋下徹の発言の趣旨,態様は不適切なものであることは免れ難いが,反面において,弁護士4名が侵害された人格的利益は必ずしも重大なものとはいえないと認められる。そうすると,橋下徹の本件発言中の呼び掛け部分が表現行為の一環としての側面を有していること,表現の自由が憲法的価値であり,民主主義社会の基盤をなすことなども考慮すれば,やや微妙な面があることは否定し難いものの,弁護士4名が害された人格的利益は受忍限度を超えたとまでいうのは困難であるというべきである。」

刑事被告人の弁護士とは、多くの場合、被害者からすれば、弁護活動のほとんど(or 全て)が受け入れられないものかも知れない。光市事件では、事件の残忍性もあり、マスコミが被害者の母子の遺族側に立った報道のみを続け、犯罪者・少年の不幸な生い立ちについては、ほとんど取り上げなかった。弁護士が、どうあるべきかは、やはり、非難・論難を受けようとも、正しい弁護活動を弁護士として行うことであると思う。

3) 弁護士会の懲戒処分

損害賠償は、認められなかったが、弁護士会の懲戒処分は、確定しています。

広島弁護士会は、判決文にあるように、平成20年3月18日、懲戒請求があった弁護士4名を懲戒しない旨の決定をした。

そして、大阪弁護士会は、2010年9月17日 日経 橋下知事に弁護士業務2カ月停止処分 懲戒請求呼びかけ問題でにあるように、橋下徹を懲戒処分にしています。理由は、平成2007年5月27日に放送された讀賣テレビ放送株式会社制作に係る「たかじんのそこまで言って委員会」での発言で、この裁判の原因行為・発言と同じです。

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2011年7月14日 (木)

暗黒の世界の周辺逮捕(ネステージ)

ネステージの会長、代取他及び不動産検定事務所の鑑定士を含め合計7名が逮捕されたとのニュースについてです。

日経 7月13日 水増し増資容疑でゲームソフト販社元会長ら逮捕

時事ドットコム 7月14日 元ゲーム会社会長ら7人逮捕=「かんぽの宿」過大評価の疑い-水増し増資・大阪府警

暗黒の世界については、大阪府警が本年2月に家宅捜査をした直後に書いた、このかんぽの宿層雲峡から、暗黒の世界をのぞき見た?を読んでみて下さい。

3億4千万円で購入した不動産に13億円の鑑定書を付けて、13億円を現物出資して、上場会社ネステージの株式13億円相当を手に入れたのですから、これを許せば、この世は闇夜みたいになるのではと思ってしまいます。

なお、2月に書いたブログで、日本郵政が売却した時の層雲峡かんぽの宿の売却額166,765千円と米沢かんぽの宿の売却額56,000千円の根拠とした会計検査院のリンク先が切れていますが、現在その会計検査院資料はこの資料の別表2-1(270ページ~273ペ-ジ)の物件番号337番と347番です。当時の鑑定では、161,000千円と47,200千円でした。

昼にTVのこの事件のニュースで、かんぽの宿層雲峡が映っており、大穴が見れた。大穴の犯人は、ネステージではなく、別にいるのです。その判断の理由も、2月のブログに書きました。そして、犯人としては、大江戸温泉物語という名前も浮かび上がることも。こちらの方は、どうなるのでしょうか?酷いことをしたと思います。しかし、倫理的な問題だけで終わるのでしょうか?不動産を購入した後に、目的はどうあれ、自分の所有物を自分自身で毀損しただけですから、民事は関係ない。あるとすれば、そんな行為は、意図的に固定資産税逃れをしているとして、固定資産税は無関係に徴収したかどうかだけかも知れない。そして、現物出資で超高値評価がなされた時に、固定資産税は、それ相当に上げたのだろうか?

かんぽの宿層雲峡は、2002年6月に身障者にも配慮した宿泊施設として完成したが、4年経たない2006年3月には閉鎖となった。そして2006年11月に売却され、大穴が空けられ、マネーゲームの材料として活用された。(関係者は儲けに失敗したと思うが)

2月に書いたことがある変な事件として記憶に残っていたので、あらためて、雑感を書いてみました。

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原発国営会社には反対です

本日も記者会見で、無責任思いつき発言をしておられるようです。(参考首相官邸7月13日 菅内閣総理大臣記者会見このMSN産経の首相会見詳報(1)~(6)

昨日は、衆院東日本大震災復興特別委員会で、原子力発電の国営化の検討可能性を述べたようです。衆議院の議事録が未だなので、この佐賀新聞 7月13日 原発、国有化も選択肢か がその答弁の参考となります。

1) 国営企業

国営企業とは、何であるかは、明確でないが、独立行政法人のような組織なのだろうと思う。原子力の分野では、原子力安全基盤機構と日本原子力研究開発機構が、独立行政法人なので、参考になると思う。原子力安全基盤機構は、原子力安全・保安院と連携し、原子力の安全確保に関する専門的・基盤的な業務を実施する機関であり、中立性が必要なので、独立行政法人となっている根拠はあると思う。日本原子力研究開発機構は、原子力に関する総合的な研究開発機関とされている。その一つとして、高速増殖原型炉もんじゅを運転し、データを蓄積して、高速増殖炉を開発しようとしている。これは、政策で決定した研究開発の実施・実行であり、独立行政法人が妥当であるように思える。

原子力発電は、値段がつく電気を生み出すので、収入がもたらされる。それを独立法人化か何か分からないが国営企業にするとなると、単純に考えれば、非効率な組織による高いコストとなり、その結果、電気料金が高くなる。そうならなくとも、政権与党の影響を今以上に受けると予想する。そして情報開示は、どうなるか?悪くなるとは限らないかもしれないが、一般の人が株主となり参加できる株主総会はなくなる。財務諸表についても上場企業と同じ基準での監査がなくなる。

国営企業とすることにより、一般の国民から、より遠い存在・手が届きにくい存在になると思う。JRの前の国鉄は、色々な批判を受けたが、少なくとも収入は一般国民から直接得ていたのであり、原子力発電を国営企業にしたら、販売も一般電気事業者への卸売であり、国民とは直接の関係がなくなる。政権の好き放題にされたりする危険性はないのだろうかと思ってしまいます。

2) 日本原燃株式会社

青森県六ヶ所村で、ウラン濃縮、低レベル放射性廃棄物埋設、 高レベル放射性廃棄物一時貯蔵、再処理の四事業を展開している会社で、株主は全国9電力会社、日本原子力発電、その他関係先77社です。この会社も遠い存在に感じるし、知っている人は、あまりいないのではと思います。9電力会社、日本原子力発電が顧客の会社であるが、国策会社の面が大きいと思います。最も、核燃料サイクルなんて、国策以外何ものでもあり得ないと思うし、プルトニウムの扱いは、国策であると同時に、核兵器不拡散の国際社会の問題です。

原発の国営化と言った時に、日本原燃をどうするか、同時に考えないとならないと思う。事故がなくても、使用済み核燃料の問題は、存在し、現状の日本は解決方法を持っていないのと同じような状態だと思いますから。

3) 原発の発電コスト

原発の発電コストなんて、鉛筆をなめれば、どうにでもなる世界です。4月29日の原子力、火力、水力発電のコスト比較で、次のグラフを掲げたが、赤の部分が燃料費です。メチャクチャ小さいのです。

Generation20114nuclear

修繕費や減価償却費、そして燃料再処理費や廃炉の費用の方が、大きいのです。燃料再処理費や廃炉費用なんて、運転中にキャッシュが出ていかないのであり、言わば帳簿上のみの費用です。それが国営企業であったなら、恐ろしい気がします。

4) 原子力発電は、民間2社体制でどうか

民間2社で、積極推進しようというのではありません。推進か脱原発かは、国民が決定すればよい。直ちに、止められないので、運転するなら、9社プラス日本原子力ではなく、民間上場企業2社体制にすれば適切ではないかと思うのです。

1社でもよいが、2社の方が、多少の競争原理か、対抗意識かが働いて、よいように思うからです。上場企業とはするが、政府は3分の2未満であれば、株式保有をしてもよいと思います。安全確保と社会的責任としての情報開示を最大の使命として取り組む会社とする。2社の分け方は、50Hzと60Hzでもよいし、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)で分けても、どちらでもよいと思います。

菅氏は、フランスやロシアで国有企業が原発事業を運営と言ったようですが、フランスのEDFは、このWikiのように、2004年に上場会社となっています。日本の原発を国営企業にと言うのは、問題がありすぎだと思います。

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2011年7月13日 (水)

原発ストレステストって何?

分からないだらけのストレステストで、こちらがストレスで気分が滅入いりそうですが、御本人は自画自賛したとのニュースもあります。

読売 7月12日 国民も納得いく形…原発統一見解、首相が自賛

色々と分からないが、小出しに書いていくと;

1) ストレス(Stress)

学校では、応力と習った。物体に、外部から力(圧縮力、引っ張り力)がかかった場合に、それに対する反発力が物体内部に働く。これを応力(Stress)と呼ぶと。内部でも、ストレスが均一になるわけではなく、ストレスが大きい箇所から、壊れる。

人の体・精神に、外部から望まぬ力がかかり、内部にストレスが貯まる。他には、音楽で、強くするポイントを、アクセントと言ったり、ストレスをと言ったりする。

原発とは、関係あると思えないのだけど。

2) ストレス・テスト(Stress Test)

ストレステストなる言葉に出会ったのは、リーマンショック後の金融危機で、この金融機関は大丈夫かとストレステストをしたと言うのがあった。例えば、この23 July 2010 BBC Newsでは、”Seven EU banks fail stress tests”なんて、報道している。ダメだったのは、91行のうちの7行ですが・・

銀行は、通常、自己資本比率をBIS規則のような方法で計算し、例えば4%以下だと是正措置になるとか、自己資本比率で管理・規制を受ける。金融機関のストレステストとは、ベースラインシナリオとしてGPD成長率X%、失業率Y%で、業績がどうなるかの予測をし、更に悪化シナリオのGDPや失業率で、業績予測をする。当然その銀行の貸し付けポートフォリオやビジネスのポートフォリオにより、異なってくる。単純に、自己資本比率のみで判断するより、判断材料が増加し、実態がよりよく分かることとなる。当然、自己資本比率の考え方も継続するのであり、銀行検査の項目が一つ増加したことにある。

3) 原発のストレステスト(ヨーロッパ)

ヨーロッパとは、様々な国が国境を接して存在する。国家とは何かと言えば、国家とは主権を有するのであり、法を作ることができる。どのような兵器を持つか、原発を持つか、原発の安全基準をどうするかは、国家が決められる。ヨーロッパ連合(EU)は、加盟各国の主権を認めた上で、合意に達することができることについては共通にする方が、ヨーロッパの発展、ヨーロッパ各国の発展には、良いという考え方です。

そのような中で、WENRA(Western Europe Nuclear Regulators' Assocision)という組織があり、WENRAが原発のストレステスト実行を3月23日に発表しました。(WENRA statement on the Fukushima NPP accident)次のように書いてあります。

・・・・a WENRA task force is working to provide urgently an independent regulatory technical definition of a “stress test” and how it should be applied to nuclear facilities across Europe.・・・・・

The aim of the work is to see what improvements to nuclear safety may be appropriate in light of the Fukushima nuclear accident, as far as it is understood.・・・・・

福島原発事故を受けて、安全基準を見直すために、ストレステストをしてみようと言うことです。ある意味では、隣の国の原発について何も言えない。それ故、EUが音頭を取り、WENRAが統一基準のストレステストを提唱する。ヨーロッパ的スマートさもあるが、ドロドロした部分も感じられる気がします。

4) 日本の原発ストレステスト

この7月11日の枝野幸夫、海江田万里、細野豪志の文書を読んで、理解ができないのです。「原子力安全・保安院による安全性の確認について疑問を呈する声も多く、国民・住民の方々に十分な理解が得られているとは言い難い状況にある。」のでストレステストを実施すると読める。今の安全性の確認で国民から支持がないなら、ストレステストをしてみても、理解が得られるとはならず、意味ないと思う。菅直人とバカ3人が、納得しても意味はない。情報開示をして、説明をしていないことに問題があるのに、それを認識できない。

ヨーロッパもWENRAが発表したのであり、ストレステストを実施する理由は、福島の事故を教訓に追加でストレステストを実施するのである。運転を止めるということで、実施するのではない。

5月に浜岡原発を停止した時のことを思い出すが、当時首相は「これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫をしております。」と述べた。気象庁のWebを見ると、このQ/Aページには、「必ず予知できるのかとの問いには、「いいえ」となります。」となっている。30年間に87%は、日本中ほとんどの地域でも、あてはまる気もする。

3バカトリオの文書には、「(現行法令では関与が求められていない)原子力安全委員会」とあるが、何を言っているのか、理解できない。原子力委員会及び原子力安全委員会設置法第13条は、次です。

原子力安全委員会(以下この章において「委員会」という。)は、次の各号に掲げる事項について企画し、審議し、及び決定する。   [一 省略]
  核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること。
三 ・・・・省略

全てが狂っている民主党マニフェストにある政治主導とやらで、独裁政権を維持し、国民に嘘をつき続け、国民の財産を食いつぶし、国民の間に不信感を大きくすることをしているように思える。

日本は、法治国家と言われてきた。法を無視して、政府が口を出すことは、すべきではない。不都合があるなら、法改正をすべきである。発言の自由は、首相や大臣にも勿論ある。しかし、法にないことを要求することはできない。

5) 原子力安全委員会の発表

冒頭の読売の記事には、「内閣府原子力安全委員会が原発再稼働の認定に関与する形になったことを自賛したものだ。」とあるが、これもよく分からない。原子力安全委員の発表はこの文書であるはずだが、これも理解しづらい。

原子力安全委員の発表には、ストレステストを原発の運転・停止の条件とは書いていないし、議論していない。国民が、投げかけたい質問は、「福島原発の事故を考慮した上で、(現状では分析が終わっておらず、不確定要素が入るが)、定期点検を終了した原発は安全が適切に確保されていると考えてよいか、事故を受けて、安全基準は変えたか、変えたのなら、どう変えたか?」である。

政治主導は、国を滅ぼす。主権者主導、国民主導、人民主導の国を作るべきである。

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2011年7月 2日 (土)

原子力発電と地元

九州電力の玄海原子力発電所の定期点検後の再開に関するニュースに関連して、原子力発電所について考えてみたいと思います。ニュースとしては、

読売 7月1日 玄海原発再稼働、佐賀知事が改めて容認姿 と

読売 7月1日 玄海原発、安全性クリアは疑問…佐賀知事に質問

であり、記事を読んで、2つのニュースの間に隔たりがあると感じる。最終的な、行方は、未だ分からないと思う次第。頭をひねって考えてみます。

1) 県・市町村との原子力発電所の安全確保に関する協定書

玄海原発に関しては、佐賀県及び玄海町(地元県・町)と九州電力との間で、「原子力発電所の安全確保に関する協定書」が締結されている。当初締結1972年11月6日、最終改訂2005年1月1日で、その協定文は、この佐賀県のWebにあります。

協定書第4条で、事前了解が規定されており、原子炉施設の変更、土地の利用計画及び冷却水の取排水計画を変更や新燃料、使用済燃料及び放射性廃棄物の輸送計画の策定について、九州電力は地元県・町からの事前了解を得なければならない。しかし、定期検査終了後の運転復帰に関して、地元県・町が許可を与える権限はないと考える。

発電用原子炉の定期検査は、電気事業法54条や電気事業法施行規則に定められており、13月、18月または24月以内のインターバル(2008年12月までは13月以内のみ)で実施し、終了時に経済産業大臣から定期検査終了証が交付される。発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令を含む技術基準に合致していれば、定期検査終了と認められるのであり、安全確保を目的としての定期検査は、技術面の判定であるべきと考えられる。

一方で、福島原発事故による放射性物質の飛散は、原発地元にとっては、極めて気にかかることであり、定期検査を終了し、運転を再開するなら、再開前に、安全について納得できるまで、十分な説明を受けたいと要望するのは当然と思う。協定書の特定の条項になくとも、協定書の背景にそのような情報開示・説明があると考える。

2) 地元県・市町村

協定書は、佐賀県及び玄海町とのみ締結されているが、地元としてどこまで含まれるかについてです。玄海原発付近の地図は次です。

玄海町を唐津市が取り囲み、唐津市の最も原発に近い所から原発までは、1kmも離れていない。唐津市にしてみれば、万一事故があれば、避難区域に入ると心配せざるを得ない。唐津市民にも、納得できるように説明をと要望しても当然と思えるし、協定の当事者でないとして、説明を拒否することも不適切と思う。

玄海原発から20km圏内を含めると、福岡県糸島市も境界付近が少し入る。協定当事者として、あるいは協定当事者と同等の扱いを受ける県・市町村として福岡県や糸島市も含まれるべきではないかと思える。福島で立ち入り禁止区域となった20km以内が県境を超える原発を調べてみると、他にも存在する。
島根原発 18.4km 鳥取県境港市
美浜原発 16.2km 滋賀県長浜市
敦賀原発 13.6km 滋賀県長浜市
高浜原発  3.2km 京都府舞鶴市
大飯原発 16.6km 京都府舞鶴市

浜岡原発の協定書における県と市は、静岡県、御前崎市、牧之原市、掛川市及び菊川市であり、10kmを基準としていると思うが、当事者が多い協定も存在する。

協定書は、法的に有効と考えるが、裁判で争う性格ではなく、関係当事者が真摯に協議して対処する以外に方法はないと考える。その意味でも、協定書に含まれていなくても協定当事者と同一の扱いをすべき県・市町村も存在すると考える。果たして、20kmなのか簡単に言えないが、参考として各原発から放射性物質が漏洩した場合のSPEEDIのシミュレーションを公開することである。福島原発は、西風の場合、太平洋に飛んでいく状態であった。しかし、他の原発は、それほど単純ではないはず。放射性物質の漏洩など考えたくないが、国民を欺くことは、すべきでない。

3) 地元県・市町村が原発停止可能か

協定上は、地元県・市町村に、そのような権利はない。しかし、5月に菅首相は、運転中の浜岡原発を停止した。権利・権限がないにも拘わらず、中部電力が違反をしたわけでもないのに、技術基準に変更があったのでもなく、地震の確率が高いとして停止を依頼した。それなら、地元に住む人に、同じ権利・権限があっても、おかしくはないと考えられる。地元に住まない菅直人にあるなら、直接に影響を受けるかも知れない地元に住む人には、もっと大きな発言権があってもおかしくはない。

技術的な理由、あるいは基準として賛同できる理由、すくなくとも普遍的な合理性を持った理由が欲しい。津波は、海があれば、どこでも生じ得るはず。大津波の発生確率なんて、合理的に推定が可能と思わない。福島第一1号機-4号機事故は、海面から10m高さの地面(GL)に14-15mの津波が来た。全ての原発の地面高さ(GL)は、公表されているのでしょうか?実は、福島第一1号機-4号機のGLよりも低い原発があるのではないでしょうか?例えば、浜岡原発はこの中部電力の説明によれば、海との間に10-15m高さの砂丘があり、原発のGLは6-8mです。何とも評価できません。福島第一原発は、外部電源が復旧しても原発が受電不可能であったのです。津波ではなく、地震で損傷したのです。

考えると果てしなく不安が広がる。福島原発事故の報告書と、事故から学ぶべき改善点の報告が十分な情報開示と共に欲しいのです。それがないから、菅直人と同じ思考形態になってしまう。正しい論理性を持って作られた社会にすべきです。さもなければ、暗黒の日本になると思います。

4) 節電厳しく疲弊する恐れ

東京電力と東北電力の管内で電気事業法の電力使用制限令の適用が始まったようですが、供給不足は、冬そして来年と厳しさが一段と増えるように思います。本日現在、稼働中の原発の合計出力は18,159MWです。定期点検が終了しても、運転が再開されなければ、運転中の原発が順次定期点検となり、稼働中の原発は少なくなっていく。勝手な試算ではあるが、イメージとして掴むのに容易かと思い、グラフを書いたのが次です。

Nucleargenece20117

念のため、個別の発電所毎の実績と、定期点検停止予想時期を書いた表も掲げます。

Nucleargenece20117a

脱原発を目指すとしても、直ちに原発を停止・廃止できず。地元の人と多くの日本住民の理解が必要と思います。そのためには、情報公開と住民参加が欠かせないと思います。そんな中で、今のような独裁ではなく、民主主義が形作られていけば良いと思いますが。

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