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2011年7月27日 (水)

再生可能エネルギー特別措置法、つくるなら良い法律を!

再生可能エネルギー特別措置法が、国会に提出され、審議が始まっているが、6月9日のブログに書いたように、拙速ではない国民と社会を幸福にする法律を作って欲しいと思います。

1) 菅首相退陣を法律作成の理由にするのは、本末転倒

どう考えても、本末転倒です。首相退陣と新たな法をつくることは、全く関係のないことです。首相の退陣も新たな法律制定も、本来は国民が決めることで、関連づけることは、国民をないがしろにしていると思う。

再生可能エネルギー特別措置法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は、その内容や条文が、国民と社会を幸福にするかという点で、議論を行い、必要と認められるなら、修正をして、立法をすべきである。

しかし、現実には、次のような読売の報道がある。

読売 7月26日 退陣3条件、満たしても首相居座りも…自民懸念

2) 経済産業省による価格決定は、目指すべき方向なのか

再生可能エネルギー特別措置法の法案は、3月11日の経済産業省 報道発表 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案についての発表資料にあります(あるいはここにもある。)。やはり、問題が多いと思います。例えば、次の第3条1項と第29条が買取価格と電気料金についての条文です。

(調達価格及び調達期間)
第3条
 経済産業大臣は、毎年度、当該年度の開始前に、電気事業者が次条第一項の規定により行う再生可能エネルギー電気の調達につき、経済産業省令で定める再生可能エネルギー発電設備の区分ごとに、当該再生可能エネルギー電気の一キロワット時当たりの価格(以下「調達価格」という。)及びその調達価格による調達に係る期間(以下「調達期間」という。)を定めなければならない。

(再生可能エネルギー源の利用に要する費用の価格への反映)
第29条
 国は、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用の円滑化を図るためには、当該利用に要する費用を電気の使用者に対する電気の供給の対価に適切に反映させることが重要であることに鑑み、この法律の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得るよう努めなければならない

第3条5項で、買取価格について、総合資源エネルギー調査会の意見を聴くことになっているものの、決定は経済産業大臣です。多くの法律で、政令や省令で詳細を決めることにしている場合はあります。しかし、このような制度の根幹部分を大臣が決定するとし、しかも、その詳細な手続きについても定めがない。これでは、政府による統制経済です。市場原理では成立しないから、政府が価格を統制するというのは、行き過ぎです。市場主義の良さを残しつつ、ルールで育成すべき分野を優遇したり、補助金を出すのが本当の姿のはずです。この案は、補助金という名前を使っていないだけで、実は、消費者が電気料金の値上げという名目で負担をし、再生可能エネルギーへの投資者に補助金を支出する仕組みです。

その仕組みついての議論をすると横に逸れそうなので、やめるとし、せめて値上げ幅や買取料金ついては、消費者も参加する価格委員会を設立し、価格委員会が決定するとすべきと考えます。毎日新聞は、7月25日に再生エネ法案:価格は「第三者が決定」--民主・安住氏で、NHKの討論番組で述べたと報道していますが、そうであれば、価格決定メカニズムについて、必要な時間をかけ、消費者・産業界・電気事業者・再生可能エネルギーのディベロパーを含めた関係者と討論会をする等をして、国民が納得できる価格決定方式で進めるべきです。今のままでは、一部の者に有利で、国民の多くは高い電気料金に苦しみ、産業は安い電気を求めて海外移転をしというような悪夢が出てくるかも知れない。

3) 現行のRPS法

似通った名前ですが、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」という法があり、RPS法と称され、2002年6月に公布された。資源エネルギー庁のRPSホームページがここにあります。この法律は、電気事業者による電気供給のうちの一定量を再生可能エネルギーにより発電した電気とすることを義務づけています。その一定量は、毎年増加し、2010年度は全電気事業者の合計で11,015GWhでした。日本の電気の供給量は自家発を含めこれのように1,045,084GWhなので、1%がRPS法による再生可能エネルギーです。でも、小さい数字ではありません。沖縄電力の供給量より大きいし、125万kWの原発が1年間フル稼働して発電する量より大きいのです。

RPS法で義務となる再生可能エネルギーによる一定の発電(又は買電)量は経済産業大臣が決定することとなっているが、購入価格は市場原理です。義務を果たせずペナルティーを払うか、高値で買うか、いずれにせよ低コストを目指して、電気事業者もディベロパーも頑張ります。電気料金への跳ね返りも、市場競争原理です。

RPS法の方が、よっぽど好きです。ところが、このRPS法を廃止するのです。再生可能エネルギー特別措置法附則第7条です。現行の太陽光発電の買取については、RPS法の別枠による推進です。電気事業者のRPS追加購入義務を解放したいとして、廃止するのでしょうが、市場経済から統制経済への移行に思えて仕方がないのです。

4) その他

5月31日に問題多い休耕田や耕作放棄地での太陽光発電で、安易に国土を太陽光発電に振り向けることの危険性を書いた。農業・食料生産は、人が生きていくために、どうしても必要です。耕作放棄地で太陽光発電をするなら、株式会社が耕作放棄地で農業をすることを認めて良いように思います。仕事が減少した地元の土建屋さんが耕作放棄地で農業をすることが良いように思います。

7月26日の英Guardianの記事です。Engineers race to design world's biggest offshore wind turbinesは、10MWの洋上風力発電について書いている。何故、そんな大きさにするかは、スケールメリットによるコストダウンです。今や、風力は海洋に移ったようにも思える。最も、日本で、風力発電をする場合に、山林破壊には十分注意すべきと考えます。風力発電により山崩れが発生することは嫌です。景観破壊もあります。

RPS法のホームページから様々な資料がダウンロードできます。そこで、2010年度のRPS法による再生可能エネルギーによる発電(買取対象の太陽光を除いて)を見ると、風力が46%で、バイオマスが42%だったのです。これが意味することは、風力とバイオマスはコスト的に有利なのです。バイオマスは、このRPS Webにあるように破棄物が多いが、間伐材を利用できないかと思います。あるいは、割り箸推奨運動をして、割り箸燃料による発電は、どうでしょうか?

なお、コストに関しては、電気事業者の隠れたコストがあり得えます。例えば、風力発電設備が100MWあったとして、同じ規模の別の発電設備が必要です。風力は、風の都合で発電量が変動するのであり、風が止んだ時のためのバックアップが必要だからです。この場合、設備のみならず運転要員や保守要員も、必要である。太陽光も同じことが言えるが、この三菱電機の資料には「天候変化の影響を受けやすい太陽光発電の発生電力は雲の移動でも変化し、普及がこのまま進展すると、配電系統の電力の流れが分刻みで急変します。電力の流れの急変は系統電圧の変化となり、従来の配電機器だけでは適正電圧(95~107V)の維持は困難となることが懸念されます。」と書いてあり、電圧等が不安定になる可能性があり、対策の検討は必要です。発電が需要と無関係である場合は、それを調整する何かが必要であり、その為のコストは発生する。地産地消と簡単にはいかない部分がある。ドイツで多くの風力があるのは、ノルウェイの水力があるからだと耳にしたことがあります。

電力の自由化・市場取引・自由取引を推進し、スマートグリッドを追求し、市場経済による合理性の追求が、どうしても欠かせないと思います。それと自然エネルギーという言葉は嫌です。石炭・石油・原子力全て自然エネルギーのはずです。化石エネルギー、原子力、再生可能エネルギーと正しく言葉を使うべきと考えます。大規模水力も、世界標準を適用して、言葉としては再生可能エネルギーと呼ぶべきです。

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