« 再生可能エネルギー特別措置法、つくるなら良い法律を! | トップページ | 粉飾決算は許されるべきではない »

2011年7月28日 (木)

ニイウスコー事件で検察は懲役5年、罰金1千万円を求刑

横浜地裁で、ニイウスコーの元代表取締役大村紘一被告の刑事裁判が結審し、検察は懲役3年、罰金500万円を求刑したとニュースがあった。神奈川新聞の記事を掲げます。

神奈川新聞 7月5日 ニイウスコー事件、懲役3年などを元副会長に求刑/横浜地裁

ニイウスコー事件については、3年以上前になるが、2008年5月14日にニイウスコーの推理で取り上げたことがあるので、今回少し書きます。

1) 300億円、400億円を超える粉飾

神奈川新聞の記事には、「2年間の粉飾額は売上高ベースで274億円、経常利益ベースで115億円に上るとされる。」となっており、300億円、400億円より少額です。(これを少額というと、常識がないと言われそうですが)

ニイウスコーが民事再生手続きの開始を申請したのが、2008年4月30日で、その時に同時に過去5年間(2002年7月1日から2007年6月30日まで)の決算短信の訂正を発表しています。(ここにあります。)この訂正発表に、5年間の合計欄を付け加えたのが、次の表です。

Photo_3

決算短信の訂正発表にもあるように売上高の粉飾額合計は、連結で682億円、単体で373億円、当期純利益で連結276億円、単体419億円です。(純利益は、単体が何故こんなに金額が増加するのか不明ですが)

神奈川新聞が伝えている274億円、115億円は、記事の中にも「2004年7月以降」とあり、2004年6月以前については時効により刑事罰の対象とならなかったのではと、勝手に想像します。

要は、ライブドアなんて、チャッチイ粉飾ではなく、欺しに欺した419億円(単体の純利益粉飾額)だと思います。報道では「違法な粉飾決算に加担しているという認識はなかった」と主張したのだから、相当なものです。最も、そうであるから、こんな大粉飾が可能であったのかも知れませんが。

2) 何故大粉飾が可能であったか

そのようなことができる人物であったというのが一つだと思う。そして、2008年5月14日に書いたように、日本アイビーエムと野村総研と言う名前を、最大限利用したのでしょう。ちなみに、大村紘一は、日本アイビーエム昭和41年入社です。同じく、起訴された末貞郁夫も日本アイビーエム昭和46年入社です。刑事責任を問われたかどうか不明であるが、割方美奈子も日本アイビーエム昭和63年入社です。

宣伝文句として「当社は、日本IBMと野村総合研究所(NRI)によって設立されたニイウスは、最先端のハード、アプリケーション、それに高度なSEサービスを組み合わせた事業展開のもと、情報システムを構築するソリューション・プロバイダです。」と言って、仕事を取っていくやりかたです。循環取引をして、金を払わない時に、随分役に立ったのでしょう。東証2部上場が、2002年4月、第1部銘柄になったのが2003年6月であり、上場するなり大規模粉飾に精を出したというすごい会社・人達です。(上場したら粉飾しかしなかった)

3) 監査法人トーマツは

粉飾の5年間の全期間が、トーマツであったか確認できていないが、トーマツの2010年9月期の貸借対照表の重要な係争事件としての注記を見てみると、奇妙なことがあります。ニイウスコーの株主たる3事業体及び個人株主3名から合計15,636百万円の損害賠償を受けて係争中であることが書かれているが、1年前の2009年9月期は、同じ注記の金額は1,199百万円であったのです。10倍以上も膨らんだ。

ソフトウェアって、本当に難しくて分かりづらいですね。それが、最近はクラウドの世界なんて、ついて行くのも大変になってきた。でも、何とかついて行かないと、取り残されてしまう。そして、挙げ句の果てには、欺されてしまう危険性があるのかも。

|

« 再生可能エネルギー特別措置法、つくるなら良い法律を! | トップページ | 粉飾決算は許されるべきではない »

コメント

2被告とも東京高裁に控訴しましたね。この会社は初めからI社の「トカゲのしっぽ」だったんだと思います。主だった幹部のほとんどはI社のある金融営業部つながり。氷山の一角ですよね。一般投資家は知る由もない。粉飾は絶対に許されるべきではない、そう願ってはいても、現実は・・・。だからこそ、厳重に調査し、処罰してほしい。

投稿: さくら | 2012年3月24日 (土) 19時24分

さくら サン

コメントありがとうございます。

I社の「トカゲのしっぽ」ですか。そう考えて不自然でないなら、I社とは恐ろしい存在ですね。I社の営業(同業他社も同じようだと思いますが)とは、費用・金額・納期・性能についてはコミットをしてはならないとの噂を聞いた聞いたことがあります。ソフトとは、そのようなことに馴染みにくいモノではあるが、行くところまで行くと恐ろしい。

2011年9月20日の懲役3年の実刑判決の次の記事を読み、また書いていただいたコメントの2被告とも東京高裁に控訴からしても、悪いことをしたとの反省を、少なくとも、公的にはほとんどしていないのでしょうね。
http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C93819499E0E2E2E1968DE0E2E2EBE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;da=96958A88889DE2E4E1E2E5E0E6E2E0E7E2E6E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2

投稿: ある経営コンサルタント | 2012年3月25日 (日) 11時13分

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1005190059/

上記記事によると、第一回公判の検察冒頭陳述では、外部監査法人から指摘されていたが、会社側(ニイウス?)の説得で公表されなかったとありますが、これでは無意味ですよね。AIJ事件もそうですが、監査法人としての公認会計士としての職務を全うしてほしいものです。

そもそもこの会社は、バブル崩壊後I社の業績悪化でリストラが実施された時期に創業しています。

投稿: さくら | 2012年3月26日 (月) 00時37分

最後の有価証券報告書平成19年6月30日期の監査法人はトーマツですね。
当時も、トーマツであったのか、調べていませんが、粉飾あるいは粉飾の疑いが濃厚であったなら、適正意見の監査報告書を書くべきではないと確信します。
但し、会社側の説明でごまかされてしまったと言うべきか、説得されて適正意見を出してしまった可能性もあると思います。ITソフトの資産・負債の評価の難しさ(逆に言えば、ごまかすことが簡単である。)があると思います。

私が、本文に掲げた表で、2007年6月期のB/Sでは、単体で資産の減少65億円に対して純資産の減少は312億円である。このことからすると負債が247億円増加している。連結では、純資産額の減少が339億円であるので、減少額の大部分は親会社での減少である。販売をしていて、それを同時に買い戻しをして、売り上げとして販売のみを計上したと推測します。ITソフトなんて、このサーバーの中にあると言われても、実際にそのソフトを使ってみないと評価できないと思いますから。

そういえば、ニイウスコーのもう一方の株主ですが、こちらの会社を退職した方々もAIJやオリンパス他ずいぶん派手に問題を起こしていますね。個々の人の人間性が一番大事だと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2012年3月26日 (月) 11時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ニイウスコー事件で検察は懲役5年、罰金1千万円を求刑:

« 再生可能エネルギー特別措置法、つくるなら良い法律を! | トップページ | 粉飾決算は許されるべきではない »