余りにも簡単に除染が叫ばれているように思います。例えば、次のような発言をする人がおります。
読売 8月13日 災害廃棄物の最終処分場、県外に…細野原発相
まず、福島原子力発電所の放射性廃棄物は全て東京電力が対応するはず。それ以外の放射性物質が付着した廃棄物は、県外で引き受ける所があるとは、思えない。現政権特有の無責任発言としか思えない。政権についた当初、普天間基地について、最低でも県外と断言していた人達です。
無責任発言で片付けて良いわけはない。(どうせ自分たちの政権は、次の選挙以降で消滅するからと、無責任な言動や行為をしてはいけない。)現実の姿を見、地元や日本、そして世界のことを思えば、どうすべきか、少し考えてみます。
1) 発生源で止めることが先ずは必要
福島第一原子力発電所からの放射性物質の飛散を止めることが必要である。東京電力は、「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋当面の取組のロードマップ」で、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」をステップ2の目標とし、早ければ9月末(順調に行って?12月末)としている。放射性物質の放出コントロールが、やはり、何より必要と考える。
1号機については、6月23日の発表のような原子炉建屋カバーを設置し、建屋カバー内部を密閉し、内部の空気は全てフィルターを通して外部へ排気筒から排出する仕組みである。9月末から11月末の間に完成予定とのこと。2、3、4号機にも設置して欲しいと思うが、これらは少し寸法が大きいからであろうか、その後3年間の中期的課題とした原子炉建屋コンテナ設置で対応するものと思う。
一方、8月1日午後2時30分頃に10SV/h以上の放射線量率が1・2号機主排気筒底部付近で確認されたとの発表があった。敷地内に放射性物質が未だ他にも存在すると思う。いずれにせよ、東京電力が、発電所からの放射性物質の飛散をなくすよう、収束に係わる工事を実施して欲しい。第2ステップの終了が、その第一歩であるなら、データを公開し、確認のために、希望する団体には、現地での計測を認めて良いのではと思う。
2) 違法状態を解決し必要な立法措置をとれ
東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授が、7月27日の衆議院厚生労働委員会に出席し、その発言が話題になっている。例えば、読売 8月12日 原発放出物質対策、時限立法制定を…東大教授提言や読売 8月19日 放射能と暮らす(番外編)本格除染 長期的な視点でである。
7月27日の衆議院厚生労働委員会には、放射線医学総合研究所明石真言理事、日本学術会議唐木英明副会長、長崎大学長瀧重信名誉教授、名古屋大学沢田昭二名誉教授および京都大学原子炉実験所今中哲二助教も出席し、発言しておられ、衆議院のWebに議事録が既にアップされていることから、時間があれば、一読することを勧めます。(報道は、常に部分的なので、各参考人とも、自分の分野は、その中で発言内容を短い中に纏めようとされており、参考となります。)
児玉教授については、この委員会で、「私ども東京大学には二十七カ所のアイソトープセンターがあり、放射線の防護とその除染などの責任を負っております。」と自らを紹介している。児玉教授は、南相馬市の除染に協力しているのですが、「私の現在やっているのは、すべて法律違反です。」と述べているのです。
解説をすると、
A) アイソトープとは、放射性同位元素であり、これ即ち放射線を出す物体(元素)であり、放射性物質のことです。東京大学でも、実験・研究用にアイソトープ(放射性物質)を保管・使用しており、児玉教授は、その責任者です。
B) ところが、児玉教授も共に活動している東京大学の人達も、アイソトープである放射性セシウム(Cs134やCs137)を扱っていはいけないのです。放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(障害防止法)に対する違反となります。
C) Cs134やCs137に関する許可を得ていないからですが、南相馬市の人が許可を得ている訳ではなく、児玉教授は「お母さんや先生たちに高線量のものを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて東京へ持って帰ってきております。」となるのです。
政府も議会も必要なことに、何も対応ができていない。だから、児玉教授の次のような発言になります。
全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムを初め最新鋭の機器を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって国民の総力を挙げて子供が守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります。国策として、土壌汚染を除染する技術を、民間の力を結集してください。例えば、東レだとかクリタだとかさまざまな化学メーカー、千代田テクノルだとかアトックスというような放射線除去メーカー、それから竹中工務店や何かさまざまなところは、放射線の除染などに対してさまざまなノウハウを持っています。こういうものを結集して現地に直ちに除染研究センターをつくって、実際に何十兆円という国費がかかるのを、今だと利権絡みの公共事業になりかねない危惧を私はすごく持っております。国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません。
付け加えれば、次のような発言もあります。
このときに枝野官房長官が差し当たり健康に余り問題はないということをおっしゃいましたが、私はそのときに、実際にこれは大変なことになると思いました。・・・
私どもは、アイソトープセンターのいろいろな知識をもとに計算してみますと、まず、熱量からの計算では、広島原爆の二十九・六個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では二十個分のものが漏出していると換算されます。さらに恐るべきことには、これまでの知見で、原爆による放射線の残存量と原発から放出されたものの放射線の残存量は、一年たって原爆が千分の一程度に低下するのに対して、原発からの放射性汚染物は十分の一程度にしかならない。つまり、今回の福島原発の問題は、チェルノブイリと同様、原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したということがまず考える前提になります。・・・・・・
どうやって除染を本当にやるか。七万人の人が自宅を離れてさまよっているときに、国会は一体何をやっているのですか。
3) 障害防止法の許可不要の範囲
障害防止法は、文部科学省の管轄であり、このページから関連資料を取り出すことができます。ちなみに、障害防止法は、これです。セシウム(Cs134とCs137)の場合、許可不要なのは数量基準で10,000Bq以下、濃度基準で10,000Bq/kg以下です。(放射線を放出する同位元素の数量等を定める件[平成12年科学技術庁告示第五号、最終改正 平成21年10月9日])
現在、下野新聞 8月10日 下水道汚泥、県内6カ所に分散保管へ セシウム汚染問題 5500トン分、来年6月までというようなニュースが相次いでいます。濃度が1キログラム当たり29000ベクレルなので、たちどころに、不法保管であり、量の基準からしても、既に濃度でダメであるが、ちなみに10000Bqでは、344グラムしか保管できない。勿論、運搬も、まして、処分なんて、とんでもないことになる。
これが、今のバカ内閣の実態なのです。除染と言って、放射性物質を水で洗い流しても、それが下水から処理場に流れ、下水汚泥になる。勿論、雨で流されて下水処理場に来る放射性物質も多い。下水処理場の人達の放射線防護は大丈夫であろうか。
除染とは放射性物質を集めることであり、無くすことではない。冒頭に書いたことであるが、除染した放射性物質をどこに捨てるのか?おそらく、地中埋設しかないと思う。深さをどうするか、容器が必要か、情報を公開して議論が必要である。おそらく、市町村毎に、その市町村内に処分場を設けるしかないと思う。よその市町村で発生した放射性破棄物を引き受けるほど、どこの住民も寛大ではないと思う。自分の市町村の分でも反対運動が起こり、処分場を見つけられない市町村では、放射線レベルが下がらないという現象が起こるのだろうか。
4) 測定・調査・情報公開
現内閣は、何をとっても最低内閣。例えば、ここに文部科学省と栃木県が7月27日に発表した航空機モニタリングの測定結果の発表がある。セシウム(Cs134とCs137)が、どのように拡散しているか全体像がよく分かる。ところが、この発表を文部科学省のWebから探そうとすると、幾ら頑張っても探し出せなかった。そして、他の県の測定結果も探し出せない。
極端な秘密主義である。例えば、経済産業省資源エネルギー庁のWebになるほど!原子力AtoZというページがあるが、「現在改定中です」と出てくる。都合の悪いことは、全て隠すという最悪の内閣である。
現状を知り、情報を公開し、公開の場で議論し、それを実践に移すことが重要です。児玉教授の委員会での発言に「プルトニウムを飲んでも大丈夫と言う東大教授がいるというのを聞いて、私はびっくりしましたが」とうのがあり、ほんとにトンデモ発言です。プルトニウムは、アルファー崩壊をします。今、XXシーベルトとか言っているのは、基本的にガンマ線です。アルファー崩壊が起こると、アルファー線が出てくるが、正体はヘリウムです。破壊力は、ベータ線、ガンマ線の何十倍もあり、しかも内部被爆の場合は、直撃です。トンデモ発言は、公開の場の議論で、是正されると考える。
私は、本当は、何が怖いのか分かりません。福島原発から、どれだけの放射性物質が排出され、その核種内訳(核種とは、放射性物質と同じであるが、例えば、セシウムにも134とCs137があり、同じ元素で中性子の数が違うので、134とCs137を別物と区別し、核種と呼びます。)、それらがどのように飛散したか、そして人体、食物、動植物、社会活動その他への影響はどうであったか、様々なことを調査し、かつその調査を継続する必要があります。
地球上から原発が消え去るわけではない。原爆も消えない。原発事故も原爆投下も、実は、これから先ないと誰も言えない。福島の事故は、人類に貴重なデータを残したと、後々の人が言うことは、悲しいことかも知れない。しかし、データも残さなかったら、現内閣と同じで、最低の人達になってしまう。
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