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2011年9月30日 (金)

復興増税の論点を考える

復興増税は、9兆2千億円との報道がなされている。復興増税が必要かとの議論や、増税額についての議論も必要であるが、9.2兆円を復興増税として課す場合に、何を考えるべきかと言う論点を整理することも必要であるはず。そのような、観点で以下に書いてみます。

1) 法人税増税

どうもよくわからない。この9月29日日経記事復興増税の規模を抑える不断の努力をのように、法人税については、「約40%の法人実効税率を5%引き下げたうえで、12年4月から3年間にわたって法人税に10%の定率増税を課す。」とするなら、次の計算になるはず。

(40% - 5%) X (1 + 10%) = 38.5%

復興増税になっていないと思う。10%増税は、3年間なので、4年目からは、35%の税率適用で減税になるはず。とりあえずの3年は1.5%減税で、3年を経過すれば5%減税の恩恵が適用される。

この5%減税とは、本年の税制改正で、30%の法人税率を25.5%に改正しようとした案である。何故30%が40%になるのかは、法人税割り地方税と事業税を加えた実効税率で考えた場合の合計実効税率である。法人税の話は、税率を25.5%へと来年の税制改正で実施し、その上で復興税制として税額の10%を追加課税する案である。

見送られた平成23年度の法人税改正案には、減却償却方法の変更、欠損金の繰越控除額の80%制限、貸倒引当金の廃止(金融機関等を除く)があった。これらの改正も実施する案で動いているようであり、どさくさに紛れて、国民を蚊帳の外に置いて、税制を決めていこうとしているように思えてしまう。むしろ、法人税は復興増税の対象とせず、改正は見送ることとし、所得税、消費税、相続税の全体バランスの中で長期的課題として、国民的議論の中で進めるのが、本筋と思う。

2) 所得税増税

法人税では、税率を下げても、課税範囲の拡大があるので、税額ではほとんど変わらないとすれば、9.2兆円は、所得税増税で賄うこととなる。所得税区分の全てとするのかの議論はあるが、乱暴に言えば、10年間所得税が10%増税となることを意味する。即ち、10年で1年分所得税を余分に支払うこととなる。しかし、これだけの税額だと、よく考えないと、重税感を味合うかも知れない。

上の日経記事には、「13年1月から10年間、所得税に4%の定率増税」とあり、日経も、政府からの情報で書いているはずであるが、我が計算は次のようになり、計算が合わない。政府は説明をすべきである。

平成23年度所得税収入予算: 源泉所得税11兆1720億円、申告所得税2兆3180億円
                   (合計13兆4900億円)

13兆4900億円に4%追加課税しても、年間5396億円にしかならず、10年で5兆3960億円である。

所得税の中には、利子の所得税のように15%(地方税を含め20%)課税で終了している所得税もある(平成21年6619億円)。利子の所得税も増税するのか、同様に証券関係の課税がある(配当源泉税1.6兆円)。給与の源泉所得は、平成21年度は8兆6269億円であった。

9.2兆円の課税も容易では、なさそうである。但し、地方税(県民税、市町村民税)も増税するなら、様子は違ってくる。もっとも、地方税を増税するとなると、被災していない地方でも増税が生じ、被災していない地方の自治体の税を、被災地の自治体が支出することが可能かという問題も発生する。

3) 単純追加課税 or 超過累進

上の日経の記事は、「所得税の定率増税は中高所得層の負担が必要以上に重くならないよう注意してほしい。」と述べている。しかし、これに対しては、「低所得者層の負担が重くならないように、工夫すべきである。」との全く逆の考え方も成り立つはずである。

次の2つの円グラフは、国税庁の平成22年分民間給与実態統計調査から作成した。分布状況が、税額で見る場合と人数で見る場合で、全く異なることが分かる。

Salarysurvey2011a

Salarysurvey2011b

人数では少ない高額所得者が税額では大きい。これは、次のグラフでも確認できる。

Salarysurvey2011c

所得税のみなら、給与額1000万円以下をどうしようと大きな問題はないかも知れない。但し、地方税も増税するなら、給与額1000万円以下の人にとっては、地方税の方が、金額が大きい。そもそも、所得が低い人ほど、生活が苦しいのであり、更に増税で苦しみが増加する。影響がないのは、生活保護の人となってしまう。(最も、生活保護とは最低レベルのはず故、下げようがないのであるが。)そうすると、例えば、仮の金額であるが、所得100万円以下は増税なし、100-700万円は3%、700万円超の部分は6%という風に、復興増税も所得税額を課税標準とするが、超過累進税率とする方法もあるように思う。

4) 支出の合理性

年金と医療保険の制度維持のために、否が応でも、今後増税の道を進まざるを得ない状況である。その上、復興増税の余裕なんて、全くないのが実態である。でも、復興はせざるを得ない。その時に、復興費用をムダに支出することは、許されるべきではない。ある金額までは、地元の地方自治体に任せることとし、地元が描く将来像のために支出するとしては、どうかと思う。極力中央の紐付きは止めるのである。

地元は、○○については、国の方で実施して欲しいと要望してくる。これを、「国など何も出来ない。政府が徴収した国民の血税を地方に分与するので、地方自治体が最も有効と考えることに支出して欲しい。」と、回答するのである。

増税分与の基準は必要であるが、具体的な使途に関する基準は中央では決めず、県をまたがる鉄道、道路と言った政府が整備すべきインフラ整備を政府が実施し、それ以外は地方自治体というのが、合理的なように思うが、どうであろうか。

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