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2011年10月31日 (月)

TPPについて

TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership)の交渉参加について、できるだけ早期に結論を出すと、野田首相は10月28日の第179回国会における所信表明演説で述べています。(演説はここ

1) 経団連の賛成論

企業発展、産業発展を、国境を越えた市場原理で追求すると考えた場合、TPPのような推進方法は、望ましいと考えて当然と思います。経団連の決議書は、短いが、これのはずです。

2) 農協

JAグループの「なるほど!なっとく!TPP」というパンフレットがここにある。これが農業関係者の意見の集約と言えるように思う。即ち、日本は既に相当多くの農産物の輸入が自由化されており、これ以上の解放は、日本農業の破滅につながるとの意見が主体と考える。

3) 医療

農業と医療分野で反対論が多いと理解する。ちなみに、日本医師会の意見はこれである。一方このことについて、日経社説 10月25日 丁寧な説明でTPPへの誤解なくそう は、「医療・保険に関しては、混合診療の解禁や企業の医療参入が進み国民皆保険制度も崩壊しかねないと心配する声がある。このため医師会など医療関係者は交渉参加に反対しているが、実際の交渉ではこれらは協議の対象ではない。」と述べている。

しかし、医療に携わっている医師等の心配は、「TPPにより、株式会社の医療参入など規制緩和が実施されるようなことになると予想され、民間企業や投資家にとって魅力的な市場となるかも知れず、それがお金がなければ医療が受けられないことにつながり、国民皆保険制度も崩壊しかねない。医薬品にしても、アメリカは価格を低く抑える制度の見直しを迫り、市場価格となる可能性がある。締結されれば、医療分野にも大きな影響が考えられる。」と言うようなことと理解する。

4) 私の考え

実は、TPPにある本質は、日本が追求していく将来像と思う。即ち、世界中の人々が交流し、平和な世界を築く。民族や国境による差別がない。ヒトもモノもカネも自由に動き、皆が豊かになる。しかし、そんな世界が、そう簡単に来ることはない。現実には、国境があり、格差があり、産業構造や人々の暮らしも国・地域・場所・階層により異なる。急激に変化を求めても、格差や歪みの拡大となり、失敗につながる。

理想を求めることを止めてはならない。少しでも、前進させる必要がある。その一環としてTPPを捕らえるなら、交渉に参加すべきとなる。一方で、TPPが全てではない。WTOを、どう考えるか?二国間交渉で進める方法もある。また、TPP交渉に今回参加せずとも、いずれは同じような事態が発生するであろうし、世界における国境は低くなり、ヒトもモノもカネの動きは活発化していくことは間違いがないと思う。

TPPもそうであるが、背景に政治不信があると思う。政治家が、自分自身の都合の良いように動き、国民の幸せを二の次にしてしまう恐れである。民主党は、政権を取ったら裏切ったとの思いをしている人もいると思う。そして、多くの人は、政治家とは、そんなものだと思っているようにも感じる。TPP交渉参加よりも、政治を国民の手に取り戻すこと。国民が参加する政府を樹立することが重要と思う。その一つの手法は、私には、小選挙区制を無くし、中選挙区なり、比例代表を多くすることであるが、それのみで解決はしない。要は、情報開示を進め、国民の意見を反映する制度をつくっていくことである。

農業問題も、TPPに係わらず、高齢者問題、後継者問題、小規模農業からの脱出問題、日本農業の競争力問題がある。そして、これらと共に、国土保全、緑地確保も重要である。里山が美しいと言っていても、それだけで維持することは不可能なはず。工業化の発展と共に、手を付けねばならなかったことを、そのまま置き去りにしている。農業従事者の選挙投票と政治家との問題もあるが、それだけではない。製造業、建設業、商業他も、兼業農業従事者の安い人件費を利用するのに都合が良かったりした。複雑に糸が絡み合っている状態である。そんな中、誰が今後の農業プランを作っていくのか?農水省の役人や、政治家に任せると、圧力に負け、結局は良くならないように思う。やはり、農業従事者自身が、TPPに耐える農業を作るにはどうするか、日本の農業はどうあるべきかのプランを作り、国民の支持を得るべく、それを開示し、国民・消費者を含めた議論をして、プランを改良していくべきと考える。

政府補助金、税金投入が増加してもよいと思う。合理的であれば、国民・消費者・納税者も賛成するはずである。また、合理的なら、農産物価格が安くなり、安全性が増し、おいしくなると思う。

医療保健は、その国の制度であり、国会で決める制度であり、その国の主権に属することと考える。その意味で、医療保険がTPPで崩れることはないと考える。しかし、医療保険(国民健康保険、健康保険、公務員共済等、後期高齢者医療保険、介護保険)の財政は危機状態である。さらに高齢化と先進医療の費用増加により、瀕死状態に近々なってしまうことを懸念する。従い、TPP反対なんて悠長なことを言ってられないほどの危機状態であるように思う。

ちなみに、10月25日に最高裁で混合診療に関する判決があった(ここ参照。)。この最高裁判決は、単純に混合診療を否定したのではなく、特定療養費に係る制度により保健対象外診療を保険給付対象としていることがある。混合診療については、現制度の不明瞭さもあるが、医療費財政を国民的議論で進める必要性を感じる。株式会社参入について、医療法は、医療法人は社団法人または財団法人と定め(39条)、54条で剰余金は配当禁止としている。ちなみに、法人税はかかるのである。特定医療法人でなければ、相続税も出資者に課される。複雑であるが、医療を金儲けの道具とすることにつながるとして、株式会社の参入を認めないとする人も多い。

それからすると米国の医療費は、日本の倍ぐらいなので、日本の制度を何とか維持して欲しい。しかし、どのようにすれば、良い医療が、安心して、安い費用で受けらるることを維持できるのかよく分からない。国民的議論が必要であるが、それは正しい情報が適切に開示されて可能となる。国により、制度の差が大きい。自由化を進めた国があるのであれば、その国の良い点や悪い点等の情報を知りたい。米国では、高齢者と低所得者以外は、医療保険は民間保険会社である。このことについて、ある時聞いたのは、その人が加入している保険により選択できる治療方法や医療機関が異なる。持病があれば、保険料は高くなり、安い保険料しか払っていなければ、保険ではここまでしか認められないとなる。民間保険であれば、当然と言えるが、制度として何がよいのか、財源に限りがある以上、選択をせざるを得ない。

5) 結論

TPPをTPPの問題としてのみ受け止めるのは、解決を誤ると思う。深い問題を含んでいる。これを機会に、よりよい社会とよりよい世界を目指して一層の努力をしていきたい。

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原子力事故を官邸が独断

2011年10月31日の朝日のかこみ記事からです。

「官邸独断 室内は騒然」

”プロメテウスの罠”と題した連載かこみ記事で、一般のWeb版には出ていないようです。

Asahi20111031p

9月3日の朝日には、次の記事があった。

朝日 9月3日 1号機の事故解析結果、官邸に報告せず 保安院

この9月3日の記事で報じられた官邸に報告されなかった理由・原因について、更に取材を重ね、その理由として、原子力対策本部長の菅直人が、地震・津波が発生した当日の午後9時23分に、官邸内に設置されている対策本部事務局の意向を聴取せず独断で、原発から3km以内は避難、10km以内は屋内避難の指示を発したとしている。その11分前の午後9時12分に原子力安全保安院は、第1回目のSPEEDIの放射性物質拡散予想図を入手していたというのである。

同記事は「同心円状に広がらないのは原子力防災の常識なのに」とも書いている。バカ首相は、「裸の王様」みたい。自分では、変であることを認識できず、周囲もそれを忠告しない。本当は、純真な子どもがいて、「王様は裸」と叫ばなければならないが、そのような子どももいなかったようで。イラ菅で、周囲に当たり散らしていたと聞くが、そうであるなら官房長官が機能しなければならないが。

首相に完全無欠を求めることはしない。信頼出来る人を適切に起用し、組織として、力を発揮できるようにすること。組織のリーダーとは、自分の意見を押し通すことではない。組織として、力が発揮できるようにし、国民の幸せのために働くべきです。この森元首相の発言(2011年4月28日 MSN産経)も額面通り受け取ってよいのか、もしかして脚色が大きすぎるかもしれないとも思う。しかし、このような意見があることは認識すべき。朝日記事の更なる背景として、独断専行ではなく、菅直人に、同心円状の避難の必要性とかSPEEDIの問題点とかを述べ、誤った情報を入れた人物がいるかも知れない。しかし、それは、専門家であれば言わないと思うし、菅直人の無理解、誤判断、独断専行、威圧のようなことを否定する情報が聞こえてこないので、これで正しいのだろうと思う。

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問題は広がるばかりのオリンパス

会計ニュースコレクターさんのブログで知ったのですが、次のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、2008年のアルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボの3社の高値での企業買収で、アルティスとヒューマラボは株主がケイマン島の法人だとして、ケイマン島に送金をしているようです。

WSJ 10月28日 オリンパス、5件目の買収案件が浮上 (・・・・アルティスとヒューマラボは、「ネオ・ストラテジック・ベンチャー」と称する法人から08年3月に買収された。記録によると、この名前の企業は2000年にケイマン諸島で設立され、08年9月に解散している。 ・・・・

WSJ OCTOBER 28, 2011 Olympus Paid Cayman Firms ・・・・According to the 2009 internal report, the largest stakes in Altis and Humalabo were purchased from an entity named Neo Strategic Venture LP in March 2008. A company by that name was formed in the Caymans in 2000, and dissolved in September 2008, records show.・・・・・

ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいると、多くの会社名が出てきて、頭が混乱しそうになります。疑惑の塊に思える。

日本の会社の株主が外国企業であることに問題はない。しかし、高値で企業買収をして、その買収代金をケイマン島に送金したら、理路整然とした説明がなければ、疑惑だらけになる。

ケイマン島についてのWSJの記事での説明は、

ケイマン諸島は、機密保持と税制面での有利さを求める国際企業によって利用されることが多い。登記している企業に関してほとんど情報を公開していないことが一因だ。

The Cayman Islands, an offshore financial center in the Caribbean Sea, is often used by international companies seeking secrecy and tax-friendly policies, in part because it publicly discloses little information about companies registered there.

オリンパスは、日本企業であり、日本の会社法による特別背任を含めた会社法の定めと、上場していることによる金融商品取引法の定めが適用され、隠し通すことは無理だと思います。疑惑は、まだまだ、深まっていくのでしょうか?

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2011年10月27日 (木)

オリンパス事件でFBIが捜査開始

FBIが捜査を開始するとのニュースがあった。オリンパスも社長が交代し、新社長高山修一氏の10月26日付けでの交代については、ホームページ出ています。

1) FBI

FBIのホームページは、ここにあります。米国のFederal Bureau of Investiationであり、米連邦捜査局と訳されていることが多いようです。市警、群警、州警察を超えた範囲の犯罪捜査にあたり、テロ、外国スパイ、汚職、ハイテク犯罪、知能犯罪、経済犯罪等に携わることが多いと理解する。市警、群警、州警察では、なかなか手に負えない犯罪捜査に係わる。

刑事犯罪捜査の米国連邦政府組織であり、米国内の刑事犯罪の捜査機関である。

2) FBIの捜査対象

NY Times October 23, 2011 2 Japanese Bankers at Heart of Olympus Fee Inquiryは、”Hajime Sagawa and Akio Nakagawa — are at the center of a growing firestorm over a mysterious $687 million payout by Olympus,”・・・・”The F.B.I. is now investigating the $687 million payment, according to two people briefed on the case. ”とHajime Sagawa及びAkio Nakagawaの700億円を超えるオリンパスの支払に関する犯罪をFBIが調べていると報じている。

Hajime Sagawaは、野村出身そして、Akio Nakagawaはメリルリンチ。ジャンクボンドで有名なDREXEL BURNHAM LAMBERTで出会い、1990年にスビンアウト。Hajime Sagawaは、Axes Americaを設立し、Akio NakagawaはAxesの主要役員となった。そして、オリンパスと接触が生まれた。

FBIの関心は、700億円を超える金が、流れた先なのであろうと思う。米国において犯罪を構成する行為があったと見たのだと思う。即ち、不正な金の流れについての捜査と思う。

3) FACTA Online Blog

FACTA OnileにBlog10月24日 野村の元オリンパス担当、S氏の独り言があった。読んでも分かりつらいが、700億円を超える支払について「90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。個人的な横領と見るには、抜いた額が巨額すぎるからだ。」とある。

そうだとすると、Hajime SagawaとAkio Nakagawaは、2人して700億円超を手にした。しかし、そのことは、オリンパスの当時の菊川社長他幹部役員は承知済みであり、2人からオリンパスに環流した。これが事実なら、特別背任の可能性は?また、粉飾決算、有価証券報告書虚偽記載については?様々な犯罪が浮かんでくる。

4) どのようになるのか

不明であるが、FBIの捜査は厳しいと理解する。菊川氏のFBI召喚の可能性は、どうだろうか?絶対無いと言い切れないと思う。

ジャイラスは、英国企業。英Britain’s Serious Fraud Officeの捜査は、どうなるだろうか?

そして日本である。オリンパスは、日本の会社法により設立されている企業である。この犯罪捜査は、どうするのか?検察庁特捜部は、立ち上がるのだろうか?特捜部が立ち上がるにふさわしい経済犯罪である気がする。例えば、特別背任があったとするなら、当然単純に現金が、その会社の役員名義の口座に入っているわけはない。どこかの国の全く別の人間の名義になっており、実はその口座からの引き出しは、実質受取人が支配しているような構造であることが多いと思う。警視庁・道府県警には、捜査困難な面あると思う。

特捜部が真価を発揮するのだろうか?郵便料金不正事件にからむ公文書発行に係わる厚生労働省の公務員の犯罪捜査をして、真犯人を逮捕することも求められている。FBIのWebを見ると、たのもしく思える。日本とは、歴史や制度が異なるのであり、比較して論じることは正しくない。しかし、検察庁特捜部にも、もっと頑張って欲しいと思うのである。

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2011年10月22日 (土)

オリンパスはどうなるのか

オリンパスについては、様々な面から、色々言えそうな気がする。

英ジャイラス社買収の件については、このFACTA Online 8月号 オリンパス 「無謀M&A」巨額損失の怪が最初に指摘し、それをウッドフォード前社長が読み、真実かどうか調査を行い、当時の会長・現社長の菊川氏に問いただし、退任要求をした。しかし、10月14日の取締役会で逆にウッドフォード氏を代表取締役から解任する決議がなされた。そこで、ウッドフォード氏は、17日に、ロンドンのBritain’s Serious Fraud Officeに告発した。このような経緯等が、この現代ビジネス 10月20日 これが杜撰経営の核心!ほとんど価値のない会社を700億円で買収したオリンパス「疑惑の取締役会資料」をスクープ公開に書いてあり、FACTA Online 8月号の記事を書いた山口義正氏による投稿記事である。

1) オリンパス株価

オリンパスの株価は次の通りで、10月14日から大幅な値下がりが続いている。

Olympusshareprice201110

2) オリンパス業績

オリンパスの業績はと言うと、グラフに書くと、次のように右肩下がりになっている。2009年3月期は連結で1148億円の純損失、単独で1362億円の純損失であった。損失の原因は、連結ではのれん償却と前期修正損であり、単独では関係会社株式評価損と前期修正損である。ジャイラスが対象になり、ジャイラスに係わる金額が多いと思われる。

Olympusperform201110 

連結貸借対照表で見てみると、次の通りである。2008年3月期で固定資産が増加しているのは、ジャイラス買収の結果であり、同時に流動負債(借入金)が増加している。2009年には、のれん償却で固定資産は減少したが、同額程度純資産が目減りした。当然のことですが。

Olympusbs201110

3) 企業買収

企業買収や事業買収は、手っ取り早く事業を拡大する方法である。自らが、手がけると人材や設備、そして販売網や仕入網に加え、市場競争可能な競争力・技術力を育てねばならない。企業買収は、ある程度まとまった形でこれらを手に入れられる。だから、ジリ貧会社が手を出しやすいとも言える。勿論、企業買収の結果、大きな成果が得られる場合もある。やはり、結果を評価することが、重要・必要である。失敗だと思えば、その会社の株を売却するなり、経営者の退陣を要求したり、株主代表訴訟に持ち込むことも可能と思う。

ジャイラスもそうであるが、2008年4月にオリンパスが行ったアルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボの企業買収は、でたらめと思ってしまう。3会社合計で734億円を払いながら、2009年3月期556億円の減損を計上するのであるから。買収決定の取締役会決議が2008年2月なので、1年経過したら、1/4の価値しかないとするのであるから。

3000億円ほどの現金がオリンパスから社外に流出した(まさか、キックバックはないと思う)。このキャッシュは、株主に渡るべき金であったとも言えるし、従業員が懸命に働いた結果であろうし、従業員にも、払われるべき性格もあった。ムダ使いであったのか、株主や従業員も強い関心をもって当然と思う。その一人は、ウッドフォード氏であったのだ。なお、菊川社長や取締役会はウッドフォード氏を代表取締役から退任させることは出来ても、取締役の地位を剥奪することは出来ない。取締役は株主により選任されたのであり、株主のために働く。従い、ウッドフォード氏が現在していることは、株主のため、日本の株式市場の正常な発展のために、活動していると言える。様々な牽制が働いてこそ、最も望ましい形になると考える。

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2011年10月21日 (金)

オリンパスの英ジャイラス社買収事件

オリンパスの英ジャイラス社買収に関する事件は、報道されている内容と判明している事実をつなぎ合わせても、不思議なことがありすぎる事件だと思った。報道としては、次のロイターを掲げておきます。

ロイター 10月20日 オリンパスの晴れない「霧」、資金の流れで当局の事実解明に発展も

1) 内部告発をしたウッドフォード元社長

元社長と言っても、2011年4月1日に就任し、10月14日に社長解任となったので、社長であった期間は6月半であった。現在も取締役であり、対外的には代表取締役を外れたのみとも言える。

ウッドフォード氏であるが、社長交代(就任)に関する2011年2月10日のオリンパスのプレスリリースに経歴が添付されており、1960年生まれで、1977年Millbank Business School卒業、1981年オリンパス子会社のKeyMed(Medical & Industrial Equipment)Ltd.に入社し、入社10年後の1991年に同社社長となった。2003年にOlympus KeyMed Group Limited取締役に就任、2004年に日本のオリンパスメディカルシステムズ取締役、2008年にはOlympus Europa Holding GmbH代表取締役社長、KeyMed(Medical & Industrial Equipment)Ltd.取締役会長そしてオリンパス執行役員になった。

ウッドフォード氏は、オリンパス生え抜きで、欧州医療部門の中心的人物であった。医療部門とは、現在のオリンパスの大黒柱である。2011年3月期の連結売上高847,105百万円のうち医療は42%を占める355,322百万円の売上で、営業利益で医療が69,314百万。実は、報告セグメントの合計営業利益63,832百万円より額が大きい。ちなみに、デジカメ、録音機等の映像部門は15,019百万円の営業損失であった。なお、医療部門とは、医療用内視鏡、外科内視鏡、内視鏡処置具、超音波内視鏡等である。

何が真実か、よく分からない。しかし、ウッドフォード氏の10月11日付の菊川剛会長(現社長)宛書簡(このNY TimesのWebにあり)と、これに関する報道について述べているこのオリンパスのプレスリリースを読み比べると、FAに対する支払額はウッドフォード氏の言うとおり600億円を超える巨額であることをオリンパスも認めており、ウッドフォード氏の告発内容は正しいと思える。600億円を超える金額を誰に支払ったか、また、最終的に誰の手に渡ったのかについても、ウッドフォード氏は知っている可能性が高いと思う。

2) ジャイラス

オリンパス買収前は、ロンドンで上場していた会社である。上場会社の買収で、600億円超の手数料を仲介者に払うのは、私としては、驚きである。2000億円強の買収と発表されたのであるが、手数料については発表されていないようである。(買収手続き開始合意の発表は、平成19年11月19日のプレスリリースで、買収手続完了の発表は平成20年2月1日のプレスリリースでなされている。)

ところで、オリンパス子会社となったジャイラスであるが、オリンパスの有価証券報告書で関係会社としては、表にはなく、Gyrus ACM Inc.(米)とGyrus Medical Limited(英)が、かろうじて発見できるだけである。買収後に、その会社を清算しても、売却しても、他の子会社と整理統合しても良いのであるが、関連するプレスリリースを発見できていないので、気持ちが悪い。

2008年3月期の連結キャッシュフロー計算書には、「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」として232,234百万円の支出が記載されている。そして、単独財務諸表の附属明細書に、Olympus UK Acquisitions Limited向けに192,166百万円とGyrus Group PLC向けに24,752百万円の関係会社短期貸付金の記載がある。

Olympus UK Acquisitions Limitedは、ジャイラス買収のために設立したと思うが、買収したジャイラスの事業が、どうなっているのか情報がないので、不気味に思える。

3) 手数料687百万ドル

普通に考えれば、手数料としては、あり得ない金額です。この支払のうち、(オリンパス発表では)443百万ドル、(ウッドフォード氏書簡では)620百万ドルがジャイラス優先株の買い戻しで、支払われている。この優先株を使った取引は、名目だけで、オリックスが言うような、値上がりではないはず。何故なら、上場を廃止した後の売買なので、勝手に値を付けられるからである。なぜ、優先株を使ったかは、ウッドフォード氏書簡にあるように、税対策であったと思う。

そもそも税対策であったからこそ、ケイマンが使われたはず。そして、この支払は、2000年3月期キャッシュフロー計算書の「子会社株式の取得による支出」の59,895百万円に含まれていると推定する。

4) 今後

やはり上場会社が、このような不透明な取引をすることは、よくないと思う。いずれにせよ、ウッドフォード氏は17日に、ロンドンのBritain’s Serious Fraud Officeに告発したのである。英国の上場会社に関して発生した事件であり、しかも、600億円超の受取関係者に英国の人間が絡んでいる可能性もないとは言えない。

単なる経済事件なのか、脱税も絡むか、あるいは犯罪も構成しているのか、今後の進展を見てみたい。そして、オリンパスの取締役・経営者は、どのように問われるであろうか、英国法でどうなのか、日本法では、どうなるのか。ウッドフォード氏の告発が真実であれば、オリンパス経営者は少なくとも虚偽のプレスリリースを出したように思う。その場合、証券取引法違反は確実と思うが。

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2011年10月16日 (日)

「競争がないのに株式会社であることは矛盾している」とは問題発言

本日、枝野経済産業大臣がNHK日曜討論に出演。その中で「競争がないのに株式会社であることは矛盾している」との発言があった。このNHKのニュースサイトにも書かれている。

九電報告書については、直前のエントリーで述べたほど、急進的ではないトーンで話していた。例えば、NHKニュースのように「みずからの検証が信用されないので、調査をお願いした第三者委員会の報告を前提とするのが普通で、理解不能」とのニュアンスが強かった。勿論、これについては、私は、異論があるのであり、第三者委員会の報告の報告が全て絶対正しいとは、簡単に断言出来ないし、細かい部分には調査や議論が尽くされていない点があると思う。絶対的真実とか真理は、相当の努力をしないとたどり着けないのである。人は常に、自分に都合の良いことを、真実とする傾向がある。枝野が何を正しいと思うかは、個人の自由である。しかし、大臣として発言する場合は、慎重であるべき。今回の九電報告書に関して言えば、九電が第三者委員会の報告を隠しているなら、大問題である。断固許せない。同様に、枝野が官房長官時代に、原発事故に関してSPEEDI他様々な情報を開示しなかったことについて、私は許せない。

本題に戻り、株式会社についてであるが、政府が保有する法人であっても、私は、株式会社が優れていると考える。財務諸表を含め、株式会社には、会社法による情報開示が必要である。債務額が200億円を超えると、株式会社には監査法人による会計監査が義務付けられる。取締役会の取締役選出は、株主総会での保有普通株式数に比例した投票により実施する。その他、株主提案権や代表訴訟の仕組みもある。更に、上場会社であれば、金融商品取引法の要請事項も加わる。一方、政府法人は、1法人ごとに法律がある特殊法人や独立行政法人が多く、情報開示も義務としてではなく、各法人の判断で実施している面が大きいと考える。日本郵政も、株式会社とそれ以前とを比較すれば、情報公開その他の面で、株式会社になってからの改善は大きいと考える。

電力について言えば、松永安左エ門という男がいた(Wikiここ)。松永は、大東亜戦争のための国家電力会社である日本発送電の設立時に反対論をぶち、戦後には日本発送電の解体、民間9電力体制への移行に尽力した。電力を政府事業とすることについて、一切の迎合をせず反対を貫き通した。

地域独占の民間電力体制が良いかと言えば、既に現在6,000V以上について自由化されており、自由化を推進することが望ましい。自由化の際に問題となるのが、電気の流通には電線が必要であり、電線は、ほとんどが地域電力会社の独占となっていることである。そこで、電気事業法は、地域電力会社(一般電気事業者)以外の電力会社が地域電力会社の送配電線を利用することについて、託送供給または振り替え供給として、電気事業法で地域電力会社の義務を定め、料金や条件・約款等を経済産業大臣による管轄下として定めている(電気事業法24条3、24条の4等)。経済産業大臣のしなければならない仕事は、100V/200Vについても自由化し、地域電力会社の送配電線が合理的な料金で自由に使用出来るようにすることである。自由に使用させることは、逆に不都合な使用をさせないようにすることでもある。(電気は、例えば、ある地点の発電・消費が周波数や電圧の乱れを起こし、それが電線がつながった全てのユーザーや発電機に悪影響を与え、停電や機器故障の原因となることがある。)

経済産業大臣には、人気取り発言をするのではなく、電力自由化にまじめに取り組んで欲しいのである。「民間に出来ることは全て民間で」と述べた人がいるが、これも行き過ぎである。国民の幸福のために尽力する人に大臣になって欲しい。

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経済産業大臣には問題あり

相当問題があると思っていた人であるが、問題ありすぎと思う。

読売 10月15日01時36分 枝野経産相、厳しく九電批判…報告再検討要求も

九州電力が、14日に提出した報告書について、同日に外遊先の中国で報道陣の取材に応じて、話したことなので、報告書を読まないで発言したはず。

そのようなデタラメ大臣を許して良いのかと思う。批判することは誰にも許される。しかし、報告書についての発言は、推測ですべきではなく、具体的に、どの部分のどこに問題があるか、どう訂正されるべきか等を、理由を明示して指摘すべきである。特に許認可権を有する企業について大臣が発言する場合は、慎重であるべき。公正さが要求される。そのルールが全く出来ておらず、法律もルールもない。ましてコンプラなんて、かけらもない。暗黒の帝王だと思っている危険人物と判断する。

九州電力の反応として、読売が報道してる次のニュースには

読売 10月15日15時50分 やらせメール報告書、修正・再提出も…九電会長

九電の松尾新吾会長は15日未明、読売新聞の取材に「役所の指導で仕事をしている。監督官庁だから、基本的にはそういうことでしょう」と述べ、経産省から指示があれば、報告書を修正して再提出する考えを示した。」とある。

経済産業省による民間上場企業の支配が実態ではないかと思う。民間会社が、自らの行為について、外部の人達に調査を依頼し、その結果を受けて、外部の報告書と自らの報告書を公表する。それを読みもしないで批判すれば、裏があると疑わざるを得なくなる。例えば、古川康知事の九電幹部に対する発言に関する部分が、九州電力の報告書には触れられていなかったことが理由と01時36分のニュースは伝えている。そうなると大臣発言は、知事を貶めようとする画策とも思える。

一方、この問題は、プルサーマルをめぐっての公聴会についてである。そもそも、九州電力にとっては、プルサーマルなどお荷物であり、5%濃縮ウランの燃料で運転する方が、費用も安いし、元々の原発の設計通りであり、はるかに望ましい。実は、福岡県にとっても同じで、リスクが増加するプルサーマルで運転を希望する理由はない。日本政府と経済産業省の都合で、プルサーマル運転を実施するのであり、プルサーマル運転が実施出来なくて困るのは、日本政府である。日本政府が使用済み核燃料についての核燃料サイクルの方針を転換出来ないからか。あるいは、勘繰れば、枝野は原爆製造を狙っているとさえ思える。

プルサーマル問題は、原発問題からの派生と言えるが、原発問題より更に複雑で、恐ろしく、常に核兵器問題が後ろに控えている。日本は、プルトニウムについてIAEAの査察を受けている。何故なら、プルサーマルを持ち、核兵器製造について世界に明らかにせねばならないからである。勿論、そんな単純なことではなく、このようなサイトにも書かれているが、複雑です。国民に情報を開示し、多くの国民が参加しての議論をすべきです。それを枝野は妨害しようとしている。自らの人気取りのジェスチャーか?はたまた、深謀遠慮な企みからなのか?

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2011年10月14日 (金)

高額医療費負担軽減のための外来100円徴収は正しいのか?

高額医療費負担軽減のために、外来の場合の自己負担を100円徴収高くするのは、正しいのかと疑問を持つ。

朝日 10月13日 高額医療負担軽減案 厚労省「財源、外来100円徴収」

この件に関する厚生労働省の資料は、10月12日第46回社会保障審議会医療保険部会の配付資料からダウンロード出来る(課題2資料2)。

1) 支離滅裂説明?

冒頭の<医療保険を取り巻く状況>として、「医療の高度化や急速な高齢化、医療提供体制の機能強化等により、医療費は今後もGDPの伸びを大きく上回って増大する見込み。これを賄うための公費、保険料、自己負担の規模も増大。」と書いてある。それなら、高額医療費についても、自己負担額を大きくしないと辻褄が合わないと思う。

政治家の意向を汲んだ役人の文章にはつきあいたくないと思える。合理的な負担が望ましいのである。勿論、合理的というのは、抽象的であるが、関係者の利害が調整出来る合意可能なポイントである。

2) 高所得者に負担上限83,000円でよいのか

上位所得者は83,000円の負担でよいこととしている。この上位所得者とは、650万の年間収入であり、所得額からすると500万円程度かも知れません。確かに、その程度の収入の人が、月83,000円、年996,000円で済むのは、良いことかも知れない。しかし、これは所得が5千万円であれ、1億円以上であれ、医療費の自己負担額が年百万円以内で済むこととするのである。しかも、それを一般の人の保険料と税金で補償するのであり、行き過ぎと思える。

所得によって、高額医療費の自己負担額も、変えるべきである。また、70歳を超えると、負担額を軽減するのも、変な話である。負担は年齢で調整するのではなく、所得金額で調整すべきである。何故なら、この負担額とは、原則である30%自己負担が高額となった場合に、保険制度の自己負担緩和策として存在するのであり、緩和策であることから所得と連動すべきである。民主党は、庶民の味方と言っていたが、実は高額所得者の見方だっただと思ってしまう。

なお、病気療養のために、収入が減少すれば、所得が減少し、結果自己負担額も減少する。入院しても、金融資産や賃貸不動産による収入等があれば、相応の自己負担をお願いしてよいと思う。

3) 苦しい低所得者

国民健康保険の保険料収納率は平成21年度で88.01%であった(資料30ページ)。今は更に下がっていると思う。国民健康保険の保険料は、平等割、均等割、所得割の3つの方法による計算の合計で、世帯に対する平等割、人数に対する均等割は、所得金額に無関係であり、低所得者には厳しい制度となっている。そのうえ、外来1回100円追加なんてなったら、苦しい限りである。

健保組合、くみあい健保も同様で、保険料率は上昇しており、それがまだまだ上昇する。最も、保険料の増加は国民健康保険も同様であり、高所得者を除いて、皆苦しいのが実態である。

それにも拘わらず、外来自己負担を100円アップし、この財源で、医療機関に対する保健診療報酬を100円減額し、それで浮いた保健財源を高額医療費に充てようということである。

本当に重要なのは、何であるかを見ずに、高額所得者のみを優遇していると思える。何故なら、高額医療費の緩和策は現在も存在し、低所得者は月額35,400円である。これを35,000円にするために外来100円アップが低所得者にとって納得出来るものであろうか?低所得者から金を取り、高額所得者にばらまく制度は許せないと思う。

必要な制度は、低所得者に対する医療費の公的な資金貸付制度の充実であると思う。

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2011年10月10日 (月)

朝霞公務員宿舎の昔(その3)

朝霞公務員宿舎のことが気になってしまい、昔は、どうであったのかと調べてみた。

1) 対象地の位置

Yahoo地図により場所を示すと次の場所で、東部線朝霞駅に近く、朝霞市役所の南に広がっている。

2) キャンプ朝霞北地区

米軍から返還されたキャンプ朝霞北地区の一部に公務員宿舎を建設するのが問題の案件である。念のために、朝霞市の跡地利用計画を再度掲げる。なお、返還地は、下の跡地利用計画の着色部分のみではなく、大きい範囲である。既に利用されている土地には、朝霞第8小学校、朝霞中央公園、総合体育館、朝霞第4中学校、青葉台公園、中央公民館コミュニティセンター、市立老人ホーム朝光苑、市立図書館、朝霞第一中学校、朝霞西高等学校、朝霞保健所、埼玉県社会福祉事業団施設の向陽園、朝霞郵便局、朝霞税務署がある。(これら施設のうち下図で着色部分に存在するのは、朝霞中央公園、総合体育館、青葉台公園、中央公民館コミュニティセンター、市立図書館、朝霞保健所、朝霞郵便局、朝霞税務署である。学校は全て白色部分にある。)

Photo 

次がGoogle Earthによる2009年10月1日撮影の画像である。分かりやすいように、東武東上線朝霞駅、朝霞市役所、朝霞保健所にマーキングをした。

Asakagoo2009 

3) 陸軍被服廠

現在の陸上自衛隊朝霞駐屯地に陸軍予科士官学校があった。そのすぐ北の土地に、1940年頃から陸軍被服廠が、建設された。陸軍被服廠とは、陸軍の軍服や軍靴そして鉄兜や防毒面、航空服、脚絆、毛布、背嚢、救命具などを製造し、保管していた陸軍の工場と倉庫である。その当時の航空写真が次であり、国土地理院国土変遷アーカイブからで、陸軍により1944年11月7日撮影の写真8921-C5-115からである。当時は、3000人が働き、戦争末期には近隣の女学校からも大勢が勤労奉仕で働いた。

Asakaarmy1944 

4) キャンプ朝霞(キャンプ・ドレイク)

1945年10月から米軍キャンプとなったわけであるが、その当時の航空写真(1961年11月6日国土地理院撮影)を国土地理院国土変遷アーカイブから見ると次の通りである。

Asakagsi1961 

5) 調査結果

国土地理院の国土変遷アーカイブの写真は、国土地理院のホームページから直接見ていただいた方が、鮮明です。調査結果として、思うことは、この土地は緑の森林ではなかったことです。陸軍被服廠の前は、農地であったはず。農民から、安い二束三文の価格で、戦争に協力しないのは非国民だとして、当時の軍国主義国家が奪い取ったに近い土地であろうと思う。陸軍の土地になり、占領軍が取り上げた。占領軍である米国政府が土地を返還するのは日本政府である。日本政府は、地元自治体とも協議をしつつ実質そのほとんどを地元自治体に譲渡したというのが実態と思う。

米軍返還地に学校を建設し、公共施設を建設し、公園を整備する。必要な手続きを踏み、住民の同意があれば、何ら変な部分は無いと思う。全体では、60-70ヘクタールの土地と思うが、そのうち市役所に近い3ヘクタール(うち1.8ヘクタールは緑の免責とする)に公務員宿舎を建設して悪いのだろうか?総合的な良い計画が出来ている必要があるが、それほど変な計画と思えない。事業仕分けで、緑を残さないから悪いと叫んで計画をつぶそうとしたのか、理解に苦しむ。米軍のキャンプ・ドレイク時代も陸軍被服廠時代も、緑があったと感じられない。中には、都市開発用地(広沢土地区画整理)として住宅地・商業地となった土地が3.1ヘクタール存在するが。

今回も不合理な意見を述べ、相手の意見を聞こうとしない事業仕分けのバカの一面を見てしまった気がする。この土地には、過去に、お国のためにと陸軍被服廠用地に土地を供出した人達がいる。せめて、その人達の思いもこめて、有効に土地を利用せねばならないと思う。

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2011年10月 9日 (日)

選挙制度改革・議員定数削減

本日(10月9日)のNHK日曜討論は、「与野党に問う  復興財源・定数削減」ということであった。おもしろかったのは、このNHKの番組Webにあるように、たちあがれ日本の園田博之氏から「一生懸命推進したが、小選挙区制度は失敗だった。政治が劣化したと思わざるをえない。衆議院は80人削減して400人とし、各選挙区の定員を原則3人とする新たな中選挙区制度にすべきだ。」との発言があったことである。

なお、これが、たちあがれ日本からの初めての発言ではなく、2010年10月20日に「衆議院定数削減・選挙制度改革試案[新たな中選挙区制の提案]」を発表しており、ここにある。特徴は3人区をベースに最大選挙区は都道府県単位とし、最低2人区、最大4人区とし、2009年の選挙の数字をベースにすれば、129選挙区 (2人区×9、3人区×98、4人区×22) 合計400議席との案である。本日の日曜討論で園田氏は選挙人が各2票の投票権を持つ案を述べていた。

本日の日曜討論でも、民主と自民は小選挙区で6減6増のような手直しと比例代表定数の削減、そして他の党は、比例重視の意見である。例えば、同番組での公明党斉藤氏の発言ように「定数削減と1票の格差是正を同時に達成するには、何増何減といった小手先の改革ではだめだ。政治が劣化し、停滞している状況を改善する意味からも、抜本的な制度改革が必要だ。比例代表を強調した選挙制度を提案しており、新しい中選挙区制度も選択肢に入れている。」というような意見である。

10月8日の米抗議デモから感じる今後の世界で書いたように、議員の政治ではなく、国民・市民・住民が参加する政治を目指すべきと考える。小選挙区ではなく、よりよい選挙制度をつくっていくべきと考える。比例定数を減少させるのは、問題がある。しかし、比例選挙のみでは、やはり政党に属さないと議員になれないこととなり、中選挙区制度も一考の価値があると思う。

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サンマ漁業関係者の自主規制は自らの首をしめないか

サンマは、おいしいし、資源も比較的豊富で、魅力ある魚と思います。しかし、サンマ漁業関係者の動きは、気になってしまう。

日経 10月8日 福島原発100キロ圏、サンマ禁漁決定

日経 10月6日 東北沖のサンマ、受け入れ拒否要請 北海道の水産団体

これで安心してサンマが食べられるので良かったとの考えで、支持する人も多いと思う。しかし、私なんかは、根拠なしで、禁止や拒否することは、消費者側から、根拠なく拒否される危険性を抱えることになり、下手をすると消費者の魚離れにつながり、漁業の衰退になる可能性について心配してしまう。

1) 水産物の放射性物質検査

水産物の放射性物質については、福島県及び近隣県の主要港において、表層、中層、底層の漁獲物を週1回程度サンプリングして調査しており、水産庁が公表している。最新の発表は、10月5日更新の9月1日以降公表分であり、ここにあります。

福島沖では、まだサンマが捕れていないようで、福島沖サンマの検査結果はないが、多くの魚の検査結果が記載されている。ちなみに、規制値500Bq/kgを超えるのは、コモンカスベやクロソイのような底層性魚種に属する魚のようである。

魚種毎に放射性物質の濃度傾向が明白であれば、合理的な管理が可能と思う。今後、福島沖でも、サンマが捕れるはず。しかし、そのサンマは、現在北海道沖で回遊中のサンマが移動して、福島沖で捕れるのであり、禁止や規制が意味のない行為である可能性は、どうなのであろうか?資源保護になるのか、消費者のサンマ離れになるのか、よく分からない。

2) 東京電力による損害賠償

東京電力に損害賠償を求めないと思うが、どうなのだろうか?規制値500Bq/kgを超えたことを理由に、合理的に損失額を算出し、損害賠償を求めるのは、当然のことと思う。しかし、根拠なく、損害を受けたとして賠償を求めることは、社会正義に反するはず。もし、これで賠償要求があれば、裁判で戦って欲しいと思う。

そうでなくとも、原子力災害賠償には、政治的な発言が多すぎる。全て東京電力の責任と述べた官房長官もいたし、今でも電気料金の値上げは認められないと言っている人も多い。しかし、打ち出の小槌は存在しないのである。なお、東京電力による負担は当然と考える。しかし、負担能力を超えて負担させることは、不可能を可能にすることであり、あり得ない。どこかに限界はあり、賠償総額は限界を超えると思うのである。

金額はさておき、ふりかえると、8月10日に原子力損害賠償支援機構法が公布され同日施行となった。この支援機構法は、東京電力が福島第一原発損害賠償を実行するため、政府が支援機構を通じて資金支援する仕組みである。この資金については、東京電力が返済義務を負うのである。

原子力損害賠償支援機構法

第52条  認定事業者が、当該認定に係る特別期間内にその全部又は一部が含まれる機構の事業年度について納付すべき負担金の額は、第三十九条第一項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額に特別負担金額(認定事業者に追加的に負担させることが相当な額として機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める額をいう。以下この条において同じ。)を加算した額とする
2  特別負担金額は、認定事業者の収支の状況に照らし、・・・・、できるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。

第47条  主務大臣は、・・・認定の日から次に掲げる条件の全てが満たされたと認めて・・告示する日までの間(・・・「特別期間」という。)、・・・。
一  ・・・
二  ・・・
三  ・・・機構が国庫に納付した額の合計額が・・・国債の償還を受けた額の合計額に達していること。
(ブログ主注:政府に返済を完了すること)

最も、政府に返済されなければ、税金による負担であり、東京電力による負担とは、電気料金により国民が負担することである。但し、株主配当をする余裕は、ほとんど認められないであろうから、株主負担はあるし、人件費等費用の切り詰めもあると思う。しかし、福島第一原発における廃炉関連の費用もあり、甘くはない。現実の問題として、電気事業の正常な継続には、有能な技術者や人材を必要とする部分はあり、人材の確保や設備の維持・拡充も重要である。当たり前のことであるが、東京電力の負担と言うことのみで、解決はしない。

3) 根拠無き損害賠償

根拠無き損害賠償は、東京電力の根拠の無い料金値上げにつながる。風評被害はダメだと言っているのではない。損害賠償として認められないものは、認められないとして拒否することが重要であり、公共の福祉を守ることも重要であると言いたい。

更に言えば、外国政府、企業、個人も東京電力に損害賠償を認め裁判を提起することも可能である。その際、日本企業・個人には認め、外国人には認めないとするような、同じ法の下での、ダブルスタンダードはない。日本で原発事故があったということだけで、帰国して、損害賠償を求められるのか?中国、韓国、北朝鮮、ロシア、米国の企業が、福島原発事故により漁業被害を受けたとして損害賠償を求めてきたら、どうなるであろうか。やはり、被害があったかどうかは、放射性物質の検査等合理的な判断基準で考えることになるはず。

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2011年10月 8日 (土)

米抗議デモから感じる今後の世界

「ウォール街占拠(Occupy Wall Street )」のデモは、1月以上を経過したが、下火にはなっておらず、首都ワシントンにも広がっているようです。

日経 10月7日 ワシントンでも抗議デモ 数百人集まる

この抗議デモにはリーダーが存在しないと自らのホームページ(ここ)にも、次のように書いてあり、従来のデモや運動とは少し異なっていると思う。何故ウォール街占拠かと言えば、富裕層1%に属さない99%層の運動であり、富裕層とはウォール街に象徴されているからである。

Occupy Wall Street is leaderless resistance movement with people of many colors, genders and political persuasions. The one thing we all have in common is that We Are The 99% that will no longer tolerate the greed and corruption of the 1%. We are using the revolutionary Arab Spring tactic to achieve our ends and encourage the use of nonviolence to maximize the safety of all participants.

日経の10月6日に次のFinanical Timesの記事が日本語で掲載されていた。

日経 10月6日 [FT]ウォール街のデモが示した民衆の力

ちなみに原文は、次の記事であり、登録(無料)をすると、全文を読めるはずです。

FT October 5, 2011 8:07 pm In praise of Wall Street protesters (By John Gapper)

日経の次の訳された部分などは、英語で読むと味わい深いと思ってしまう。

これまで明らかになったウォール街デモが主張する政策は常軌を逸しているか、幅広い支持を得る見込みが無いかのいずれかだ。医療制度の社会化と銀行の国有化が、デモ隊が配るミニ新聞「オキュパイド(占拠された)・ウォール・ストリート・ジャーナル」で賛否を問われた見解である。

 大手労働組合も参加して5日にニューヨーク市内で行われたデモでは参加者に無邪気さがなくなり始めたように感じられた。「ウォール街を占拠せよ」デモが左翼の理念や組織と結びつきを強めるほど、その魅力も遠からず消滅してしまうだろう。

The policies I have seen are either crazy (one protester railed on a video about closing the Federal Reserve and abolishing fiat money) or have little chance of gaining wide support. Socialised medicine and bank nationalisation are two of the ideas mooted for adoption in The Occupied Wall Street Journal.

Indeed, the protesters’ march through New York on Wednesday, on which they were joined by big unions, feels as if it could mark the beginning of the end of innocence. The tighter that Occupy Wall Street links itself to standard leftwing causes and organisations, the sooner its charms will evaporate.

急進的な考え方では、「お金があるから貧富が生じる。」、「紙幣を発行する中央銀行なんてやめちまえ」となる。非実現的な考えであり、失敗した左翼運動の典型であり、やがて消滅する。意訳がすごすぎるかも知れないが、この部分をそのように私は理解する。

「アラブの春」が、これからどのようになるのか分からない。しかし、人々に一定の勇気や力を与えたのだと思う。米国でも、格差が拡大する一方であり、貧困層は増大していると人々は感じている。レーガン減税、東欧の市場経済移行、中国の改革開放の中で、格差拡大は進んだと思う。しかし、行き過ぎた格差拡大や貧困層を犠牲にした格差拡大は、行き詰まる。今、そのような時期に入りつつあるのではと思う。

もう一つ思うのが、民主主義と人々の政治参加である。民主主義(Democracy)とは、議会制民主主義(Parliamentary democracy)が、全てではないはず。国民、市民、住民の参加は、選挙を通してのみならず、他の手段もあって良いし、必要である。選挙制度や政府制度も様々な制度がある。「アラブの春」の直接の引き金は、食料価格の高騰であったが、政治から阻害されている、あるいは恩恵を受けておらず搾取されていると感じる人々の動きがあったと思う。

しかし、これらのことを今の日本にあてはめれば、Occupy Wall Streetのようなデモが起こっていないだけであり、格差拡大や政治的な疎外感は共通と思う。米国は、WSJ 6月30日 米大統領、富裕層の減税終了が必要と強調―債務上限引き上げ問題WSJ 9月5日 富裕層増税の提唱へ、かつてない読者の反応=バフェット氏WSJ 9月20日 米大統領、富裕層の税負担増を含む赤字削減案を発表と、富裕層の抵抗はあるが、富裕層増税(減税廃止)に向かうと思う。日本も、欧州も、増税に向かわざると得ないと思うし、増税は富裕層しかないと思う。

日本では、もう一つ、国民、市民、住民参加の拡大と小選挙区制の縮小が必要と思う。小選挙区・二大政党制は、日本では、馴れ合い政治か、他党攻撃政治しか生まないと思う。小選挙区制度の結果、日本の選挙は、つまらなくなった。政治に魅力を感じない。魅力とは、政党に感じるのではない。人に感じるのである。経済的な発展は容易ではない。人々の政治参加は、制度の問題なので、制度変更で可能である。せめて、そこに今後の希望を持ちたいと思う。

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2011年10月 7日 (金)

朝霞公務員宿舎問題の本質(前からの続き)

朝霞公務員宿舎問題の背景を探ってみます。

1) 今回の経緯

今回このような展開になったのは、9月15日の衆議院本会におけるみんなの党渡辺喜美議員の質問からであった。この質問に対する野田首相の回答は、凍結ではなかった。この時は、正しい回答をしたと思う。議事録から抜き出すと、次の通り。

渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美であります。(拍手)
 震災、原発、台風の被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 一日も早い復旧復興をなし遂げることが政治の務めであります。
 こんなときに、総理、なぜ、朝霞の公務員住宅、着工したんですか。これは、事業仕分けで民主党が凍結をしたものですよ。被災地では、まだ、住む家もない、仕事もない、そういう人がたくさんいるんです。公務員住宅が先なんですか。無駄の徹底的な削減というのは、うそですか。
 復興財源を捻出するためにも、朝霞の公務員住宅の工事を中止していただけないでしょうか。
 みんなの党は、増税の前にやるべきことがあるだろうと訴え、徹底した無駄の削減を掲げています。・・・・・・

内閣総理大臣(野田佳彦君) みんなの党、渡辺代表の御質問にお答えをしてまいります。
 公務員宿舎朝霞住宅についてのお尋ねがございました。
 国家公務員宿舎のあり方につき見直しを行うとの事業仕分け結果を受け、財務省にて政務三役を中心に宿舎のあり方を検討し、おおむね5年で、宿舎を15%強、3.7万戸程度を削減するなどの方針を定めました。宿舎を削減し、不要宿舎の跡地を売却することで、復興財源にも貢献できると考えております。
 このような全体の方針を踏まえ判断した結果、真に必要な宿舎として、朝霞住宅の事業再開を決定しております。・・・・・・・

2) 事業仕分け

事業仕分けでの議論やその決定が、どうであったか調べる必要がある。公務員宿舎に関する事業仕分けとは、2009年11月27日に行われた「公務員宿舎建設等に必要な経費、特定国有財産整備費(財務省)」であり、このWebから評価コメント、評決結果、議事概要を見たりダウンロードしたりできる。そこで、当時指摘された問題点や結論を見てみることとする。

3) 事業仕分けの結論

事業仕分けにおける結論は、評価コメントに次のように書いてある。

公務員宿舎の在り方については、速やかに関係省庁間において検討を行い、宿舎の建替えについては、その検討を踏まえ実施することとし、それまでの間、継続案件や東京周辺以外の緊急建替えを 除き凍結することとし、継続案件についても、朝霞等凍結可能なものについては凍結する。

朝霞住宅については、凍結が決定したかのような書き方になっているが、評決では、23名全員が見直しとし、そのうち朝霞等について凍結を目指すとしたのは11名であった。そして、とりまとめコメントとして、次のように書かれている。

ほぼ全員一致して、継続案件で止められるもの、少なくとも土台程度しか出来ていない朝霞等のものも含めて凍結し、政務三役の全体的な議論を待つとの意見となった。その中においては、本当に宿舎の必要な方の数はどうなのかをしっかりと踏まえたうえで、結論を出して頂きたいと考えている。
よって、当ワーキンググループの結論としては、全体的な議論が行なわれるまでの間、未だ大きく進んでいない継続案件を含めて、凍結とする。

4) 事業仕分けにおける議論

議事概要を読むと、事業仕分けは、魔女狩り裁判であると感じる面がある。財務省の説明に対して、批判をするだけで、聞く耳は持たず、合理的なことは排除しているとさえ思える。実は、事業仕分けの時点で、朝霞住宅は既に契約済み。(とりまとめコメントにも「土台程度しか出来ていない」とある。)キャンセル料について、具体的な金額は不明であるが、次の枝野発言のように約50億円程度との認識が、仕分け人にもあったと思う。(10-11ページ)

○ 説明者(財務省) 朝霞は契約金額が105億6,900 万円でございます。
○ ・・・・省略・・・・
○ 枝野衆議院議員 東雲は4 階までできているのだったらいいでしょう。朝霞は104 億ですが、どんなに考えてもキャンセル料がそれを上回ることはあり得ないですね。その周辺、その土地を例えばむしろ自然で残した方がいいということだから、売るのはまた議論があるかもしれないけれども、売った場合の地価は大体どれぐらいの地価ですか。
○ 井澤進行役 少し待ってくださいね。所管課から回答をお願いします。
○ 説明者(財務省) 約60 億ぐらいだと考えられます。
○ 枝野衆議院議員 そうすると、キャンセル料が半分、2 分の1 だったとしても国庫にとってはプラスで自然が守られるという計算になりますね。それは60 億というのは実勢価格ですか。

5) 朝霞市の人達

自然が守られるとの発言は、米軍から返還されたキャンプ朝霞の土地約50ヘクタールのうち3ヘクタールが公務員宿舎用地であり、ここに公務員宿舎を建設しなければ、緑が残るという発想である。でも、民間に60億円で売却して緑が残るとは思えない。朝霞市役所の朝霞市の基地跡地利用というWebがここにあり、基地跡地に関する多くの説明がある。「平成20年1月から2月にかけパブリックコメントを行い、市民の皆さんからのご意見をいただきました」とも書かれており、必要な手続きを経て跡地利用計画が作成されたのだと思う。ちなみに、次の部分は、可愛そうな被害者朝霞市の人達です。

基地跡地利用計画にも位置づけられた、児童館や女性センター、休日夜間診療所の設置場所の確保を国に求め、国家公務員宿舎の附帯施設内に建設を予定し協議を進めていました。・・・・
国家公務員宿舎の建設事業が凍結されたことから、市が計画する児童館や女性センターなどに大きな影響があり、さらに公園・シンボルロード計画にも少なからず影響があると考えられることから、これら市の計画も現在のところそれぞれの作業を見合わせ、国の動向を注視していました。
 しかし、平成22年12月の閣議において、一昨年の政府の事業仕分けにより凍結となっていた公務員宿舎朝霞住宅(仮称)整備事業については、平成23年度予算案に事業再開に係る経費が計上され、今後、同宿舎整備事業の再開に向けて進めることとなることを確認いたしました。

事業仕分けとは、何なのだろうと思います。政野評価者というのは、環境関係のNGOの人と思うが、この件について、次のように発言し、それが、この会議をリードしていったのです。もしかしたら、この発言こそ九州電力で有名なやらせ発言かとさえ思ってしまう。

朝霞市でわざわざ米軍の跡地で綺麗な森林が再生された20 ヘクタールを伐採して3 ヘクタール分を新設するということで、本当はここはこの市としては公園にしたかったということで、朝霞市も買う気満々である

朝霞市の跡地利用計画を掲げておきます。(クリックで拡大)合理的と感じます。

Photo 

6) 本質論

実は、事業仕分けにおいて、本質論は、ほとんど話されていない。本質は、公務員住宅のあり方のはず。公務員宿舎とは、政府が国家公務員宿舎法により省庁、衆参議会、裁判所、会計検査院に働く公務員に提供する宿舎であり、公務員宿舎に居住する場合には、使用料を払う。法律上政府義務となっているか確認出来ていないが、常識で考えれば、希望者には、政府が公務員宿舎を提供するのが当然。転勤辞令から1週間程度で赴任せねばならぬことも多いようである。公務員の不正防止の一つの方法は移動・転勤であり、移動・転勤を求める代わりに、公務員住宅の提供は当然と思う。

但し、借り上げ公務員住宅もあってよいと思う。また、使用料は適正料金でなければならない。なお、使用料は、人事院勧告の対象事項となっている。(宿舎法21条)

また、老朽化や宿舎のQualityは、どうなのかも気になる。公務員宿舎の新築のみを問題とするのではなく、全体像を議論すべきである。事業仕分けの資料によれば、築40年以上経過している宿舎が約3万4千戸(総戸数の約15%)あり、築35年以上経過している宿舎が:約7万2千戸(約32%)ある。合計すれば、47%と半分が築35年以上なので、1974年以前である。

事業仕分けとは、本質論は素通りする魔女狩り裁判に近いように思う。この公務員宿舎事業仕分けで、一番まっとうなことを述べていたのは、財務省説明者と考える。次は、フェルドマン評価者の公務員宿舎の在り方について、関係省庁の政務三役で話をして決めるというのは、オープンにせず、密室でやることであり、よくないという意見です。これについて、枝野氏は即座に「フェルドマンさん、だからここで取り上げてここでこうやって公開の場で議論を国民の皆さんに知っていただいています。」と述べて強引に押し切った。もっとも、枝野氏は、問題がよく理解出来ておらず、何故政府が裁判所の宿舎も手当てするかと質問したりしている。税は、政府が徴収する、裁判所や衆参議員の支出は政府が手当てする義務を持つ。現物による部分もあって良いはず。

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2011年10月 3日 (月)

朝霞公務員宿舎建設凍結は、最高のムダ使いではないか?

朝霞公務員宿舎の建設を5年間凍結すると、首相が財務相に指示したとのことです。しかし、・・・、最高のムダ使いの可能性があると思います。先ずは、凍結指示のニュースは次です。

MSN産経 10月3日 朝霞宿舎建設を凍結 首相が財務相に指示 復興増税に理解求める

何故、ムダ使いかと言えば、土木・建設工事を着工後に中止することは、莫大な損失になるからです。ゼネコンの人と、ある工事の工程変更に関して話をしたことがある。その時、ゼネコンの人は、工事を何が何でもそのまま続行することを主張したのです。ゼネコンの人の説明は、工事を続行しても、中断しても、毎月のコストは、ほとんど変動しない。もし、下請業者だって解放したら、違約金の支払いや、様々な補償が必要である。次回再開する時には、今まで要した金とほとんど変わらない出費が予想される。要は、工事は、一旦開始すると、中止することは、常識的には、およそ考えられないことである。

そこで、ニュースを探すとありました。損害賠償金最大40億円のニュースです。

時事ドットコム 10月3日 損害賠償、最大40億円=建設中止なら-朝霞宿舎

朝霞公務員宿舎の建設費は、105億円なので、すごいムダ使いではないでしょうか。無用の物ではないはず。民間企業だったら、絶対にしないことと思います。政治家は、選挙の得票のことしか頭になく、バカなことをすると思える。

更に、思うことは、朝霞公務員宿舎の建設の目的です。冒頭のMSN産経ニュースには「12カ所の宿舎を廃止し、朝霞市の米軍基地跡地に13階建て2棟計850戸を建設する」とある。廃止する12カ所の公務員宿舎の跡地は売却するはず。売却による収入が5年間遅れるはず。総額105億円を850戸で割ると1戸あたり平均建設費は1235万円である。妥当な金額であるように思うが、これに40億円の損害賠償金や工事中断中の経費も合計すると、50%アップぐらいになるかもしれない。危機管理用を除く東京都千代田、中央、港の3区にある公務員宿舎の廃止・売却や、幹部用宿舎の建設凍結なんて、朝霞公務員宿舎の件とは、全く関係がない。朝霞公務員宿舎が建設されても、実施可能であり、むしろ実施可能であれば、即刻実施すべきというのが正しい。

次に、凍結が復興財源の確保や増税の緩和になるかと言えば、全くならないはず。12カ所の公務員宿舎の跡地売却収入がなくなるのであり、現時点の節約のみに焦点を当てても、意味がない。逆に損害賠償金支払いにより40億円の増税になるのである。

この世に打ちでの小槌はない。地道に努力すべきである。政府は、情報を公開すべきである。そして、公務員・官僚は、国民のために働くべきであり、議員に使われ、議員の指示で、行動してはならない。政治主導をぶっ壊せと言いたい。議員は、まじめに国民のために立法活動をすべきである

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2011年10月 2日 (日)

やらせメール事件の第三者委員会と九州電力の対応は双方正しいのでは

自らが事態再発防止のためと委員を選定し、報告書を依頼。しかし、報告書が出されると、当社の「最終報告書」に反映し、経済産業省へ提出すると述べる。多くの人にとっては、第三者委員会が意見を出しても、それを真摯に受け止めず、参考に止め、会社としての意見は別途出すというのは、そのような会社体質だからやらせメール事件のようなことが生じるのだと、怒りの気持ちが先行するのではと思う。そして、多くの意見は、次の西日本新聞の社説に代表されると思う。(地元の新聞社説で代表させていただきました。)

西日本新聞社説 10月1日 九電三者委報告 お客様は置いてきぼりに

社説の冒頭部分の「九州電力がわざわざ第三者委員会をつくった目的は何か。地域社会の信頼を取り戻すためだ。そうしないと企業業績にも影響が及びかねないと懸念した。」は、地元の人々の気持ちだと思う。しかし、真実、真相、正義といったことは、簡単でないと言える。この事件は、6月26日に開催の経済産業省主催による玄海原発に関する県民説明番組での意見形成を意図した九州電力による工作事件であるが、単純に、そのように言い切るだけで終わらせず、その背景に深く入っていくことにより、学べることが多い事件と思う。

もう一つは、社外弁護士・専門家等の委員会を作り、自由に調査・分析することを依頼し、自由な報告書の作成と公表を許すことは、真相解明・再発防止には、正しいことと思う。但し、外部の人にとっては、誤解や理解不十分な点はあり得るし、自社の機密あるいは他社の機密や取引情報で第三者委員会に提供困難あるいは不可能な情報も存在する。そのようなことから、第三者委員会の報告書と、自社の意見が異なっても問題がないと思う。むしろ、それが正常なこともあり得るし、場合によっては、結論さえ異なることがあり得ると思う。

首相や内閣が、審議会を作って、その答申に沿って、政策決定、法案作成、政策運営等を行うことがある。時には、メンバー選定時に、既に結論が見えていると思えることもある。あるいは、メンバーの多くがご高名な方々であり、審議参加・報告書作成に必要な時間を割けるのかと疑問に思い、事務局主導で動いたのではと疑いを持つことも、私には多い。少し異なるかも知れないが、9月5日の司法修習生の給与制廃止となるのか?を書いた。貸与制への変更は司法制度改革審議会がそのような意見を出したことから始まる。私なんかは、一般受けする費用のみの観点で、社会にとっての重要性の観点が書けている責任を持たない意見と思う。審議会の結論と言っても、多くの人が、それを批判し、更に議論を重ねることにより、よい方向に展開できる。批判をしたり、反対意見を述べることに反対してはならない。第三者委員会の意見を尊重すると共に、自らの意見を述べることに、私は大いに賛成するのである。

なお、九州電力やらせメール事件の参考WebのReferenceを掲げておきます。

経済産業省 7月14日 佐賀県民向け説明番組に関する九州電力株式会社からの報告について

九州電力 7月14日 「経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけ」に関する事実関係と今後の対応(再発防止策)について

九州電力ホームページ (このブログを書いている時点では、9月30日の”第三者委員会からの「最終報告書」の受領について”がホームページにあり、近いうちにプレスリリースのページに移ると思います。第三者委員会の報告書も、同じページからダウンロード可能です。)

参考まで、第三者委員会の報告書には、相当のページ数があり、私も読み切れていません。この事件の背景には、プルサーマルの実施があり、西村あさひの弁護士から第三者委員会宛のプルサーマル計画についての報告書がある。以下に、一部を抜き出したが、これも事実です。

福井県敦賀市にある「もんじゅ」において行われていた、MOX 燃料を使用して消費量以上の燃料を生み出す高速増殖炉による発電の実用化計画は、1995 年12 月に発生したナトリウム漏出事故により前に進まなくなった。その結果、1997 年(平成9 年)1 月、原子力委員会は、軽水炉におけるプルトニウム利用(プルサーマル)を、当面の核燃料サイクルの具体的な施策として掲げ、さらに同年2 月、プルサーマル計画を中心とする核燃料サイクルの推進に関する方針が閣議了解された。以後、国は、プルサーマル計画を、燃料サイクルの中心的な施策として推進している。

地元自治体である佐賀県及び玄海町に対しては、九州電力が佐賀県及び玄海町との間で従前から合意していた原子力発電所の安全確保に関する協定4 条に基づいて、事前了解願いを提出し、事前了解を得る必要があった。

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