高額医療費負担軽減のための外来100円徴収は正しいのか?
高額医療費負担軽減のために、外来の場合の自己負担を100円徴収高くするのは、正しいのかと疑問を持つ。
朝日 10月13日 高額医療負担軽減案 厚労省「財源、外来100円徴収」
この件に関する厚生労働省の資料は、10月12日第46回社会保障審議会医療保険部会の配付資料からダウンロード出来る(課題2資料2)。
1) 支離滅裂説明?
冒頭の<医療保険を取り巻く状況>として、「医療の高度化や急速な高齢化、医療提供体制の機能強化等により、医療費は今後もGDPの伸びを大きく上回って増大する見込み。これを賄うための公費、保険料、自己負担の規模も増大。」と書いてある。それなら、高額医療費についても、自己負担額を大きくしないと辻褄が合わないと思う。
政治家の意向を汲んだ役人の文章にはつきあいたくないと思える。合理的な負担が望ましいのである。勿論、合理的というのは、抽象的であるが、関係者の利害が調整出来る合意可能なポイントである。
2) 高所得者に負担上限83,000円でよいのか
上位所得者は83,000円の負担でよいこととしている。この上位所得者とは、650万の年間収入であり、所得額からすると500万円程度かも知れません。確かに、その程度の収入の人が、月83,000円、年996,000円で済むのは、良いことかも知れない。しかし、これは所得が5千万円であれ、1億円以上であれ、医療費の自己負担額が年百万円以内で済むこととするのである。しかも、それを一般の人の保険料と税金で補償するのであり、行き過ぎと思える。
所得によって、高額医療費の自己負担額も、変えるべきである。また、70歳を超えると、負担額を軽減するのも、変な話である。負担は年齢で調整するのではなく、所得金額で調整すべきである。何故なら、この負担額とは、原則である30%自己負担が高額となった場合に、保険制度の自己負担緩和策として存在するのであり、緩和策であることから所得と連動すべきである。民主党は、庶民の味方と言っていたが、実は高額所得者の見方だっただと思ってしまう。
なお、病気療養のために、収入が減少すれば、所得が減少し、結果自己負担額も減少する。入院しても、金融資産や賃貸不動産による収入等があれば、相応の自己負担をお願いしてよいと思う。
3) 苦しい低所得者
国民健康保険の保険料収納率は平成21年度で88.01%であった(資料30ページ)。今は更に下がっていると思う。国民健康保険の保険料は、平等割、均等割、所得割の3つの方法による計算の合計で、世帯に対する平等割、人数に対する均等割は、所得金額に無関係であり、低所得者には厳しい制度となっている。そのうえ、外来1回100円追加なんてなったら、苦しい限りである。
健保組合、くみあい健保も同様で、保険料率は上昇しており、それがまだまだ上昇する。最も、保険料の増加は国民健康保険も同様であり、高所得者を除いて、皆苦しいのが実態である。
それにも拘わらず、外来自己負担を100円アップし、この財源で、医療機関に対する保健診療報酬を100円減額し、それで浮いた保健財源を高額医療費に充てようということである。
本当に重要なのは、何であるかを見ずに、高額所得者のみを優遇していると思える。何故なら、高額医療費の緩和策は現在も存在し、低所得者は月額35,400円である。これを35,000円にするために外来100円アップが低所得者にとって納得出来るものであろうか?低所得者から金を取り、高額所得者にばらまく制度は許せないと思う。
必要な制度は、低所得者に対する医療費の公的な資金貸付制度の充実であると思う。
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