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2011年10月 2日 (日)

やらせメール事件の第三者委員会と九州電力の対応は双方正しいのでは

自らが事態再発防止のためと委員を選定し、報告書を依頼。しかし、報告書が出されると、当社の「最終報告書」に反映し、経済産業省へ提出すると述べる。多くの人にとっては、第三者委員会が意見を出しても、それを真摯に受け止めず、参考に止め、会社としての意見は別途出すというのは、そのような会社体質だからやらせメール事件のようなことが生じるのだと、怒りの気持ちが先行するのではと思う。そして、多くの意見は、次の西日本新聞の社説に代表されると思う。(地元の新聞社説で代表させていただきました。)

西日本新聞社説 10月1日 九電三者委報告 お客様は置いてきぼりに

社説の冒頭部分の「九州電力がわざわざ第三者委員会をつくった目的は何か。地域社会の信頼を取り戻すためだ。そうしないと企業業績にも影響が及びかねないと懸念した。」は、地元の人々の気持ちだと思う。しかし、真実、真相、正義といったことは、簡単でないと言える。この事件は、6月26日に開催の経済産業省主催による玄海原発に関する県民説明番組での意見形成を意図した九州電力による工作事件であるが、単純に、そのように言い切るだけで終わらせず、その背景に深く入っていくことにより、学べることが多い事件と思う。

もう一つは、社外弁護士・専門家等の委員会を作り、自由に調査・分析することを依頼し、自由な報告書の作成と公表を許すことは、真相解明・再発防止には、正しいことと思う。但し、外部の人にとっては、誤解や理解不十分な点はあり得るし、自社の機密あるいは他社の機密や取引情報で第三者委員会に提供困難あるいは不可能な情報も存在する。そのようなことから、第三者委員会の報告書と、自社の意見が異なっても問題がないと思う。むしろ、それが正常なこともあり得るし、場合によっては、結論さえ異なることがあり得ると思う。

首相や内閣が、審議会を作って、その答申に沿って、政策決定、法案作成、政策運営等を行うことがある。時には、メンバー選定時に、既に結論が見えていると思えることもある。あるいは、メンバーの多くがご高名な方々であり、審議参加・報告書作成に必要な時間を割けるのかと疑問に思い、事務局主導で動いたのではと疑いを持つことも、私には多い。少し異なるかも知れないが、9月5日の司法修習生の給与制廃止となるのか?を書いた。貸与制への変更は司法制度改革審議会がそのような意見を出したことから始まる。私なんかは、一般受けする費用のみの観点で、社会にとっての重要性の観点が書けている責任を持たない意見と思う。審議会の結論と言っても、多くの人が、それを批判し、更に議論を重ねることにより、よい方向に展開できる。批判をしたり、反対意見を述べることに反対してはならない。第三者委員会の意見を尊重すると共に、自らの意見を述べることに、私は大いに賛成するのである。

なお、九州電力やらせメール事件の参考WebのReferenceを掲げておきます。

経済産業省 7月14日 佐賀県民向け説明番組に関する九州電力株式会社からの報告について

九州電力 7月14日 「経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけ」に関する事実関係と今後の対応(再発防止策)について

九州電力ホームページ (このブログを書いている時点では、9月30日の”第三者委員会からの「最終報告書」の受領について”がホームページにあり、近いうちにプレスリリースのページに移ると思います。第三者委員会の報告書も、同じページからダウンロード可能です。)

参考まで、第三者委員会の報告書には、相当のページ数があり、私も読み切れていません。この事件の背景には、プルサーマルの実施があり、西村あさひの弁護士から第三者委員会宛のプルサーマル計画についての報告書がある。以下に、一部を抜き出したが、これも事実です。

福井県敦賀市にある「もんじゅ」において行われていた、MOX 燃料を使用して消費量以上の燃料を生み出す高速増殖炉による発電の実用化計画は、1995 年12 月に発生したナトリウム漏出事故により前に進まなくなった。その結果、1997 年(平成9 年)1 月、原子力委員会は、軽水炉におけるプルトニウム利用(プルサーマル)を、当面の核燃料サイクルの具体的な施策として掲げ、さらに同年2 月、プルサーマル計画を中心とする核燃料サイクルの推進に関する方針が閣議了解された。以後、国は、プルサーマル計画を、燃料サイクルの中心的な施策として推進している。

地元自治体である佐賀県及び玄海町に対しては、九州電力が佐賀県及び玄海町との間で従前から合意していた原子力発電所の安全確保に関する協定4 条に基づいて、事前了解願いを提出し、事前了解を得る必要があった。

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コメント

 第三者委員会が正しい、九州電力(九電)は全面的に受け入れるべきとの空気が大勢を占める中、九電が自らの意見を唱えること自体が悪いことではないことや、その理由も書いて頂き、大変勉強になるとともに勇気付けられ感謝しております。
 第三者委員会報告書では、佐賀県知事が主導して九電にメールを送らせた趣旨の結論となっていますが、九電はその結論に異を唱えております。自社に対してはいかなる批判にも甘んじる覚悟はあるが、社外の人の責任を問うことは慎重であるべきだ。第三者委員会の調査及び社内調査に基づけば、佐賀県知事が主導したとまでは断定できないというのが弊社社長の主張です。
 社員としては、社会人として双方の報告書を読んで自分なりの考えを持ちつつも、従業員としては社長が正しいと前提のもとで粛々と業務を遂行すべきと考えています。
 一番いけないのは、社長、或いは、第三者委員会、という肩書きで思考停止してしまうことではないでしょうか。社長が間違わないという保証はないのと同様に、第三者委員会だって絶対に間違いがないとは言えない筈です。実際、マスコミあるいはネットで批判している人で、双方の報告書を読んだ上で何が争点か把握している人は、どの位居るのでしょうか?
 なお、URLは私のブログではなく、第三者委員会の報告書と九州電力の報告書を詳細に分析・検討している社外の方(第四者とでも言うべきでしょうか)のブログです。この方の推論が正しいと断言できるには至っていませんが、私が双方の報告書を読み解く上で大いに参考になっています。

投稿: 九州電力社員A | 2011年11月14日 (月) 22時57分

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