« 「競争がないのに株式会社であることは矛盾している」とは問題発言 | トップページ | オリンパスはどうなるのか »

2011年10月21日 (金)

オリンパスの英ジャイラス社買収事件

オリンパスの英ジャイラス社買収に関する事件は、報道されている内容と判明している事実をつなぎ合わせても、不思議なことがありすぎる事件だと思った。報道としては、次のロイターを掲げておきます。

ロイター 10月20日 オリンパスの晴れない「霧」、資金の流れで当局の事実解明に発展も

1) 内部告発をしたウッドフォード元社長

元社長と言っても、2011年4月1日に就任し、10月14日に社長解任となったので、社長であった期間は6月半であった。現在も取締役であり、対外的には代表取締役を外れたのみとも言える。

ウッドフォード氏であるが、社長交代(就任)に関する2011年2月10日のオリンパスのプレスリリースに経歴が添付されており、1960年生まれで、1977年Millbank Business School卒業、1981年オリンパス子会社のKeyMed(Medical & Industrial Equipment)Ltd.に入社し、入社10年後の1991年に同社社長となった。2003年にOlympus KeyMed Group Limited取締役に就任、2004年に日本のオリンパスメディカルシステムズ取締役、2008年にはOlympus Europa Holding GmbH代表取締役社長、KeyMed(Medical & Industrial Equipment)Ltd.取締役会長そしてオリンパス執行役員になった。

ウッドフォード氏は、オリンパス生え抜きで、欧州医療部門の中心的人物であった。医療部門とは、現在のオリンパスの大黒柱である。2011年3月期の連結売上高847,105百万円のうち医療は42%を占める355,322百万円の売上で、営業利益で医療が69,314百万。実は、報告セグメントの合計営業利益63,832百万円より額が大きい。ちなみに、デジカメ、録音機等の映像部門は15,019百万円の営業損失であった。なお、医療部門とは、医療用内視鏡、外科内視鏡、内視鏡処置具、超音波内視鏡等である。

何が真実か、よく分からない。しかし、ウッドフォード氏の10月11日付の菊川剛会長(現社長)宛書簡(このNY TimesのWebにあり)と、これに関する報道について述べているこのオリンパスのプレスリリースを読み比べると、FAに対する支払額はウッドフォード氏の言うとおり600億円を超える巨額であることをオリンパスも認めており、ウッドフォード氏の告発内容は正しいと思える。600億円を超える金額を誰に支払ったか、また、最終的に誰の手に渡ったのかについても、ウッドフォード氏は知っている可能性が高いと思う。

2) ジャイラス

オリンパス買収前は、ロンドンで上場していた会社である。上場会社の買収で、600億円超の手数料を仲介者に払うのは、私としては、驚きである。2000億円強の買収と発表されたのであるが、手数料については発表されていないようである。(買収手続き開始合意の発表は、平成19年11月19日のプレスリリースで、買収手続完了の発表は平成20年2月1日のプレスリリースでなされている。)

ところで、オリンパス子会社となったジャイラスであるが、オリンパスの有価証券報告書で関係会社としては、表にはなく、Gyrus ACM Inc.(米)とGyrus Medical Limited(英)が、かろうじて発見できるだけである。買収後に、その会社を清算しても、売却しても、他の子会社と整理統合しても良いのであるが、関連するプレスリリースを発見できていないので、気持ちが悪い。

2008年3月期の連結キャッシュフロー計算書には、「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」として232,234百万円の支出が記載されている。そして、単独財務諸表の附属明細書に、Olympus UK Acquisitions Limited向けに192,166百万円とGyrus Group PLC向けに24,752百万円の関係会社短期貸付金の記載がある。

Olympus UK Acquisitions Limitedは、ジャイラス買収のために設立したと思うが、買収したジャイラスの事業が、どうなっているのか情報がないので、不気味に思える。

3) 手数料687百万ドル

普通に考えれば、手数料としては、あり得ない金額です。この支払のうち、(オリンパス発表では)443百万ドル、(ウッドフォード氏書簡では)620百万ドルがジャイラス優先株の買い戻しで、支払われている。この優先株を使った取引は、名目だけで、オリックスが言うような、値上がりではないはず。何故なら、上場を廃止した後の売買なので、勝手に値を付けられるからである。なぜ、優先株を使ったかは、ウッドフォード氏書簡にあるように、税対策であったと思う。

そもそも税対策であったからこそ、ケイマンが使われたはず。そして、この支払は、2000年3月期キャッシュフロー計算書の「子会社株式の取得による支出」の59,895百万円に含まれていると推定する。

4) 今後

やはり上場会社が、このような不透明な取引をすることは、よくないと思う。いずれにせよ、ウッドフォード氏は17日に、ロンドンのBritain’s Serious Fraud Officeに告発したのである。英国の上場会社に関して発生した事件であり、しかも、600億円超の受取関係者に英国の人間が絡んでいる可能性もないとは言えない。

単なる経済事件なのか、脱税も絡むか、あるいは犯罪も構成しているのか、今後の進展を見てみたい。そして、オリンパスの取締役・経営者は、どのように問われるであろうか、英国法でどうなのか、日本法では、どうなるのか。ウッドフォード氏の告発が真実であれば、オリンパス経営者は少なくとも虚偽のプレスリリースを出したように思う。その場合、証券取引法違反は確実と思うが。

|

« 「競争がないのに株式会社であることは矛盾している」とは問題発言 | トップページ | オリンパスはどうなるのか »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オリンパスの英ジャイラス社買収事件:

« 「競争がないのに株式会社であることは矛盾している」とは問題発言 | トップページ | オリンパスはどうなるのか »