« 2011年10月 | トップページ | 2011年12月 »

2011年11月30日 (水)

OECDによれば、日本の税金は安い

OECDが、2011年版のRevenue Statistics(税収統計)を刊行した。OECDの発表は、次である。

OECD Newsroom 2011年11月29日 Tax revenues stabilise in OECD countries in 2010

この発表の冒頭に、2009年におけるOECD各国の対GDP税収比率比較グラフがある。このグラフを、そのまま転記し、GDP比率のパーセント数字を書き加え、日本を赤くしたのが次である。

Oecdtotaltaxrevenue2009

税金が高いから良い国とか、安いから良い国とか決めることは出来ず、その国の国民が決めることである。でも、このグラフを見ると、日本が福祉国家を目指すなら、34国中で28位の26.9%は、税率が低すぎるように感じる。ギリシャも日本より高く、イタリアは第3位と頑張っている。

しかし、生活実感からすると、苦しくなるばかりで、これ以上税金を上げて欲しくないと思う。ところで、数字は正しいのかと検証をすると、11月21日に成立した第3次補正予算の「租税及印紙収入」は、40兆9270億円である。2010年10月から2011年9月までの12月間の四半期名目GDP合計は469兆6560億円である。即ち、税収はGDPの8.7%である。OECDの数字が、18.2%の85兆円も大きいこととなる。

差の最大の原因は、医療保険と年金である。OECD統計は、法により支払を国民に義務づけていれば税と同等であり、税として扱うのが合理的とする考え方である。しかし、それでも、なかなか我が計算では26.9%には達しない。即ち、保険料として徴収している健康保険料は、約18兆円であり、年金保険料は29兆円。合計して、47兆円にしかならない。OECDのRevenue Statisticsを読めば、解明できると思うが、そこまでやれていない。

2010年代の中頃に消費税を10%にするとして、幾ら税収が増加するかというと、第3次補正予算の消費税は10兆1990円である。これは、1%の地方消費税を含んでおらず、4%での計算である。そして、消費税のアップは、税収が増加するが、同時に支出側での消費税分が増加する。従い、純増は4%アップでも10兆円に満たないはず。地方分をゼロとしても12兆円程度のはず。GDP比たったの2.5%である。消費税10%でも、日本は税金天国の国のようである。但し、将来に国債償還があり、その財源を考慮すると、税金はメチャ高になる可能性もある。消費税10%で満足せずに、高額所得者の所得税や高額資産の相続税についても検討をしないと、低所得者の生活のみならず中所得者の生活が苦しくなり、その上、人口構成の高齢化により働く世代への依存度が高くなる。日本社会が維持不可能になる危険性さえある気がする。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2011年11月25日 (金)

八ッ場ダムについての国交省関東地方整備局の検討結果

国土交通省関東地方整備局が八ッ場ダムについて建設の続行が妥当とする方針案を公表したとニュースがあった。

日経 11月21日 国交省、年内に八ツ場ダム最終判断 整備局は建設続行方針

八ッ場ダムに関する国土交通省関東地方整備局の検討に関しては、多くの資料がここからダウンロード可能である。

その検討は、多くの事項をカバーし、読んでいて参考になる。しかし、八ッ場ダムの建設を妥当とする結論については、飛躍があり、間違いをしているのではと疑問を持ってしまう。

疑問の一例を示す。

第5章 費用対効果の検討に「5.3 八ッ場ダムの費用対効果分析」の「表5-3-1 ダム事業の総便益」に50年間の総便益が2兆2163億円で、総費用は3504億円とある。この計算の詳細は、ここにあるが、妥当性については、疑問が多い。計算書の9ページに洪水・氾濫被害額が記載されているが、このような金額を下に計算するなら、どのようなダムでも建設が正当化されるように思う。ちなみに、採用している8洪水平均の氾濫被害額は次表の通りである。

201111

100年に1回の洪水規模の場合、現状で27.8兆円以上の被害が発生し、八ッ場ダムがあれば、その被害を21.6兆円に下げることが可能との計算である。即ち八ッ場ダムには6兆円以上の効果があることになる。この計算で採用した前提においては、そうなるのであろう。しかし、その被害額や被害軽減効果が妥当であるかについては、多くの国民を含めた議論が必要と考える。建設総に要する費用の3504億円は、国民の税金である。税を使うからには、国民に対する費用な説明と理解を得るべきであると考える。(参考2009年8月25日八ッ場ダムを考える

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月18日 (金)

オリンパスから資金が暴力団に流れた可能性

オリンパスから資金が暴力団に流れた可能性について報道した記事が出た。

時事ドットコム 11月18日 「闇経済」に2000億円超=オリンパスから流出か-NYタイムズ

であり、New York Timesの記事は次です。

New York Times November 17, 2011 Billions Lost by Olympus May Be Tied to Criminals

NY Timesが捜査関係者から得たメモのコピーによれば、オリンパスから暴力団に資金が流れたと書いてある。固有名詞として、山口組を含めともある。(The memo says investigators believe that over half of that amount has been channeled to organized crime syndicates, including the country’s largest, the Yamaguchi Gumi. )買収した国内の3社は暴力団関係の会社であった。(Meanwhile, Olympus, being advised by Global Company, paid 73.4 billion yen ($953 million) to acquire three Tokyo-based companies — Altis, Humalabo and News Chef — between 2006 and 2008, and then quickly wrote off the investments. The memo identifies all three as front companies with links to organized crime. )等々様々なことが記事にある。

実態は、どうなのでしょうか?意図的に粉飾決算をしていたわけで、すねに傷がある経営者がおり、その弱みにつけ込んで、様々な利益を吸い取ろうとした輩は多かったはずである。不正が不正を生み、転落していく。オリンパス事件には、そのような面があったのかも知れない。

私は、オリンパス事件については、特捜部に頑張って欲しいと思う。規模も大きく、ケイマン諸島、英国、米国と国境を越え、日本の証券会社や証券関係者の名前も上がっており、今回はついに暴力団も関係していることを伺わせる。オリンパス経営者のみの刑事罰で済まされる事件ではないと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

食品中の放射能

すみません「放射能は存在せず、存在するのは放射性物質と放射線である。」と8月25日にここで書きながら、一般受けする放射能という言葉を使ってしまいました。

福島県の米から500mBq/kgを超える放射性物質の存在があったとのニュースです。

日経 11月17日 福島市大波地区のコメ、出荷停止を指示 政府

政府の出荷停止や同地区の他のコメについても更なる調査をし、部分的な出荷停止解除も検討するというのは正しい判断と思います。全量検査をせよとの考えを持っている方もおられるようですが、現実にはサンプル検査しか実施不可能であり、現実的に最も効果がある有効なサンプル検査を実施し、最善を尽くすことが正しいと考えます。

日本で現在食品について実施されている放射性物質飛散の管理で大丈夫かどうかについて、興味ある記述があるので紹介します。長崎北徳洲会病院の鬼塚医師が書いておられる11月11日のブログに、m3.comという医療関係者専用のサイトにあったレポートを紹介されておられる。

鬼塚医師のブログ 11月11日 内部被曝量、子供と成人で減少幅に差 食品出荷制限も有効か

内部被曝量、子供と成人で減少幅に差 2011年11月11日 京正裕之(m3.com編集部)

11月6日の「現場からの医療改革推進協議会」主催の第6回シンポジウムでの南相馬市立総合病院で支援に当たっている東京大学医科学研究所の医師、坪倉正治氏の報告によると、南相馬市で実施しているホールボディカウンターを用いた内部被曝量検査で、これまで検査を終えた約2900人の子供のうち、セシウム137が検出されたのは約1割にとどまり、大半は体重1キロ当たり10Bq以下と微量の値だった。内部被曝量の減少も子供の方が早い傾向にある。食品の出荷制限規制の奏功が示唆される。

これに対して、チェルノブイリ原発事故の5~10年後にベラルーシ、ウクライナ、ロシアで計約11万人に実施されたホールボディカウンターによる内部被曝の検査では、検出されたセシウム137の値は、0~50Bqが77%、50~100Bqが13%、100~200Bqが5%、200Bq以上が5%、500Bq以上が0.3%というデータがあり、「ウクライナでホールボディカウンターを導入して検査をしたのが事故から5年後ぐらいで、当初は検査が全く行われてこなかった。かつ、食べ物の制限がなく、自給自足の世界で山の中でキノコを採って食べたりしていた」と指摘。「日本はある程度、出荷制限がかかって、産地を気にして生活できることで差が出ているのではないかと感じている」とし、食品の出荷制限の効果が見られると分析する。

とのことです。分からないから安全サイドに行くと言うのは良いのですが、過度に安全サイドに行くことは費用の面でも困難であり、投入しうる機材や人材も限度があり、適切な対応が最重要である。そして、適切な対応とは、早い時期からのモニタリングとそしてそのモニタリング結果のフィードバックです。適切な対応について尽力されておられる多くの人を支援したいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月16日 (水)

計画停電を計画したのは誰だったか

次のようなニュースがあった。

MSN産経 11月15日 計画停電で病院が賠償請求、4団体連合が東電に6億7千万円

ところで、私は、3月15日に計画停電の改善必要と題したブログを書いた。これを機会に、計画停電が妥当であったのか、考えてみたい。

1) 病院・医療機関への電力供給停止

どう考えても、病院・医療機関への電力供給停止は、最後の非常手段であるべき。ニュースには、「回答があった544の病院のうち、182の病院で実際に計画停電が行われた。」と述べられている。電力供給が停止しなかった病院もあると思う。しかし、計画停電の対象であるとされたことから、手術、検査等を取りやめ、救急受け入れも停止した病院もあったと思う。更には、病院ではなく、診療所の場合は、相当多くが計画停電の対象となったと考える。透析外来を実施している診療所があり、計画停電のために、診療行為を断念した医療機関も存在すると聞く。

ニュースの6億7千万円とは、四病院団体協議会に属する病院が受けた損害であり、属さない病院、そして診療所を合計すると金額は更に大きくなるはず。患者が治療を受けることが出来なかったことによる損失は、更にこの金額より大きくなる。

医療機関の電力供給を人為的に停止することは、文明国がすることではない。他を犠牲にしても、医療機関への電力供給は維持するのが正しいことである。3月14日からの計画停電においては、一部の区を除く都内23区は計画停電の対象外とした。対象外とすべきは、医療機関、消防、通信、その他重要インフラであり、23区ではない。供給停止をするなら、首相官邸などは、一番先に停電させるべき対象である。何故なら、停電でも支障なく業務を実施可能な自家発電設備が設置されていると理解するからである。

2) 計画停電の呼びかけ

最初に計画停電の実施を述べたのは、菅首相のこの3月13日の演説であった。「私は東京電力に対して、明日から東京電力管内で計画停電を実施することを了承いたしました。」と述べているが、本当は、菅首相が計画停電を指示した可能性が高いと思う。電力会社なら、計画停電回避を考え、政府に節電の呼びかけと、電力会社判断による非常時の強制停電の理解を申し出る。決して、「域内全域で大規模停電の恐れ」などと言わない。万一の場合でも、最小限度の停電で乗り切る。それが、電力会社の能力である。そして、医療機関等には、突発的な場合を除き、原則供給を継続する。

ところで、この菅首相の演説を受けての海江田経済産業大臣談話はここにある。「予見性のある形で地域ごとの「計画停電」を行う可能性がある」と述べている。

東京電力の発表は、ここにある。「明日以降は、計画的に停電をお願いさせていただきます。」と述べている。

3) 実際の電力供給

当時、毎時間毎の電力供給の実態は、発表されていなかった。しかし、7月1日より東京電力は「でんき予報」を開始し、当日のみならず過去の毎時間供給量のデータを公表した。そこで、「でんき予報」関連のデータを使ってグラフを作成した。比較の為、前年2010年の電力供給も加えた。期間は、地震前日の3月10日(木)から翌週18日(金)(計画停電を開始した3月14日(月)の週の金曜日)までとし、2010年の電力供給は、同一曜日で該当させ、2011年3月10日(木)に該当する日は、2010年3月11日(木)としている。

Tepco20110314a

東日本大震災発生した3月11日午後2時に、供給量が落ち、グラフのオレンジとブルーの線が以後乖離していることが分かる。3月12日と13日の土日は、2010年と11年で大きな差はなく、14日(月)から18日(金)の間は、深夜・早朝の時間帯を除き2010年より約1000万kW低くなている。計画停電の実施の効果はあったと考える。

4) もう少し詳しく見ると

2011年3月19日から18日までを、もう少し詳しく見るために、時間帯別に表示すると次のグラフの通りである。

Tepco20110314b

計画停電を開始した3月14日は目立つように赤線とした。開始にあたっての東京電力発表の3月14日供給力は3,100万kWであった。しかし、実際の供給は午前8時から9時の2,914万kWが最大であった。ちなみに最小は午前3時から4時の2,324MWであった。

通常年の需要は、3月10日の線とほぼ同じであると考えられ、それから1,000万kW(約25%)需要を下げたことについては、効果があったと考える。しかし、医療機関への電力供給まで停止するのは、行き過ぎであったと考える。例えば、1日3,600万kWh程度(600万kWx6時間)は、揚水動力に回せたと考える。もし、揚水を発電で8時間運転しても平均450万kWが得られる。3,100万kWの内訳は不明であるが、東京電力の揚水発電所は合計680万kWで、これ以外に使用可能な電源開発の揚水発電機合計300万kWあり、合計980万kW。一方、東京都、千葉県、神奈川県に存在する火力発電設備は2,945万kWある。3,100万kWには、基本的に揚水は含まれていないと思う。

東京電力の3月当時の発電設備については3月22日の東京電力需給見通しの予想に書いた。

今でも、3月14日からの計画停電実施は、奇妙に思う。3月12日、13日は、何をしていたのであろうか。3月14日からの電力需要と供給力は地震直後、あるいは被害状況が判明したと考えられる3月11日深夜には判明していたはずである。その上で、12日、13日と何をしていたのか?医療機関への電力供給を確保した上での、計画停電の実施は可能であったと考える。それをさまたげたのは、何であったのか。福島第一の放射性物質飛散は、東京電力からの全交流電源喪失の連絡を受けた直後に自衛隊を派遣すれば防げた可能性があると思う。夜間でも離着陸が可能な大型ヘリコプターを保有する唯一の組織であるはず。

誰が、どのような判断で、何をしたかについても、よく調査されねばならないと思う。そして、そこから、学ぶことは多いと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年11月14日 (月)

年金の課題を正面から取り組むべし

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版に掲載があった社説を読んで、思った。これは、日本の近い将来に発生する可能性がある悪夢のようだと。

WSJ 11月10日社説 福祉国家の行き詰まり象徴する欧州危機

WSJの社説は、日本人に耳が痛くなるような内容に思える。経済の拡大と税収の伸びを前提としての給付の大盤振る舞いは、前提が崩れたなら、破滅する。ごく当然のことである。

日本の年金について、”あらたにす”に11月10日に松山幸弘氏が、次の文章を書いておられた。

松山幸弘 公的年金の行き着く先

松山さんの言われていることに、ほとんど賛成である。

1) 若者の犠牲で支える年金存続策は破綻する

民主党は野党時代に政府の年金制度の問題点を指摘し、改革の必要性を訴えていた。しかし、政権を取って2年以上を経過し、改革にどう取り組むのか不明である。例えば、時事ドットコム 10月26日 年金の支給開始年齢上げ先送り=中長期的に議論-小宮山厚労相は、どうだろう?ある一定以下の年齢層について年金支給開始年齢を遅らせると、どうなるかは、誰にも明らかである。同じだけ払って、受取額が小さくなる。有利・不利は単純に年齢で決まり、若いほど損をする。小宮山大臣は1948年なので、年金受給は遅れない。若い人に我慢をしろは、根本的に変である。日本は平等な社会を目指していたはず。老若男女同じように減額・増額が本当のはずである。そのような感覚すら持ち合わせていない人が大臣になり、悲しい限りである。

小宮山大臣も民主党も酷いが、その前から、同じようなことの連続であった。例えば、次のグラフは厚生年金報酬比例部分の乗率であり、年齢が上であれば、85歳(昭和2年生)を限度として、年金額が多くなる。平行移動するのであり、現在65歳の人は、7.125でずっと同じ。現在78歳の人は、年齢のみを理由として20%多い金額の年金を受領する。

201111

少ない年金に何を言うかであるが、制度改正において、その時点で受給している人や、需給年齢に近い人について改正による受給額の減額影響を小さくしたからである。

2) 100年安心の大嘘

平成16年年金制度改正で、100年安心の年金と政治家が言った。大嘘である。本当は、「積立金を100年間で取り崩し、モデルケースの場合に、現役世代の50%の年金受給を可能とする案」と言うべきである。次が、厚生年金の財政見通し(平成21年財政検証)の表(クリックで拡大)である。右から2番目の年度末積立金(21年度価格)は、2105年に13.2兆円となっている。

21

それでも、更に大嘘がある。この財政見通しの前提が、物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.5%、運用利回り4.1%なのである。経済常識と金融常識が全く存在しない。多くの国民を欺しているようで、悪意を感じる。

3) これから

どうすべきか国民的議論をすべきである。日本は、一部階層を優遇し過ぎている可能性がある。高年齢者もそうかも知れないが、高所得者も優遇されすぎているかも知れない。何故なら、厚生年金は標準報酬月額605,000円以上で、上限に達する。従い、これ以上の高所得者は、負担率が低くなる。中低所得者は、累進所得税率が低くとも、年金・健保保険料を考えると、結構な負担額になる。保険料を上げられないからと、年金を破綻させて良いのかとの疑問である。

小宮山大臣には失望するし、バカだと思う。健康保険の外来受診100円、50円の徴収を未だに言っている。そんなことをして有利になるのは高所得者のみかもしれない。保険制度は、保険料を支払うことにより、その保険給付を受けるのである。理念から外れた設計は、理由無くすべきではない。まして、外来受診100円、50円で、低所得者の高額医療費負担の解消なんて、考え方自身根本的に変である。現行の、高額医療費制度は問題と言えるのか分析が先である。

時事ドットコム 11月11日 厚生、共済年金一元化法案提出へ=来年の通常国会に-小宮山厚労相という報道があるが、遅すぎると言わざるを得ない。自公政権時代の2007年に国会に提出された法案がベースになるとあり、成立が期待できると思う。

最重要と思うのは、税社会保険統一番号である。民主党は、必死になって成立させるべきである。さもないと格差拡大を防止できず、悪人が栄える社会になると思う。税を正しく徴収することで、公正な社会を維持できるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月11日 (金)

TPP交渉参加の切り札としての法人税増税は?

TPP交渉参加で揺れている。

日経 11月10日 首相、TPP交渉参加表明を11日に先送り

特に農業関係からの反対が強い。一方、TPP交渉にも参加しないのは、門戸を閉ざし、将来を危うくするとの考えが強いのが産業界であり、特に輸出関連産業というのが、一般的な図式である。

対立が良い結果を生むことを期待できないと思う。それでなくとも、次の四半期実質GDPのチャートに示されているように、全く発展も成長もしていない日本である。1990年頃に傾きが緩やかとなり、2008年からはガタガタである。

Realgdp201111_2

TPPに参加したと仮定しても、結果は全く改善しない可能性もある。逆に、いよいよ終末期に入るかも知れない。TPP交渉に参加して、参加国と交渉をして、解決策を見つけ、実践していくことが重要と思う。譲れない点は、譲れないとして、頑張るとどうなるか、その結果の予測も、国民に開示をして、国民に選択を委ねなければならない。交渉参加ではなく、合意や拒否を慎重に選択しなければならない。

なお、反対が多い農業について、賛成でも反対でも、現状に留まるなら、日本農業は破滅に向かう気がする。21世紀の日本の農業の姿を求めていかないと、日本における農業という産業は一部を除いて滅亡することを危惧する。農業が滅亡して、国民が幸せなはずはない。不幸である。

農業を救うには、税金で支援をするのが一番良いと思う。税を支出するからには、それなりの条件があり、要求もあって当然と思う。例えば、低関税率にも対抗できるそれなりの品質と価格である。日本では生産を諦めざるを得ない品目もあるであろうし、安全性や必要性において税により多額の補助金の支出をしても、維持する必要がある品目もあると思う。林業も、同様と思う。

その税金をどうするかであるが、法人税が考えられると思う。世界に羽ばたく企業が、日本の国土や農林業に貢献するのである。日本の国土を破滅に追い込んで、世界に活躍することは、倫理的にもしっくりこない。法人税の復興増税案は、3年間減税を見送りし、実質現状維持することである。これを4年目以降も継続する方法もある。最も、そんなことより、農業の復興策のプランを作成し、必要な補助金額を計算し、法人税増税額を決めればよい、法人税は5%減税する案であったので、補助金必要額が5%以下なら、現状より税率が低くなる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月 9日 (水)

枝野と細野両大臣の指示の不思議

次のニュースを読んで、思ったことです。

日経 11月9日 福島第1原発の廃炉工程表、年内に作成指示 政府

両相は使用済み燃料プールから使用済み燃料を取り出す時期について、原子力委員会が想定した「3年以内」を「2年以内」に早めるなど、作業の迅速化を求めた。」とのこと。

国民が求めていることは、安全である。作業を無理に早めて、危険性を増すより、確実・着実に進めることが望ましいはず。使用済み燃料プールからの使用済み燃料の取り出しを、1年早めても、大きな危険性は無いのかも知れない。しかし、原子力委員会の案の記載を、素人の大臣が簡単に変更して、それを東京電力に指示して良いのだろうか?

菅時代にはSPEEDIの隠匿、その他不都合な情報隠蔽を含め、原子力被害の拡大をした体質と同質と思う。でも、考えれば両大臣は菅内閣にいた戦犯大臣である。何故2年に早めねばならないのか、2年に早めることにより発生するリスクや不都合な点はないのかを理解できないことから、両大臣を支持することはできない。あるいは、使用済み燃料プールからの使用済み燃料の取り出しには、危険性はなく問題視するようなことではないのか?もし、そうであれば、逆に大臣2人から東京電力社長に指示せねばならないことではないはず。事務方の役人に調整を依頼すれば済むのであり、大臣2人が東京電力社長に会って話をするなら、もっと重要な話題があるはず。

なお、原子力委員会の専門部会が11月9日まとめた廃炉に向けた中長期計画案とは、これのはず。全てがちぐはぐに思える大臣たちの対応である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

オリンパス事件にからんでいた証券会社とは、これでしょうか?

11月7日のロイターには、アクシーズ・ジャパン証券(東京・中央区)(現アクシーズ・ジャパン)の社長を一時期務めていた中川昭夫氏との名前があった。

ロイター 7日 オリンパス買収仲介者は80年代から関係、「損失先送り」に関与=関係筋

複数の関係者によると、中川氏が財テクや損失先送りを提案していた主要顧客の1社がオリンパスだった。同氏はバブル絶頂期の88年に入社したドレクセル時代に、すでにオリンパスを顧客として持ち、他の事業会社と同様に投資商品を売り込んでいたという」とあり、そうなると、オリンパス以外に巨額損失を抱えた起業があるはず。それらの会社は、現在どうなのだろうか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

あきれかえるオリンパス事件

悪い方向に進むオリンパス事件と思う。先ずは、日経のニュース

日経 11月8日 オリンパス、90年代から損失隠し 買収資金で補填

これについてのオリンパスの発表

11月8日 オリンパス発表 過去の損失計上先送りに関するお知らせ

この中で、第三者委員会による調査の過程で判明したと書いてある。ところが、次のオリンパス発表では、

11月8日 オリンパス発表 第三者委員会の調査対象拡大及び人事異動のお知らせ

には、損失計上先送りに関わっていた森久志副社長の解職と山田秀雄常勤監査役の辞任の意向と書いてある。即ち、現任の副社長や監査役が関わっていた組織犯罪となる。それじゃ、第三者委員会の調査を待つまでもなく、判明していたことになる。第三者委員会による調査の過程で判明との言い逃れは、無理あると思う。

金額について答えていないが、1000億円を上回る気がする。何故なら、アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボの3社で734億円を支払、ジャイラスの手数料は700億円なので、合計で1400億円を超える。そして、恐ろしいのは、未だ全額処理できていなかった場合。合計は幾らになるのだろう?

ところでそんな巨額をどのように粉飾したのか、これが興味の対象になる。日経記事には「含み損を抱えた運用資産を、複数のファンドに移すなど複雑な操作をして損失計上を回避」とあるが、ファンドに移しただけで損失回避が出来るわけではなく、時価評価や資金決済で、浮かんでくるはず。そして、最大の難関である監査法人の監査をどう誤魔化したのかである。金融商品で監査法人を誤魔化すことは難しいと思うし、山一事件以後は、監査法人も一番気にしたはずである。何故なら、監査が不十分であったら、監査法人と会計士が吹っ飛ぶのだから。

もし、この損失を生んだ証券投資に、証券会社が絡んでおり、その証券会社が、損失隠しに協力していたとするならば、こちらも大事件になる。

このオリンパス事件について株主からの民事訴訟は確実と思うが、刑事事件については、何人起訴されるのか、もしかしたら史上最大の人数になりそうな気がする。現在まで、ほぼ確定は、米国においてHajime SagawaとAkio Nakagawaなのだろうか。

それと、オリンパス事件の波及はどうなるのだろうか?同様な損失隠しが、他社でもあり得るとなれば、信用を失う日本の上場会社も多いかも知れない。それらの会社は、海外進出において、海外での資金調達が困難となる可能性あり。外人投資家の日本株売却は、日本の株式の更に安値低迷となる。この損失隠しが、日本の当時の会計基準や以後の改正と関係しているだろうか?現在、IFRSへの抵抗勢力が存在する。その人達の日本基準というかけ声は、一斉に色あせるだろうかと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月 6日 (日)

原子力発電コストの固定費と変動費他

原子力発電のコストについては、前提条件をおいて、その前提条件でコスト計算をし、同様な前提条件下で、他の火力発電のコストについても計算し、比較している。新規に建設する場合には、一つの方法と言える。しかし、前提条件を正しく設定できるかと言えば、想定にならざるを得ないのであり、絶対的な正しさはない。他の方法の一つは、有価証券報告書等から実績値を拾い出して、比較・分析する方法である。この方法は、過去について実績として基本的に正しい答えが得られるはず。しかし、原子力発電については、必ずしもそうではない。

例えば、資産除去債務費用がある。資産除去債務費用とは、有形固定資産を将来破棄するに際し、費用が発生する場合、その費用は収益対応で認識すべきと考えれば、減価償却のように処理すべきである。2010年4月から資産除去債務に関する会計基準が適用となった。原子力発電設備については、従来から引当金処理(原子力発電施設解体引当金)で会計処理をしており、大きな差はない。しかし、将来の資産除去債務・費用の金額を、どこまで正確に見積もれるか、はなはだ怪しい。運転による高レベル放射性破棄物の処分地も決まっていない。原発とは、大量の放射性破棄物を生み出す。海洋投棄は出来ず、他の国が引き受けてくれるのではない。原発とは、怪しげなるモノである。

それはさておき、それでも有価証券報告書が前提も明確であり、他の手段よりも信頼性が高い情報が得られると考えられるので、有価証券報告書からの情報で分析を実施する。原発について議論をする際の参考になればと思う。

1) 東京電力の原子力発電コスト

先ずは注目の東京電力の原子力発電コストである。

Tepconclr201111

横軸に原子力の発電量、縦軸に原子力の発電コストをとってグラフを書いたが、発電量が変動しても、コストの変動割合が小さいことが読み取れる。グラフ中の実線は、直線による近似線であり、発電量ゼロであっても、3000億円付近になりそうである。

このグラフから、kWh当たりの単価を考えると、80,000GWhで5500億円なので単価6.9円となるが、60,000GWhで4800億円なら単価8.0円である。2011年4月から8月までの東京電力の原子力の発電量は16,419GWhなので2011年度通年の発電量は30,000GWh程度と想定した場合、発電単価は、総コストを3,500億円とすると、発電単価11.7円となる。

2) 日本全体の原子力発電コスト

日本の54原発、合計48,847MWの設備は、一般電力会社9社と日本原子力発電1社の合計10社で保有されており、いずれの会社も有価証券報告書を発行している。10社の原子力発電コストを抜き出して、グラフを作成したのが次である。

Nuclear201111a_2

発電量は約250,000GWh。それに対する発電コストは2兆円弱であり、発電量の変動に対して大きな差はない。

念のため、各社の原子力発電コストを比較してみる。横軸は、発電量であるが、年間発電量を年間時間数と設備出力で除した設備稼働率とし、縦軸は年間コストを設備出力で除した設備kWあたりのコストとしてグラフを描くと、次の通りである。

Nuclear201111b

発電量(設備稼働率)による発電コストの変動は少なく、設備出力で割り算して算出したkW当たりの発電コストが30,000円から60,000円の範囲にある。同じデータを単純に発電量kWh当たりの発電コストでグラフを書いたのが次である。

Nuclear201111c

固定費が大きく、変動費の割合が小さい場合の、典型的なコストカーブが現れている。

3) 原子力の発電コストコスト計算式

年間kW当たりの発電コストのグラフで描いた近似線の式は、次である。

発電コスト(円/年・kW) = 28,000円 + 20,000円 x 稼働率(0.00)

この式を、発電コスト(円/kWh)に変換するには、年間時間数8760時間と稼働率で割り算をすればよいので、次の式となる。

発電コスト(円/kWh) =            28,000円         +  20,000円
                                  8760時間 x 稼働率(0.00)            8760時間

これらの式の計算結果をグラフに示したのが、上の2つのグラフの実線である。ちなみに原子力のkWh当たりの発電コストは、この式で計算すると稼働率70%と80%の場合は、6.85円と6.28円となる。もし、50%なら、8.68円となる。

4) 火力発電の場合

火力発電の場合の発電コストを東京電力と一般電力10社及び卸売電気事業者の電源開発の11社合計についてのグラフを以下に掲げる。

Thermalg201111tep

Thermalg201111total

燃料費を除く発電コストは、ほとんど変動していないが、燃料費を含めると大きな変動がある。即ち、燃料費の変動が大きく、且つ燃料費がコスト中に占める割合が大きいのである。燃料費の変動は、発電量増減に比例するコスト増減と燃料の市場価格の変動の2つが主要因である。

各社別に比較するために、kWh当たりの火力発電コストについて、燃料費を除く場合と、含む場合について、2008年度、2009年度、2010年度についてグラフを作成した。

Thermalg201111comp_2 

ある一定の範囲に入るが、電力会社による差は存在する。例えば、電源開発の発電コストは2008年度8.33円、2009年度7.03円、2010年度6.69円と最も低い。その理由としては、全てが石炭火力であることが関係している。CO2問題との関係で、新規火力はどうするかという問題もあるし、部分負荷運転を原則実施していないことも関係している。一方、一番高いコストになっているのが関西電力であるが、原子力発電の割合は多い。原発は、固定費割合が大きいため、稼働率を上げることが、単価を下げることにつながる。そして、原発稼働率の上昇は、火力発電の稼働率低下につながる。この関係は、保有する設備構成や各発電機の性能等にも関係し、複雑である。

原発の運転は、常時最大出力で運転している。これは、稼働率を上げる目的もあるが、安全運転確保の為が重要である。このため、夜間は需要より発電量が大きくなり、電力貯蔵のため揚水発電所による揚水運転で水の位置エネルギーとして蓄えている。原子力発電コストを考える場合に、揚水発電に関するコストも考慮する必要がある。なお、揚水発電は電圧や周波数制御の目的も果たしており、大きな要素として原子力発電が関係しているが、原子力のみの目的ではない。

5) 福島事故のコスト影響

内閣府原子力委員会に、2011年9月27日に原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会が設置され(ここ参照)、この小委員会で「原子力発電所の事故リスクコスト」について討議されている。(このWebから資料等をダウンロード可能)

事故による発電コストの上昇について47協同ニュース 10月25日 原発事故1キロワット時最大1円 原子力委がコスト試算のような報道があった。これは、この委員会資料の17ページの表を伝えていると理解する。計算根拠は、単純に損害額を38,878億円とし、それに想定確立と想定稼働率と出力1200MWを使って計算したのである。

本当にこれで良いのかと、同じ資料の5ページを見ると、福島事故損害費用5兆5千億円とある。本エントリー冒頭のグラフから東京電力の原子力年間コストは5千億円であり、この11倍に相当する。仮に、11年間で負担すると、丁度東京電力の原子力発電コストは倍になる計算である。即ち、3)で計算したコストからすると、6円-7円のコスト増である。

仮に日本全部の原発の費用に見込むべきだとすると、2)のグラフの年間2兆円の2.5倍強に相当する。10年で分担すると年間25%アップとなる。

何故このように大きな差が生まれるかというと、原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会の発生確率が、シビアアクシデント2x10E-3となっており、1000年に2回としている。しかし、現実では、70年代に運転を開始した原子炉において40年でシビアアクシデントが発生した。どこかおかしいように思う。原子力委員会の委員を、理性と常識がある人に、変更すべきではないかと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月 2日 (水)

オリンパスは、謎が深まるばかり

謎が深まるばかりのオリンパスです。会社の所有者は、株主である。オリンパスは、上場会社であり、ここまで謎が深まれば、会社として明確な説明をせねばならず、さもなければ株主を欺して投資をさせたことになると思う。では、深まった謎とは、価値のない3社(アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボ)の株式を734億円の対価で購入し、その代金をケイマン島の会社に送金したことです。価値のないというのは、次のウォール・ストリート・ジャーナルの記事からです。

WSJ 11月1日 オリンパス買収の3社、当初休眠状態だった-信用調査などで判明

普通に考えれば、犯罪が関係していると思える。無価値の権利に734億円を払うのだから。

ところで、読売の次のニュースがある。

読売 10月31日 オリンパスの米大株主、詳細な情報開示要求

会社法371条により監査役設置会社は裁判所の許可を得て取締役会議事録の閲覧又は謄写の請求をすることができる。これだけ疑惑が大きい事件なので、裁判所は許可すると思う。そうすると、全株主も同じ権利を持つので、取締役会の議事録が読める。万一、無いとすれば、オリンパス取締役と監査役の責任は重大だし、納得できる内容が書かれていなければ、株主代表訴訟に確実につながると思う。そして、取締役・監査役の刑事責任は・・・?

なお、オリンパスの2011年3月期有価証券報告書には、サウスイースタン・アセット・マネジメントの株式保有について、2010年5月14日付大量保有報告書の変更報告書で19,406,997株(7.15%)の保有報告があるが、オリンパスでは実質所有株式数の確認ができていないと書かれている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年10月 | トップページ | 2011年12月 »