計画停電を計画したのは誰だったか
次のようなニュースがあった。
MSN産経 11月15日 計画停電で病院が賠償請求、4団体連合が東電に6億7千万円
ところで、私は、3月15日に計画停電の改善必要と題したブログを書いた。これを機会に、計画停電が妥当であったのか、考えてみたい。
1) 病院・医療機関への電力供給停止
どう考えても、病院・医療機関への電力供給停止は、最後の非常手段であるべき。ニュースには、「回答があった544の病院のうち、182の病院で実際に計画停電が行われた。」と述べられている。電力供給が停止しなかった病院もあると思う。しかし、計画停電の対象であるとされたことから、手術、検査等を取りやめ、救急受け入れも停止した病院もあったと思う。更には、病院ではなく、診療所の場合は、相当多くが計画停電の対象となったと考える。透析外来を実施している診療所があり、計画停電のために、診療行為を断念した医療機関も存在すると聞く。
ニュースの6億7千万円とは、四病院団体協議会に属する病院が受けた損害であり、属さない病院、そして診療所を合計すると金額は更に大きくなるはず。患者が治療を受けることが出来なかったことによる損失は、更にこの金額より大きくなる。
医療機関の電力供給を人為的に停止することは、文明国がすることではない。他を犠牲にしても、医療機関への電力供給は維持するのが正しいことである。3月14日からの計画停電においては、一部の区を除く都内23区は計画停電の対象外とした。対象外とすべきは、医療機関、消防、通信、その他重要インフラであり、23区ではない。供給停止をするなら、首相官邸などは、一番先に停電させるべき対象である。何故なら、停電でも支障なく業務を実施可能な自家発電設備が設置されていると理解するからである。
2) 計画停電の呼びかけ
最初に計画停電の実施を述べたのは、菅首相のこの3月13日の演説であった。「私は東京電力に対して、明日から東京電力管内で計画停電を実施することを了承いたしました。」と述べているが、本当は、菅首相が計画停電を指示した可能性が高いと思う。電力会社なら、計画停電回避を考え、政府に節電の呼びかけと、電力会社判断による非常時の強制停電の理解を申し出る。決して、「域内全域で大規模停電の恐れ」などと言わない。万一の場合でも、最小限度の停電で乗り切る。それが、電力会社の能力である。そして、医療機関等には、突発的な場合を除き、原則供給を継続する。
ところで、この菅首相の演説を受けての海江田経済産業大臣談話はここにある。「予見性のある形で地域ごとの「計画停電」を行う可能性がある」と述べている。
東京電力の発表は、ここにある。「明日以降は、計画的に停電をお願いさせていただきます。」と述べている。
3) 実際の電力供給
当時、毎時間毎の電力供給の実態は、発表されていなかった。しかし、7月1日より東京電力は「でんき予報」を開始し、当日のみならず過去の毎時間供給量のデータを公表した。そこで、「でんき予報」関連のデータを使ってグラフを作成した。比較の為、前年2010年の電力供給も加えた。期間は、地震前日の3月10日(木)から翌週18日(金)(計画停電を開始した3月14日(月)の週の金曜日)までとし、2010年の電力供給は、同一曜日で該当させ、2011年3月10日(木)に該当する日は、2010年3月11日(木)としている。
東日本大震災発生した3月11日午後2時に、供給量が落ち、グラフのオレンジとブルーの線が以後乖離していることが分かる。3月12日と13日の土日は、2010年と11年で大きな差はなく、14日(月)から18日(金)の間は、深夜・早朝の時間帯を除き2010年より約1000万kW低くなている。計画停電の実施の効果はあったと考える。
4) もう少し詳しく見ると
2011年3月19日から18日までを、もう少し詳しく見るために、時間帯別に表示すると次のグラフの通りである。
計画停電を開始した3月14日は目立つように赤線とした。開始にあたっての東京電力発表の3月14日供給力は3,100万kWであった。しかし、実際の供給は午前8時から9時の2,914万kWが最大であった。ちなみに最小は午前3時から4時の2,324MWであった。
通常年の需要は、3月10日の線とほぼ同じであると考えられ、それから1,000万kW(約25%)需要を下げたことについては、効果があったと考える。しかし、医療機関への電力供給まで停止するのは、行き過ぎであったと考える。例えば、1日3,600万kWh程度(600万kWx6時間)は、揚水動力に回せたと考える。もし、揚水を発電で8時間運転しても平均450万kWが得られる。3,100万kWの内訳は不明であるが、東京電力の揚水発電所は合計680万kWで、これ以外に使用可能な電源開発の揚水発電機合計300万kWあり、合計980万kW。一方、東京都、千葉県、神奈川県に存在する火力発電設備は2,945万kWある。3,100万kWには、基本的に揚水は含まれていないと思う。
東京電力の3月当時の発電設備については3月22日の東京電力需給見通しの予想に書いた。
今でも、3月14日からの計画停電実施は、奇妙に思う。3月12日、13日は、何をしていたのであろうか。3月14日からの電力需要と供給力は地震直後、あるいは被害状況が判明したと考えられる3月11日深夜には判明していたはずである。その上で、12日、13日と何をしていたのか?医療機関への電力供給を確保した上での、計画停電の実施は可能であったと考える。それをさまたげたのは、何であったのか。福島第一の放射性物質飛散は、東京電力からの全交流電源喪失の連絡を受けた直後に自衛隊を派遣すれば防げた可能性があると思う。夜間でも離着陸が可能な大型ヘリコプターを保有する唯一の組織であるはず。
誰が、どのような判断で、何をしたかについても、よく調査されねばならないと思う。そして、そこから、学ぶことは多いと思う。
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