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2011年12月31日 (土)

終末期医療

考えざるを得ないテーマであるが、12月27日の日経メディカルオンラインに、次の記事があった。

日経メディカルオンライン 12月27日 【海外ルポ】治療差し控え進むフランス

全文を読むには、登録が必要と思うが、「2005年に、医師が治療の差し控えや中止を行うことを認める「4月22日法」が制定され、患者の意思に基づいて、延命以外の効果がない治療や、過剰な治療を医師が差し控えたり、中止したりできるとした。また、命を縮めるリスクを伴う方法(例えばモルヒネの大量投与)でしか苦痛を緩和できない場合でも、患者や家族が希望すれば、緩和ケアを行うことを認めた。実施に際しては、医師は治療中止や緩和ケアがもたらす結果について患者に説明した上で、患者の意思を尊重することが求められる。加えて、話し合いの内容はカルテに記載しなければならない。患者が意思決定できない場合は、複数の医師で検討を行った上で、代理人や家族の意見、患者の事前指示書などを踏まえて、治療の差し控えや中止などを決定する。ただし、オランダやベルギーなどで合法化されている積極的な安楽死は認めていない。」というような記載もある。

各個人が、どのような治療を選択するかは、その人の選択に従うべきである。しかし、選択にあたっては、疾病、病状、その他色々な要素が絡み、医師の適切な説明やアドバイスが必要である。患者の容体によっては、正常な意思決定をできないこともあり得る。重いテーマと思わずに、考えていく必要があると思う。

2011年も終わろうとしています。大変なことが多かった一年でした。しかし、どのような問題に対しても正面から向き合って考え、努力することで、何か見えてくる気がします。来年以降も、逃げることなく、向き合っていきたいと思います。2012年もよろしくお願いします。

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社会保障と税の一体改革素案

「社会保障・税一体改革素案(案)」が発表された。ここにあります。報道としては、日経が以下であった。

日経 12月30日 一体改革、政府素案を決定 3月末までに法案

社会保障・税一体改革素案(案)を読んでみて、それなりの真剣さは感じられた。これから、変更・改正について様々な圧力もあると思うが、それらは多分悪い方向への変更であり、変な変更をするなら、このままの方が、支持できると思った。

1) 消費税の目的税化

28ページに消費税収の全額社会保障目的税化が書いてある。しかし、「・・など」や「現行の地方所得税を除く」との表現もあり、もしかしたら、地方交付税分が除かれたりする可能性があると思う。地方自治体の長とやりとりで決めてはならない。八ッ場ダムの場合の地方自治体と同じ態度が予想される。

16ページに最低保障年金を税負担で一人7万円が書いてある。実現させるなら、この最低保障年金のみで20兆円以上の規模の財源が必要と思うし、また8ページに書いてある「2025年に、どこに住んでいても、その人に適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現する。」は、大賛成であるが、必要な歳出と期待できる税収が示されていないことから、不安を抱く。民主党マニフェストのようになっては困るのである。でも、目的税化がなければ、消費税増税の意味も半減するし、どうせ消費税収より社会保障関係歳出の方が大きいから、これでよいかとも思う。もっとも、国債依存度の引き下げは、どうやって実現するかも検討必要である。

2) 共通番号制度(マイナンバー法)

この機会を逃すと、番号制の導入は、ほとんど不可能に近くなるように思う。何が何でも導入して欲しい。社会保障の充実に税は不可欠である。その税が、不公平であったなら、社会保障制度も成立しない。

最低保障年金は、ある意味では、保険料支払い不要の制度である。現行でも、国民年金を支払わなくても将来の年金が受給できないだけ。信頼がなければ、保険料支払いの意欲は失われる。そして税金による生活保護費の支出が増加する。番号制度の場合に、現在の年金と健康保険の保険料を社会保険税と呼び変えて、税務署が徴収する制度とすれば、徴収費用と管理費用は極端に安くなるはず。

かつて銀行預金のマル優制度があった。一定金額まで、無税扱いが受けられ、良い制度であった。番号制が運用されれば、銀行預金のみならず債券、投資信託、株式にも適用可能とし、金融所得を一定額までは無税とできる。

番号制ができれば、公平・公正な社会の実現に近づけると思う。

3) 衆議院議員定数80削減

衆議院議員定数80削減が、第2章(31ページ)に書かれている。この削減を比例区定数でするなら、暗黒政治に向かうと思うが、12月30日 日経 首相、政治・行政改革に全力 一体改革の前提には、「公明党が比例区定数の削減に反対しており、自民党も公明党との協調を重んじるだけに、民主党の提案に安易に乗れない」と書いている。

政治家のための政治ではなく、国民のための政治がなされるように、小選挙区制度は早く中止をすべきと考える。

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2011年12月30日 (金)

北朝鮮拉致問題と金正恩体制

12月29日、金正日総書記の中央追悼大会が開かれ、序列2位の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が追悼演説で「金正恩同志をもう一人の将軍、最高領導者(指導者)として高く仰ぎ奉じる」と強調した。金正日総書記の追悼期間は終わり、金正恩(キム・ジョンウン)氏の体制が本格始動すると日経の記事にあった。

日経 12月29日 金正恩氏は「最高指導者」 平壌で総書記追悼大会

拉致問題は、金正恩体制下で、どうなっていくか気になるところである。拉致被害者蓮池薫氏の兄蓮池透氏が、私は朝日新聞に語った記事に興味をそそられた。

朝日 12月27日 蓮池透さん「拉致の張本人、悔しい」 金総書記死去に

蓮池透氏が述べている「日朝首脳会談で拉致を認めて『特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走った』と説明したが、彼こそ張本人。」は、その通りと思う。監督不行届で済まされず相当の大きな関与があったと思う。独裁体制で、金正日総書記の全て思いのままであったかどうかは、分からないが、金正日の名前を使えば、あらゆることが実施可能であったことは、間違いないはず。

金正日が亡くなったから、拉致問題が解明されるとは考えないほうがよいと思う。拉致は、ある組織が実行し、拉致した後も、北朝鮮の政府機関が拉致被害者を利用した。大韓航空機爆破事件の金賢姫への日本語教育が頭に浮かぶ。組織犯罪である。

金正恩氏体制とは、何であるだろうか?独立の英雄金日成による体制下では、個人崇拝が大きな部分を占めたはず。しかし、3代目の金正恩体制に個人崇拝は無いと思う。2代目金正日体制で築かれた組織が、金正恩体制でも実権を握り北朝鮮の政府や国家権力を動かすだろうと思う。そうであるなら、金正日時代の汚点をさらけ出すインセンティブは全く働かない。また新たに日本人を拉致して得られる利益は全く無く、リスクが大きいだけのはず。拉致問題は、北朝鮮の権力者にとっては、触れることなく、葬り去ろうとする問題であるはず。

2002年に拉致被害者5人が帰国した。一方、日朝国交正常化交渉を外務省のWebで見ると、2000年8月24日 日朝国交正常化交渉第10回本会談についての共同発表文 が最後の外交文書となっている。2000年8月は森喜朗首相の時代であるから、小泉純一郎首相になってからは、日朝関係は冷えてしまったと言えるのだろう。差別と日本人(角川oneテーマ21)の中で、野中広務氏は「帰国させた見返りとして、北朝鮮側はある条件を出している。ところが、日本は何一つ履行していない。・・・それを耳にして、小泉ってのはひどいことをしたと思った。」と述べている。

金正日死亡で、北朝鮮の体制が壊れてしまい、破綻国家となり、難民が発生し、武器や核兵器までが、テロ集団を含む様々な集団に拡散すると言うようなリスクは、金正恩体制の平穏な発足で、無くなったと考えてよいと思う。今後は、金正恩体制での実権把握に乗り出すのは中国であり、利権確保に乗り出すのが米国なのかも知れない。日本は、多分、韓国やロシアよりも遅れて後ろを単純について行く。国境正常化は、一番最後になるのかも知れない。

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2011年12月27日 (火)

福島原子力発電所事故調査・検証委員会の中間報告

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が中間報告書を提出した。

日経 12月26日 「原発、想定外に対応を」 政府事故調が中間報告

中間報告書は、次のページからダウンロード出来ます。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告 報告書

概要しか読めていないが、私にとっては、次の点が印象に残った。

1) 政府対応の問題点

概要は、「1 はじめに」、「2 事故の概要」、「3 事故発生後の政府諸機関の対応の問題点」、「4 福島第一原発における事故後の対応に関する問題点」と続く。読み始めて、すぐに政府諸機関の対応の問題点が書かれている。

そして、政府諸機関の対応の問題点として最初に記述があるのが、原子力災害対策特別措置法(原災法)や政府の原災マニュアルで、原子力災害が発生した場合に、緊急事態応急対策の中心となる原子力災害現地対策本部が設置されるオフサイトセンターのことである。福島第一原発のオフサイトセンターは、発電所から約5kmの場所にあったが、施設に放射性物質を遮断する空気浄化フィルターが設置されておらず、放射線量の上昇により退去せざるを得ない状態となった。

原子力災害現地対策本部であるにも拘わらず、5kmの距離に放射性物質が飛散してくることを考えていなかった。これを「想定外」で、済ませて良いのだろうか?マンガである。そして、ストレステストとして、何かをしているが、各原発のオフサイトセンターの放射性物質対策も項目に含まれているのかと疑問を持つ。

内閣総理大臣を本部長とする原災本部が官邸に設置され、各省庁の局長級幹部職員が、緊急参集チームとして、官邸地下の危機管理センターに参集した。しかし、事故対応についての意思決定が行われていたのは官邸5 階であり、地下の緊急参集チームとの間のコミュニケーションは不十分なものであった。そうだろうなと思う。アホが集まって、情報がないから、いたずらに時間が経過する。放射性物質の飛散を防ぐ対策はできず、現在の大量の飛散を生んだと思う。

2) 水素爆発は防げた可能性あった

「4 福島第一原発における事故後の対応に関する問題点」を読んで、やはりそのように感じた。なお、今後の更なる検証が必要であり、とりあえず「可能性あった」とする。

爆発したのは、1号機と3号機であり、4号機も爆発したが、3号機からの水素による爆発のはず。福島第一発電所では、1,2,3号機が運転中であった。2号機は爆発せず、1,3号機の爆発が防げたなら、大量の放射性物質の飛散は無かったはず。原子炉は建屋内にさえ、人は近づけず、直流電源もほとんど喪失し、計器も正常に作動していなかったと理解する。従い、正確に状態を把握することは困難ではあったが、発電所外からでもバックアップ出来た可能性はある。

報告書概要は「より早い段階で1 号機及び3 号機の減圧、代替注水作業を実施していた場合に原子炉建屋の爆発等を防止し得たか否かについては、現時点で評価することは困難である。」と述べている(6ページ)。大量の放射性物質が飛散したか、防げたかでは、大きな差がある。従い、この部分については、どうであったか、どこに問題があったか、調査・検証をして次の報告書で報告を願いたい。2号機は、何故爆発しなかったのかという検証も重要と思う。

3) 政府の姿勢

放射線の人体への影響について、「直ちに人体に影響を及ぼすものではない。」といった分かりにくい説明が繰り返されたと報告書概要に書かれている(9ページ)。私は、これは「分かりにくい」ではなく「問題がないので、安心せよ」を意味すると受け取る。これを述べた人物は、1)で書いた官邸5 階にいた人である。即ち、地下の人達から、正確に事態を聞くことができた。アホか悪人かの、どちらなのかと思う。

それ以外にも「責任は、一義的には東京電力にある」と述べたことを記憶している。国民が聞きたかったのは、「原子力災害に対しては、政府も全力を挙げて対策に取り組む」との言葉であったはず。東京電力の責任は当然のことであり、東京電力の賠償責任額が限定されるかどうかは、次のステップでの話である。悪い弁護士の話を聞いているようで、不愉快であったことを思い出す。

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2011年12月24日 (土)

八ッ場ダムは事業仕分けで議論をすべし

八ッ場ダムの工事再開に向かっているが、事業仕分けで議論をすべきと思う。

日経 12月24日 八ツ場ダム建設再開、民主「反対だが容認」

これまでの事業仕分けでは、その対象は、予算削減の候補案件としてリストアップされた案件であった。しかし、誰がリストアップし、誰が議論をすべきかは、国民のはず。政府内部でリストアップし、政府が選んだ関係者で議論したら、茶番劇である。

そこで、本来の姿に戻れば、八ッ場ダムこそ、事業仕分けで議論すべきと考える。そもそも、八ッ場ダムの中止は、ムダな支出削減の例として民主党が掲げて衆議院選で勝利した。再開をするなら、事業仕分けの対象とし、公開の場で、問題点や便益・損失について鋭く切り込み、国民的な議論を経て、結論をだすべきと考える。

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高橋亨平先生お疲れさまでした

直前の医療ガバナンス学会のWebの興味ある記事で、高橋亨平先生のことを書きました。高橋亨平先生は、ガン治療のために、11月末に原町中央産婦人科医院を去られたことを、この患者さんとお世話になった皆さんへ I’LL BE BACKに書いておられ、知りました。

本当に、ご苦労さんでした。高橋亨平先生の力強い生き方にほれぼれします。でも、I'l be backと言われているように、再び原町中央産婦人科医院で生命の誕生を見守られ、子ども達のために、働かれるのだと思います。

書いておられることに「禁句のように思われていますが、子供達は大人よりセシウムに対して強い事も分かりました。傷ついた遺伝子の修復能力も、尿中の排泄能力も、からだの組織別の半減期も、数段成人より能力が高いのです。これらの事も検証していける環境も整いました。後は妨害させないように守ってやる事です」がありますが、子供を持つ多くの親に安心を与える仕事をされたと思います。

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医療ガバナンス学会のWebの興味ある記事

医療ガバナンス学会のWebに興味ある記事があったので紹介します。

1) 日大板橋病院問題

このブログで、9月に3本の記事を書き、その後やはり気になっていたが、日大光が丘病院の存続を求める区民の会の方が、投稿された記事が掲載されていました。多分、そうだろうなと思いました。そして、やはり感じたことは、区長・政治家の無責任さです。

医療ガバナンス学会のWebに投稿された記事は、ここ(その1)ここ(その2)です。

私が9月に書いた記事は、9月2日9月6日9月9日の3つです。

2) ホールボデイカウンター

このホールボディーカウンターとの戦いという記事で、この原町中央産婦人科医院高橋亨平の記事の転載。 子ども達の放射線被爆問題に、こんなに熱心に取り組んでおられるのを読むと最高の敬意を払いたいと思います。政府や政治家の何もしない、バカさ加減に腹が立ってくるが、このような人がいるから、希望はあるのだと思います。

11月18日の食品中の放射能で、坪倉正治先生の報告に触れて、ホールボディカウンターでの検査では子供の被曝は微量で、内部被曝量の減少も子供の方が早い傾向にあると書きました。高橋亨平先生も「検査した子供達の約半数が陽性に出たが、全く心配の無い微量なものであった。」と書いておられます。長期間の追跡調査も必要で、これで結論とはできないでしょうが、少なくともそれほど心配する状態ではないと思います。心配しすぎて鬱になると、その悪影響の方が大きいはずです。

3) イレッサ

イレッサ訴訟に関して、私も、何度か過去に書きましたが、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科勝俣範之教授の記事には、全く同感です。

薬には、必ず副作用を初めリスクがある。しかし、リスクより効果の方が高いと予想されるから、その薬を使うのである。継続してモニターすることにより、リスクと効果を常に判断しつつ治療をするのである。本質に迫らずに、騒ぐことに違和感を感じます。

4) 南相馬市の大変さ

2)の高橋亨平先生がこんなことを書いておられ、別の方はこんなことを書いておられる。放射線から逃れるために、避難された方もおられる。しかし、避難せずに地元に残って頑張っておられる人達に支援は行き届いているだろうか?むしろ、捨て去られている状態になっていることを伝えておられる。

高橋亨平先生の原町中央産婦人科医院のホームページには、震災後も多くの新しい命が生まれていることが掲載されている。多くの人が、生活を営んでおられるのである。そのためのインフラの維持は、重要である。しかし、政府は何をしているのかとの気持ちにさせられる。そんな状態で頑張っておられることを、ブログに書くしかできないことを歯がゆく思いつつ、このエントリーを閉じます。

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2011年12月23日 (金)

まともな議論無く八ッ場ダムの建設再開

八ッ場ダムの建設再開のニュースが報道された。

朝日 12月22日 八ツ場ダムの建設再開決定 民主マニフェスト総崩れ

まともな議論もされず、ダム建設が再開されることは、悲しいと思う。八ッ場ダムは、賛否の評価が分かれているからこそ、ダム議論をすべきであった。民主党は、建設中止を唱えた。建設中止から、建設再開に180度転換するのに、国民の意見を無視して進んだと思う。

12月19日のここで書いたが、主要論点のいくつかを書くと、次の様になると思う。

1) 八ッ場ダムと洪水被害

八ッ場ダムが洪水被害を低減できるかについては、吾妻川の増水による洪水は、昭和22年9月のカスリーン台風以後発生していない。この利根川ダム統合管理事務所のWeb 過去に甚大な被害をもたらした洪水にもカスリーン台風についてのみ書いてある。その後、多くのダムが建設され、護岸工事や分流工事も進んだ。架空の話で土木工事をするのは、税金のムダ使いではないか?

2) 自然環境を失うことの損失

八ッ場ダムを建設することによる損失を幾らとするか?八ッ場ダムは、山奥のダムではなく、人々が居住する地区に建設するダムである。人が住める環境とは、恵まれた良い土地である。それをわざわざ破壊することにより失う損失はいくらであるだろうか?住民は既に移転に合意しているとしても、札束で合意させたとするなら、正しいことだろうか?勿論、保障はすべきであるが、その前に、そこまでして破壊する価値があるのか?

3) 地方自治体首長のエゴ

地方自治体首長は、こぞって建設推進であった。理由は、水確保。しかし、本当に水が不足するのか、極めて勝手なことしか言われていない。将来の予想として、線を引き、それが現状より多いとして、この水が八ッ場ダム建設により得られるという半分嘘の話がされていると思う。実態は、これまで、分担してきた八ッ場ダムの水に関する地方自体の分担金が建設を中止すれば地方自体負担となり、建設すれば補助金でほとんどが政府負担となる構造だから、反対していると理解する。損をするのは、国民だけではないか?

4) 合意形成プロセス

八ッ場ダムとは、国民無視の(議員とは限らず幅広い意味の)政治家が欲望と金のために動いた結果ではないだろうか?意味のあまりないモノに、金をつぎ込んで、自分たちはうまく儲ける人達がいる。民主党にとって、八ッ場ダムを反対したのは、理由があったからのはず。今、その反対理由が全く聞こえてこない。聞こえてくるのは、せいぜいマニフェストに書いたことだからというだけである。バカ政党と思える。ムダな公共事業としたのは、その理由があるからであり、もし意見を変えるなら、ムダではなく、効果が高い公共工事であると評価したからのはず。どの点をどう評価したのか、国民に説明をする前に、大臣が地元自治体の首長らに建設再開を報告というのは、国民を完全にないがしろにしている。

やはり、小選挙区正反対である。そして、政党助成金も中止すべきである。もし不足するなら、国民に対して、自分たちの意見をどうどうと説明し、賛成や支持を得て、政治活動に対する寄附金を集めるべきである。現実にしていることは、国民の税を自分たちのポケットに多く入れようと努力し、政党助成金を手にすることができるので、国民の支持が無くても大丈夫としているように思える。

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2011年12月20日 (火)

福島原発放射性物質飛散の軽減は可能であったか?

福島原発が”ステップ 2”のいわゆる冷温停止と言っている放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている状態を12月16日に達成したと発表があったわけだが、大量の放射性物質が飛散したことに対する対策(除染に関連する様々な課題も含め)は、未だこれからである。

これに関連して、思うことは、これほど大量の放射性物質の飛散は、ゼロには出来なかったであろうが、もっと少ない量に抑えられなかったのかである。これからの検証、研究、調査において解明して欲しい。そして、その結果を公開し、万一原発事故があれば、日本に放射性物質が飛散してくる可能性のある原発保有国の中国、韓国、北朝鮮の関係者に失敗を繰り返さないように、福島事故から学んだ教訓を伝えるべきである。

まず、放射性物質飛散の原因者である東京電力である。設備の設計(設計思想、前提条件の設定、完成後の改良等も含め)、運転、事故対応のどの部分に問題があったのかを自ら調査、検証すべきと考える。事故調査委員会のような外部機関も実施し、それに協力するのは当然であるが、やはり自らの目で見た自らの考え方、反省等も盛り込んだ、将来のための原発オペレーター・事業者からの事故報告書は欲しいし、放射性物質飛散軽減の可能性についても考えを整理して欲しい。

それ以外の原因者であるが、朝日 12月19日 原発で怒鳴る菅氏、克明に 池田前経産副大臣が手記は、池田元久氏の手記に「菅氏は原発に入ると、作業員が行き交う廊下で「何のために俺がここに来たと思っているのか」と怒鳴り、吉田昌郎所長(当時)はベントの指示に「決死隊をつくってでもやります」と答えた。菅氏の口調がきついため、池田氏は同行した寺田学首相補佐官(同)に「総理を落ち着かせてくれ」と頼んだ。池田氏は「指導者の資質を考えざるを得なかった」という。」とあると報道している。首相には、大いに問題があったと思う。本来であれば、原発事故対策を政府の実質的責任者として活動するのに最適な人を選任するのが、首相の役目である。原子力災害対策特別措置法17条1項により首相が原子力災害対策本部長となるが、首相が陣頭指揮に当たることを意味せず、最適な人選をし、最適な組織を直ちに結成して、対処するため首相を本部長としている。必要なことをせずに、怒鳴り散らしていたことにより、必要な対策を講じられず、放射性物質が大量に飛散した結果になった可能性があると思う。3月11日夜に自衛隊を福島原発に派遣していたらどうであったのだろうか?相当な重量まで運搬可能で、夜間飛行もできるヘリコプターがあれば、非常電源を確保できなかったかと思う。

ところで、政治家が実務責任者となることについての問題点も考えるべきと思う。政治主導なんて、まっぴらかもしれない。米国のような大統領が政府を作る制度では、大統領が選任するので、政治家のみならず実務家を重要ポストに就けやすい。池田元久氏は、自分のWeb Pageで、自民の森まさこ参議院議員の9/28予算委員会での事実無根の発言なんて書いている。もし、池田元久氏がWebに書いていることが正しいのなら、森まさこ氏は、とんでもない食わせ者である。そして、結論は、「政治家は信用できない。」である。大臣や政務次官に民間の有能な専門家・研究者を選任することを検討すべきと考える。憲法では、首相は国会議員でなければならない。しかし、国務大臣は過半数を国会議員としていることから、半数近くを民間を含めた最適人事をすることが可能である。よりよい国作りを目指さねばと思う。

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2011年12月19日 (月)

八ッ場ダムについて

八ッ場ダムの建設を進めるようなニュースが出てきたりしている。

読売 12月18日 八ッ場ダム建設中止を撤回、予算計上へ

平成24年度において工事予算をとりあえず計上しておくのみであり、完全な決定ではないのかもしれない。一方、八ッ場ダムの建設中止は、民主党が選挙で掲げた目玉政策であった。マニフェストが、どうと、今更言うつもりはないが、せめて国民的議論を行った上で、方針を決定しないと、民主党とは政権を取って権力にありつきたい人達の集団であって、理念も理性さえも無い集団になると思う。

そこで、11月25日のブログに書いたように、国交省関東地方整備局の「検証に係わる検討」(以下「検討書」と略す。)が出てきたのであり、私なりに、考えるポイントを書いてみたい。これを読んで、賛成や反対の意見を述べてもらいたいし、逆に反論等も書き込んで欲しい。

前書き

八ッ場ダムの目的は、洪水調節、流水の正常な機能の維持、都市用水の補給および発電の4目的である。(検討書3-1ページ)このそれぞれについて、私のポイントを書いてみたい。順序は、都合により(1)発電、(2)洪水調節、(3)用水補給、(4)正常な流水維持の順序とする。

(1) 発電

八ッ場ダムでの発電には、ほとんど期待できない。11,700kWの発電機が設置されるが、ダムが満水の583mの標高までの水位があり、かつ13.6m3/秒の水が流れる時である。常時は、満水ではなく、流すのは河川維持水としての2.4m3/秒である。即ち、常時の発電は1400kW-1500kWである。従い、年間発電量としては13,000MWh-14,000MWhが期待できると考えられる。

しかし、検討書4-222ページに次の記載がある。

「ダム案」は、減電補償が必要であり、これに対応する分量のCO2 排出量が増大する。一方で、群馬県企業局による新規発電が予定されており、これに対応する分量のCO2 排出量が減少する。

群馬県企業局の新規発電が、八ッ場ダムでの発電かどうか不明であるが、東京電力の松谷発電所及びその下流の原町発電所等での水力発電が減少することを述べている。実際には、水をどう流すかにより決まるが、八ッ場ダムでの発電は、発電のためのダムではなく、ダムがあるから発電する。即ち、ダムだけ建設したら、水力発電が減少するのである。こんな複雑な現象が生じるのは、ダムより高い地点で取水している既存発電所が存在するからである。

(2) 洪水調節

ダムは、その時点における水位から満水位までの水位差に貯水が可能な水量が洪水調節機能を果たす。ところで、以前と比べれば、天気予報、降水予報は信頼性が相当高くなった。同じダムであっても、その洪水調節能力が以前より有効に、大きな能力を発揮するように利用可能になっていると考える。もし、大雨による洪水が予想されるのであれば、前もってダム水位を低くし、そのダムの洪水調節水量を大きくしておくことも可能である。あるいは、降雨継続時間、ダムに流入する水量の予測精度が高くなれば、ダムからの流出量の調節をすることによりダムの洪水調節能力を大きくすることも可能である。

もう一つの重要な点は、地震や津波と違って、予測が可能である。仮に被害が予想されても、ある程度の避難時間を取れる。一方で、ダムで100%洪水を防ぐことは不可能である。1000年に1回の洪水が起これば、気象予報システムを利用して、被害を最小限に食い止めようとするのが賢いはず。八ッ場ダムを建設するより、その方が、よほど効果があるように思う。

検討書4-20ページにに、昭和11年~平成19年までの72年間における流域平均3日雨量が100mm以上の62洪水について、八斗島地点の実績流量と実績降雨の関係を示した次の図4-2-13がある。

Hattajima4213

昭和22年9月が飛び抜けて流量が大きい。そこで、実際の八斗島での流量と河川水位を国土交通省の水文水質データベースから、平成10年(1998年)9月と平成19年(2007年)9月の記録を抜き出しグラフに書いてみた。なお、八斗島とは、利根川が烏川と合流した直後の地点であり、渡良瀬遊水池からの流れと合流する前である。河川流量は、すぐ下流の渡良瀬遊水池からの合流で利根川最大となり、その下流で江戸川に分岐して、少し流量が減少する。参考として、検討書2-44ページの図2-4-1を掲げておく。

Hattajima241

Hattajima1998915

Hattajima200795

河川水位が堤防の高さより低ければ、氾濫が押さえられたことになる。水位ゼロ高さは、堤防の中程の所にあり、通常はマイナスの河川水位である。八斗島の氾濫注意水位は1.90mで、避難判断水位4.50m、氾濫危険水位が4.90mである。従い、1998年(最高水位3.36m)の時も、2007年(最高水位3.13m)の時も、避難判断水位4.50mに達せず、1m以上余裕があったのである。

そうなると、八ッ場ダムは、オオカミ少年のようにも思える。

なお、ダムでの洪水調節は存在する。2007年9月の場合は、神流川の水量が多く、下久保ダムは24時間で30,000千m3以上の水を貯水した。2007年9月の利根川6ダムの貯水量の推移グラフを掲げる。7ダム目が必要かである。

Hattajimatonedam2007

(3) 用水補給

水についても、降水予報により対処可能な部分がある。例えば、今年の夏の降水量が少ないと予想されれば、既存のダムの貯水量を例年より多くして待機するのである。また、水は他の地域から運搬することも可能である。海水淡水化でも作ることができる。万一の場合は、供給圧力を落として、節水を呼びかけることも可能である。水が全くなくなるのではなく、やりくりして過ごすことも可能である。

そもそもダムを作っても、ダムから水を引くわけではない。下流で取水するのである。言ってみれば、平年はダムなど必要としない。渇水になった時に、もしダムに100m3貯水してあれば、それを放流し、そして下流でAは50m3、Bは30m3、Cは20m2と取水する権利を有しているとして取水するのである。

ダムがないと水が利用できないというのは、論理的に変であると思う。渇水時のことであり、東京都なら、多摩川取水もあり、利根川、多摩川同時渇水は、ほとんど生じないと思う。また、地方自治体エゴイズムを止めれば、水は充分あるのではとも思う。渇水時には、それぞれの取水利権を融通しあってやりくりすることがあって良いと思う。政府からの補助金を確保したから、何が何でもその補助金を使って水事業をするのだという考え方があるように思えて仕方ないのが水である。

(4) 正常な流水維持

一体何でしょうか?別の言葉で言えば、環境保全です。しかし、ダムとは、環境を破壊するものである。一方で、破壊したから、せめてダムからは環境維持のための放流を正常な流水維持として実施するというのも、本末転倒の様な気がする。

そもそも、人間が手を付けること自身が、環境破壊ではないだろうか。時々渇水になり、洪水になる。それも守るべき環境ではないだろうか。生活を脅かす。生活のためには、自然にも多少は手を加え、コントロールせざるを得ない。自然に手を加えるのは、最小限度に止めておくべきではないかと思う。

自然の厳しさも愛すべきものと思う。八ッ場ダムとは、自然破壊であることを認識し、八ッ場ダム建設により破壊し、且つ簡単に元に戻せない自然環境を失うこと。これらのことよりも、建設による受益が大きいのか、本当に受益があるのかを、充分考えて決定すべきである。

冒頭にも書いたように、嘘つき政治家が決定してはならない。国民の間で、議論をして決定すべきである。

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2011年12月17日 (土)

原発緊急作業員の被ばく限度250ミリシーベルトの特例廃止

原発緊急作業員の被ばく限度の特例が、やっと廃止された。

2011年12月16日 厚生労働省 報道発表 東電福島第一原発緊急作業員の被ばく限度250ミリシーベルトの特例廃止

特例廃止は、12月16日の厚生労働省告示第453号及び経済産業省告示第235号でなされ、官報発表がなされ、同日施行である。

250mSVは、年間の被曝量であり、緊急時の対応ではあるが、相当に高い被曝量であった。実は、3月15日の告示は、次の告示8条の100mSV/年を250mSV/年に変更したのであり、特例中の特例であった。従い、今回の特例廃止においても、従来からある特例が適用されるなら100mSV/年であり、特例の適用がないなら、厚生労働省の発表のように電離放射線障害防止規則が適用され、「50mSV/年かつ100mSV/5年」となる。

実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則
(緊急作業に係る放射線業務従事者の線量限度)
第八条 実用炉規則第九条第二項及び貯蔵規則第三十条第二項の経済産業大臣の定める線量限度は、実効線量について百ミリシーベルト、眼の水晶体の等価線量について三百ミリシーベルト及び皮膚の等価線量について一シーベルトとする。

原発緊急作業員の被ばく限度250mSV/年は、冷温停止宣言がなされたので、廃止された。冷温停止宣言は、どこかのタイミングで出さざるを得ず、政治的な色合いも濃いと考えるが、原発緊急作業員の働く環境を従来より安全なレベルにしたことは、評価できる。

作業員の被曝や安全を確保して、事故の収束を図ることは重要と考える。このことは、除染作業にもあてはまるのであり、除染やその関連作業をする人々に限度を超える被曝があってはならない。なお、除染とは、放射性物質を無くすることではなく、単純に移動させるだけであり、除染後も放射性物質は残る。今後の一つの課題は、除染に伴って出てくる放射性物質を含んだ破棄物の処理についての方法樹立と考える。例えば、安全な焼却による高濃度化、そしてそれを安全に処分することについての場所と方法に関するコンセンサスの確立。各都道府県内の国有林に一定限度までの放射性物質濃度までは、一定の深度に、特定のコンテナ等へ梱包や固形化等の定められた方法による埋め立て処分等が考えられるのではと思う。

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オリンパスの違法配当

1400億円以上にのぼる粉飾決算事件だが、どうも頭が混乱しそうになる時がある。次の日経記事です。

日経12月16日 オリンパス「配当、限度額超えてた」と正式発表

「訂正後の貸借対照表では株主に分配可能な限度額を超えていた」であるが、「対象期間に行った剰余金の配当の効力に影響はないものと考えている」に結びつけてどうだろうか、ミスをしても、大丈夫ですと言うのと、変わりはないと思う。なお、会社の発表はここにある。

1) 剰余金の配当の効力への影響

コメントしようとは思わないが、会社法462条(剰余金の配当等に関する責任)第2項に「前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。」である。これを主張しようとする取締役が多くいるのかなと思った。

それとオリンパスは会計監査人設置会社である故、会計監査人設置会社であった監査法人に責任を浮かび上がらせようとしているのか?でも、作成者はオリンパスである。オリンパスの方が、質の上でも、責任重大であるはずが。

2) 何故抵抗が続くのか

過年度決算訂正を発表したが、2007年3月期までの5年分のみ。2007年3月期でいきなり1116億円のファンド連結に伴う特定資産の修正が計上されている。損益計算書のファンド関連損失は21億円億円なので、1000億円以上は2006年3月以前のはず。第三者委員会報告書には「金融資産の運用損は飛躍的に膨れあがるに至り、1990年代後半には1000億円をやや下回るほどの巨額なものとなった。」とあるが、会社の決算訂正は、無視をしていると思う。

報道では、「飛ばし」と呼ばれている。しかし「だまし」が正しいと思う。200億円の投資をして、時価が100億円になった。その時に、200億円を短気で調達し、海外の銀行に預金をする。その預金を担保にしてダミーに金を借りさせ、その金で損をした投資を200億円で購入させる。そうすると200億円はオリンパスに入ることになり、元の短期借入は返済できる。残るのは、200億円の預金であるが、担保になっているので、実質価値はダミーが持つ時価100億円の投資のみ。複雑なことをしなくても、同じ効果であるが、銀行預金の担保部分を秘密にすれば、預金は預金残高で評価されるから200億円。ダミーは水面下に隠れて分からない。そして、複雑な構造にしたことから、手数料の持ち出しはある。こんな操作は、飛ばしではなくだましである。

別の表現をすれば、会社の金に手を出して、馬を買った。でも、はずれた。だから、買っていないように隠そうとし、誰かに会社の金を手数料として支払って、その手数料をバックしてもらう。これが、穴埋め資金となる。この話とオリンパスの今回の事件は、ほぼ同じと思う。

会社の為にしたのだと、同情するような意見も聞かれる。しかし、犯罪であり、あってはならないこと。他の企業でも発生しうるからこそ、厳しい処分が必要と思う。

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2011年12月16日 (金)

増税を理解してもらうために社会保障を削る?

この12月11日のしんぶん赤旗の記事です。日本共産党の小池晃氏が10日に日本テレビ系番組「ウェークアップ!ぷらす」に出演して、一体改革の議論において、増税を理解してもらうために社会保障を削るというような議論がでてきていると批判したとのこと。本末転倒が生じているのを、うまく表現したと思った。

竹中平蔵氏が「消費税だけ上げる議論は阻止しなければいけない」として、消費税増税抑制のための社会保障費削減を主張したとあり、これに対する反論のはず。「社会保障費が増加するので、消費税を上げる。」が、竹中氏の主張の行き先は、社会保障は削減となり、しかし消費税は増税になると予想する。

高齢化社会が、より進むことから、社会保障費が増加する。その増加を止めることは、社会保障の保障内容を悪くすることになるはず。上滑りの議論ではなく、数字を示して、議論をして欲しい。数字を示さない議論は、バカだから、誤魔化してしまえのように、国民を愚民扱いしていると考える。(銭金の話なので、金額を示せるはずであり、金額で議論すべき性質のはず。)

12月15日のDiamond Onlineに野口悠紀雄氏が新しい介護産業の確立に向けて と題して書いていたなかに、「相続税を強化することだ。そして、その収入を、介護費用の公費分に充てるのである。こうすれば、公平が保たれる。」と書いておられた。野口氏は、きちんと数字を上げていたし、検証をしていないが、私が掴んでいることとほぼ同じである。相続税の強化、増税は、その通りで、実行すべきと考えるし、障害は少ない。そして、私は、証券・金融課税の合理化も進めるべきと考えている。

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2011年12月 9日 (金)

日米開戦から70年

日米開戦の真珠湾攻撃から70年である。真珠湾攻撃とは、米国史上唯一の外国軍による自国領土への攻撃であったと思う。(9月11日は、テロリスト攻撃であり、外国軍とは言えないはず。)

第一次大戦による厭戦気分もあったと思うが、当時、米国人にとって戦場に行くことは、避けたいと思っていた。英国や中国に対する武器援助を行い、日本に対する石油輸出禁止をしても、死の危険がある戦争は出来る限り避けたかった。そんな米国人の感情をかなぐり捨てさせ、戦いに挑む気持ちを高むらせたのが真珠湾攻撃であったのだと思う。当時、ハワイは、米国の州にはなっておらず、Commonwealthであったはずだが、米国正規軍が攻撃を受け、戦艦8隻が沈没、大破した。真珠湾攻撃があった米国時間12月7日の翌日8日に米議会は日本との戦争を承認した。上院での投票結果は82票対0、下院では388対1であった。

真珠湾攻撃の結果、日独伊三国同盟の下、ドイツは12月11日に米国に戦争を通告した。同日の午後、米国議会は上下院共同の対ドイツ戦争承認をした。

第2次世界大戦が始まったのであり、ヨーロッパ戦争に米国の参戦が決定した。真珠湾攻撃がなければ、D-Dayのノルマンディー上陸も遅く、ヨーロッパ戦争も少し違ったのかも知れないと思う。真珠湾攻撃の結果、日本がソ連を攻撃する余裕は完全になくなった。ソ連は、ドイツ戦争に全てを集中できることとなった。

考え方によれば、真珠湾攻撃により第2次世界大戦が始まり、同時にその時に、連合国の勝利も決まったのではないか。

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2011年12月 8日 (木)

消費税について、増税幅のみの議論で終わってはならない

野田首相が消費税増税にむけて、2011年内の取りまとめ指示したとニュースがあった。

日経 12月6日 財務相、一体改革素案「消費税率の引き上げ時期を明記したい」

これを受けての日経社説は、次の通りであった。

日経 12月6日社説 消費税増税の具体化を先送りするな

政府財政を考え、日本社会の現状を考えると、増税は、どうしても必要と思う。そして、増税手段の一つとして、消費税増税を含まないで済ませることは、議論を振り出しに戻し、増税を遅らせることになると思う。増税が遅れれば、医療、年金、国民生活の状態を悪くするだけと予想する。しかし、消費税増税において検討・注意すべき課題についても、よく考えておかないと、増税が日本社会の幸福度増進に寄与するのではなく、重税にあえぐだけとなることを懸念する。(税は、幸福度増進のために存在するはずと思う。)

1) 消費税は物価を上げるか?

答えは、2種類ある。「上げる」「上げない」の両方とも正解である。「上げない」というのは、卸物価であり、企業(個人事業も含め)の仕入に適用される価格の場合である。仕入税額控除により、仮に売上に対する消費税額より小さくとも、課税売上対応であれば、全額還付されるのである。

「上げる」というのは、消費者物価である。ちなみに、消費者物価指数は、品目別消費支出金額のような消費支出を基準に作成されている。消費税増税となれば、非課税品目もあるので、そのままの同一パーセントではないが、多少のタイムラグの後に、必ず物価上昇がある。

従い、消費税増税は、国民生活にとっては、物価が上がり、生活レベルの切り下げを余儀なくされる悲しい税である。そして、その影響が低所得者ほど大きいのである。2006年のレポートであり少し古いがニッセイ基礎研究所のレポートがここにあり、消費税の負担は、年収383.3万円の場合は2.4%、年収587.9万円では2.2%で、年収942.5万円では1.9%となっている。

2) 賃金、給料、年金、生活保護費の調整

現行制度では、年金と生活保護費は調整され、増額されるはず。最低賃金も当然調整されると思って良いのだろう。ところで、一般の勤労者の賃金・給料はと言うと、労使の力関係で決まると思う。不況だ、競争が厳しいとなると賃金アップは容易ではない。まして、企業業績が悪ければ、雇用維持が優先となることもある。自営農水産業者は、消費税のアップより、販売価格の変動影響が大きく、消費税率が上がれば、値下げプレッシャーがかかる恐れさえあり得る。

生活保護費は、最低生活を基準に決めているとすれば、上げる以外にないはず。当然と思うが、一方で、働いている人の苦しみが増加するとすれば、矛盾を感じる。年金について言えば、年金受給者に負担をさせるとして消費増税をするというのは、そもそも考え方が間違っているように思う。高額所得で資産家の高齢者に税負担をさせるなら、所得税と固定資産税・相続贈与税で税を課するべきである。

3) 非課税品目

非課税品目となっている対象には、土地、有価証券、債権、利子のような消費税の対象として馴染み難い品目と政策的に非課税品目としている身障者用物品、学校教育費、健康保険による医療費、出産に関わる医療機関への対価、住宅の貸付等がある。

非課税品目の対価には、消費税が含まれていないかというと、含まれているのである。例えば、身障者用物品でも、部品や原材料は他目的にも使用可能であり、消費税の対象となっている。販売者は、仕入に含まれている消費税分は、販売対価に含めないと販売者の負担となる。全て、同様であり、保健対象の医療にしても、医薬品の仕入は健康保険の適用取引ではなく、課税取引である。住宅の貸付も、建築や保守・修理は課税取引であり、賃貸住宅のオーナーは、消費税率があがれば、賃貸料への転嫁をすることになると思う。但し、その時の賃貸市場相場により容易に出来なかったりと、価格は市場により左右されることが大きいとは思います。

消費税は、事業者が販売と仕入の税差額を納付する仕組みであり、競合している同業者も全く同じ条件となる。このことから、最終的には消費者に転嫁されると考えられる。非課税品目であっても、仕入や費用に含まれている消費税分がコスト高になり、同業者同条件である故、やはり消費者に転嫁されるはず。

4) ゼロ税率品目の導入

ゼロ税率と非課税との違いは、事業者の納付税額は販売と仕入の税差額と述べたが、現在の消費税の仕組みは、控除可能な仕入の税は課税売上対応の仕入消費税となっている。非課税ではなくゼロ税率の課税売上というのがあれば、ゼロ税率分も納付税額から差し引くことが可能となり、もし仕入に関わる消費税の方が大きければ、税還付となる。なお、現行でも税還付はある。設備投資をして、支払った消費税が大きい場合等は、還付を受けることとなる。

ゼロ税率を導入する場合、考え得る対象は、食料品であり、それ以外に、非課税からゼロ税率に変更とすべきは医療、身障者用物品等があると思う。食料品がゼロ税率となれば、現在より価格が5%安くなるのであり歓迎されるように思う。レストランでの食事は、現状通り消費税対象としても、問題はないと思う。

保険対象の医療については、消費税増税となった場合、医療費が医薬品、機器損料、建物減価償却相当額等の消費税分増加し、現状でも財政が苦しい医療保険財政が更に苦しくなる。ゼロ消費税とすれば、税収は減少するが、健康保険料の負担は軽くなる。税を多くして、その結果、医療保険料や年金保険料を増加させるのは、政策として変であると思う。

なお、ゼロ税率とする場合、インボイス方式にするのか、管理上問題ないと認定できる販売店や医療機関・薬局に対象者を限るのか、その実施方式については検討が必要と思う。

住宅の貸付をゼロ税率とすべきかについては、自己保有住宅として購入した場合の扱いとの関係、事務所様に目的変更をした場合の扱いとも併せ何が合理的か検討が必要と思う。

4) 消費税を含めた枠組みの見直し

第3次補正予算の税収で消費税は10兆1990億円であり、結果地方消費税は2兆5500億円であり、また消費税10兆1990円のうち29.5%相当の3兆87億円は、地方交付税となる。地方税法72条の83や地方交付税法6条を改訂しなければ、5%の増税で政府の実質税収増は7兆2千億弱となり、一方で、支出について増税分が上乗せされるので7兆円にもならないと思う。

平成23年度第1次補正予算で1/2基礎年金国庫負担の財源を取り崩したが、2兆4897億円であった。既に、1/2基礎年金国庫負担による支出が決まっているのであり、残りを全て国債依存の脱却に支出しても5兆円もない。

残念ながら、消費増税で政府財政の健全化には至らず、更なる増税が必要と考える。また、3)で書いた食料や医療のゼロ消費税を実施すれば、税収は少し減少する。そこで、平成21年改正附則104条の記載を実現することを目指すべきと考える。即ち、

  1. 個人所得課税の最高税率及び給与所得控除の上限の調整等による高所得者の税負担の引き上げ。給付付き税額控除の検討並びに金融所得課税の一体化の推進
  2. 相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化
  3. 納税者番号制度の導入の準備、納税者の利便の向上及び課税の適正化
  4. 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化

5) 国民的議論

政府は、どうどうと増税案を出して欲しい。支出を含め、国民的な議論の場を作って欲しい。政治家のみによる駆け引きや裏取引で国会決議をし、法改正をすることは民主主義を否定することと思う。政治家の都合による法改正で税金が決まるのは国民にとって納得がいかず不幸なことである。

政権交代後の大きな税制改正である。民主党は、政権交代をしても、ほとんど何も変わらないことを証明してくれた。マニフェストは、自分たちの選挙目的の実現不可能な大嘘が多いことも、露見している。国民は、政党や議員を信じることができない。しかし、国家を形成しており、国家の中で活動する限り法は必要不可欠であり、税を払い、税の恩恵を受けることも重要である。政府財政が破綻すれば、どうなるのか?ギリシャを見なくても、夕張市も参考になるはず。これからの消費税増税を含む税制改正に関しては、政党ではなく、国民の意見を聞き、国民のために働く議員を応援したい。

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2011年12月 6日 (火)

オリンパス第三者委員会報告書に思う

オリンパスが第三者委員会の報告書を発表した。このオリンパスのWebからダウンロード可能である。要約版しか読めていないが、ほぼ思っていたとおりの内容が書かれている。以下、私の雑感である。

1) 重大な組織犯罪

この日経記事にはの「企業ぐるみの不祥事が行われたわけではない」との記述は、要約版最終ページにあり、「オリンパスはもともと真面目な従業員と高い技術力を有する健全な企業であったのであり、」との文章から続いている。があるが、私は、そのような記述を報告所の中に発見できなかったし、オリンパス自身は、その通りであるが、このオリンパスの犯罪そのものは重大な組織犯罪であると考える。役員全員ではないが、歴代の社長、監査役が中心となり、犯罪を犯し続けた。経営幹部による不正行為は極めて悪質である。この不正行為は、社長他幹部数人で実行できたのだろうか?そうとは思えない。社長が命じた腹心の部下もいたはずである。それも単数ではないはず。企業犯罪の典型的な姿かも知れないが、その中でも、最悪に近い部類と思う。例えば、ある部下が失敗をし、部下のために、上司がそれをかばおうとしてというのとは異なる。

オリンパスは光学機器他のメーカである。余裕資金が発生したなら、借入金を返済し、有利子負債を減少するのが経営である。一時的に余裕資金が発生し資金運用をしたなら、その結果について株主、債務者、従業員に適正に報告するのがルールである。自らの失敗は隠せというのは、すごい人間性である。

(この1)項の冒頭部分は、たぬきサンのご指摘を受け、修正しました。)

2) 菊川剛

菊川剛は、少し前のことであるが、この毎日の11月25日報道のように、ごく最近になって損失隠しを知ったと説明していたようである。すごい面の皮であるが、オリンパスの社長の要件は、犯罪を引き継ぎ、それを継続することであったのだから、そのような非情の心で人間性を持たない人物が就任するのが当然であったとも思う。

それからするとウッドフォード氏は、人間性豊かな、人間社会が追究すべきことを追求しようとしている人物に思える。報告書によれば、オリンパスの取締役会は、そのような行為に出たウッドフォード氏を排除しようとした。正当な発言や行為を認めない組織は、破滅するはずであるがと思う。

3) 第三者委員会の限界

今回第三者委員会が全てを解明したわけではない。11月1日に結成され、1月余りの調査であり、しかも強制力を持っていた訳ではない。オリンパスのガバナンス向上を目的とする調査であり、責任追及を行う目的での調査ではない。

反社会的団体への資金の流れについて、報告書は「反社会的勢力の関与は認められなかった」と書いている。しかし、なかったと断定は出来ない。一連の犯罪行為には、外部の関係者も絡んでいる。悪は悪を呼び、悪が結びつきという構造があるはず。特捜部がきちんと捜査をして欲しいと望む。

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2011年12月 4日 (日)

復興税制関連の税改正は公布されたが、だらしがないのが政治家なのか

復興税制関連の税改正は、11月30日の参議院本会で可決成立し、12月2日に公布され、同日の官報号外に掲載された。

日経 11月30日 復興増税法案が成立 3次補正、執行可能に

成立・公布された5つの法律の中に、所得税法の改正(審議中に名称が変更され、長い「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」とする名前になった。」)があり、政府提出のこの原法案には、高額給与所得者たる政治家・議員に増税となる厳しい改正が含まれていた。しかし、これが、民自公の3党合意であっさりと削除されてしまったのである。これについては、マスコミ報道もほとんどなく、その内容を、ここに書いてみたいと思う。

1) 給与所得についてボツとなった改正案

給与所得者は、自らの労働を対価として、収入を得るのであり、事業のための必要経費は雇用主である会社等の負担である。しかし、完全に雇用主負担と割り切れない部分もあり、給与収入額により計算したある金額を非課税とし、実質必要経費とされ給与所得控除と呼ばれる。この給与所得控除は、年収5百万円の場合は154万円であり、年収1千万円の場合は220万円、年収1千5百万円では245万円、年収5千万円では420万円、年収1億円では670万円である。

この給与所得控除を年収1千5百万円以上の収入があった場合に、245万円で上限とする改正案であった。給与所得者の必要経費が収入に比例して無限に高くなるとは言えず、245万円を認めるというのは、妥当な妥協点と思えた。なお、この控除は、給与所得の場合であり、自営業には認められないし、まして大多数の人にとって自らは年収1千5百万円以下であり、このような改正とは無関係故、全体の税収増が、結果として利益をもたらす改正であった。

改正案には、もう一つ第4項と第5項が追加があり、給与が役員給与であった場合で、且つ年収が2千万円を超える場合には、給与所得控除が所得金額が高くなるにつれ減額となる案であった。(年収4千万円以上の役員給与の場合は125万円)役員給与とは、自らが自らの給与金額の決定にあずかれる取締役等会社の役員以外に、国会議員、地方議会議員、地方自治体の首長、局長、次長等の高級国家公務員、高級地方公務員も含まれていた。なお、誤解してはいけないのは、年収が2千万円を超える場合であり、また超えても徐々に減額となるのである。

ボツとなった改正案が、成立した場合の、条文はここに置いたので、興味がある人は、クリックしてください。

2) 退職所得についてボツとなった改正案

退職所得の金額は、次の式で計算される。

退職所得=[退職手当の額 - (40万円* x 勤続年数)] x 1/2
       * 勤続20年を超える期間については40万円は70万円とする。

所得税の税率が超過累進税率なので、勤続期間において平均に支払われたとするなら、低い税率と考えられる。そこで、勤続年数による控除をし、その上で、計算した金額を2分の1にしている。給与で受け取るより、退職金で受け取った方が、税金が少ない。

改正案は、退職手当が特定役員退職手当に該当し、且つ勤務期間が5年以下の場合は、2分の1を適用しない案であった。特定役員退職手当とは、1)の役員給与に相当する役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものである。

そもそも5年以内の短期間の勤務で巨額の退職金を受け取れることが異常であり、当然の改正案と思う。

ボツとなった改正案が、成立した場合の、条文はここ に置いたので、興味がある人はクリックしてください。

3) ボツにした政治家達

11月18日の衆議院財務金融委員会で、民主の寺田学委員から提案されたが、その際の説明でも、何ら触れられることなく、次の説明で終わっている。

次に、本修正案の概要について申し上げます。
 第一に、復興特別所得税の課税対象期間を平成二十五年から平成四十九年までの二十五年間に延長するとともに、その税率を二・一%に引き下げることとしております。
 第二に、復興特別たばこ税に係る規定を削除することとしております。
 第三に、復興債及び当該復興債に係る借換国債については、平成四十九年度までの間に償還することとしております。
 その他、決算剰余金の償還費用の財源への活用、復興に係る特別会計の設置等に係る規定を整備することとしております。
 以上が、両修正案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

そしてこの委員会では22日に可決され、11月24日に衆議院本会議で可決、同日参議院に付託され、30日に参議院本会議で可決成立となり、12月2日に公布された。

平成49年(2037年)までの増税を決めたが、増税の対象者は税を払う人全員です。それも、政府案は4%で10年間であったのを、2.1%で25年間にした。計算すると、合計40%で済むところが、合計52.5%に増税された。時間価値と利息の概念を入れれば、同等かも知れないが、国民感情からすれば、増税である。貧しい人に増税を、富裕層に減税をという思想は、どこか変と思う。

修正に対する賛成は民自公以外では、国民新党は当然であるが、たちあがれ日本も賛成した。反対したのは、みんな、共産、社民であった。

大連立ではないが、大政党の話し合いで立法が進むのは、国民の目の届かないところで、重要なことが決定されることに近い状態と思う。給与所得と退職所得のこの改正をボツにしたことについて、民自公と国民新党、たちあがれは、国民に説明をすべきである。

4) 平成21年改正附則104条

平成21年改正附則104条は、次である。「個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに・・・」とあるが、全く無視しているように思う。

(税制の抜本的な改革に係る措置)
第百四条  政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二千十年代(平成二十二年から平成三十一年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
 第一項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。
 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。
 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。
 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。
 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。
 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。
 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。 

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