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2011年12月 4日 (日)

復興税制関連の税改正は公布されたが、だらしがないのが政治家なのか

復興税制関連の税改正は、11月30日の参議院本会で可決成立し、12月2日に公布され、同日の官報号外に掲載された。

日経 11月30日 復興増税法案が成立 3次補正、執行可能に

成立・公布された5つの法律の中に、所得税法の改正(審議中に名称が変更され、長い「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」とする名前になった。」)があり、政府提出のこの原法案には、高額給与所得者たる政治家・議員に増税となる厳しい改正が含まれていた。しかし、これが、民自公の3党合意であっさりと削除されてしまったのである。これについては、マスコミ報道もほとんどなく、その内容を、ここに書いてみたいと思う。

1) 給与所得についてボツとなった改正案

給与所得者は、自らの労働を対価として、収入を得るのであり、事業のための必要経費は雇用主である会社等の負担である。しかし、完全に雇用主負担と割り切れない部分もあり、給与収入額により計算したある金額を非課税とし、実質必要経費とされ給与所得控除と呼ばれる。この給与所得控除は、年収5百万円の場合は154万円であり、年収1千万円の場合は220万円、年収1千5百万円では245万円、年収5千万円では420万円、年収1億円では670万円である。

この給与所得控除を年収1千5百万円以上の収入があった場合に、245万円で上限とする改正案であった。給与所得者の必要経費が収入に比例して無限に高くなるとは言えず、245万円を認めるというのは、妥当な妥協点と思えた。なお、この控除は、給与所得の場合であり、自営業には認められないし、まして大多数の人にとって自らは年収1千5百万円以下であり、このような改正とは無関係故、全体の税収増が、結果として利益をもたらす改正であった。

改正案には、もう一つ第4項と第5項が追加があり、給与が役員給与であった場合で、且つ年収が2千万円を超える場合には、給与所得控除が所得金額が高くなるにつれ減額となる案であった。(年収4千万円以上の役員給与の場合は125万円)役員給与とは、自らが自らの給与金額の決定にあずかれる取締役等会社の役員以外に、国会議員、地方議会議員、地方自治体の首長、局長、次長等の高級国家公務員、高級地方公務員も含まれていた。なお、誤解してはいけないのは、年収が2千万円を超える場合であり、また超えても徐々に減額となるのである。

ボツとなった改正案が、成立した場合の、条文はここに置いたので、興味がある人は、クリックしてください。

2) 退職所得についてボツとなった改正案

退職所得の金額は、次の式で計算される。

退職所得=[退職手当の額 - (40万円* x 勤続年数)] x 1/2
       * 勤続20年を超える期間については40万円は70万円とする。

所得税の税率が超過累進税率なので、勤続期間において平均に支払われたとするなら、低い税率と考えられる。そこで、勤続年数による控除をし、その上で、計算した金額を2分の1にしている。給与で受け取るより、退職金で受け取った方が、税金が少ない。

改正案は、退職手当が特定役員退職手当に該当し、且つ勤務期間が5年以下の場合は、2分の1を適用しない案であった。特定役員退職手当とは、1)の役員給与に相当する役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものである。

そもそも5年以内の短期間の勤務で巨額の退職金を受け取れることが異常であり、当然の改正案と思う。

ボツとなった改正案が、成立した場合の、条文はここ に置いたので、興味がある人はクリックしてください。

3) ボツにした政治家達

11月18日の衆議院財務金融委員会で、民主の寺田学委員から提案されたが、その際の説明でも、何ら触れられることなく、次の説明で終わっている。

次に、本修正案の概要について申し上げます。
 第一に、復興特別所得税の課税対象期間を平成二十五年から平成四十九年までの二十五年間に延長するとともに、その税率を二・一%に引き下げることとしております。
 第二に、復興特別たばこ税に係る規定を削除することとしております。
 第三に、復興債及び当該復興債に係る借換国債については、平成四十九年度までの間に償還することとしております。
 その他、決算剰余金の償還費用の財源への活用、復興に係る特別会計の設置等に係る規定を整備することとしております。
 以上が、両修正案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

そしてこの委員会では22日に可決され、11月24日に衆議院本会議で可決、同日参議院に付託され、30日に参議院本会議で可決成立となり、12月2日に公布された。

平成49年(2037年)までの増税を決めたが、増税の対象者は税を払う人全員です。それも、政府案は4%で10年間であったのを、2.1%で25年間にした。計算すると、合計40%で済むところが、合計52.5%に増税された。時間価値と利息の概念を入れれば、同等かも知れないが、国民感情からすれば、増税である。貧しい人に増税を、富裕層に減税をという思想は、どこか変と思う。

修正に対する賛成は民自公以外では、国民新党は当然であるが、たちあがれ日本も賛成した。反対したのは、みんな、共産、社民であった。

大連立ではないが、大政党の話し合いで立法が進むのは、国民の目の届かないところで、重要なことが決定されることに近い状態と思う。給与所得と退職所得のこの改正をボツにしたことについて、民自公と国民新党、たちあがれは、国民に説明をすべきである。

4) 平成21年改正附則104条

平成21年改正附則104条は、次である。「個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに・・・」とあるが、全く無視しているように思う。

(税制の抜本的な改革に係る措置)
第百四条  政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二千十年代(平成二十二年から平成三十一年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
 第一項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。
 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。
 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。
 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。
 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。
 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。
 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。 

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