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2012年3月31日 (土)

2012年3月31日公布の税改正(増税)

3月30日に閣議決定をして衆議院に提出した消費税増税改正の話題が大きすぎて、2012年3月31日公布の税改正(増税)については、報道が少ないが、おもしろい増税内容がある。参考まで、日経報道には、次の記事があった。

日経 3月31日 環境税、10月から 税制改正関連法成立

1) 給与所得の増税

給与収入額が1500万円以上の人が対象であるので、高額所得者に対する増税と言ってよいと思う。内容は、給与所得控除は1500万円で245万円になるが、1500万円以上であっても、245万円を適用するという改訂である。

グラフを書けば一番簡単なので、グラフを書くと次の通りです。なお、給与収入額が1500万円以下の人は、増税なしです。ここで言う給与収入額とは、残業代込みの月額給与と年間ボーナスの合計額です。

20123

税負担増と言っても、5000万円の給与の人で、68万円ぐらいなので、1.3%程度、2000万円の人だと8万円強なので0.4%程度です。事業所得の人には、給与所得控除に相当するかも知れないのは青色申告控除の65万円のみだとすれば、245万円の適用は不当ではないと思う。

なお、今回の税改正の法律名は「租税特別措置法等の一部を改正する法律」という名称であり、この所得税の改訂は3月31日官報82ページです。

2) 地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例

追加となった租税特別措置法90条の3の2(官報76ページにあり)のタイトルが、このような名称です。そこで、本当に地球温暖化対策なるのか見てみることとする。改訂内容は、次の表の通りです。

Oilcoaltax20123a
まだ、判りつらいので、2016年4月以降について、分析をしたのが、次の表である。

Oilcoaltax20123b
分析をすると、うならされるような姿です。増税幅では、それほど大きな差はなく、一番大きいのがガスであり、小さいのが石炭である。増税率では、石炭が大きく、原油・石油製品が小さい。

地球温暖化対策と言うなら、増税後のCO2排出量あたりの税額が、燃料による差がない状態でないと不公平に思える。しかし、この改訂では、原油・石油製品に厳しく、石炭にやさしい。これからすると、税では石炭を推進していることとなる。だが、燃料なので、発熱量あたりの税額も重要である。どうなったからは、上表の一番下の行の通り、ガスが一番有利で、次に石炭、そして原油・石油製品は不利となった。

地球温暖化対策は、税のみで講じるものではない。しかし、例えば、エコカー減税の財源は、一般財源ではなく、このような温暖化対策税がよいと考える。温暖化対策税については、課税と支出の双方について、合理的な設計と運用になるように今後とも検討を重ね、発展させていくべきと思う。

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2012年3月29日 (木)

2001年4月以降の火力発電

東電の電力料金値上げ、原発の全機停止、大飯原発再稼働、東電資金支援・・・様々なことがある中で、それぞれが今後どのように動いていくか、分からない面は多い。言えることは、生活や経済活動は電気を必要とし、現状においては、供給されている。そこで、データから検証していきたい。

1) 2001年4月以降の一般電気事業者10社の供給源

北海道電力から沖縄電力まで一般電気事業者10社の2001年4月から2002年1月までの毎月の電力総供給量は次のグラフであった。

Powersupply20123

なお、電力総供給は、10社の発電機の発電端電力合計と購入電力合計に用水動力を差し引いた電力の意味で使っている。従い、これに発電所所内動力と送配電損失を控除すると供給電力になる。

ところで、上の毎月の電力供給がどのような設備で発電されたかを見たのが、次のグラフである。

Powersupplysource20123
原子力が徐々に減少し、それを埋めていったのが、火力発電(一般火力または汽力発電と呼ばれる火力発電とコンバインドサイクル)でした。この様子をパーセントで表示したのが次のグラフである。火力の比率の増加が原子力の減少にほぼ一致する。

Powersupplysource20123p
2) 火力発電の燃料

次のグラフが、火力発電の燃料別の消費量である。なお、単位は熱量換算とし、テラ・ジュール(TJ)で表示している。なお、一般電気事業者10社の燃料消費に卸電気事業者である電源開発の燃料消費も加えた。

Powersupplyfuela
LNGと石炭が多いのであるが、最近は重油と原油も増加している。燃料ごとの消費量推移を見たのが次のグラフである。

Powersupplyfuelb
原子力の停止を火力が補っている。その結果として、原子力の原子燃料費が火力の燃料費に置き換わっているはず。2011年4月27日の
有価証券報告書からみる原子力発電コストで書いたのであるが、原子力発電における燃料費(核燃料減損額および濃縮関連費)は、安いのである。但し、原子力は、それ以外の費用が大きく、算定の方法によっては、相当に高くなることがある。

しかし、今回は議論はせずに、データの提供にとどめておきたい。今後、考える際に、皆様のお役に立てればと思う。

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2012年3月25日 (日)

AIJ事件で公認会計士が虚偽の報告

AIJ事件の約1000億円の損失には、驚かされるが、公認会計士が虚偽の報告をしていたというのは、本当に驚かされました。

日経 3月25日 AIJ社長、投信監査報告書を開示せず 実態隠蔽か 会計士に改ざんも依頼

毎日 3月24日 AIJ:顧客に偽造監査報告書を提示…巨額損失隠し勧誘

毎日の記事では「AIJは顧客の年金基金側から開示を求められても拒否。それでも開示を求める顧客には、知人の公認会計士に偽造を依頼した虚偽の監査報告書を提示し、運用実績が上がっていたように装っていたという。」という部分です。日経の記事には、「23日の強制調査では、関係先として会計士事務所も捜索した」とある。

この公認会計士は、1000億円もの損失になっているとは知らなかったのであろうが、適正な調査をせずに、監査報告書(ある書面かも知れない)を書いたと思える。第三者の公認会計士であり信頼しうるとしてAIJの投資話に乗っかった年金資金運用者は、気の毒である。悪徳○○士というのが、存在しないわけではないが。悪徳○○士に注意しましょうと言うことなのでしょうか。

ところで、日本公認会計士協会は3月22日付で、年金資産の消失に係る会計処理に関する監査上の取扱いについてを公表した。内容は、特に目新しいことはないと思う。そもそも、企業が自己の退職年金に関する年金資産の正しい評価額を基礎に退職給付引当金を計上していれば特別損失(臨時損失)は生じないのである。勿論、正しい評価とは、困難であり、表現としては公正な評価額とならざるを得ないのであるが。それでも、公正な評価額を追求していけば、今回のAIJ事件のような巨額問題には行き着かなかった気がする。

ところで、日本ユニシスが、3月23日にAIJとの投資一任契約により平成24年3月期の連結決算で約55億円、個別決算で約41億円の特別損失計上予定を発表した(ここ)。 日本ユニシスが、報道されている虚偽記載をした監査報告書で欺かれていたかどうか不明であるが、日本ユニシスには、何故AIJに欺されたのか、経緯や原因を発表したもらいたい。第三者委員会を任命して、報告書を作成し、公表する価値があると考える。制度的なことを考える上でも役に立つ。日本ユニシスの監査法人は、トーマツである。トーマツも守秘義務の関係で公表できない部分もあるであろうが、やはり何かは発表して欲しいと思う。

山一・長銀破綻において、山一事件では社内調査委員会の委員を、長銀事件では刑事・民事裁判における須田元副頭取の弁護人をされた国広正弁護士が、次の文春新書で「修羅場の経営責任」を書いておられる。

山一事件における飛ばし問題や長銀破綻における住専問題等の原因や背景の核心部分がほとんど解明されることなく来ているのではないか?そうだとすれば、再度同じような問題が発生するのではないか?AIJ問題も社長の高報酬問題他に終わらせるのではなく、問題の本質部分を解明していく必要があると思う。

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2012年3月23日 (金)

AIJ問題の広がり

3月4日にAIJ年金問題から厚生年金問題を書いたのだが、ようやく問題の深刻さが広がりつつあると思う。例えば、次のように、ガソリンスタンドの団体である全国石油商業組合連合会が公的資金の援助を民主党に求めたとの日経のニュースがあった。

3月22日 日経 「年金消失に公的救済を」 民主に業界団体 AIJ問題で会議

「投資の失敗を税金で穴埋めしてよいのか」との問題をはらんでいる。本日3月23日の参議院予算委員会で、民主党の川上義博氏が中小企業は体力がないのであるから、救済のために税金を投入する必要があるべきではないかと質問した。これに対して、厚生労働省榮畑潤年金局長の回答(補足説明)は、本質を表していると思った。(委員会開始後11分頃)

厚生年金基金が運用しているのは、企業独自の年金である3階部分と厚生年金の基礎年金部分を除いた比例部分である。公的資金が一切入っていない部分である。

もし、税金や他の年金資金で穴埋めしたなら、年金制度の根本部分がおかしくなる。国民年金の人が、何故AIJの損失を負担するのか、問題のない年金の受給者が受給額を何故AIJの損失のために減額となるのか、あるいはAIJのために増税が許されるのか?

AIJと常識があれば信用をしないはずのAIJに資金運用を依頼した年金基金の運用担当者や理事の責任が重大なはず。その責任を問わずに安易に税金や国民年金・厚生年金・共済年金の加入者に負担を求めるのは、おかしいはず。多分、AIJ問題で倒産する企業も発生するであろう。しかし、資金運用で失敗しての倒産はありうるはず。いっそのこと、破産をして、厚生年金積み立て不足額をその企業から破産手続きにおいて確実に回収する方が、皆のためになる可能性さえある。勿論、働く人達の年金の減額になることは避けねばならないのだが、どうバランスをとっていけるのか。

少なくとも、安易に公的資金の援助をすべきではないと思う。

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私と同じようなことを書いておられる

日経の3月23日の記事です。但し、電子版で読むためには、登録しないと読めないのですが、私の直前のブログの景気回復と消費税と同じようなことを述べておられます。

3月23日 株式市場が恐れる「小沢ショック」再来  編集委員 梶原誠

国債の過剰発行の行方は、恐ろしいことです。日本も、終戦直後に天井知らずのハイパーインフレを経験しまいした。戦費調達のための日銀引き受けによる国債の大量発行が原因でした。デフレが悪いと言うが、インフレは、もっと恐ろしいことです。物価が上がっても、年金の給付額がそれほど上がらず、年金受給者は皆貧乏になるし、基本的に国民のほどんどは貧しくなり、生活が極端に苦しくなる。喜ぶのは、借金がある人達で、それも少々の借金だったら、利率の上昇で利払いが大変になるが、大借金のある者は、恩恵にあずかれる。最大の恩恵を受けるのは、国債を大量に発行している政府です。インフレで税収が増えるが、国債償還は金額固定なので、楽になる。

何か、おかしくありませんか?ハイパーインフレで政府の財政が好転しても、結局は国民が貧乏になった結果なので、意味がない。

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2012年3月21日 (水)

景気回復と消費税

3月14日に日経平均が半年ぶりに10,000円を越え、少しほっとされておられる方も、多いのではと思います。ちなみに、昨年3月からの1年間の日経平均と米ドル為替レートのチャートは次です。

Nikkei22520123
2011年8月に9,000円を下回り、それが1月ほど前の2月15日に9,000円を回復し、今や10,000円以上となったのです。

上のチャートに、米ドル為替レートも書いてみたが、非常に似通ったチャートになりました。そこで、今度は、日経平均株価を米ドル換算したチャートを作りました。

Nikkei22520123usd
ほぼ円のチャートと似通っています。2011年の末から2012年の初め頃から、株価は回復の基調に入ったのかも知れません。

では、何故回復にあるのか、またいつ頃まで続くのかが問題です。株価の動きの背景には、様々なことがあるので単純ではないはず。

ところで、どうでしょうか?消費税増税が確実になりつつあるから、株価も上昇しているという考え方は。2月17日に、社会保障・税一体改革大綱について(ここにあり)の閣議決定があった。

税を上げると、消費が落ち込み、景気が減退するとの意見がある。確かにその一面はあるが、一方で、政府財政は改善されるわけで、今の政府財政で、それほどの政策はできないが、財政改善の見込みがなければ、破綻に向けて一直線に進むだけの状態に思えた。

そこで、懸念の景気後退であるが、1997年4月1日から実施された消費税(等)の3%から5%への増税の際に、日経平均は、どのような動きであったか、1993年1月からのチャートを書いてみた。

Nikkei22520123from1993
3%から5%への増税は、1994年11月の村山政権時代に成立し、施行が1997年4月1日の橋本内閣時代であった。チャートから見ると、1995年6月頃が底で、それから回復し、1996年6月頃に最高値となった。その後は、2000年3月には一時的に日経平均も20,000円を上回るまで回復した。考えれば、10年以上20,000円になったことがない。増税と、景気悪化を、それほど強く結びつける心配はなく、むしろ正しい政策をとっているかどうかの方が、重要だと思う。

増税をしなかった場合の懸念を言えば、国債のはけ具合が悪くなり、国債の利率が上昇し、金利上昇に伴い、国債価格が下落する。国債を保有をしている銀行はじめ機関投資家は、国債下落を関知したコンピュータープログラムが作動して、大量の売りが市場に出回る。国債は相当暴落すると考えられる。政府は、国債発行額を押さえ得ざるを得ず、歳出縮小に向かい、年金の支払減額法を国会に提出する。この時点で、年金支給額は、下げられるだけ下がっており、年金受給者の支出は落ち込む。

政府には、手形の支払いがないので、銀行取引停止処分は発生しないし、破産させても意味がない。しかし、債務不履行や弁済期限延長・債務削減はあり得るのである。政府財政は、国民の財政であり、政府財政を破綻させれば、国民にその付けが回ってくることを忘れてはならない。健全な財政で、国民が必要とすることを政府にさせるには、そのための資金を与えねばならない。

そこで、消費税増税の懸念は、やはり低所得者に厳しい逆進性である。そのための手当は、しておかねばならない。2月17日の閣議決定を見ると、別紙1には消費税のみならず、他の税のスケジュールも書いてある。消費税の逆進性を緩和するには、食料品等の低率適用も考えねばならない。社会保障・税番号を施行しないと、公平な制度が保てない。番号制があれば、消費税は、そのままにして、所得税で、低所得者に交付金を支払うことも可能となる。

希望を持てる政府が存在することが、経済活性化の上で、一番大事なのだと思う。

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2012年3月20日 (火)

大連立・政権交代・小選挙区制

大連立に関する報道が最近よくある。

日経 3月19日 大連立打診、政府・民主に沈静化の動き 党内外から反発

「党内外から反発」とあるが、与野党の議員のことであって、国民のことではない。大連立も選択肢の一つではあるだろうが、何か釈然としない。すっきりしない。

何故だろうか?やはり、民主党が、選挙前に述べていたことと完全に相反するからだ。「政権交代が必要だ。」、「政権交代をすることで、政治がよくなる。」と、そのようなことが、マニフェストだか公約とかの前の大前提で、民主党は唱えていた。大連立は、これとまっこうから反することである。

大連立をするなら、小選挙区制である必要はない。国民の意見を反映した議席配分となり、その結果として連立政権や政党・議員の間の協力が生まれる。小選挙区制と政党助成金は、悪い制度と思う。

政権交代そのものは、悪いわけではない。しかし、政権交代に大きな成果を期待すべきではない。従い、民主から自公に交代しても、同じである。政権交代をするために小選挙区制にするのは、本末転倒である。国民の意思を反映する議員を選べる選挙制度にすべきである。

でも、大連立を言い出した今だから、議員が国民の代表として国民の意見を反映した形で選ばれる選挙制度に向けての改革に一歩を踏み出すべきだと思う。議員に任せておいたら、自分たちの都合のよいようにするわけで、やはり国民から仕掛けていく必要があると思う。

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2012年3月15日 (木)

長野県外郭団体の仕組み債投資

長野県の外郭団体が仕組み債に投資をしているというニュースがあった。

信濃毎日 3月13日 県の外郭9団体、「仕組み債」計66億円余を保有

仕組み債については、2010年12月3日に地方自治体はデリバティブに手を出すべきではないというブログを書いた。このときは、資金運用ではなく、資金調達で、通常の地方債を発行する代わりに仕組み債を発行することの危険性を書いた。

今回の仕組み債への投資とは、何であるか。信濃毎日の記事に団体名と金額の記載がある。最大の金額は長野県テクノ財団35億円である。そこで、長野県テクノ財団のホームページから探したが、財務諸表や財務データが見つからない。第2位の長野県農業担い手育成基金(ホームページはここ)を見ると、財務諸表や財務データが公表されていた。

2011年3月31日現在の投資有価証券が15.7億円あり、外国債2口、国債2口となっている。信濃毎日の記事では、10億円仕組み債を保有していることになっている。そうすると、外国債2口が、その可能性が高いと思う。信濃毎日の記事には「9団体はいずれも為替に連動する仕組み債を保有。円安であれば高い利子が受けるれるはずだったが、最近の大幅な円高で金利がゼロになっている事例が多い。」とある。これからすると、利息は当初期待は4%とかで、通常より高い。しかし、100円以上の円高になると利息率は低くなり、例えば95円より円高になると外貨建てで償還されるという仕組み債と思う。

仕組み債とは、デリバティブと債券が合体しているが、表面には何も書いていない債券である。自分の資金を投資する場合、とやかく言われることはない。しかし、長野県農業担い手育成基金の場合は、県と市町村と農協の金である。人の金をリスクにさらして、許されることではないと思う。

これらの団体はまずは、財務諸表・財産・投資内容と明細を明らかにし、特に仕組み債については、目論見書も公開すべきである。その上で、投資判断を議論できるし、時価を評価できる。もし、納得ができる説明があるなら、仕方ないと思えるが、さもなければ、損失については、全額を理事長や理事が個人のお金で賠償すべきと思う。損失は使い込み、不正支出とイコールのはずである。

そして、この問題は、長野県のみならず、他の都道府県の同じような団体でも生じている可能性がある。長野県のことと思わず、自分の都道府県の団体の財務諸表と財産・投資内容を調査せねばならない。

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2012年3月11日 (日)

東日本大震災から1年

東日本大震災から1年が経ったこの日に書くべきことは、東日本大震災の関連だろうと思った。死者・行方不明者をあわせると2万人近くに達すると聞く。防災体制が整った現代における自然災害としては、やはり比較にならないほど大きな災害であったと思う。

1) 調査究明は継続すべき

一番思うことは、調査究明を継続すべきことである。防災無線で津波避難を呼びかけておられた人が津波で亡くなられている。非常に気の毒であるし、自らの業務を最後まで全うされたことに敬意を表したい。しかし、美談のみに終わらせてはならない。どうして、上司や同僚は無理にでも、避難をさせなかったのかと思う。もしかしたら、上司の胸の内こそ、ずっと苦しみの中なのかも知れない。

上司の上司と言うべきか、責任者は反省すべきである。「津波警報に対しては、避難を呼びかけることのみならず、自らの安全確保を十分に心がけろ」としていたのか?気象庁のこのWebによれば、津波警報は地震発生の3分後である14時49分に福島県の場合は3mで出された。津波から28分後の15時14分には6mになり、44分後の15時30分に高さ10m以上とされた。東京電力福島第一原発の全交流電源喪失としているのが15時41分なので、津波が来るまで10分しかない。

何がどうできたのか、どれだけの選択肢があったのか、答えは簡単ではないと思う。しかし、それ故に調査究明すべきと思う。消防団で、救助活動で亡くなった人も多いと聞く。誰が指揮をしていたのかとの問題もあるだろうが、逆に個人のボランティア活動であるとして、自らの命は自らが守ることを第一条件とする考え方も必要であると思う。

2) 携帯電話ラジオ

東日本大震災の直後は携帯電話の通話がほとんど不可能であったと聞く。何のための携帯電話かと言いたいが、そもそも、そのような物だと思うべきであろう。しかし、逆に携帯電話を信頼して、何度も通話を試み、津波に流されてしまった人も多いのではと思う。

何を言いたいかは、Docomo、AU、ソフトバンクは、災害時に携帯電話とメールは信頼できないと宣伝すきではないかと思う。逆に、災害に強いのは、一方通行の通信である。すなわち、TVやラジオである。携帯で、ラジオが聞けるようにすればよい。ワンセグでもよいであろうが、ラジオの方が、ずっと簡単なはず。あるいは、携帯メール災害文字情報でもよいのではと思う。

FMラジオでTV1~3チャンネルが聞けた。しかし、今はデジタルなので聞けない。ワンセグを聞けるラジオが安い価格で買えない。通信手段が進んだにも拘わらず、災害に弱いのは変と思う。防災無線に頼らずに、工夫すれば、簡単に情報伝達できる手段を作り出すことができると思うのである。

東日本大震災1年を機会によく考えて欲しいと思う。

3) 福島第一原発

何度も思うことは、何故自衛隊を福島第一原発に直ちに派遣しなかったかである。福島第一原発の発表はこれである。民間企業に自衛隊を出すのであり、総理大臣命令が必要である。政府は、交流電源喪失のみならず、直流電源も大変な事態となっていたことを知っていた。ならば、直ちに必要なことは、直流電源、すなわちバッテリーと充電器の輸送である。そんな手段はあったかと言えば、自衛隊のヘリコプターを使えばよい。

自衛隊は、仮想敵国が夜間上陸してくることを想定して、夜間飛行できるヘリコプターと人員を保有していたはずである。3月11日に、福島第一原発で放射線問題はなかった。バッテリーと充電器が自衛隊の内部でまだ不足しているなら、他の発電所からでも運搬可能である。夜間に機材を動かすことは、軍隊にできないはずがないと思う。

何故しなかったかは、総理大臣命令がなかったからである。馬鹿総理は、自分がヘリコプターに乗って出かけて人気をとりたかったとしか思えない。もし、そうだとしたなら、国民の利益より、自分個人の人気を優先したとんでもない人である。

首相官邸と福島第一原発との間での通信手段に問題があったとも聞こえてくる。しかし、これこそ、自衛隊が、衛星携帯電話を福島第一原発に必要数運搬すれば済むことである。あるいは、最悪は、自衛隊の通信手段を原発と官邸との間の連絡に提供するのである。何故、そうしなかったのか、国民のことより優先すべきことがあったのかと思う。

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2012年3月 4日 (日)

AIJ年金問題から厚生年金問題

AIJ年金問題が、どこまで広がっていくのか、この問題は行き着く所まで、行くべきだと思う。やはり、厚生年金基金は全て解散するのが解決方法と思う。その際に、年金額は、既に受給を受けている人を含め、全員減額となる可能性はどうか?消費税がアップし、税率20%なんて可能性はどうだろうか?と思う。それが実態なら、それを直視することも必要である。

きちんと本質を見極める必要がある。なかなか、力は及ばないが、できる限り書いてみるとする。

1) AIJに委託している年金資金は厚生年金基金

次の日経の記事からすると、AIJに委託しているのは、ほとんど中小の厚生年金基金と思える。

日経 3月3日 AIJ年金問題、北関東3県にも波紋 中小基金、募る不安

「同社に運用を委託していた厚生年金基金は地場中小企業が集まって共同運用する総合型が多く、規模が小さく運用の専門家がいないケースも少なくない。返還がどの程度見込めるかも不透明で、各基金は対応に苦慮している。」とある。

厚生年金基金とは、何であるか。次は、日本年金機構のパンフレットからの図であるが、よく説明に出てくる。

Photo

厚生年金基金は、厚生年金の部分の左上に乗っかっている形で書いてある。しかし、嘘と思う。厚生年金の下の部分にほとんど伸びているのが本当の姿である。ただ、厚生年金の人が全員厚生年金基金に該当しているかというと、まず一定人数存在と厚生労働省の認可が必要である。人数を確保するために、地場中小企業が集まって共同で設立する場合がある。

そもそも、何故厚生年金基金なんて設立するかというと、かつて、厚生労働省の資金運用計画は年5.5%であり、金利が高かった時代には、厚生労働省に運用を任せずに、自分たちが運用した方が、従業員の福利厚生がよくなると言う思想である。すなわち、厚生労働省・社保庁に運用を任せずに、自分たちが独自で運用し、しかも厚生労働省より高い利率の運用をするので、年金支給額を多く支払うと約束する。この厚生年金基金制度を採用すると、従業員と雇用主である会社が支払うべき保険料のうち、基礎年金部分は社保庁・年金機構に支払うが、報酬比例部分は支払わず、厚生年金基金が自ら運用して、従業員の退職後に支払うのである。

そこで、運用が5.5%以上でできていればよいが、そんなことは、現在の金融市場で不可能と言える。そのため、代行返上が認められることとなったし、元来から解散して企業年金連合会に引き継ぐ方法もあった。代行返上のためには、社保庁に支払わなかった報酬比例部分の徴収済み金額合計と運用収益部分の合計を社保庁・年金機構に支払わねばならない。しかし、それは、運用がうまくいっている厚生年金基金または不足部分を会社が補填して支払える場合である。実は、体力のある大企業は、金融市場を考慮し、厚生年金基金を維持すれば、赤字補填が継続するとして代行返上をした。

赤字厚生年金基金は、代行返上しようとしても、金はなく、悪循環に陥った。ついには、AIJにまで手を出す始末。逆に言えば、悪意があれば、厚生年金基金なんて、欺しやすい相手である。そんな構造で、AIJ問題が発生したのであり、予想されたことと言えなくはない。

2) しかし厚生年金です

AIJ問題について、年金の3階建て部分の資金運用だと一部の報道機関は伝えた。上の日本年金機構のパンフレットからの図を見ても、波線が2階建て部分の厚生年金に入っている。ところが、厚生年金基金が扱うのは、厚生年金報酬比例部分のほとんどである。(厚生年金保険法132条2項)すなわち、厚生年金基金がパンクすると厚生年金の報酬比例部分が、ほとんど受け取れなくなる。

厚生年金とは、厚生年金保険法による年金であり、税と同じように保険料は法律で納付が義務づけられ、法律で年金受給が約束された国の年金と呼ばれている年金です。

そうなると、この問題の根の深さが分かると思います。

法律で強制的に保険料が徴収され、受給が約束されているにも拘わらず馬鹿な運用で年金が受給できないとなると、誰の責任か?一つは、AIJの様なファンドの責任。資金運用には、安全性を最も重視しなければいけない厚生年金基金の運用担当者や理事の責任。そして、こんな恐れが予想されたにも拘わらず、制度を許した厚生労働省の責任。厚生年金保険法を改正して、不十分な厚生年金基金制度を作った国会議員の責任。そんな議員を後押しした圧力団体や国民の責任。どこまででも広がっていく感じがある。

従来からも厚生年金基金の破綻はあった。その際は、厚生年金保険法149条の企業年金連合会が引き継いで厚生年金の支給を行ったし、現状もそうなっている。

問題は、では安心かというと、小さな厚生年金基金の1つや2つが破綻するには対処できても、大勢であれば、無理と思う。実は、これを見極めることが、今回の事件からやらねばならない最重要なことである。

もし、厚生労働省・日本年金機構が管理する厚生年金と比べて財政状態が相当程度悪いなら、根本的な解決を図るべきである。また、近年において悪化が進んでいるなら、厚生年金基金の強制解散をすべきと思う。

そして、いずれにせよ、財政状態が悪いなら、厚生年金基金の被保険者と企業の問題にとどめるのか、国の制度であるとして、国民全員を巻き込んだ解決を図るのか、すごい問題も待っている。

3) 厚生労働省管理の厚生年金は大丈夫か

厚生労働省が管理する厚生年金も見ておかないと心配である。昨年11月14日に年金の課題を正面から取り組むべしとのブログを書いた。この中で、問題点の一つとして、財政見通しの計算を、物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.5%、運用利回り4.1%という甘い前提で実施していることを書いた。

次の表は、平成23年11月21日開催の「第2回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」での資料1「年金積立金管理運用独立行政法人について」の14ページの「年金積立金の自主運用開始以来の運用実績」の一部である。22年度はマイナス0.25%、21年度や17年度のように9.88%や7.91%の年もあり、10年間平均年率換算1.20%とある。妥当と思う。(ここからダウンロード可能)

20123
国民に対して、1.0%、1.1%、1.2%の運用の場合の、年金財政の計算を示すべきである。本当の姿を予測すれば、年金が減額となる。だから、そんな予測をしないということは、おかしい。減額となった場合、それを避ける方法は、税金を投入する以外にない。その場合の税金額はいくらになるのか?冒頭に書いたように、消費税率20%となるのか、それでも足りないのか?いやはや心配の種は尽きないのであります。

なお、昨年11月14日のブログで参照した松山幸弘氏の文章があらたにすが閉鎖となり、読めないが、現在はキャノングローバル戦略研究所のこのページで読めます。

4) 企業年金

厚生年金基金の厚生年金に上積みした部分が企業年金である。ところで、確定給付年金や確定拠出年金という制度もある。確定給付年金と厚生年金基金の上積部分(3階部分)は、相当似通っている。

しかし、大きな違いが一つある。確定給付年金や確定拠出年金は、法人税法87条により積立金額に1%の法人税が課せられる。但し、現在は、租税特別措置法68条の4により法人税を課さないとなっている。

これもおかしな話である。法人税法の83条から91条までを削除すべきである。確定給付年金や確定拠出年金は、公的年金控除の適用はあるが、受給時に全額課税である。厚生年金基金の3階部分と同じ扱いをすべきである。

税と社会保険の一体改革と言いながら、何もしない政権。社会保険制度が難しいのは、その通りである。しかし、手を付けないことは許されない。せめて、実態を国民に正確に伝えることをすべきである。政権を取る前に言っていた情報開示を望む。

5) コメント

正確でない部分や間違っている部分もあると思います。また、様々な意見を持っておられる方もおられる。このコメント欄にどしどし書いてください

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2012年3月 1日 (木)

280億円の税金なんて気にしない人がいる?

エルピーダメモリが会社更生法を申請。エルピーダには、2009年に政策投資銀行が行った優先株による出資284億円の80%と貸付金100億円の50%に対して、政府(日本政策金融公庫)の損失補填が約束されている。(参考:政策投資銀行プレスリリース2月28日 エルピーダメモリ株式会社の会社更生手続開始の申立てについて

政策投資銀行が保証金の支払いを政策金融公庫に求めたらならば、政策金融公庫はそれを支払わねばならず、最終的には国民の税負担となる。直ちにではないが、いずれそのようなキャッシュフローが生じる可能性は十分ある。

ところで、次の日経記事である。

2月27日 日経 エルピーダ破綻、国民負担は最大280億円

このなかに、「今回の国民負担は09年度補正予算で設定した枠内に含まれるため、枝野経産相は「新たな国民負担が生じる状況ではない」と述べた。」とある。

そう述べたのであれば、けしからんことと思う。この人は、他の報道で「2009年にエルピーダに対する公的資金注入を含む支援を決定は、当時としては正しかった。」と述べたようにも伝えられている。

アホの政治家だと言ってしまえば、それまでであり、経済人として考えることが誤りと思う。そこで、もう一つ、この毎日の報道のように、東京電力に政府が資本注入をして2/3以上の特別決議ができる過半数を政府が保有すべきとの考えさえあるようだ。絶対反対である。政府が東京電力に資金を出すなら、貸付金で良いはず。貸付金を出す際にも、交渉は可能であり、その結果を金銭消費貸借契約の条項に入れることになる。交渉において、出す、出さぬ、会社更生法の申請等様々なオプションが存在する。専制政治を行ってはならないのである。

政治に振り回されたかつての国鉄を忘れてはならない。政治家や役人には経営能力はないし、経済のことは分からない。雇用対策とか地元対策とかの言葉には強いが、それで経営ができるのではない。政府が東京電力のオーナーになったなら、電気代がむちゃくちゃ上昇すると同時に停電が頻発したりとなる恐れはどうであろうか?

エルピーダの資金援助は、政策投資銀行が実施し、議決権のない優先株と貸付金であり、それを政府はバックアップした。正しかったかどうかは、今後検証をすればよいことである。自分の都合で、都合の良いようにしか考えない人には、重要なことにタッチして欲しくない。

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