消費税増税を考える
衆議院に提出されたのは、3月30日であり、既に2月近く経過するが、深い議論は国会においてもなされていないと感じる。法案提出の翌日4月1日に、この消費税増税法案の注目点を書いたが、更に思いつくことを書いてみたい。
1) 景気対策としての消費税増税
消費税増税の反対する理由として、景気が悪くなることを、その理由としているあるいは時期を考えるべきとの主張がある。しかし、これは、本当に正しいのだろうか。
ここに、協会けんぽの「保険料負担軽減に向けた署名活動へご理解とご賛同をお願いいたします 」との理事長の文書がある。国家公務員、健保組合、協会けんぽの平均給与と保険料率を比較があり、それらのグラフと表を統合すると次のようになる。
協会けんぽ | 健保組合 |
共済組合 | |
被保険者 |
主として中小企業のサラリーマン | 主として大企業のサラリーマン | 国家公務員・地方公務員・私立学校職員 |
保険料率 |
全国平均10.00% (平成24年度) |
平均7.93% (平成23年度予算平均) |
国共済平均7.06% (国共済 平成22年度) |
平均給与(年額) |
370万円 | 536万円 | 631万円 |
保険料率が何故高いかは、給与が低いからである。勿論、協会けんぽ加入の企業に働く人で、共済組合の平均と書いてある631万円以上の給与を受け取っている人もいる。しかし、その人は、本人と会社を併せて共済組合の人より約3%多く健康保険料を支払っている。給付は同じであるが、検診や保養施設の利用を考えれば、実は給付内容は健保組合や共済組合より悪い。約3%と書いたが、本人負担の1.5%は、年収1千万円では15万円になるのであり、決して少額ではない。会社としても、同じ給料で人を雇えば、中小企業の方が、人件費が高いというのは、納得ができないはずである。大企業も中小企業も同じ条件で競争できるようにすべきであり、それが人件費の面で、中小企業が不利というのは、日本経済を根本からおかしくすると思う。
解決策は、国民健康保険を含め健康保険制度の統一である。簡単ではない。統一が達成されるまでの間は、税で負担を均等化するしかない。協会けんぽに補助金を出すなら、増税が必要であり、増税しても、増税以上の経済効果が期待できる。
税金を有効に使えば、効果は大きいし、政府でないとできないこともある。逆に何でもかんでも無駄だとすると、日経5月23日 公共施設「事業仕分け」の末路 活用方法定まらず ともなりかねない。
2) 消費税増税直後の景気悪化
消費増税をすると一時的には必ず景気は悪化する。一つの理由は、増税前の駆け込み需要である。税込み210万円の車が2014年4月から216万円になるなら、2014年1-3月の車の売れ行きは相当高いと誰でも予想する。その結果は、2014年4月以降は、個人の車需要は、その分は落ち込むと予想される。車以外に、マンションや一戸建ても同じはず。食料品のような保存ができない物はそうではないが、消費増税には、どうして駆け込み需要がつきまとうのである。
このことを無視して、消費税を上げると景気が悪くなるとして過去の例を取り上げるのは誤りである。
3) 増税の景気浮揚効果
公共設備に投資をして、その公共施設の有効利用により経済活動が更に活発化してと言いたいが、そうは現状では望めず、現況を踏まえての議論が必要である。
1)で協会けんぽのことを述べたが、実は、年金も健康保険全般も同じような状態である。平成24年度予算で、基礎年金の国庫負担2分の1を維持するための財源約2兆6千億円にさえ実質穴が開きそうである。(MSN産経 4月9日 年金交付国債見直しへ 苦肉の“粉飾”あえなく瓦解)
増税をしなかったならば、年金制度は破滅に向かうはず。破滅を乗り切るために、保険料の値上げと増税とどちらがよいかの選択となるとどうするだろうか?嘘つき政治家に欺され続けると破滅しかねない。大東亜戦争を、欺されて支持したと考える人もおられたと思う。
4) 消費税の逆進性対策
消費税増税をしても、弱者に配慮し、社会のために税を支出することにより、逆進性は緩和されると考える。しかし、法案7条1項1号イの給付付き税額控除等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を実施すべきである。番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)を今国会で消費増税と同時に成立させるべきである。
今回は無理と思うが、食料品等の低減税率とインボイス制度の適用である。実は、インボイス制を導入すれば低減税率は簡単に実施可能なはずである。事業者は、仕入れインボイスを提出することにより、仕入れ税額控除が受けられる制度である。次のような利点があると考える。
1. 非課税品を全て、税率ゼロとすることができる。その結果、価格が合理的となり、益税がなくなる。(銀行、学校や医療機関も仕入れ税額控除を受けられる。)
2. 流通の全てが把握可能となり、消費税のみならず、法人所得の補足も容易となり、脱税を防止できる。
3. 個人についても、一定額について税額控除を認めれば、一定の所得以下の人は、消費税の負担が無くなる。
インボイス制度は、インボイスが税額控除のエビデンスとなるのであるが、電子インボイスで対応可能と考える。例えば、個人は、カードを持ち、それを買い物の支払い時に、店に提示し、消費税額を記録してもらう。その累計は、いつでも見ることができ、消費税払い戻し限度額までくれば、払い戻し手続きをすればよい。限度額まで達しなければ、その年の累計消費税支払額全額をそのカードの記録をエビデンスとして払い戻し手続きをすればよい。
個人の消費税払戻制度は、思いつきに近いのであるが、さまざまなことは考え得ると思う。税をどうすべきか、国民が主役になって、議論すべきと考える。
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