原子力規制委員会設置法の公布
原子力規制委員会設置法の公布が本日(6月27日)の官報で掲載され、本日から3月以内の政令で定める日から施行されることとなった。福島事故や大飯再稼働等原子力について最近は多くの人が関心を持っていると思う。私なりに、感想を書いてみます。
1) 原子力規制委員会委員の選任
第2条で、「国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、環境省の外局として、原子力規制委員会を設置する。」と定められ、3条委員会となった。
その結果、原子力や核物質に関する様々な法律で「経済産業大臣」または「文部科学大臣」と定められていた箇所が「原子力規制委員会」と改正された。
原子力規制委員会は、今後の日本の原子力政策及び行政に関して大きな役割を果たすと考える。3条委員会としたのであり、委員の選任(委員長と委員4人)は非常に重要である。ちなみに、原子力委員会設置法第7条は、次のようになっている。
委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
この人選については、候補者の経歴や、人選の途中経過を含め、国民に広く伝えて欲しい。与党が納得できる人選ではなく、国民が賛同できる人選をして欲しいのである。そのことこそが、原子力の信頼を国民から得られる方法であり、将来の日本の原子力についての方向を決めて行くにふさわしいと考える。
2) 廃炉40年
マスコミは、廃炉40年の報道が多かったと思うが、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」にあらたに追加された条文の一つである第43条の3の31に定められた。
発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第43条の3の11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする。
2 <省略> 3 前項の規定により延長する期間は、20年を超えない期間であって政令で定める期間をこえることができない。
結局は、60年まで可能であり、法改正まですれば、更に延長ができる。もともと意味があまりない条文と思う。設計寿命が40年だからと言う発想からと思うが、設計時に長期間運転した原発が存在しなかったのであり、短い寿命しかないかも知れないし、メンテナンスや補修が良ければ、長くなるかも知れない。運転状況によっても変わるかも知れない。
原子力規制委員会の委員を信頼できる人達にしておくことこそ、重要であり、信頼を置きたい安全確保手段であると考える。
3) 安全保障
原子力基本法が改正され、安全保障なる言葉があらたに入った。改正後の原子力基本法第2条は、次の通りである。(大きな改正は第2項の追加)
原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
この追加は、自民党案のままであり、3党合意により成立した法なので、国会でも議論されなかったと理解する。
考えようによっては、原子爆弾として安全保障に使用するために、原発で生成されたプルトニウムを国内に保持すると解釈できる可能性がある。原爆は、自衛目的には使えず、憲法違反であり、あり得ないとの解釈もあるはず。歴然たる事実は、原発のプルトニウムから原爆を作るバリアは低くなっており、今後ますます低くなるはず。テロリストの手にプルトニウムが渡ることは避けねばならない。そして、今や日本は、世界のなかでプルトニウムを多く持つ国となっていることである。(次の表は、原子力委員会の平成21年版原子力白書の表2-2です。)
臭いものに蓋をするという手段は良いと思わない。非常に難しい問題であるが、国民的管理は重要と考える。
4) 情報公開
原子力規制委員会設置法第25条に情報の公開が盛り込まれた。自民案にはなかった条文であり、民主党の働きを評価する。国民の信頼と支持を得るべく、情報公開に努めて欲しいと思う。
原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない。
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