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2012年8月25日 (土)

消費税増税の今後

消費増税法は、8月22日官報で公布された。法の名称としては、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」と「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する等の法律」である。

8%になるのが2014年4月からで、2年も立たないうちであり、10%になるのが2015年10月であるから、8%になった後から1年半である。多分、消費税増税を、どう乗り切るかを考え始めないと、大変になると思う。

1) 3党合意で吹っ飛んだ超富裕層への課税をどうするか

言わば、政府案をひん曲げたのが、自民・公明であった。元の政府案にあった、消費税増税に加えての超富裕層への課税拡大が、なくなってしまった。法律の名称も政府案は、「消費税法等」と「等」があり、「所得、消費及び資産にわたる税体系全体の再分配機能を回復しつつ、世代間の早期の資産移転を促進する観点から所得税の最高税率の引上げ及び相続税の基礎控除の引下げ並びに相続時精算課税制度の拡充を行うため、消費税法、所得税法、相続税法及び租税特別措置法の一部を改正するとともに」なんてことが第1条に書いてあった。

そして、所得税は課税所得額が5千万円以上の場合は(5千万円を超える金額について)5%増税、相続税は課税相続財産額6億円以上の場合は(6億円を超える金額について)5%増税があった。これが削除され、第20条と21条に、「・・・・検討を加え、その結果に基づき、平成二十四年度中に必要な法制上の措置を講ずる。」なんて、文言が入った。完全に消えたわけではないが、自民・公明が次の選挙で勝つとなると、多分超富裕層への増税はされないだろうと思う。

一方、消費税反対を唱えていた野党の考えはどうなのだろうか?これまで、何度も富裕層に対する減税が行われてきた。本来は、消費税増税よりも、累進税率が適用される所得税増税が税制として優れているとの考え方があるなかで、所得税を積み残した。やはり議論が必要である。

2) 勤労・児童税額控除

次の毎日の記事が、民主党税制調査会における勤労・児童税額控除の案について報じていた。

毎日 8月21日 民主税調:消費増税対策に「勤労・児童税額控除」検討

どのようなものか、米国の場合は勤労税額控除はEarned Income Tax Creditと呼ばれており、ここにWiki(日本語)、ここにWiki(英語)があった。ちなみに、米国歳入庁(IRS)のEITCのページは、ここにある。子ども2人の場合、最大5千ドル(40万円)程度受け取れるようである。

所得税に税額控除を取り入れ2014年から実施するなら、2013年には所得税法の改正が必要なはず。そうなると、直ちに法案作成に着手せねばならない。そして、実施のためには、国民番号法の施行が必要であり、これも2013年3月までに成立させねばならない。

さて消費税増税法の7条には、政府案では「給付付き税額控除等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を導入する。」となっていた。ところが、3党合意で、これも微妙に文言が変更となった。「給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。」となってしまった。

これじゃ、2013年3月までの成立には相当な困難があると思う。

3) 消費税増税反対論

自民・公明以外の野党は、消費税増税反対であったわけで、野党として反対するからには、低所得者層への配慮は、二の次であったと思える。現実的な対応を、どうしてできないのかと思う。あまりにも、政治が貧困な国であるように思えてしまう。国民のことより、政権をとることが重要と考える人達に思える。

消費税反対論よりも、現実や実態に即した対応が、重要と思う。

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2012年8月19日 (日)

朝日新聞の報道能力

朝日新聞の報道能力については、いつも疑問を持つが、理解に苦しむような記事が多い。

8月17日 生活保護抑制、公共事業は温存 来年度概算要求基準決定

閣議決定したのは、次の「平成 25 年度予算の概要求組替え基準について」である。

財務省Webの8月17日閣議決定 平成 25 年度予算の概要求組替え基準について

財務省Webにある閣議決定を読んで、朝日の報道のように、理解すべきだろうか?

閣議決定の5ページに「③義務的経費や社会保障関係費等の効率化の効率化」の中で、確かに「これを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして、 最大限の効率化を図る。」との記載は存在する。しかし、朝日の報道の「高齢化にともなう社会保障費の自然増分8千億円の予算要求は認めるが、生活保護などの見直し(削減)で全体の伸びを極力抑える方針を示した。 」というのは、言い過ぎであると思うし、文章の冒頭にこれを書くと、8月17日閣議決定はこれが主要部分であるとの誤解を与える。全体の1部のことであり、また読み方によっては、解釈が異なる部分について、このような報道をする。

記者の能力が低すぎると言えば、それで終わってしまうが、三流新聞にとどまり続けるという選択もあると思うが、良い報道を心がける努力をしてもよいと思う。もし、私が新聞社の報道責任者であれば、2つの記事に分ける。1つは、閣議決定の内容を正確に伝えることである。もう一つは、生活保護の切り捨てに懸念をするなら、その旨の正しい報道をする。

生活保護について、正しい報道をしようとすれば、内容が多岐にわたり、複雑で、容易ではない。例えば、最低賃金と生活保護費の逆転現象についても、簡単には扱えない。生活保護者ビジネスなんて、生活保護者を顧客とするビジネスが、成立したりする。また、生活保護費予算を縮小しようとすると、相談員やケースワーカーの充実をはかり、必要な支援が正しく行き渡るようにする生活保護脱却の仕組みの足を引っ張る懸念もある。生活保護者の子ども達は貧困から抜け出して、生活保護の再生産・悪循環を避けるようにしなければならない。

そもそもは、格差拡大や日本経済の構造問題により生活保護者が増加しているのだとすれば、その是正こそ、簡単ではないが、努力すべきである。日本は、計画経済による無失業者や無貧困者という体制を採っていない。市場経済を基本的原則としているのである。市場経済においては、市場における敗者は存在するし、必要不可欠な面がある。しかし、それを放置して、社会が成立するのではない。敗者や貧困者に対する必要なレベルの支援制度が確立されてこそ、本当の市場経済は存在できるのである。

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2012年8月 5日 (日)

福島原発15.9m津波による電源喪失の想定が2006年にあった

しんぶん赤旗の次の記事です。

しんぶん赤旗 8月4日 津波で電源喪失想定 06年時点 吉井氏に保安院長認める 保安院勉強会

保安院と原子力安全基盤機構の「溢水勉強会」での想定とのことであるが、2006年5月11日の勉強会で、東電が福島第1原発5号機で15.9メートルの津波を受けると報告していたほか、女川原発2号機が15.8メートルの津波を受け、「常用・非常用海水ポンプは総て機能喪失」「電源の機能喪失となり、安全系の電動機、電動弁の機能喪失となる」とする報告書を出していたと書いてある。

これが、その後、政府の中および電力会社の中で(保安院と原子力安全基盤機構の中では当然のこととして)、どのように扱われていったかが、一番重要な点と考える。架空の話として、真剣にはとらえられなかったのか、あるいはそれ以上の検討を中止するような圧力が働いたのか、それとも然るべき部門や上層部には伝わっていかなかったのか、是非調査してもらいたいと思う。

しんぶん赤旗も、原子力発電の津波の危険性を、2006年の頃から強く訴えてくれていたならと思う。

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原爆に関連する話

8月6日に、原子爆弾が、広島に投下された。今年は、67回目の原爆の日である。原爆に関連する話として、原爆を米本土サンフランシスコからグアムに輸送した米巡洋艦インディアナポリス他の話がある。

1) マンハッタン計画

核分裂という物理現象は1938年暮、ナチス政権下のドイツでオットー・ハーンらによって発見された。核分裂の連鎖反応の可能性が明らかになると、核分裂研究はにわかに軍事的重要性を帯び始めた。連鎖反応を利用すれば、核分裂で発生するエネルギーを大量に取り出せ、原子爆弾として利用できる可能性が明らかになってきた。

ナチスの手を逃れて米国に亡命していた科学者を含め連合国側の科学者他は、ドイツが原爆開発を始めているに違いないと考え始め、ドイツが先に原爆を手中に収めれば全世界がファシズムに支配されてしまうという危機感を強く抱いた。その考え方は、米国が先に原爆を完成させなければならないと考えるに至っていった。

1942年9月に、米国の原爆開発は「マンハッタン計画」として本格的な国家軍事プロジェクトとなった。原爆に使用できる濃縮ウランは、1945年7月には、必要量の生産が完了していた。プルトニウム原爆も、ほぼ同じ時期に開発を終了し、7月16日にトリニティ(Trinity)実験(写真:原子力時点ATOMICA)で原爆としての有効性が確認された。

2) 米巡洋艦インディアナポリス

米巡洋艦インディアナポリスは、1932年就航の10,000トン級の巡洋艦である。巡洋艦インディアナポリスは、後に広島に投下される原爆をサンフランシスコからテニアンに輸送した。サンフランシスコ出航が7月16日。途中ハワイ真珠湾に7月19日に寄港して、燃料補給を受け、テニアン到着7月26日。サンフランシスコからハワイまで、2,100海里ほどあるので、3日後に到着したのであるから、30ノット近い速力で航海したはず。ハワイからテニアンも、3,300海里ほどあり、航続距離の関係で、少し速力は落としたかも知れないが、それでも25ノット程度では航海した。

原爆投下のためには、核兵器貯蔵が可能なテニアンに確実に特定の日までに輸送を完了する必要があった。

ところで、何故インディアナポリスが選ばれたかであるが、一つはその航海速力と航続距離にあったはずであるが、もう一つの多くの巡洋艦の中からと言う点については、米国西海岸でドックに入っていた絶好のタイミングにあったからのはずである。インディアナポリスは、1945年3月24日からの沖縄上陸戦に向けての艦砲射撃に参加していた。3月31日、神風攻撃機の自爆攻撃で損傷を受け、その修理のために西海岸でドック入りしていたのである。

長崎に投下されたプルトニウム原爆が、どのように輸送されたのか、ニューメキシコ州から、7月28日にテニアンにC-54輸送機で空輸されたようである。

3) 日本潜水艦 伊58

米巡洋艦インディアナポリスは、7月26日テニアンへの原爆輸送完了後、グアムに向かい、28日にグアムを出発し、フィリピンに向かっていた。その30日0時14分頃、日本潜水艦伊58号の魚雷攻撃で沈没した。米海軍は、当初インディアナポリスの沈没の事実が掴めず、1200人近い乗組員のうち、約300人が死亡した。

太平洋戦争最後の日本海軍の攻撃であった。当時、伊58号も回天特別攻撃隊を乗せていた。しかし、回天の出撃をしなかった。魚雷で沈没できる場合に、回天の攻撃は不要であるを貫き通した。

4) Wiki

書くにあたり、参考としたWikiをあげておきます。

USS Indianapolis (CA-35)

橋本以行

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国の責任

国の責任とは、何であるだろうかと思う。

福島原発事故について、責任は国と東京電力にあるという発言を、報道でよく耳にしたり読んだりする。また、政治家が「除染については、国が責任を持って、・・・」というような発言をする。

私にとっては、違和感を感じる発言である。原子力推進政策は、確かに日本政府のみならず国としての政策であったし、現在もそうであると考える。何故なら、原子力基本法に書かれていることは、原子力を推進することを基本政策としている。これをベースに、原子力関係の法が作られ、政策が実施されてきた。国民が選んだ国会議員が制定した法であり、日本において強制力を持っている。

国イコール国民が悪かったのか、では、悪かった部分を指摘せずにいることは、発展性の望みないと考える。従い、思考し、指摘する場合に、国という抽象的なあいまいな表現を使うと、結局は、それ以上に進まず、改善も改革も発展も期待できないと思う。

政治家が国という言葉を使う時は、ごまかしをしている時と、私は確信している。放射性物質の除染の場合を例にすれば、できないから、国が責任を持ってと言って、自らと政権の仲間達の責任をあいまいにすることを目的として発言していると思う。この発言の場合に、国民の税金をいくら投入しても、いくら増税になっても、実施しますと言うことと、実質同じはずである。税金を使っても実施すべきと思う。しかし、無制限ではない。合理的な基準で、国民が幸福になるように使うべきである。

8月になり、終戦の月に入った。「お国のために死んでいった。」との言葉は、実は、不幸なことである。国という価値のないもののために死んだともなるからである。国のためと招集されて戦死したとしても、国のために死んだというそんな単純なことではないと思う。

本日、オリンピックサッカーは、男女とも準決勝(Semi Final)に進んだ。うれしいことである。うまくいけば、決勝戦は女8月9日(日本時間10日3時45分)、男8月11日(日本時間23時)となる。国や愛国心を離れ、この男女チームのサポーターの一員になっているのだという感激である。できれば、女は決勝戦の直前、男は決勝戦の前日に行われる3位・4位決定戦でなく、この決勝戦での、金メダルをかけての戦いを見たいと思う。

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