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2012年9月29日 (土)

小選挙区制の打破

共感を覚える部分が多かった。

日経ビジネス 9月28日 「小選挙区制度は失敗だった。新しい選挙制度の導入を」 元衆議院議長の河野洋平氏

ねじれ国会であるから独裁政治がかろうじて抑制できている。それなのに、重要なことが決まらないのは、衆議院と参議院が異なるからでと、参議院廃止論を唱える者までいる。公債特例法案(赤字国債発行法案)が成立しないと、予算が執行できず、政府が機能できなる恐れがある。しかし、この場合こそ、衆議院解散の時のはずである。内閣が天皇に対して衆議院の解散を助言すればよく、その結果、憲法第7条3号による衆議院の解散となる。

国民の投票結果を信じればよいのである。国民の意見が正当に反映されないとおそれるなら、それは感情・感覚で投票する人が当落を決定してしまうような小選挙区制になっていることはないのかと問わざるを得ない。

相手政党を陥れる戦略のみで、妥当性を欠く国会議員活動をすることとなっている現在の2大政党とその仕組みの元となっている小選挙区制は早急に廃止すべきと思っている。しかし、現在の2大政党の連中は、その上に乗って、この世の春を楽しんでおり、小選挙区制の廃止は容易ではない。この再、変な妥協はせずに衆議院解散をする方が、よいように思う。但し、国民に、相手の攻撃ではなく、自らの主張を伝えることである。嘘で飾ったマニフェストや公約よりよっぽど良い。

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2012年9月26日 (水)

大間原発の無期限凍結を函館市議会が全会一致で可決

大間原発の無期限凍結を函館市議会が全会一致で可決したとニュースがあった。

毎日地方版 9月26日 函館市議会:大間原発無期限凍結を求め決議 /青森

このニュースで思い出すのが、2011年5月7日の菅首相の浜岡原発運転停止要請である。東海地震の発生確率が高いので、停止を決定したとの説明であった。当時、反発を覚えて、これを書いた。東海地震については、相当以前からその可能性について指摘があったのであり、政府を始めあらゆる関係者がその対策について検討をしていた。浜岡原発についても中部電力のみならず関係者全員が東海地震を念頭に置いていたはずである。津波に対して不十分であったとするなら、津波の際のどの部分なのかを指摘すべきであった。あるいは新基準により運転停止とするなら、その基準を関係者の同意を得て、手続きに従って制定すべきである。

函館市議会の決議については、その気持ちは理解できる。大間原発は、函館ー大間間のフェリーの大間の港の南1km強の距離にある。(次の地図の中央あたりのL字に見える防波堤の陸地側で、国道338号が迂回している場所が原発建設地点である。)

設置許可済みで運転を開始していない、即ち核燃料が装荷されておらず放射性物質がない状態の建設中原発は、日本国内に3基ある。中国-島根3号機、電発-大間1号機と東電-東通1号機である。この3基の中で、全くの新規原発は大間のみで、島根原発は1,2号機が既に運転開始済み。東電-東通1号機は、その南約2kmに東北電力-東通1号機が運転開始済みである。(なお、現在東電-東通1号機は工事中断状態と理解する。)

もう一つ、大間原発はフルMOXという核分裂の約80%をプルトニウムに依存する原発である。即ち使用する核燃料が従来と異なる唯一のフルMOX原発である。フルMOXだから危険であるとするのは、正しくないはず。通常のウラン燃料も核分裂の結果、プルトニウムが生成され、そのプルトニウムも核分裂を起こす。また、運転の当初からフルMOXを使用するのではなく、徐々に割合を増加していく。しかし、フルMOXを採用した理由と、フルMOXとウラン燃料との違いや通常の軽水炉でフルMOXを採用した場合の安全性等について函館市の人々を含め国民に説明をすべきである。ウランとプルトニウムは、元素が異なるので、当然物理的・化学的性質も異なるはずであるが、何がどう違うか、その違いから来る安全性はと質問をしたい。

エネルギー問題は重要である。従い、国民全員が考えるべきである。国の選択とは、政治家の選択ではない。そんな重要なことまで決定する権限を選挙で議員達に与えたと多くの人は思っていないはず。馬鹿な2大政党制だから、政権交代だけを理由に選択をした人もいるはず。国民が議論でき、その意見を取り入れる機会を、政府は作るべきである。時間をかけても、全く問題はなく、多くの論評を読むことができるようになって国民は判断が可能になる。

原子力のみとは限らないが、地域の意見の反映は重要である。放射性廃棄物の処理について現状は全く見通しが立っていない。マスコミは馬鹿だから、政治家の言葉をそのまま伝えて「国の責任」という言葉を使う。「国の責任」=「国民の責任」である。政治家は解決しなくても困らないので、ごまかしを述べて、体裁よく繕い、次の選挙で当選することを目指す。そう考えると、函館市議会の要請に対して政府高官はどのように対応するか興味を抱く。

なお、地域とは地理的な地域に限らない。大間原発を中止した場合は、電源開発の関係者(原発関連の補助金や税収がなくなる大間町も含め)も損失を被るが、全額電源開発の負担とすべきなのか、何が合理的かを考えることも必要である。福島事故では、全て東京電力の責任と押しつけたあのやり方は、政府高官が自らの責務から逃れるための巧妙な方法であったと思っている。原発は全て1社か2社に統合して、その会社を上場会社にすべきであると私は考えている。政府高官の思い通りになる国営会社になんか絶対にすべきではない。

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2012年9月25日 (火)

尖閣・竹島・北方諸島領土問題

領土問題が話題になっているが、政治家が自分の選挙得票を目論んで、過激発言をしていると思えて仕方がない。自民党総裁選の立会演説会が北海道函館市と札幌市であり、候補者の発言は、報道からすると、威勢がよいだけの過激発言と思える。

日経 9月24日 民主の対ロ外交批判 北海道で自民4候補

米国との集団的自衛権行使や海上自衛隊の展開で北方領土が解決するとは、思わないのである。

私は、2010年9月にここで尖閣諸島問題を書いた。中国の領土法とは、1992年になって初めて制定されたのか、よくは知らないが、いずれにせよ、それ以前からもDiaoyu Island(尖閣諸島)、Penghu Islands(澎湖諸島)、Dongsha Islands(東沙群島)、Xisha Islands(東沙群島)、Nansha (Spratly) Islands(南沙群島)について中国領土だとする何らかの解釈が中国にはあったと思う。

日本の中でも境界問題があるようで、この三郷市と東京都葛飾区の境界問題(平成9年6月23日の埼玉県議会における福岡友次郎議員の質問に対して、武田総合政策部長の答弁)では「いまだ解決を見られないが、円満な解決に向け話合いを続けている」とあり、多分今も解決していないと理解する。

三郷市と葛飾区の間なんて、どちらの住民でもないので、たいしたことではないと思ってしまうのだが。いずれにせよ、円満な解決に向け話合いを続けているなら、それで十分と思う。

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2012年9月18日 (火)

堀辰雄が書いたサナトリウムの解体始まる

JR中央本線の富士見駅から徒歩10分、富士見町役場近くの役場上と言う交差点のすぐそばにあるサナトリウムであった建物の取り壊しが始まったというニュースがありました。

中日新聞 9月18日 富士病棟の解体本格化 小説「風立ちぬ」の舞台

堀辰雄の小説「風立ちぬ」は、高校生時代に読んだ記憶があります。透明感のある美しい小説で、とても印象が深かった。当時、新潮文庫で読んだ気がしますが、ここでは青空文庫のリンクを紹介します。

ここに青空文庫のホームページがあり、対価は求められず、著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを読んだり、ダウンロードしたりすることができ、テキストファイルを本のように読むソフトの紹介もあります。なお、堀辰雄の「風立ちぬ」はここです。

1936(昭和11)年に発表された小説です。当時、結核にはまだ有効な薬はなく、自分の体自身が持つ免疫力で回復しなければならなかった。大変ですよね。レントゲンはあるわけで、肺結核と診断がつく。治療のため、空気の良い場所で、自然の中で過ごす。医師や看護師もそばに滞在し、常時看護やモニタリングをしてもらう。そんな施設がサナトリウムでした。

現代において、ガンと宣告されるより、もっと悲壮感があったと思います。Wikiにもありますが、堀辰雄自身も結核でした。「風立ちぬ」は、結核でこのサナトリウムに1935年に入院し、その年の12月に死亡した婚約者矢野綾子に付き添いをした体験から書いた小説です。自分の愛する人のことを小説として書くとしたら、その人と自分が本当に生きた日々のことを書くと思います。まして、自分が文学で生きていこうとしているなら。例え短くても、そこには何にも負けない強い愛があったことを。

柳条湖事件から81年ですが、柳条湖事件は1931年(昭和6年)9月の事件でした。柳条湖事件の後は、満州国建国宣言が1932年3月で、帝国議会が満州国承認を決議したのが1932年6月。それに先立つ1931年11月に国際連盟は調査団(リットン調査団)の派遣を決定。リットン報告書が1932年10月に提出された。日本軍が熱河を侵攻したのが1933年2月であり、1933年3月に国際連盟を脱退した。1936年に2.26事件があり、1937年には、7月の盧溝橋事件、8月から11月の上海戦、12月の南京占領へと続き、日中戦争に進んでいく時代でした。そのような時代に書かれた「風立ちぬ」が語っていることは、戦争や政府・国家間の争いは、人間の尺度で考えれば小さなものだと言うことでしょうか。

1926年に建設され、「風立ちぬ」の当時で10年、今は86年を経過するサナトリウムが取り壊されることについては、悲しくなります。しかし、建物の老朽化が著しく地震倒壊のおそれがあり、そして来年以降に資料館ができるとのこと。保有・運営しているのは長野県厚生農業協同組合連合会という民間であり、できることとしては、これが精一杯のことと思います。むしろ、2009年4月 6日のブログで書いたように、大阪の産業技術史博物館は、収蔵品があるにも拘わらず、実現困難として資料の廃棄処分を決定しています。未来への投資をしなくなり、破滅に向かっているようなことはないのでしょうか。

最後ですが、「風立ちぬ」について調べていると、堀辰雄が書いている「風立ちぬ、いざ生きめやも。」ですが、小説の冒頭のValeryの詩”Le vent se lève, il faut tenter de vivre.”の”he must try to live"の訳文が「生きてはならない」との意味になっているとの説があることを知りました。即ち「めやも」とは「大君の勅をかしこみちちわくに心はわくとも人に言はめやも(天皇の勅書を理解し、他人に秘密は漏らさない)」のように否定の意味であるとすることからの批判です。しかし、「いざ」が「生きめやも」の前にあり、そしてフランス語の原文がある以上は、”he must try to live"の意味に間違いがないと考えます。堀辰雄も「めやも」の古代用法は知っていたはず。しかし、結核でサナトリウムに入院し、治療する、そして愛を貫く時、単純な言葉で表現したくなかったのではと思います。言葉は常に変化し、生きているのであり、文学とはそんな世界であってよいと思います。

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2012年9月17日 (月)

原子力に関する閣議決定と日本学術会議の高レベル放射性廃棄物処分についての意見

直前のブログ大臣の人間性で9月14日の閣議決定「革新的エネルギー・環境戦略」に触れた。日本学術会議は、原子力委員会からの「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて」と題する意見・提言依頼に対して、9月11日付でこの回答を提出した。

興味ある内容が含まれています。

1) 核燃料サイクルの破綻

閣議決定に明確に書かれていないが、どう考えても核燃料サイクルの破綻である。原発に依存しない社会の実現を目指すと言う意味は、使用済み燃料(プルトニウム)を再処理する必要性がないことである。プルトニウムを再度核燃料として使用することを目的として、再処理するのであり、プルトニウムを再利用しないなら、核兵器として利用されないように処理・管理することに方向を転換せねばならない。この大前提は重要である。

2) もんじゅの廃炉

閣議決定には「年限を区切っ研究計画を策定、実行とし、成果を確認の上、研究終了する。」とある。これまでの試験結果を分析し、とりまとめ将来のために残すことが主体と考える。まさか、プルトニウムを連続核分裂となる臨界状態にして運転をすることはないと考える。原発に依存しない社会とは、プルトニウムとは無縁の社会を目指すことである。燃焼した以上の燃料が生産される夢の原子炉は、利用目的のない核燃料を製造するのであり、もんじゅは廃炉にする以外にないはず。

核の利用(発電目的であれ核兵器であれ)を考えるからプルトニウムの利用を実現しようとするのであり、「もんじゅ」は無用の長物である。

3) 日本学術会議の意見

高レベル放射性廃棄物の処分に関する社会的合意形成が困難である現状を踏まえて、原子力委員会が日本学術会議に意見を求めたのである。困難である理由として、日本学術会議は次の3点をあげている。その通りであると思う。

(1) エネルギー政策・原子力政策における社会的合意欠如のまま、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定への合意形成を求めるという転倒した手続き

(2) 原子力発電による受益追求に随伴する、超長期間にわたる放射性の汚染発生可能性への対処の必要性

(3) 受益圏と受苦圏の分離

現在も3点が続いていると思う。(1)に関しては、高レベル放射性廃棄物の処分の議論もなく、「討論型世論調査」で2030年時点の原子力発電依存度で「ゼロ」が46.7%とは意味があるのかと思う。(2)については、今でも国民に十分に説明しておらず、(3)は政治家が逃げている(あるいは甘い汁を吸っているのか?)。

逃げずに正面から取り組めば、どう考えても、日本学術会議の回答のように、高レベル放射性廃棄物の暫定保管と総量管理の2つを柱とした時間をかけた合意形成を進める以外に手はないはずである。2030年時点の原子力発電依存度をどうするかではなく、高レベル放射性廃棄物をどうするかの議論を進めるべきである。

高レベル放射性廃棄物とは使用済み核燃料を含めての話であり、暫定保管とは最終処分の前の安全な長期管理であり、総量管理とは暫定保管可能な高レベル放射性廃棄物の総量を研究・検討し、廃棄物量は安全な管理可能範囲内に収まるように管理することである。

ビジネスでも何でも同じと考えるが、リスクを管理できることは、極めて重要である。リスクゼロは、どのような場合も存在しない。しかし、リスク事態が発生しても、それに対応・対抗する手段が存在するなら、管理可能である。そして、常に評価を継続せねばならない。抜けがあるかもしれないのである。万全と思うこともリスクである。

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2012年9月16日 (日)

大臣の人間性

枝野幸男大臣の人間性は、おかしいと思います。ただちに影響はないと述べるなど、これまでも変な発言や管理能力の欠陥があり、悪い政治家であると思っていた。

日経 9月15日 原発ゼロにほころび 経産相、大間建設継続を容認

前日9月14日の閣議決定「革新的エネルギー・環境戦略」の内容と異なっていると考える。この冒頭の「はじめに」の部分で、抜本的に考え直すことを提唱している。時間をかけてでも、エネルギー政策を原点に戻ってでも、国民の間で議論をして再度作り直そうという考えと理解する。

国民の間の議論もなく、大臣が”Go”や”Stop”を決めるのは、間違いである。現在運転中の原発は、全50基46,035MWのうち大飯3・4号機の2,360MWのみである。95%が停止していている。原発について国民的な議論をすべく政府は「討論型世論調査」をし、2030年時点の原子力発電依存度で「ゼロ」を支持する割合が46.7%と最も多かったとのことである。2030年でゼロにできるか、そう簡単ではないと思うのが、少なくとも福島第一原発の4基を除いて50基ある原発に新規原発を追加することには、大いなる矛盾を感じる。(福島第一原発の4基を含む54基の日本の原発はこのブログの一番下の表に古い順から表にしてあります。)

島根3号機(1,373MW)と大間1号機(1,383MW)は完成間近と言っても、まだ核燃料は装荷されていない。核燃料を装荷し、運転を始めたなら、二度と戻れない状態になる。核燃料廃棄物と高濃度の物を含め放射性廃棄物が作られてしまうからである。但し、島根3号機と大間1号機の他の原発より優れている点があるとするなら、新しいABWRであり、安全性が高いと考えられることである。しかし、大間1号原発はプルトニウムを含むMOX燃料を全量使用予定であり、安全性については、情報を全て開示の上、専門家による公開討論会や評価報告書が公表されて国民が判断するプロセスを踏むべきであり、枝野幸男が判断することではない。

記事には「経産相は大間原発を稼働させるか否かの判断を原子力規制委員会の判断に委ねる意向だ。」との文章がある。しかし、これはおかしい。原子力規制委員会は、規則を作るのであり、規則に従っていれば、従っていると判定する委員会である。原発を全部で何基にするかについては、判断をしてはいけないのである。場合によっては、危険であるとして全てを不合格にすることもあるし、その逆もある。政策による判断をしてはならないのである。

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2012年9月13日 (木)

こんなことってあるんですね

新生児の取り違え判明して訴訟

47共同 2012年9月11日 産院の新生児取り違えで提訴 「60年、人生狂わされた」

47共同ニュースを検索すると、少し前にも他の取り違え事件の報道がある。

47共同 2006年10月20日 取り違え訴訟、都上告せず 原告男性「納得できない」

同じ事件の判決に関する報道と思うが。

47共同 2006年10月12日 48歳男性ら逆転勝訴 新生児取り違え訴訟

悲劇です。しかし、多く発生していたことが過去にあると書いておられる方がいる。

2010年2月19日 スーさんBlog 赤ちゃん取り違え事件

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2012年9月10日 (月)

渇水時の水の融通

渇水時の水の融通については、取り決めがあるのだろうかと思ったのです。

日経 9月7日 2001年以来の取水制限へ 利根川流域1都5県で

利根川水系の8ダムの本年の利水貯水量は次のようになっている。(5月にダム貯水量が一時減少しているのは、DOWAホールディングによるホルムアルデヒド汚染の濃度低下対策のための放流による。)

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過去6年の9月9日における利水貯水量と比較すると、次のようになり、確かに今年の貯水量は少ない。

Tone8dam20129a
その結果が、11日からの取水制限となるが、多摩川を調べてみるとずいぶん異なる。

多摩川水系のダムは、小河内ダムであるが、東京都水道局のWebここを見ると、9月7日現在で小河内ダムには152百万m3以上の貯水量がある。すなわち利根川水系8ダムの合計量より多くの水が貯えられている。だから取水制限不要であるとまで言わないが、一律10%の取水制限ではなく、都道府県・市町村により濃淡があってよいと考えるが、どうだろうか?渇水時の水の融通に関しては、取り決めがあるのだろうかと思った。

ところで、もう一つ。鬼怒川上流の湯西川ダムが完成し、2011年11月30日に試験湛水を開始した。現在42百万m3以上の貯水量がある。ところが、9月11日9時からの取水制限を発表したこの記者発表資料の鬼怒川ダム群貯水状況には湯西川ダムが含まれていない。

個別に様々なことが言えるであろうが、互いに協力し合っていくことが重要と考える。

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2012年9月 8日 (土)

第180回国会の会期終了

第180回国会が9月8日で終了することになり、事実上9月7日が最終日となった。

日経 9月7日 赤字国債法案が廃案に 通常国会が事実上閉幕

第180回国会が始まったのは1月24日であり、229日間であった。長かったにも拘わらず、与野党は勢力争いに終始していたと、低い評価を与えざるを得ない国会と議員達であったと思う。

首相自身は、9月7日の記者会見で時事ドットコム 9月7日 野田首相が出馬表明=「課題克服へ職責担う」-原口氏も意欲・民主代表選のように、消費増税を含む社会保障と税の一体改革関連法の成立を通常国会での最大の成果と強調したとのこと。確かに、消費増税が成立したことからある程度は危機を脱することができると期待可能であり、大きな成果であると思う。しかし、8月25日のこれでも買いたいように、本来は低所得者対策等を盛り込んだ法案を通すべきであった。それからすれば、3党合意の際に、国民番号法は死守すべきであった。自公も消費税増税法案に反対できなかったのであるから、頑張れたと思う。

なぜ、3党合意で消費税増税法案の重要部分の変更に応じたのかは、やはり2009年8月の衆議院選挙時の民主党マニフェストに書いたあったことが、政府支出の削減や高速無料化、ガソリン税暫定税率廃止等であり、普通に考えれば逆のこであったことと考える。民主党政権となった2009年9月から丁度3年を経過した。当時、選挙で勝つためだけの嘘を並べた選挙公約であることを見抜いていた有権者も存在し、とりあえずやらせてみるかと民主党に投票した人も多かったのではと思う。

民主党政権の特徴は、説明をしないで標語だけ。まるで電通製作の広告みたいである。欺すが勝ちに思える。何故そのような事になったのかと言えば、小選挙区制の弊害が大きいと思う。小選挙区だから、真実や理論で選挙民の支持を受けるより、空虚であっても耳障りが良い方が当選するには良い。民主党が180国会に提出した衆議院議員選挙区の0増5減ならびに比例区の40人削減の合計45人削減は、国民無視も甚だしいと思う。選挙制度を権力を握った者が決めれば、自分の権力確保を最大限に狙う。選挙制度改革案は、議員ではない別の人達が、案を作成すべきである。議員定数削減を隠れ蓑にして牙を隠した案には断固として反対する。

赤字国債発行法案は、いずれ通るはず。政府が機能しないのだから、自公も賛成せざるを得ない。民主党がかつて実施したガソリン税暫定税率の約1月間の廃止や政権就任直後の補正予算の支出凍結を思い出す。2代政党政治は、日本には向かない。対決よりも対話による国民の幸福追求を目指すべきである。小選挙区制では、少しの投票結果の差が政党の大きな勝敗差となるので、議員は国民のためを考えて活動するのではなく、次の選挙でも大政党の公認を得ることと選挙受けが優先してしまう。

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2012年9月 1日 (土)

日本航空株式再上場

日本航空の株式が9月19日から上場される予定である。9月10日に売出価格が決定され、9月11日から14日までを申込期間とし、9月19日に株式受渡となり、同日から売買可能。(実際には、株券は発行されず、証券振替機構の制度による。)国内で売出となる株式の引受人は全部で26の証券会社であり、全員参加と思われる。

売出株の合計は175,000,000株であり、国内売出が131,250,000株と海外売出が43,750,000株である。この175,000,000株は、株式会社企業再生支援機構による2010年12月1日の総額3500億円の出資であった。売出価格の決定は、9月10日であるが、仮価格3500円から3790円とのこと。日本航空の2012年8月3日の有価証券届出書(これ)は、1株3790円を想定売出価格としており、この価格を使うと、総額6632億円となり、再生支援機構が3132億円の有価証券売却益を得ることとなる。再生支援機構は、政府と預金保険機構がそれぞれ100億円を出資した株式会社であり、企業再生に成功し、その結果であり、喜ばしいことである。

しかし、会社更生法による更生手続きにおいて更生計画認可決定日(2010年11月30日)における株主は、その権利を全て失い、財産価値ゼロとなったのであり、債権者に対しても巨額の債権放棄がなされたのである。以下に私の試算を述べるが、債権(株主の権利を債権と呼ぶのは、変であるが、同等だとして)合計1兆円以上を踏み倒して、実現したことである。

単純に喜べることではないと思う。むしろ、政治色に彩られた政治劇に近かったように思う。権力を持った人間がすることは、恐ろしい。日本航空という企業をもっと合理的な形で健全化することは、できなかったのだろうかと思う。

以下に私の分析・試算を記載する。なお、当事者である植木社長の8月3日付「上場ご承認・株式売出決議について」という報告がここにあるが、むなしく思う。(その理由は、以下に記載しているので、お読みください。)

1) 会社更生法の手続き

日本航空は、2009年11月13日の平成22年3月期の第2四半期連結業績発表によれば、2009年10月29日に企業再生支援機構と事前相談を開始し、11月13日に事業再生ADR手続を申請した。企業再生支援機構は、2010年1月19日に会社更生手続きの下で支援することを決定し(参考)、日本航空は同日1月19日に会社更生法開始の申し立てを行い、同日開始決定となった。(日本航空の発表

2) 営業収益と事業原価の推移

植木社長の8月3日の報告に「不採算路線からの撤退により事業規模を60%に縮小、40%の人員削減と20%の人件費単価の削減・・・・・」とあり、この部分を検証するために、グラフを作成した。
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2008年頃は毎月1800億円程度の収益があったのが、最近は1000億円である。45%減である。これは、自然と輸送客・貨物が減少し、収益も同様に減少したのであり、植木社長の8月3日の報告のように、不採算路線からの撤退で良くなったとは思えないのである。もし、45%が不採算路線であったなら、政治色豊かな経営に徹していたことになる。上のグラフは自然に思えるのであり、むしろ今なお不採算路線からの撤退というようなことを述べることが間違っていると思う。

確かに、地方航空路線に不採算路線があったはず。しかし、それを会社更生法を理由にしなければ撤退できなかったとするならば、交渉力の弱い、政治に翻弄される会社であったのであり、企業の社会的責任や役割を正しく認識していなかったこととなる。(社長発言からすれば、多分今でも)

植木社長の8月3日の報告の人員削減や人件費単価の削減にも抵抗を覚える。何故なら、上のグラフで、営業総利益率はやはり25%程度であり、以前と比べて余り大きな改善はないと思う。固定費が大部分を占める航空輸送業において、営業総利益率が変動するのは自然の姿と思うからである。

なお、複雑怪奇に思えるが、会社更生法手続き前に上場していたのは、株式会社日本航空であり、今回上場予定をしているのは日本航空株式会社である。どう違うかというと、以前の上場会社は、JALとJASが企業統合する際に持ち株会社として設立された会社であり、会社更生法開始の申し立て時は持ち株会社の子会社であった株式会社日本航空インターナショナルが持ち株会社やジャルウェイズと2010年12月に合併し、2011年4月に現在の社名に商号変更した会社である。なお、JASと日本航空インターナショナルは2006年に合併済みである。

これだけでも、複雑であるが、会社更生法手続きが関係しているので、更に複雑な面がある。まずは、2010年3月期は、2010年1月に会社更生法開始決定となったことから、期末連結財務諸表は作成されておらず、2010年11月30日に更生計画認可決定となりこの日で会計年度が区切られ、2010年12月1日以降の分しか連結財務諸表は発表されていない。そこで、上のグラフは、四半期決算発表も使用しているが、2010年1月20日から11月30日については、日本航空インターナショナル単独の営業収益・費用で表示した。結果、1年でない決算期間が存在することから、その期間内の月平均を計算して上のグラフは月平均の数字である。

3) 株主の損失

そもそも株式投資の結果である株主権とは債権に劣後するのであり、価値を失うことはあり得る。従い、この議論は、意味がないとも言えるが、あえて計算するとなると、株主が会社に払い込んだ金額合計が一つの金額である。それは、4059億円であった。

一方、2009年11月の時点の株価では、67円程度と了解する。これで、計算すると2242億円(A株式も同一価格とした)となる。2009年3月頃は、200円ほどであったので約6693億円となる。

しかし、5)で述べているが、100%減資の資本金と資本剰余金減少差益を利益計上し、それを今後の配当原資としているのであり、割り切れない気持ちである。

4) 債権者の負担

2010年11月30日の更生計画認可決定により87.5%の免除が認められ、12.5%の債務額になった。債務免除は社債には適用されないと、この日本航空の記者会見では述べられている。しかし、競輪とオート レースの公益資金に関わる車両競技公益資金記念財団の平成22年度決算報告書には、同財団が日本航空社債を保有しており社債の弁済率が12.5%になったと記載されている。(5ページ)

日本航空は、5837億円(個別決算では5896億円)の債務免除益を2010年12月1日から翌年3月の会計年度で計上している。ちなみに、2009年12月末の社債未償還残高と長期借入金残高は672億円と7779億円の合計8451億円であった。

企業債務としては、従業員及び退職者の企業年金がある。2009年3月末では、退職給付債務8010億円と年金資産4084億円があった。これが、2010年3月末には退職給付債務4065億円と年金資産2374億円に減少となっている。植木社長の8月3日の報告にある「企業年金最大53%削減」と述べた部分である。厚生年金と社員が自らの給料やボーナスを拠出した部分は、これには含まれておらず、会社が負担する企業年金部分の話である。

5) 赤字と黒字

会社更生法手続き前に上場していたのは、持ち株会社であり、今回株式を売り出すのは持ち株会社の子会社である。2010年12月に子会社を存続会社として合併しているので名称のみとも言える。本当は、連結財務諸表で評価すれば良いのであるが、2009年4月1日から2000年11月30日までの期間に関する連結財務諸表は、発表されていない。そこで、連結株主資本変動計算書の株主資本の部分について次の表を作成した。

Jal20128b
2009年4月1日から更生計画認可決定日の2010年11月30日までの20月の期間については連結財務諸表はないが、前後の残高から計算をした差額である変動額は、連結対象会社が同一であるとすれば、この期間の変動額と一致するはずである。

なお、もう一つ参考として、旅客輸送実績を上の会計期間毎に作成した。1年でない期間があり、合計を月数で除した毎月平均輸送実績とした。

Jal20128c
国際線の旅客輸送は、実は2008年3月頃の半分になっているのである。表の株主資本の推移で、利益剰余金の当期変動額が当期利益に一致すると基本的に考えてよい。2009年3月期の632億円のマイナス変動は、この期間の損失とほぼ一致する。上の2)のグラフで営業収益から事業費を差し引くた営業総利益が2008年3月期では400億円近くあったのが、200億円程度になっているのが分かる。2)のグラフは月平均なので、12倍すると年間ベースとなる。実際の営業総利益減少額は1901億円であり、2009年3月期の当期利益は632億円の純損失となった。

次に、2009年4月から2010年11月の期間であるが、この期間に1兆1600億円もの損失を出しており、営業収益減少の影響のみであれば、1000億円・2000億円の損失であったかも知れないが、はるかに大きな金額の損失である。これは、2010年1月19日に会社更生法の開始決定がなされたことに関係する。日本航空は会社更生法83条の時価による財産の評定を実施した。おそらく5000億円・6000億円程度の財産評定損になっていると思う。それ以外には、それまで計上していた退職給付債務に関わる未認識数理計算上の差異等を一度に認識し、引当金を追加計上して費用処理してしまった。同じ期間に、退職年金を引き下げ利益計上したが、それでも費用処理額だけで3000億円を上回る。なお、1兆1600億円損失の全てには迫れず、甚だしい巨額の(帳面上の)赤字を計上したのである。ちなみに、日本航空インターナショナルの損失は、もっとすごく、この期間に1兆8271億円の純損失を計上した。持ち株会社の借入金に連帯保証をしていたりして複雑であり、連結消去されるべき部分があり、分析・判読が容易ではない。

さらに次の2010年12月から2011年3月までの4月間の期間であるが、1兆183億円の当期利益を計上している。この利益の中には、債務免除益5837億円があり、そして期首資本金と資本剰余金を取り崩し利益剰余金に振り替えた3973億円がある。これで合計9810億円である。

6) 法人税は当分無税?

法人税法33条は、資産の評価損の損金不算入等を定めている。しかし、第4項で再生計画認可の決定があつた場合の資産の価額の評定については損金の額に算入するとしている。 そして、債務免除益について法人税法59条では、会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入により、債務免除金額が損金に算入され、債務免除益と相殺される。

これが、この朝日の8月9日記事「日航、税金免除は3110億円 国交省が試算」につながるのである。

2012年3月末の連結財務諸表では、税効果関係の注記として繰越欠損金を原因とする繰延税金資産として3922億円が表示されている。繰延税金資産の小計は5297億円となるが、評価性引当金として4905億円と記載し、繰延税金資産合計393億円と注記し、さらに繰延税金負債が414億円あるとして、純額では繰延税金負債が21億円になるとしている。連結財務諸表は、あずさ監査法人が監査をしており、正しいとすべきである。しかし、この評価性引当金とは何であろうか?貸借対照表に表示されていない。この引当金を控除した純額で繰延税金資産・負債が計上されている。私は、更生会社であり、確実に課税所得を将来にわたり計上し、将来の税の支払いを減額するかどうか不明であるとして、繰延税金資産の計上を押さえるための手段であると思える。もし、繰越欠損金を原因とする繰延税金資産が計上できたなら、日本航空の税引き後の純利益はそれだけで3922億円増加し、これを原資とする株主配当も可能となる。

いやはや、恐ろしいことである。投資家が会社更生法手続き前に払い込んでいた4059億円を配当可能利益に振替をし、5837億円の債務免除益を計上し、退職給付債務は減額し、その上税金まで当面は払わない。法の抜け穴的な会社再建をしていると思える。

私と、同じような考え方をされる方もおられるようです。

時事ドットコム 8月31日 競争にゆがみ=日航再建で-公取委員長

ところで、法人税法59条の債務免除益と同額の損金が税務上は認められ、その後の事業年度においては法人税法57条の「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し」により、9年間持ち越しが可能なのであるが、57条は昨年12月の改正で80%制限となった。会社更生法による場合80%制限があるのか、また通常の青色繰越欠損金との関係はどうなるか、57条第5項や法人税法施行令112条第9項が関係するのであるが、複雑で読み切れていない。

7) 会社更生法や企業再生支援機構の介入は正しかったのか?

集客力が落ち、営業収入はジリ貧であったのは間違いないが、日本航空は、会社更生法開始の申し立てをするほど、業績が悪かったのかと思う。日本航空と全日空の比較を書いたが、それほど悪いわけではなかった。日本航空への政府介入に反対するなんてことを書いたこともあった。日本航空株式の株式存続を望むでは、100%減資の反対論を書いた。そして、解雇についての問題点というか、あまりにも無責任に思えて、日本航空整理解雇から考えるを書いた。

会社更生法や企業再生新機構の介入による再建には無理筋があったと思える。ゾンビ体質を改善すべきが、ゾンビ体質を強化しているように思える。本当は、市場競争の中で、魅力ある企業に変身すべきが、変な体質を温存した。植木社長の8月3日付報告にも「3500億円を国庫にお返しできる」と述べている。株式会社企業再生支援機構は50%が政府出資であり、残る50%も民間銀行資金の出資ではあるが公的性格が強い。いずれにせよ、国庫へ返せるのではないし、好業績は多くの犠牲の上に築かれたのである。税でこれから巨額の恩恵を受けるのであるし、この挨拶を読むと、こんな人が経営者であってよいのかと思ってしまう。変な政治介入を拒否して、何故事業再生ADRで押し通さなかったのか、結局それが日本航空の体質であると言えばそれまでであるが。

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