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2012年10月29日 (月)

わからない会社ソフトバンク

ソフトバンクとは、私には、理解が難しい会社であります。

読売 10月28日 ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収はユーザーの利益になるか

ボーダフォンから日本の携帯事業を買収した時は、その金額に驚きであったが、日本国内の事業のことであった。ところが、スプリント・ネクステルは米国での事業である。

万一米国の事業でうまく行かなければ、日本での利益をつぎ込むことになる。それは、それで良いではないかと言えるのだが、どうしても気になるのが、イー・アクセスの買収である。形は、株式交換であるが、株式交換の結果としてソフトバンクの100%子会社となるのであり、買収と同じである。違うのは、現金を払うのではなく、株券を印刷して渡す(実際には電子取引)のである。ソフトバンクの10月1日のプレスリリースはここにある。

実は、イー・アクセスとは、この総務省発表2012年6月27日の通り700MHz帯を割り当てられた3社のうちの1社であり、他のNTTドコモとauと同じように10MHzの幅の割り当てを受けた。問題となるのは、ソフトバンクとはこのソフトバンク発表2012年3月1日の通り、900MHzの割り当てをその前に受けていたからである。ソフトバンクは、この日経トレンディネット 2012年7月4日のように、既に900MHzの割り当てを受けているとして、700MHzは割り当て申請をしなかったのである。それが、イー・アクセスの買収結果、700MHz帯の3分の1と900MHz帯の全てを入手したのである。日本での寡占を実現したことから、スプリント・ネクステルの行方が気になる。

もともと世界一高い日本の携帯料金であり、スマホになってますます高くなった。ユーザーは高い料金に苦しみ、通信事業者のみが利益を享受しているように感じる。

次の記事を紹介する。

現代ビジネス 10月21日 鬼木阪大名誉教授が警告!「総務大臣は保有免許の『承継』は拒否せよ!政府はソフトバンクによるイー・アクセス買収を阻止すべきだ」

700MHz帯とは、デジタル化する前のアナログTVのUHF放送で使っていた電波帯の高い方の部分である。電波は、国民のものである。700MHz帯の割り当てを取り消して、オークションで決定すべきである。オークション収入は、国民の収入となる。この900MHz帯の審査概要この700MHz帯の審査結果を読んでも、鉛筆をなめれば、どうにでも書けるように思ってしまう。このようなやり方で、入札参加の可否を決定することはあっても、最終割り当てには向かない。国民の財産を守るには、入札で金額を基準とするのが合理的である。

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2012年10月28日 (日)

荒瀬ダムの撤去については正当な評価が必要

朝日新聞が次のような社説を載せていた。

老朽化施設―荒瀬ダムの撤去に学ぶ

朝日の社説の主旨は老朽化したダムは撤去すべきであるとして、次の様な論点が記載されていると思う。

  • 「廃ダム」の経験は、これから不要になる全国の老朽ダムでも役立つ。
  • 老朽化したダムは、底の砂をさらいながら維持する、水門を開いて砂を排出する、ダム自体を撤去する――のいずれかを迫られる。だが、砂はどんどんたまり、費用は膨らむ。
  • 撤去は有力な選択肢だ。

    私からすると、飛躍がありすぎて、重要な点を見過ごしていると思う。反論を書いてみる。

  • 1) メンテナンスの重要性

    土木構造物にもメンテナンスは必要である。朝日の社説が言う水質の悪化や、放水時の振動は不十分なメンテナンスに起因している可能性が高いと思う。ダムは、水を貯蔵する土木構造物であるが、水質悪化を起こしてまで貯水すべきかと言えばNOである。ゲートを適切に開放して、貯水中の水の品質を常に検査し、環境悪化が生じないようにメンテナンスをすべきである。放水時の振動は、ゲートの機器メンテナンス不十分から生じたに間違いないと思う。もし、そうでなければ設計上の欠陥である。

    東京オリンピックから60年近くが経過して首都高速の土木構造物他の老朽化が懸念されている。これもメンテナンスが密接に関係する。必要なメンテナンスを続けていくことの重要性である。これからの日本での公共工事とは、新しく土木構造物をつくることの比重よりメンテナンスの比重が重要になっていくはずである。正しい診断をし必要なメンテナンスを実施することの重要性である。八ッ場ダムの建設より既存ダムの確保であり、予算もそのように配分すべきと考える。

    荒瀬ダム発電所は、1954年に運転を開始したのであり、撤去まで58年存在した。水力発電所からすると、余りにも若くしてこの世を去ったことになる。次は、私が、この夏日光に行った際に撮影した写真であるが、東京電力日光第二発電所(1,400kW)である。運転を開始したのは、1893年(明治26年)であり120年近く働いている。当時のまま残っているのではないが、多くの人がメンテナンスをして守り続けてきた水力発電所であり、優れた土木構造物であると考える。(日光第二発電所の所在地は憾満ガ淵の入り口付近の左です。)

    201210nikkoudai2
    2) 電源開発と熊本県

    荒瀬ダムの建設当時は、メンテナンスや環境保護は声高く叫ばれていなかったと思う。一方で思うのは、荒瀬ダムから約7km上流にある電源開発所有の瀬戸石ダム・瀬戸石発電所のことである。瀬戸石ダム・瀬戸石発電所は1958年の運転開始なので荒瀬ダム・藤本発電所より4年後の完成である。

    比較すると次の通りであり、

    荒瀬ダム 瀬戸石ダム
    所有者 熊本県 電源開発
    堤高 25.0m 26.5m
    堤頂長 210.8m 139.4m
    総貯水量 10,137,000m3 9,930,000m3
    純貯水量 2,400,000m3 2,230,000m3
    発電最大流量 134m3/秒 134m3/秒
    発電落差 16.00m 17.15m
    最大出力 18,200kW 20,000kW

    荒瀬ダム・藤本発電所の年間発電量は平年において74,667MWhである。これに現行の中小水力電力買い取り価格1,000kW以上30,000kW未満の消費税不含での24円を掛けると年間17.9億円の収入となる。この24円が絶対に正しいとは言わないが、太陽光に適用される40円よりはるかに安い。それでも18億円の値打ちがあるとも言えるし、荒瀬ダム撤去の代償として同じようにCO2を発生しない太陽光発電で同量の電力を購入すれば年間30億円近い額となる。

    3) 地元の負担

    朝日の社説には、「ダムに必要な水利権延長の見通しが立たなくなり、10年に改めて撤去を表明するという曲折をたどった。」とある。いくら良い案件であれ代償もなく犠牲を強いてはならない。水利権とは、地元の合意があれば、取得に問題がないはずである。

    2010年2月に荒瀬ダム撤去は安易すぎないかを書いて、地元に住んでおられる早野さんからダムの完成後に増水時の浸水被害に翻弄された50年であり、熊本県から住民に虚偽の説明をしていた事が現在判明しているとのコメントを頂いた。その通りなのだろうと思う。

    早野さんのコメントに「父達は公平な補償を望んでいたが、一部の住民やこの地に居住していない自然保護団体などの撤去要望の声が大きくなり撤去に進んでしまった。」との言葉もあります。水力発電はCO2を出さないが、自然破壊を伴うことはあり得るし、一方、生じうる自然や環境に対する影響を低減を図ることも可能だし、影響を受ける人達に十分な補償を実施し、合意と納得を得て実施することも可能である。

    朝日新聞の社説は、ある一つの角度からのみ眺めていると思う。役に立たないダムや公共工事が存在するのは、その通りである。しかし、個別に多面的に評価して、結論を得るべきである。県の工事だから県議会の決定で進めれば良いのではない。県民と地元の人々の合意と納得が重要であり、早野さんの経験を私なりに生かすとすれば、不利益を受けた人は何時になっても補償を受ける権利を失わないとすることである。民法の時効の考えに反するなら、立法をすればよい。

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    2012年10月21日 (日)

    日本政府は核兵器についての方針を説明すべし

    次のニュースを読むと、日本政府は国民に対し、明確な説明をする必要があると思った。

    共同47 10月19日 日本、核非合法化の署名拒否/国連委の16カ国声明案/「核の傘」影響を懸念

    広島、長崎の人達や核兵器廃絶運動をしている人達からするとこのニュースはどうなのだろうかと思う。

    政府は従来現実に核兵器が存在する間は、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠」(防衛計画大綱)との立場を取っており、「非合法化」を明確に求めている 声明案 の内容と政策上相いれないと判断した。」と記事にあり、それで日本国民は納得するのだろうか?

    記事には、「米国の「核の傘」の下にいる北大西洋条約機構(NATO)加盟国のノルウェーとデンマークも含まれている。」とも書かれている。

    日本政府に、16カ国が今回提案しているのとは別の優れた対案があり、それを各国に働きかけているなら、納得が行くのである。しかし、共同の記事にその記載がなく、記事が正しいのであれば、現政権の政治家達は不要である。平和を目指し、核兵器のない世の中を目指す政治家を私は選びたい。

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    2012年10月20日 (土)

    福島原発の事故後に関する東電TV会議映像

    「停止中の原子力発電のコスト」を書いたことから、10月5日に東京電力がWebにアップした社内のTV会議の映像・音声を聞いてみた。

    この東京電力のWebかDownloadできる。一括ダウンロードファイルの場合で、圧縮されていて2.18GBなので相当の大容量である。

    本01-1という会議録も臨場感があり、おもしろかった。首相官邸は、イラ菅を初めとして、冷静さを失ったトンデモ人間の集まりか、トップのイラ菅に振り回されたきちがい集団の感じを受けた。

    一般電源のみならず直流まで喪失して、炉心の状態はおろか、原子炉建屋やタービン建屋の中の放射線レベルや温度さえも掴めない状態になった。だから、首相官邸は情報がないとイライラをつのらせるのだが、状態を理解した上で、対策を考えたのか、はなはだ疑問に思ってしまう。

    ところで、東京電力社内のTV会議システムは使用可能な状態になっているのに、社内連絡のみに使われたのではないかと思える。TV会議録には、しばしば、官邸が電話で福島の吉田所長と話をしたいとしているが、電話回線がまともに通じない。何故、東京電力社内TV会議の端末を首相官邸のどこかの会議室に増設しなかったのか?東京には、津波はなかった。簡単な方法としては、首相官邸から誰かが、東京電力本社に駐在すればよい。そんな会議室ぐらい東京電力で用意できるはず。そのためには、官邸側は、人選をして役割分担を決めねばならないが。

    組織を作り、メンバーが協力して、ある目的を遂行するというのは、重要である。当時の官邸メンバーは、そのようなことが全くできない人の集まりだったのだと思う。目立ちたちがり屋、パフォーマンス屋である。最も、会社のような組織で働いたことがなく、協調性より、個人プレーと、他人の蹴落とし能力が政党という組織で磨かれてきた人達だったのかも知れない。

    こんなことを書いていると嫌になってしまうので、このページにあった現場の声というのを紹介しておきます。東京電力は、「聞き取り等により得られた本人の記憶による生の声であり、事実でないことも含まれている可能性がありますが、事故対応の状況を理解する一助として、敢えて掲載したものです」と書いていますが、現場で懸命になって頑張られた方も多いと思います。

    福島原発事故は、決して原発特有の事故としてかたづけてはならないと思います。もし、他のプラントでも津波等で被害を受け、非常用発電機を含め交流・直流の全ての電源を失ったなら、やはり恐ろしい事故です。もし、それが化学プラントであり、毒性のある物質の発生があるとしたなら、どうでしょうか?

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    停止中の原子力発電のコスト

    2011年4月に有価証券報告書からみる原子力発電コストを書いたのですが、当時は東日本大震災が発生した2011年3月11日から日も浅く、2009年度の有価証券報告書が最新の事業年度の発電原価の明細を記載した報告書であった。2011年度(2011年4月から2012年3月までの1年間)の有価証券報告書は6月末に電力各社から発表されており、原子力発電の停止と発電原価の関係を有価証券報告書から読み取り、ブログで書きたいと思っていた。遅ればせながら、今回やっとブログにアップすることができるまで作業をすることができた。

    1) 過去4年間の原子力発電コストの比較

    次のグラフをご覧ください。2008年度から2011年度までの4年間であるが、原子力の発電量は過去3年間の40%以下になっているにも拘わらず、コストは90%を少し下回っただけです。原子力発電とは、運転していなくとも、コストが発生してしまうのである。

    Genecost201210a

    固定費が多いのであるが、内訳を見ると次の表の通りです。

    Genecost201210b
    決して、有価証券報告書のコスト・データが唯一の絶対的真実ではないが、他のコスト・データより信頼性は高いと考える。また、どのような考え方でどのような方法で算出されているかを調べて、チェックすることも可能である。

    会計上のコストとはある前提で成立するが、特に原子力発電はその性格が大きい。電気事業法、電気事業会計規則、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律等に基づきコスト算出をしているが、核燃料再処理も、高レベル放射性廃棄物も、実際にどのようになるかは不明である。高レベルの放射性物質を含んだ廃棄物をどう処理すればよいか決まらない以上は、廃棄物処理費用も廃炉費用も不明である。しかし、無視するより、前提をおいてでもコスト計算をした方が、良いと言える。

    2) 火力発電との比較

    火力発電と比較しつつ考えた方が、より分かりやすいはずである。そこで、発電量とコストのグラフに火力発電を追加した。原子力発電の場合は、原発を保有している一般電気事業者9社(沖縄電力を除く)と日本原子力発電の10社の合計を日本の原子力発電のコストとした。比較する火力発電コストは、同じようなベースとし、一般電気事業者9社と電源開発の火力発電とする。沖縄電力のコストは合算対象としなかった。

    Genecost201210c

    2010年度と2011年度を比較すると、原子力発電で180,000GWh程度発電が減少し、火力発電は120,000GWh程度増加した。コストでは、原子力は14%減少に対し、火力は48%増加である。この理由は、次の原子力発電のコスト内訳と火力発電のコスト内訳を見れば、一目瞭然で分かると思う。火力発電とは、燃料費がほとんどだから、コストは発電量に大きく比例することになる。

    Genecost201210d

    Genecost201210e_3

    どうですか、上の2つのグラフを比べるとよく分かると思うのです。なお、数字で記載した表も付けておきます。(火力は燃料費の内訳も記載しました。原子力は、上の表と同じです。)

    Genecost201210f
    Genecost201210g


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    2012年10月17日 (水)

    味の素 厚年基金代行返上で277億円の利益計上

    一つ前のブログ「AIJ浅川の驚くばかりの非人間性」で、厚生年金基金の悲劇を書いたのですが、こんどは喜ぶべきニュースでしょうか、味の素が厚生年金基金代行部分の返上で特別利益として277億円の代行返上益を計上するとの発表があった。

    日経 10月15日 味の素、厚年基金代行返上で特別利益277億円 13年3月期

    味の素 10月15日発表 厚生年金基金の代行部分(過去分)返上に関するお知らせ

    (どうも喜ぶべきとは、必ずしも言えないようで・・・)

    中小企業が集まって同業種で設立している総合型の厚生年金基金を初め、多くの厚生年金基金では代行返上をするに資金もなくて返上できず、給付債務に対して資産は増加せず、その結果として従業員に対する年金と退職一時金が将来支払い減額となるリスクが増加している。この厚生労働省の財政状況調査によると、平成11年度における全595基金の合計純資産額は17.6兆円であり、代行返上に必要な最低責任準備金14.8兆円を上回っているが、上乗せ部分を含めた給付に必要な最低積み立て基準額23.8兆円を下回っている。595基金のうち最低責任準備金以上の純資産を保有するのは382基金で、213基金は下回っている。上乗せ部分を含めた最低積み立て基準額では、これを上回っているのはたったの29基金である。なお、企業単独または企業グループで厚生年金基金を設立している大企業型は100基金であり、495基金は中小企業同業種が設立した総合型基金である。大企業はほとんどが代行返上をしたのである。

    ところで、味の素については、2012年3月期の有価証券報告書(78ページ)の退職給付に関する注記を読むと多くのことが記載されている。

    2012年3月末における年金資産は1844億円あり、退職給付引当金として630億円を計上している。年金資産は、法的に味の素から分離されており、貸借対照表の資産には含まれていないから2474億円の原資があることとなる。一方、代行返上に伴って政府に支払わねばならない最低責任準備金は3月末時点で228億円と記載されている。そして、3月末に代行返上した場合271億円の利益が見込めると書かれている。

    味の素の退職給付制度は、確定給付型として厚生年金基金制度と退職一時金制度そして一部の連結子会社で確定給付型の制度と説明がある。従い、2474億円の原資は、代行返上する厚生年金のみならずその上乗せとなる企業年金並びに退職一時金もカバーしている。

    しかし、228億円を払って、271億円の利益が計上できるというのは、不思議に思える。味の素の財務諸表は新日本監査法人の監査を受けており、退職給付に関する債権・債務も正しく計上されていると考える。何故なら債権・債務が正しいのであれば、(未認識数理計算上の差異と未認識過去勤務差異は別にして)キャッシュを動かしても損益には影響がないはずである。

    多額の利益となる理由は、代行返上する場合の最低責任準備金の金額計算方式が企業会計の退職給付債務の金額計算と異なるからであると思う。企業会計の退職給付債務は、現役及び退職従業員の貸借対照日までに発生している将来の一時金及び年金を割り引き計算で算出した金額(給付現価方式の計算)である。一方、最低責任準備金は平成11年9月末時点の給付現価方式の金額に代行部分の保険料と厚生年金本体の実績値の利率で計算した利息を加算し、代行部分の支払い年金額を控除した金額に0.875をかけ算した金額です。平成111年財政再計算の結果、本来であれば保険料を引上げるべきであったが、経済環境に鑑みて平成12年法改正で保険料の引上げが凍結された結果と理解する。このような結果、最低責任準備金が企業会計の退職給付債務より低い金額であり、代行返上に伴い利益が生まれると思う。なお、実際の計算までチェックしておらず、2013年3月期の有価証券報告書を読めば、更に判明すると思う。

    厚生年金基金が代行を返上せずに続けることは、厚生年金の報酬比例部分を、自らの責任で保険料徴収と年金給付を継続することであり、年金債務を給付現価方式であつかうことは正しいし、IFRSも米国基準も同じであり、国際的な基準である。もし、私の推測が正しく、277億円の利益(3月末時点では271億円の見込み)の発生原因が厚生年金の最低責任準備金の金額計算方式の違いから生じるのであれば、恐ろしいことと思う。何故なら、最低責任準備金の金額計算方式とは、政府が運用している厚生年金の報酬比例部分の資産額に相当するはずであり、国際基準で算定すれば、債務が倍増する危惧を持つ。そうであれば、日本は本当に政治が貧困な国であると思う。なお、それを政治家のみの責任として済ませて良いとは思わない。厚生労働省の審議会や有識者会議等のメンバーも同じであるし、公務員も同じ。そして最後は議員を選出している国民の責任であると思う。

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    2012年10月16日 (火)

    AIJ浅川の驚くばかりの非人間性

    AIJ投資顧問の年金資産詐取事件の浅川とは、人間性のかけらもないという表現があてはまりそうな男と思う。

    MSN産経 10月12日 浅川社長、30基金に払戻金返還求める 損失弁済理由に

    事件発覚前に解約した約30基金に対して、払戻金はうその運用実績に基づいており、水増し分も含まれていたから返還を求めるというのだから、血のかよった人間ならやらない発想と思う。浅川という金の亡者に加えて悪徳弁護士というべきか、やはりもう一人亡者(もしかしたら複数?)がいるからすごいのであるが、普通に考えれば民事については弁護士報酬の支払いはせずに、だました厚生年金基金への払戻金にあてると思うが。悪人は、恐ろしいことを考える。ケイマンにファンドを作ったりして、日本法の適用を逃れ、万一の場合でも債権者が破産をかけても意味がないように仕組んでいた。

    AIJ事件の悲しさは、被害者に中小企業企業が多いことである。それも中途半端な損失ではない金額である。中小企業にとっても従業員は重要である。厚生年金のみでは年金額が少ないだろうからと年金の増額を考え、自社で年金制度を作ろうとしてもスケールメリットから同業者が集まって年金基金をつくり、更なる運用スケールメリットの誘惑にかられ厚生年金保険法という法律で保険料と給付額が定められている厚生年金の代行運用にも手を染める。浅川にとっては、赤子の手をねじるようなものだった。

    AIJで四半期報告書等を作成していた九条清隆氏が書いた以下の「巨額年金消失。AIJ事件の深き闇」は、九条氏から見た浅川と事件が書かれている。

    208ページからの引用です。

     AIJ投資顧問にとって、浅川にとって、年金基金はまさに「カモ」そのものだった。年金の受給者たるサラリーマンの金をあずかっている、という意識はこの会社のどこにもなかった。
     浅川が見ていたのも、アイティーエムの営業マンが見ていたのも「厚生年金基金の理事たち」という「顧客」だった。彼らを納得させればそれでよかったのだ。
     もちろん私もそうだつた。四半期報告書を書きながら、浅川の営業に同行しながら、見ていたのは結局年金基金の理事たちの顔色で、うるさいコンサルタントだった。
     その年金基金の専従者である常務理事たちさえも「加入企業の従業員たちの顔」などまともに見てはいなかったのではないか。・・・・

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    2012年10月15日 (月)

    復興予算

    復興予算の不適切な執行が先日以来話題となっている。

    日経 10月14日 復興予算、被災地事業に限定 民主政調会長 「不適切」批判受け

    記事に”細野氏は同番組で「党がチェック機能を果たしきれなかった」と語った”とあるが、党の問題ではなく、政府の問題である。党にそんな能力があるはずがない。内閣が公務員の協力を得て正しく税金を使うようにするのであり、財務省官僚他をして不正な予算請求・執行が生じないように管理・業務執行をするのである。事業仕分けのような政治パフォーマンスが好きな人達には苦手なのだろうと思う。

    復興予算とは、国民の税金である。国債でまかなった分についても、所詮将来の税金から利払いと償還がなされるのである。復興に支出すると国民に約束した一方で、他の用途に支出することは国民に対する裏切りであると同時に、重大な内閣不信のみならず政府不信にまでつながる。恐ろしいことである。何故なら、正当に支出されることを信じるから、国民は税を納めるのである。信頼できる政府であるからこそ、税負担を当然の義務と考えることができる。

    消費税増税の賛成論を私はこのブログで書いた。それは、政府の財政危機を克服するためのやむを得ぬ手段と考えたと同時に、所得税・相続税の増税が実施され、国民番号法を成立させ、公平な税負担に近づけることが条件であるとした。にもかかわらず、税の不正使用をすることは許されないはずである。

    今回の不正流用の背景には、私は、民主党の体質が起因しているように思う。事業仕分けのように予算削減の政治パフォーマンスが優先し、各省庁に予算削減を要求するが、一方で政治パフォーマンスにつながる復興予算と化粧(Decoration)ができれば、予算は認められる。実質ではなく、政治パフォーマンスの世界となってしまったように思う。本来であれば、財務官僚他が不正に対して正しく行動するように内閣が指導すべきが、異なったことをしてしまう。企業だったら、倒産に結びつくような出来事と思う。

    ところで、復興予算の捻出のために、2011年12月2日に「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」という法律が公布された。復興特別所得税と復興特別法人税が、この法律で課せられる。

    復興特別法人税は、法人税額の10%であるが、同じ2011年12月2日に公布された「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」により税率が30%から25.5%に引き下げられた。その結果、復興特別法人税が課せられても28.05%であり、2%弱税率が下がった。復興特別法人税は3年限りなので、法人税は2015年4月1日以降の事業年度からは25.5%となる。

    復興特別所得税であるが、所得税の2.1%である。税率20%の人なら20.42%となる。課税期間はなんと2013年1月1日から2037年12月31日までであり、25年間も続くのであり、気が遠くなる。お母さんのおなかの中にさえいない子どもにまで税が課せられる恐ろしい特別税である。そんなに長期にするなら、特別税ではなく、どうどうと所得税とすべきである。また、所得税の2.1%なので、金額が小さいだけに事務処理経費が大変である。源泉所得税も来年1月以降は2.1%増加する。預金利息、配当金、証券関係にもこの復興特別所得税がかかる。

    わかりやすい税が良いのである。番号制を導入して不正を困難にして、正直者が馬鹿を見る状態はなくすべきである。事務処理の容易さも重要である。民主党の方々よ!支持を受けたければ、パフォーマンスではなく、実際に国民のためになることをすべきであると忠告をしたい。

    なお、最後に、復興特別税に関する法律の第72条を掲げる。法律違反の解釈は、国民の通常の感覚や常識ですべきと考える。

    第72条 平成二十四年度から平成四十九年度までの間における復興特別税の収入は、復興費用及び償還費用(復興債(・・・)の償還に要する費用(・・・)をいう。・・・)の財源に充てるものとする。

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    2012年10月 1日 (月)

    三洋電機の配当に関する株主代表訴訟判決に思う

    配当可能益がないのに違法な配当をしたとして、元株主が井植敏元会長ら当時の三洋電機経営者15人に対して総額約279億円の三洋電機への支払を求めた株主代表訴訟の判決が28日にあり、大阪地裁は違法配当ではないとして、株主の請求を棄却したとのニュースがあった。

    時事ドットコム 9月28日 井植元会長らの責任認めず=三洋電機の株主訴訟-大阪地裁

    何故、これを本ブログで取り上げたかというと、三洋電機の財務諸表に関して金融庁が課徴金納付命令を出しているからである。

    金融庁発表 2008年1月18日 三洋電機株式会社の半期報告書に係る金融商品取引法違反に対する課徴金納付命令の決定について

    課徴金納付命令となった対象は有価証券報告書は2005年9月中間期半期報告書であり、この金融庁勧告の通り、純資産額が174,641百万円であったにもかかわらず、純資産額に相当する「資本合計」欄に226,872百万円と記載したと言うことであり、52,231百万円の粉飾決算である。なお、三洋電機の有価証券報告書は、2005年9月中間期半期報告書を含め、この三洋電機のWebからダウンロード可能です。

    そうなると考えてしまう。元株主の申し立てのように、違法配当ではなかったのかと。即ち、三洋電機は2005年3月期の中間配当(配当支払い時期2004年12月頃)まで、1株あたり期末配当3円と中間配当3円を継続していた。1回の配当支払総額は55億円-56億円であり、元株主の賠償額279億円は粉飾額522億円より小さいのである。また、2005年9月中間期末における利益剰余金合計は、粉飾額522億円をマイナスする以前で既に1,913億円のマイナスを計上していた。

    522億円のマイナスをどの時点で財務諸表上に認識するのが妥当であったのかは、当事者でないと、判断は困難である。ちなみに、監査法人は中央青山であった。

    しかし、結果としては、三洋電機はパナソニックに買収されたのであり、日本航空と比べれば、ごく普通の企業であると考える。日本航空の場合は、株式を無価値にし、債権カットをして株主と債権者を泣かせた。銀行の損失は法人税の減収であり、国民の税金負担増大である。借入金・社債の債権カット額分は返済も利払いも不要になったのみならず、会社更生法適用による債権放棄として益金不算入の扱いを受ける。法人税さえ納付義務が当面なくなった。泣きを見るのは国民である。また、債権カットを実施し関係者の同意を得るためにと従業員の年金カットも行われた。三洋電機は、国民にこのような多大な犠牲を強いることはなかったのである。企業活動に関する一つの重要なことの一つは、政府は個別企業に関与してはならないことである。

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