三洋電機の配当に関する株主代表訴訟判決に思う
配当可能益がないのに違法な配当をしたとして、元株主が井植敏元会長ら当時の三洋電機経営者15人に対して総額約279億円の三洋電機への支払を求めた株主代表訴訟の判決が28日にあり、大阪地裁は違法配当ではないとして、株主の請求を棄却したとのニュースがあった。
時事ドットコム 9月28日 井植元会長らの責任認めず=三洋電機の株主訴訟-大阪地裁
何故、これを本ブログで取り上げたかというと、三洋電機の財務諸表に関して金融庁が課徴金納付命令を出しているからである。
金融庁発表 2008年1月18日 三洋電機株式会社の半期報告書に係る金融商品取引法違反に対する課徴金納付命令の決定について
課徴金納付命令となった対象は有価証券報告書は2005年9月中間期半期報告書であり、この金融庁勧告の通り、純資産額が174,641百万円であったにもかかわらず、純資産額に相当する「資本合計」欄に226,872百万円と記載したと言うことであり、52,231百万円の粉飾決算である。なお、三洋電機の有価証券報告書は、2005年9月中間期半期報告書を含め、この三洋電機のWebからダウンロード可能です。
そうなると考えてしまう。元株主の申し立てのように、違法配当ではなかったのかと。即ち、三洋電機は2005年3月期の中間配当(配当支払い時期2004年12月頃)まで、1株あたり期末配当3円と中間配当3円を継続していた。1回の配当支払総額は55億円-56億円であり、元株主の賠償額279億円は粉飾額522億円より小さいのである。また、2005年9月中間期末における利益剰余金合計は、粉飾額522億円をマイナスする以前で既に1,913億円のマイナスを計上していた。
522億円のマイナスをどの時点で財務諸表上に認識するのが妥当であったのかは、当事者でないと、判断は困難である。ちなみに、監査法人は中央青山であった。
しかし、結果としては、三洋電機はパナソニックに買収されたのであり、日本航空と比べれば、ごく普通の企業であると考える。日本航空の場合は、株式を無価値にし、債権カットをして株主と債権者を泣かせた。銀行の損失は法人税の減収であり、国民の税金負担増大である。借入金・社債の債権カット額分は返済も利払いも不要になったのみならず、会社更生法適用による債権放棄として益金不算入の扱いを受ける。法人税さえ納付義務が当面なくなった。泣きを見るのは国民である。また、債権カットを実施し関係者の同意を得るためにと従業員の年金カットも行われた。三洋電機は、国民にこのような多大な犠牲を強いることはなかったのである。企業活動に関する一つの重要なことの一つは、政府は個別企業に関与してはならないことである。
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