原子力規制委員会が10日開いた評価会合における、日本原子力発電(株)敦賀原発の2号機建屋の直下に活断層がある可能性が高いとの判断があり、波紋が広がっている。
日経 12月10日 敦賀原発、廃炉の公算 規制委「直下に活断層の可能性」
日本原子力発電の株主は、沖縄電力を除く一般電気事業所9社と電源開発の10社合計で90.41%に加えて日立製作所0.92%、みずほコーポレート銀行0.71%、三菱重工0.64%(この12株主で合計92.68%)他で合計152株主で全て法人で、一般株主は存在せず、非上場である。しかし、社債は発行し、一般からも募集をしていたので、一般社債権者は存在し、現在の未償還残高は400億円である。
社債の関係もあり、日本格付研究所(JCR)による「シングルAプラス」から「シングルAマイナス」への2段階引き下げがあった。(参考:日経 12月1日 JCR、日本原電を2段階格下げ 見通し「弱含み」 )
当然、波紋は、これだけで済まない。
日本原子力発電は、日本における原子力発電の歴史とともに歩んできたと言える。
1957年に正力原子力委員長は、英国から大型動力炉導入の方針を表明、電力9社は正力構想による民営会社方式を支持、発電炉受入れ会社として日本原子力発電(株)の設立が閣議了解となり、11月1日に日本原子力発電(株)が資本金40億円、電源開発20%・民間80%で設立された。(当時、電源開発の2/3株主は政府であり、 正力発表以前から原子力に対して積極的であり、原子力委員会にも「輸入発電炉の受入れは電発が適当」との申し入れも行っていた。)
上記経緯で建設されたのが、東海1号機(コールダホール改良型166MW)であり、1965年5月に臨界に達し、66年から運転を開始した。一方、関西地区の原子力発電所としては、日本原子力発電による第2号機が敦賀をその建設地として、関西電力が美浜をその建設地として1962年に発表した。敦賀1号機は、大阪万博が始まった1970年3月14日に運転を開始した。それに続いて、東京電力福島1号機が7月5日に臨界に、関西電力美浜1号機が7月29日に臨界に達した。未来の夢を乗せた大阪万博に原子力による電力を供給したのが敦賀1号機であったのである。
日本原子力発電は、東海1号機の1998年3月に営業運転停止とすることを1996年3月に経済産業省に申請し、6月に認可された。核燃料は2001年に搬出を完了したが、未だ廃炉行程の半ばにあり、原子炉解体もこれからである。何をもって廃炉とするのか、原子力発電所の廃棄物は、廃棄場所が大変だなと思う次第である。貴重な先駆者である日本原子力発電である。
日本原子力発電のビジネスも普通とは異なる。株主9社へ全量販売するのである。
売り上げは安定している。2012年3月期は原発停止により販売電力量は通常年の10分の1以下であったが売り上げは、それほど落ち込んでいない。10月20日の停止中の原子力発電のコストにも書いたが、原子力発電とは、運転していても稼働していても、コストがほとんど変わらない。日本原子力発電は、コスト・プラス・フィーの契約で、株主の電力会社に電力を販売しているのである。
これが日本の原子力発電の実態なのである。日本原子力発電において今後発生するほとんど全ての費用を9電力会社が支払うことになると思える。しかし、そうかと言って、日本原子力発電に会社更生法を適用しても何の役にも立たないのである。日本航空のように会社更生法、債権カット、税金投入では解決しない。原子力発電所は、運転せずにただおいておくだけでも、正しく管理しないと事故が起こる。その廃棄物は誰も買わないどころか、廃棄場所にも苦労すると言うより、誰も引き取らないのである。
そんな金食い虫を誰が面倒を見るかと言えば、電力会社さんに電力消費者が料金に上乗せして費用を払って、管理する制度を構築するか、税金を投入して管理するか、その双方を組み合わせるかしか方法は無いのである。原子力発電所については、社会が、国民が関与せざるを得ないのである。(事故が起きれば、一義的には電力会社というのは、根本解決にはならない。そんな発言は、賠償金をふんだくる役目の弁護士にやらせておけばよい。)
選挙では、原発即時停止とか威勢のよいスローガンが聞こえる。しかし、12月2日に小選挙区制からの脱却で書いたように、選挙で決めることではないのである。
11月16日に政府(野田総理)は、社民党福島みずほのプルトニウムに関する質問に対してこの回答をしている。福島みずほの質問書はここにある。福島みずほの質問に答えていると思えないのである。答えられないのである。何故なら、そんな難しい方針について決まっていないし、また政府単独で決められる問題でもないのである。国民が参加して、国民が決定しなければならないのである。1mSV/年の放射線レベルとすべく除染を各地で実施し、その結果の除染廃棄部の保管について、保管場所の地元住民から反対の声が上がっている。この場合の廃棄物の放射性物質の量は8,000ベクレル/kg以下である。しかし、プルトニウムは48兆ベクレル/kgもあり、一時保管で報道されている放射性廃棄物の実に60億倍の高濃度であり、しかも福島みずほ質問書は、このプルトニウムが44トン存在すると述べているのである。
44 x 48兆の更に1000倍が、そのベクレル数となるすごい計算である。これを日本のどこに廃棄するのか、地下鉄問題よりずっと寝れなくなる問題である。他国に持って行くことは、できない。何故なら、そんな廃棄物を引き受けてくれる国は無いからである。自国主義を言われたら、反論はできないのである。
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