中央道笹子トンネル天井崩落事故の警察捜査は当面控えるべきではないか
中央自動車道の笹子トンネル天井崩落事故は、悲しい事故だと思う。トンネルの天井板が落ちてくるなんて、考えてもいないことである。被害者・関係者からすれば、犯人を見つけ出して、処罰して欲しいとの思いになっても不思議ではない。加害者が誰かは、相当複雑に絡み合っているし、政治家の責任であるとも思う。次のMSN産経ニュースには、「県警は、中日本高速道路がボルトの劣化など老朽化への有効な対策を講じていなかった疑いもあるとみて、行方不明者の捜索が終わるのを待ち、業務上過失致死傷容疑で本格捜査に乗り出す方針を固めた。」とある。
MSN産経ニュース 12月3日 ボルト劣化が原因か 山梨県警本格捜査へ 業務上過失致死傷容疑
また、このNHKニュースにも、「4日にも中日本高速道路など捜索へ」とある。
現実には、日本中に、このような劣化した危険な(高速道路も含め)橋梁、盛土、トンネルが相当存在すると思う。何故なら、適切なメンテナンスがなされていないと思うからである。鉄道が輸送の主体であった頃は、毎日機関士がSLをハンマーでたたいてクラックやねじのゆるみを調べ、保線作業は鉄道の重要な仕事であった。高速道路もそれなりに実施していたであろうが、適切なプログラムで点検・保守がされていたのか、適切な点検・保守プログラムが作成されていたのかも問われねばならない。
今回の事故は、複雑な権利・義務と責任分担が絡んでいないか気になる。即ち、トンネルを含め高速道路は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が保有していた。そして、この高速道路を中日本高速道路株式会社に賃貸している。関係している法律も独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法、高速道路株式会社法、日本道路公団等民営化関係法施行法、道路整備特別措置法と多くあり、ややこしくて仕方がない。メンテナンスについての責任が中日本高速道路株式会社にあるとしても、全株が政府保有である。独立行政法人が高速道路を保有し、全株政府保有の株式会社が賃貸を受けてビジネスをしているのである。しかも、料金設定も賃貸料も政府が決めるのである。問題が発生しても、責任のなすりつけあいが起こりそうな気がする。
警察が証拠として押さえると、刑事訴訟法47条を理由に、誰も手が出せなくなり、原因究明を困難とする。そして、複雑なガバナンスを考えると、警察も捜査をするなら、こんな複雑な制度を作り出した小泉純一郎、猪瀬 直樹、あるいは高速道路無料化を掲げた民主党の人達も参考人として事情を聞くべきだと考える。逮捕したり、起訴したりせよと言うのではない。刑事事件としてふさわしくないと思うのである。
高速道路のメンテナンス予算を低く抑えようとしたのは誰か?死亡したのは誰の責任か?笹子トンネルが通行可能になるのは年明けとの噂もあるが、その場合の経済的損失は大きい。もしかしたら、あるいは、全て、国民の責任であるのかも知れない。
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