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2013年3月27日 (水)

地方公共団体による課税権

3月21日に最高裁判所第一小法廷において神奈川県臨時特例企業税条例の規定による課税は、法人事業税に関する規定と矛盾抵触し、地方税法に違反し、違法、無効であるとして原審の平成22年2月25日の東京高裁判決を破棄し、第1審横浜地裁の平成20年3月19日の判決は正当であるとした判決があった。

この裁判の最高裁、東京高裁および横浜地裁の判決文は、全てWebで読むことができ、次の所にあります。

最高裁  平成25年3月21日判決 最高裁判決 判決文

東京高裁 平成22年2月25日 判決文(神奈川県Web)

横浜地裁 平成20年3月19日 横浜地裁判決 判決文

今回の最高裁判決については、地方自治に反するという意見も一部聞かれ、毎日新聞社説 3月23日 「企業税」無効判決 自主課税拡充に工夫をも、そのような意見と思える。しかし、私には神奈川県臨時特例企業税条例は極めて不当であると思うわけで、以下に記載する。

1) 神奈川県臨時特例企業税は憲法違反と考える

憲法には、税について、第30条の「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と第84条の「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」がある。そして憲法第41条に「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」とあるように、国会のみが法律を制定できる。

やたらと変な税が作られたら困るのである。地方公共団体に課税権はあっても、その課税の根拠となる税法は国会が制定した法律に基づくという考え方に賛成するし、そうでなければならいと考える。(憲法では、地方自治体との言葉は使用せず、地方公共団体としていることから、憲法と同一の地方公共団体と記載する。)

2) 地方税法第4条3項、第5条3項

地方税法第4条3項と第5条3項の条文には「別に税目を起こして、普通税を課することができる。 」とあり、都道府県と市町村は条例を制定して課税しても地方税法第4条3項と第5条3項に従っているから問題ないとの議論がありうるであろう。しかし、最高裁判決の金築誠志裁判官の補足意見にもあるが、消極的適法要件であるべきであり、日本全国どこにいても同じ税が課せられることを理想にすべきと考える。

その地方公共団体に特有な特殊な事情があり、特別の税を課する必要があった際には、地方税法259条と669条のような総務大臣との協議を含め手続きと同意を得て実施することになるが、極めて異例であり、原則有名無実と考えるべきである。

神奈川県は、税収が不足するから新たに税を徴収するという憲法違反を試みたのであり、糾弾されるべきことと考える。税収が不足するなら、国会に働きかける、住民に訴える、政府に地方交付税の配分増加を交渉するのが本筋と考える。神奈川県は、地方税法259条による総務省との協議すら実施しなかった。

3) 許されうる地方税の税収増

地方税法では標準税率を定め、地方公共団体が条例で変更してもよいとしている税目も多いのである。例えば、事業税に関しての第72条の24の7第7項に「道府県は、・・・標準税率を超える税率で事業税を課する場合には、・・・各号に掲げる法人の区分に応ずる当該各号に定める率に、それぞれ一・二を乗じて得た率を超える税率で課することができない。」 とあり、20%増までは可能である。

日本中どこへ住んでも、どこに法人を設立し、事務所や工場を設けようとも、国税は当然同じであるが、地方税も許容範囲として認められる範囲までとすることは、日本を良い国とするためにとても良いことと思う。

4) 今後に向けて

地方の間で対立するより、協調・協力してより良い社会を作っていくのが本当の姿だと思う。国民にとっては、国税と地方税も同じであり、合計していくらとするかが重要である。政府と地方公共団体と間での分け前や配分の取り合いは、本音からすれば勝手にどうぞである。しかし、一方で、他の地方公共団体が減るのは気にしないが自分が住む地方公共団体は多く得て欲しいとの気になる。やはり、国会が公平に采配すべきである。

現状の国会が法を制定して、法に基づいて政府と地方公共団体が税の徴収を行い、更に各地方公共団体の行政執行に不足する額を地方交付税として政府が交付するのがよいと考える。

更には、やはり歳入庁をつくるべきである。歳入庁が地方税も含め徴収することとし、年金保険料も健康保険料も全て歳入庁が徴収することとすればよいのである。徴収コストを下げることができるのみならず、徴収漏れや不正をなくすことができ、管理も容易となる。番号法案の審議が始まったのであり、番号法とともに歳入庁を早く設立すべきと考える。

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2013年3月26日 (火)

震災復旧に関する財産権と公共の福祉

進んでいない震災復興の理由の一つに、用地に関する権利関係の複雑さがあるとする釜石市嶋田副市長の文章がDianmond Onlineにあった。

Dianmond Online 3月25日 複雑な権利関係が住宅再建の障害 一方、多様な形の復興参画が力に

1) 強すぎる土地所有者の権利

憲法29条は、次のようになっている。

第29条  財産権は、これを侵してはならない。
2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

土地に関する財産権とは何であろうか?土地の権利とは土地を利用する権利である。憲法第29条第2項の「公共の福祉に適合するやうに」と個人の権利の制限をする場合として、一番最初に頭に浮かぶ財産は、土地や地下資源あるいは水や森林のような個人が保有しているとしても、社会が保有している共有財産である性格を持つ財産と考える。

2年前の政権は復興庁のようなあまり役に立たない組織を作ることには熱心であったし、25年間の増税をする復興増税は実施したが、実質災害復興にどれだけ役立っているのかと思える。災害復興のための土地の私権の制限に関する特別措置法でも立法し、その運用に際しての問題点・改善すべき事項等をフィードバックし、すべてに渡って適用される法の立法に向けて動くべきであったと思う。

2) 土地と公共の福祉

問題は災害復旧だけではない。所有者が死亡しても、相続登記はおろか、相続に関する取り決めすらされていないことがある。都市において誰も住まなくなった住宅が存在し、近隣に迷惑になっていることがある。山林の多くは相続人が誰か不明で、境界もよく分からない状態になっていることが多いと聞く。一方で、外国人の土地保有の制限はないことから、どのようなことが生じるのかもよく分からない。

少なくとも、土地と公共の福祉のあり方に関する検討がなされる必要性を感じる。土地収用は、政府や地方公共団体により行われることが多いが、もっと適用範囲を広げ、公共の福祉目的(この福祉とは狭い範囲の福祉ではなく、憲法で述べている福祉のこと)であれば、強制土地収用を認めて良いように思うのだが。なお、公共の福祉とは狭い範囲の福祉ではなく、憲法で述べている公共の福祉のことであり、強制土地収用がなされるべき範疇に入るかどうかは、住民参加を得た委員会で決定すべきであり、正当な補償はなされなければならない。例えば、都市再開発の高層化なんて、変な地上げ屋が暗躍するより、計画が関係者に公開され、議論され、住民と関係者の参加で決定される方が、良いように思う。

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2013年3月22日 (金)

イラク戦争開戦から10年

米国がイラクへの戦争を開始した日が2003年1月20日であり、あの日から10年を経過した。このブログで多くの場合、新聞記事のリンクを掲げており、今回は東京新聞の3月20日の社説へのリンクとする。

東京新聞 3月20日社説 イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの

21世紀の戦争を考える際にイラク戦争は、そのための参考としての教訓を多く残していると考えるので、思うことのいくつかを書いてみる。

1) 帝国主義戦争の側面

帝国主義戦争とは、大資本が更なる資本の増殖を求めて引き起こす戦争であるとするなら、実はイラク戦争もその範疇に属すると考えられる面がある。すなわち、イラクの原油をめぐるオイルメジャーを中心とした大資本が、その増殖を目的として引き起こした戦争という観点である。将来にわたって、検証されねばならない課題であると考える。なお、現在のイラクの原油生産量は、OPEC Monthly Reportによれば2013年2月は日量3,062千バレルの生産であった。各国別の比較としてBP Statistical Reviewの2011年の生産量を示すと以下のグラフとなる。(原油生産量は情報源により微妙に数字は異なる。)

Worldoilprod2011a
ピンク色の部分がイラクであり、世界の3.3%を占める。日本の石油消費量は2011年において日量4,418千バレルなので、イラクの日量3,000千バレルは、その70%弱であり、かなりの量と言える。イラクの2000年以降の原油生産量をグラフに描くと次の通りである。(左軸がイラクで、右軸が世界生産。単位は千バレル/日である。)

Iraqoilproduction2013a
戦争があった2003年は落ち込んでいるが、順調に推移している。なお、日量3,000千バレルとは、金額にすると現在の原油価格100ドル強で年間約10兆円である。この金は、どこに流れているか。その答えの一つは、Production Share Agreement(PSA)のオペレーターとなっている国際石油資本オイルメジャーへである。それ以外にも群がっている人たちがいると考えて良いと思う。

2) イラクにもたらしたもの

冒頭に掲げた東京新聞社説には、「イラク側犠牲者は兵士、市民合わせて十数万人との民間試算はあるが、正確なデータすらまだない。」とある。今も、戦争の結果引き起こされた治安の不安は継続しており、犠牲者は続いている。CNNの3月19日のニュース イラク戦争開戦から10年、イラク国民の苦しみ続くを読んでも、その悲しみは深い。日本の外務省の海外安全ホームページのイラク地図を見ても「退避を勧告します」が大部分である。これを、アルジェリアの地図と比較すると分かると思います。

イラクの治安の悪さはスンニ派、シーア派、クルド人の対立から生じている図式で済ませられるほど単純ではないと思う。元々、スンニ派とシーア派は仲良く暮らしていたのだから。米国他の多国籍軍による侵攻で多くのイラク人が犠牲になった。やむを得ないと考える人も当然多くいると思うが、親族や友人を殺されたなら、その恨みは大きい。そんな怨念が残っている社会は、不幸である。まして、約10兆円の原油収入を、人口33百万人で割れば、1人あたり年間30万円である。しかし、大部分の人は貧しい。産業が戦争で破壊され、悪い治安は復興の妨げになっている。産業がなくては、働いて収入を得ることもできない。

イラクも何時の日か、復興を果たし、繁栄する日がやってくると思う。しかし、心傷む戦争である。

3) イラク戦争の大義名分

正義無く攻め込んだ戦争であったと思う。米国が理由としたのは、大量破壊兵器の存在であったが、何を大量破壊兵器としたのかさえ不明と思う。濃縮ウランは元々保有していたし、戦争の理由にならない。国際査察で解決すべきことである。毒ガスは、イランとの戦争で使用しており、考えればオーム真理教ですら保有していた。外交で解決すべき事項を解決しなかった悪魔の戦争だったと思う。

9.11の結果生じたアメリカ人の不安心が引き起こした戦争であったと思う。9.11は、戦争では解決しない。もっと、地道な努力・活動によってしか解決しないことと考える。アメリカ人は、イラク戦争から学ぶべきこととして、何をあげているのか、CNNの3月11日の記事 イラク戦争で得られた5つの教訓あたりが代表的なアメリカ人の考え方であろうと思う。

日本は、何故イラク戦争を支持したのか。考えるべき問題と思う。屁理屈戦争であれ他国の戦争を止めさせるのは簡単ではない。しかし、不支持を表明することは簡単である。証拠もないのに、あるとして国民に嘘をついた当時の日本の政権は批判されるべきである。ここに冷泉彰彦氏によるNewsweekの記事「開戦から10年、イラク戦争が変質させた日米同盟 」があり、その中で冷泉氏は「日本が支持することはブッシュ政権に「恩を売る」ことになるという計算」との表現を使用している。

政治家とは、権力者とは、非常に恐ろしい人々であると思います。

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2013年3月20日 (水)

南極観測船「宗谷」

1月15日に南極観測船 「しらせ」 の昭和基地沖への接岸断念を書いた。この「しらせ」が、帰国途上の経由港オーストラリア・シドニーに入港したとのニュースがあった。

日経 3月18日 しらせ、シドニーに到着 隊員ら歓声

進め!しらせを見ると、1月15日の停泊地点より昭和基地に近づくことなくとどまり、2月10日に同停泊地点(南緯68度53分:東経39度15分)を離れ、シドニーに向かった。日本の南極観測船第1号の宗谷が第1次調査で到達した南緯68度58分:東経39度02分とほとんど同じ位置である。(宗谷は1957年1月24日到達。2月15日出発)

日本の当時の南極観測および宗谷という船については、学ぶことができる多くのことがあると思う。

1) 宗谷が日本の南極観測を可能にした

決して大風呂敷ではない。1956年(昭和31年)4月18日に衆議院科学振興対策特別委員会が開催され、参考人として当時日本学術会議南極特別委員長茅誠司氏、観測隊長永田武氏、日木学術会議国際地球観測年研究連絡委員長長谷川万吉氏が出席して発言をしている。

次の引用は、茅誠司氏の発言である。

国際学術連合、ICSUと申しますか・・・この中に南極観測のために特別の委員会が設けられておって、いろいろと企画されたのであります。現在までに南極地域における地球物理学的な観測に協力しようという国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリー、イギリス、フランス、ニュージーランド、ノルウェー、ソ連、南ア、スペイン、アメリカ、この十二ヵ国でございます。日本といたしましては、最初のうちは、この計画に参画いたしますのは非常に困難である、たとえば砕氷船といったようなものを考えましても、現在の日本におきましては、そのまますぐに使える砕氷船はないというような点から、一部関係者は幾分あきらめておったのであります。けれども、よく考えてみますと、これは日本が戦争後国際的な協力をする第一歩ではないか、・・・

・・・問題は船という点が非常に大きな問題でありましたけれども、当時の政府の方々の間にいろいろと奔走いたしまして、その間の了解を得るに至りましたので、このブラッセルの会議に出席いたしました代表に、日本の協力の決意を披瀝するようにということを申したのであります。その結果、・・・委員会としましては、プリンス・ハラルド・コーストというところで観測してほしいという勧告が来たのであります。・・・

・・・船といたしましては、宗谷という耐氷船―砕氷船ではありません、2,200トン近くの船がございまして、艦齢は15年ほどの古いものでありますけれども、これを修理することによって砕氷船にかえることができるという考えのもとに企画いたしまして、目下これを砕氷船に改造中でございます。・・

次の引用は永田氏の発言である。

御参考のために申し上げますが、主として話題に出ますのは、米国とかソ連の大部隊でございますが、オーストラリア、ノルウエー、フランスといったような国々は、それぞれ600トンないし1,300トンの耐氷船であります。シーラーでありまして、アザラシ取りの船でありますから、砕氷能力がないのでありますが、場所さえよければ、千トン未満の耐氷船でもすでにやっておるところはあるわけでございます。・・・少くとも宗谷は砕氷予定能力1メートルでありまして、米国もしくはソ連の大型の砕氷船に比べればかなり小さいわけでありますが、今申し上げましたフランスその他の例をとりますと、場所によりまして、南極大陸だから不可能だということはないのでございます。・・・

2) 宗谷の耐氷船から砕氷船への改造

耐と砕の違いであり、耐えることと、砕くことの違いなのでイメージは掴みやすい。次の文章は現「しらせ」を建造したユニバーサル造船のテクニカルレビュー2009年8月号における文章である。

砕氷艦は艦首部喫水付近(水面部分)を大きく傾斜させ、氷に乗り上げて船体の重さで下へ氷を押し曲げることにより、砕氷航行する。この砕氷能力向上のため船首砕氷部の角度を19度(旧しらせは21度)にし、砕氷能力を向上させた。」

絵で示すと、次の赤の角度であり、宗谷は27度としたのである。実は、どのような船でも自由に角度を設定できるのではなく、宗谷は耐氷船であったから元々35度で建造されていたので、このような27度の砕氷船への改造が可能であった。

Bowa
船首部分は、新しい船首と取り替えた。それ以外にも大きな改造が多くある。次の絵は、断面と思ってもらえればよいが、左右にバルジと呼ばれる赤で示した部分を船体に追加した。目的は、氷に閉じこめられた時等の船体強度の補強、砕氷能力を良くするための幅の増加、安定性の向上であり、長期航海のための燃料タンクの増設にもなった。赤い円を2つ書いているが、ディーゼル2400馬力2基の2軸船に改造した。それまでは、約1200馬力の3連成往復蒸気機関であったので、4倍の馬力にあげたのである。そして、それまでは石炭燃焼のSLと同じ往復蒸気機関で航続距離4080海里であったのを航続距離10000海里に伸ばした。

Icebreakermod


3) 宗谷の第1次観測

1956年4月18日に衆議院科学振興対策特別委員会における永田氏の発言からです。

・・先ほど御説明いたしましたように、宗谷は観測船だと申し上げました。・・・少くとも南極地域に関します観測につきまして、船上でも最小限度の、つまり国際地球観測年の観測準備の資料はとれるという準備をしていると申し上げました。・・・万一危険があると考えまして、最初に考えましたように、上陸してそこに基地を設け、あるいは最小限の基地の建物を建てるというようなことが不可能になりましたときには、今年の予備観測では、ヘリコプターその他で一応予定地をきめるという程度で、つまり観測は船の上でやって帰ってきても、一応本観測のための準備としては、必要最小限度の資料をとることができるということを考えておるわけでございます。

当時政府予算の規模も小さかった。科学技術振興の予算も多くなかった。しかし、国会の委員会の場で、無理はしないことを明確に述べる。予算を分捕った以上は、不可能と言えないなんて、格好をつけるのではなく、堂々と正しいことを述べる。冒頭に、学ぶことができる多くのことがあると書いたが、この永田氏の発言も学びたいことです。

宗谷は、ベルヘリコプター2機とセスナ1機、そして随伴船「海鷹丸」にヘリコプター1機の航空部隊と共に南極に行ったのです。第1次は、プリンス・ハラルド海岸という世界で誰も上陸したことがない地点に行ったので、基地の予定地すら未定であった。基地候補地を探すことから始めねばならなかった。セスナは、航空測量地図作りが最大の目的であったのです。空中写真斜め463枚と垂直791枚を撮影した。ヘリコプターは、宗谷の航海進路の偵察でした。元々、宗谷では陸地接岸を考えておらず、定着氷に接岸し、そこから犬ぞりと雪上車で荷物運搬する予定であった。定着氷に到着するまでの間、氷が少ないあるいは割れて海水面が覗いている部分をヘリコプター偵察で見極めて進んでいこうとした。宗谷の砕氷能力に限界があることを前提にしたのである。

アマゾンに大人の超合金 南極観測船 宗谷 と言うのがありました。第一次南極観測隊仕様とのことで、船首マストが1本で、かつ船首がウエル甲板であり、船尾のヘリコプター甲板も3次以降より1段低い位置にある。それぞれ改造された理由があるが、慎重であると同時に、チャンスがあればそれを有効に生かし、不十分な点は次に改善していくというごく普通の当たり前のことなのだが、その通りに実行していった。学ぶべきことと思います。

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2013年3月16日 (土)

TPP交渉参加にむかった

環太平洋経済連携協定(TPP)に向けた交渉への参加決断を安倍首相が記者会見で発表し、政府はTPP交渉参加に舵をきった。

日経 3月15日 「今がラストチャンス」 安倍首相の会見要旨

記者会見の一言一句と動画はこの首相官邸のWebにある。

1) TPPに向けた交渉に参加とは?

「TPPに向けた交渉に参加決断」とは、単語明瞭なるも意味不確かとも思える。TPPに参加すること、参加する意向で、交渉に入るという意味にとる。さもなければ、意味が通じないからである。「その旨、交渉参加国に通知をいたします。」と首相は発表したが、どのような文面で伝えるのか、興味がある。自民党は、3月13日にTPP交渉参加を決定し、TPP 対策に関する決議を発表したのであるが、この自民党決議の方が、首相記者会見よりわかりやすい。

参議院選挙後かと思っていたが、ずっと早かった。自民党は既に参議院選挙の勝利を確信したのか、あるいはTPP交渉参加をこれ以上遅らせると損失が増大するのみと判断したのか、その両方であるように思う。

2) 農業問題

農林漁業や農地の荒廃が進むのであれば、困ったことである。しかし、本来はTPPの問題ではなく、国内政策の問題であると考える。農業を守ると言っても、どの部分を守るのかである。所得保障のように、現状維持に走るのみなら、国民は高価格(または高税金負担)の食品を食べるのが義務になってしまう。構造改革をする必要があると考える。勿論、農家が現在恩恵を受けて裕福であるとは思わない。むしろ、このまま行くと、後継者がなくなり日本農業が衰退することを懸念する。やはり、TPPに参加することにより、日本農業を拡大していく仕組みを構築していくべきと考える。(外圧がなければ、国内の改革が進まないのは情けないが)

3) 医療問題

国民皆保険制度の崩壊懸念がある。しかし、これも国内問題であると考える。すなわち、日経が3月14日に国民会議は何をしているのか と社説を出していた。社会保障制度改革国民会議による年金、医療の制度改革議論が全く進んでいないことについての批判である。この日経社説については、私も全く同感である。国民の方を向いて議論をせず、自分たちが批判されないように行動していると思える。

TPPにおいて国家主権は、守る、守られることになる。医療制度や医療保険についての法律は、国家主権であり、他の国が侵害することは許されない。医療保険であるが、現在の制度の維持は、間もなく困難になると思う。混合診療をどうするのかである。混合診療を認める場合、健康保険の対象外の医療が増加するわけで、そこに民間保険が入ることになる。実は、今でさえ、民間保険は外資保険会社を含め、医療保険という名目で、入院保険やガン保険等が販売されている。米国保険会社は、必ず健康保険対象外保険をねらってくると思う。

一方、これもTPPに参加するとしないに無関係である。健康保険により高額医療費は一定額以上負担する必要ない。しかし、高額医療費の天井は必要がないのかとの議論があって良いようにも思う。その場合、民間保険は、それをカバーする保険を必ず売り出す。勿論、そんな保険を買えるのは高額所得者のみである。また、増大する医療費に伴い支払保険料が上がるわけで、低所得者対策をどうするのかも、同時に考えねばならない。

医療問題についても、TPP交渉参加を機会に、真剣に考える必要があると思う。

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2013年3月11日 (月)

福島原発事故から2年

もし福島原発の事故とは大量の放射性物質の飛散と捕らえれば、1号機の水素爆発が3月12日15:36であり、3号機が14日11:01、4号機が15日6:14であった。しかし、3月11日の津波に対する対策と対応がうまくいっていれば、被害の減少はできたのではと思う。

2年ほど前に書いたブログ等を思い出しつつ、この機会に書き連らねてみる。

一番参考にしたのは、政府事故調(委員長:畑村洋太郎氏)の報告書であり、このWeb Pageからダウンロードすることができる。

1) 事故対応主体は政府か東京電力か

政府と東京電力のどちらかと責任のなすりつけあいで不毛の議論と思われる方もおられると思うが、今後の事故対応に関して重要と思うので、検証をしてみたい。

東京電力は、11日津波による非常用発電機停止の直後に政府に対し、原子力災害対策特別措置法10条1項の通報を行った。(3月11日のこのプレスリリースには、「15時42分に特定事象が発生したと判断」とあるので、その直後の通報と思われる。

原子力災害対策特別措置法10条1項の通報が重大な事故であれば、15条、16条等により総理大臣が本部長となる原子力災害対策本部が設置される。一電力会社の問題としてではなく国家の重要事項として政府と電力会社協力して、事故に立ち向かうことになる。

ところが、政府事故調報告書(概要)6ページには、「3月11日17時42分頃、海江田経産大臣は寺坂保安院らと原子力緊急事態宣言の発出について了承を求めた。総理からの質問に十分な説明をすることができないまま時間が経過し、菅総理は、18:12頃から約5分間、予定されていた与野党党首会談に出席したため、上申手続は一時中断した。同会談から戻った菅総理は、間もなく原子力緊急事態宣言の発出を了承し、同宣言は、同日19時3分に発出された。(ブログ主が要約した部分あり)」とある。実際には、蓄電池の直流電源も喪失していたのであり、制御不能に陥ったトンデモナイ事故である。政府は正確に把握していた。

全てが、このような政府対応であったと思う。イラ菅と称されたぐらいで。それ以外にも、当時の言葉として耳に残っているのは「直ちに影響はない」や「損害賠償は一義的には東京電力である」のような、第三者的発言をした人が多かったことである。原子力災害対策本部や本部長に直接関わっている人が発言する内容ではない。

ところで、今も分からないのが、11日に自衛隊をして、蓄電池を輸送していれば、水素爆発は防げたのではと思う。直流まで電源が失われた状態とは、計器の指示が信頼できない、従い様子について確証は持てず、当然通常のコントロールは失われている。しかも、真っ暗で、そして現場は事故がなくても放射線が高いので簡単に近寄れないのである。パニック状態になって当然だし、発電所にいた人は死の恐怖を感じたのではと思う。

電源車は到着が遅れたことと、地震と津波の瓦礫に加えて余震があり、簡単に役には立たなかった。自衛隊なら夜間飛行・着陸が可能で重量物輸送が可能なヘリコプターを保有している。もし、不十分なら米軍の応援を得る。そこまですべき事態であったと思う。原子力災害対策特別措置法20条4項には、「原子力災害対策本部長は、・・・自衛隊の支援を求める必要があると認めるときは、防衛大臣に対し、部隊等の派遣を要請することができる。 」とある。政府だから許される行為があり、特別事態であるから許されるし、実施する義務もあると考える。

2) 首相視察

このブログで触れたことがあるが、全く意味のない3月12日朝の首相の福島訪問である。それも自衛隊のヘリコプターで。政府事故調報告書(概要)6ページには「今回のような大規模災害・事故が発生した場合において、最高指揮官の立場にある内閣総理大臣が、長時間にわたって官邸を離れ、危険が伴う現地視察を行い、緊急対応に追われていた現地を訪れたことについては、他の代わりとなる人物を派遣して状況を確認させるなどの方法によるべきではなかったのかという点で、なお疑問が残る。」とある。婉曲的表現であるように思うのだが。

3) 情報収集他

政府事故調報告書(概要)4ページからである。「政府における福島第一原発の情報収集拠点であったERC から離れた官邸内において意思決定が行われていたこと、また、官邸内においても、その情報集約拠点である官邸危機管理センターとは離れた別の場所(官邸5 階等)において意思決定が行われていたことなどから情報の不足と偏在が生じ、十分な情報がないままに意思決定せざるを得ない場合も生じたという点は、今回の一つの大きな教訓とすべきである。」なんて、何がどうなってるのかと思う。

東京電力のTV会議の画像の一部が報道関係者や一般に公開されている。なぜあのTV会議の端末のせめて一つを官邸危機管理センターに設置しなかったのかである。「ERC の中に、東京電力本店やオフサイトセンターが東京電力のテレビ会議システムを通じて現場の情報を得ていることを把握している者はほとんどおらず、東京電力のテレビ会議システムをERC にも設置するということに思いが至らなかった。また、情報収集のために、保安院職員を東京電力本店へ派遣するといった積極的な行動も起こさなかった。」と政府事故調報告書(概要)5ページにある。

4) 私の感想

イラ菅でなかったなら、ここまでの被害はなかったような気がする。但し、これで終わっているのではなく、多くの何故を投げかけることにより進歩が得られると考える。それでも、イラ菅に向かっていったのは、海水注入を実施した吉田昌郎所長のみだったのだろうか?その時、東京電力武黒フェローは注入延期を要請したのだから。

東京電力の対応が適格であったかと言えば、そうではない部分が多かったかも知れないと思う。しかし、比較の上では、政府の方が不適切対応が多かったような気がする。イラ菅は、首相として最重要な仕事として、自らの代理として福島事故に対応する政府側の専門家を決めることもしなかったのであるから、国民に対して極めて無責任であったと思う。

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2013年3月 6日 (水)

選挙制度改革

2012年12月の衆議院選挙について1票の格差を是正しなかったのは見過ごせず、東京地裁は違憲と判断して、国会に強く是正を求めたとのニュースがあった。

日経 3月6日 1票の格差、12年衆院選は「違憲」 東京高裁判決 無効請求は棄却

一方で、もう一つの選挙改革は定数削減である。

3月5日 朝日 衆院の定数削減「しっかり進める」 代表質問に首相

こちらの方は、自ら身を切る改革と称しているが、それなら議員報酬の一部返上や政党助成金の一部返上を、その前にすべきと考える。

議員とは、国民のために働く人でなければならないが、その意識よりも、別の意図をお持ちの方が多いように思えて仕方がない。沖縄の基地について「最低でも県外」と見込みもなく言っていたと自らが認めるような発言をした政治家は、どうなのか。私だったら、「普天間から辺野古に移すが、オスプレイになることから滑走路の埋め立てをしない。」との案を推し進めたかも知れない。

戦前の日本に二大政党時代があったが、二大政党間で非難の応酬を繰り返し、野党は常に与党の批判のみに徹し、国民を置き去りにした。その反発から大政翼賛会が支持を得るようになった。大雑把すぎるが、このような歴史観を持っている。今、欲しいのは二大政党ではなく、国民の政治参加である。政権交代などうんざりしている感がある。政権交代などなくても、国民が少しでも政治に参加する制度をつくり、議員は国民の方を向いて活動をする仕組みである。それが、達成できれば、国会議員の定数削減よりずっと得るものは大きい。逆に、定数の削減をして更に悪化が進めば、失うものがより大きい。

選挙制度に関する私の提案は次である。

(1) 国会議員が原案を作成するのではなく、議員になっていない国民が作成すること。Webという便利なツールもあり、様々な国民の意見を聞きつつ国民が原案を作成するのである。

(2) 参議院の選挙制度の選挙区が都道府県であるため、一人区が多い。そのため、ミニ衆議院のように思える。衆議院と参議院と、それぞれどのような選挙制度が望ましいかも、議員になっていない国民が原案を作成することである。

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2013年3月 4日 (月)

マイナンバー法案の国会提出

マイナンバー法案が3月1日に政府より国会に提出された。

日経 3月1日 「マイナンバー」16年から 税や年金手続き簡単に 政府が法案提出

法案の名前は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」であり、概要、要項、条文は次の内閣官房のWebからDownloadすることができる。

内閣官房 国会提出法案 第183回 通常国会

産経には、民主政権時代の法案とほぼ同じであり、民主党も法案に賛成すると細野幹事長が述べたと報じている。(この3月2日MSN産経ニュース)今国会で成立し、日本も先進諸国に近づいたと思う。番号法について、更に思うことには、次のようなことがある。

1) 合理的な税制度と税執行

税は政府から見ると取り上げる(徴収する)モノであるが、人民と企業から見ると払う(納付する)モノである。政府の税の使い方という問題とは別に、公平な税制と税執行(徴収・納付)は身近な損得問題であり、公平さが保たれていないと悪人が得をして、善人が馬鹿を見ることになる。税の公平を保つ上で、番号制は重要なインフラであり、これを活用して税の公平を推進していくべきと考える。

2) 消費税の負担を所得税で軽減または還付

消費税で食料品の税率を低くすると言った複数税率案を唱える人達がいる。しかし、複数税率は手続きを煩雑にするだけでなく、低税率を悪用して儲けようとする人たちも必ず出てくる。それを防止するために制度が更に複雑になったり、納税者や税務署の作業量が増加することは、最終的には国民経済の負担増加となる。

そんな複数税率を採用するより、目的が低所得者の負担軽減であるなら、低所得者の税率を低くすることで対応するのが簡単である。現在既に低所得者の税率・税額が低くて、対応が難しければ、税額控除を採用し、納税額がマイナスになれば還付を適用すればよい。

例えば、給与所得控除を給与所得税額控除に変更するのである。給与総額300万円の人がいたとする。この人の、給与所得控除額は108万円であり、給与所得控除がなければ15万円となる所得税が7万円になっていると想定する。この人の場合、給与所得控除を廃止して、給与所得税額控除を8万円としても納付額は同じである。5%から8%への消費税負担増が6万円であるとして、それを全額埋め合わせるとすると給与所得税額控除を14万円に改訂すればよい。消費税10%での5%増加を埋め合わせるには、給与所得税額控除を18万円にして、所得税で3万円の還付をすればよい。

税を払ったり、還付を受けたりするのにその名目が同じである必要性はない。番号制でなければ管理しきれなかった税額控除制度を取り入れることができる。

3) 低額預金の利子所得税・地方税の廃止

このようなことも預金をする時に写真付きマイナンバーカードを預金窓口に提示して簡単に実施できる。現在でも、預金をする時には、身分証明書を求められるのであり、スムースに移行可能と思う。あるいは、預金の源泉所得税を確定申告で取り戻すことも考えられる。株式の場合では、売却損の他の所得との合算による節税も考えられる。土地等不動産の損失の合算(損益通算)も認めればよい。

4) 不在・不明地主対策

山林で相続登記がなされず、山林境界はおろか山林が何筆あったのか不明で、最近は山を持っていても負担ばかりで収入が見込めないと、相続に困難が生じているとの話を聞く。山が荒れる。手入れをしない山による災害がこれから増加する可能性がある。そのような山林の保有者を捜し、登記の実施を図り、責任体制を明確にすべきである。

なお、所有者の不在・不明現象は、都市部でも起こりつつある。起こっている。1950年代、60年代あるいはそれ以前に建築された都市部の家屋でも世代毎の住居となったことから、親が死ぬと空き家になり、放置される現象が生じている。相続登記をすると、それだけで20万円近い出費が必要であったりする。家屋も残しておけば、固定資産税の減免を継続できたりする。日本の、登記制度では、相続登記をせずに、この世に存在しない死人が不動産を所有していても、それに対する罰則がない。

そんな状態では、都市開発を含め、公共の利益の確保に問題が生じる可能性がある。番号制になれば、死者とその関係者も把握が容易となる。権利義務関係の相手が明確になり、法務省に正確な所有者の把握する事務執行の義務を求めることができる。

5) 生活保護

不正受給と生活実態の把握が問題視されることがしばしばあるが、番号制により、認定についても、支給についても活用できると考える。また、ボーダーラインの人についての調査やボーダーラインの人に対する支援策を考え、何か支援を実施する際にも役に立つと思う。

6) 情報漏洩

情報漏洩を懸念する人も多いと思う。しかし、情報漏洩は対策によりほぼ防止することができると考える。番号制は、デジタル情報である。端末で引き出すわけで、端末操作に捜査する人のマイナンバーカードをスキャンさせないと動かないようにし、操作の内容や取り出した情報を全て記録されるようにする。これを監視する制度も置くといったようなことの対策もあると考える。少なくとも、情報処理の専門家が十分な対策を施すことが実施にあたっての当然のことと考える。

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2013年3月 3日 (日)

医療ツーリズム・医療国際化

次の記事がCBnewsにあった。

CBnews 3月28日 医療ツーリズム、外国人受け入れ体制整備を- 専門家らが国内外の状況解説

様々な課題が存在するのであり、医療ツーリズムを良いことだとして単純に推進するのではなく、課題を整理し、国民が納得して進めるべきと考える。

例えば、国内では発生していない感染症が入ってこないように防御する態勢を整備することも重要だし、国内で医療の需要・供給関係はどうなのか、余力がある地方や医療機関も存在するとは思うが、医療サービスが十分でないとしたなら、どうすべきなのか?個々の医療機関が、それぞれの判断で医療ツーリズムを受け入れるのは問題はないと思うが、政府として推進すべきものではないと私は思う。そんな変なことを述べていた首相がいたが、納得いかなかった。地方自治体が観光宿泊業者の利益や地方活性化として取り組んでいる場合もあるが、その結果としてその地方の医療サービスが影響を受けるのであれば、地方自治体が推進するのは問題があると思う。

勿論鎖国をすることなく、外国人は日本の公的医療保険適用外であり、サービスに見合う正当なる対価を得て、医療を提供し、またシンガポールやタイなどと競争して医療の水準が上がることは良いことであり、医療も国境を越えたグローバル化の時代に即すことが、国民に対する医療サービスの向上にも最終的にはつながると思う。TPPで、日本の医療制度が壊れるとの意見があるが、そのおそれは日本の医療保険制度であり、TPPとは別の課題として、日本の医療保険制度のことは日本人が決めていく必要がある。

CBnewsが触れている不法滞在者に対する医療サービスは、どうあるべきか?緊急搬送の患者を断るわけにはいかない。不法滞在者の多くが日本での就労者であるとすると、当然そこに、その不法就労により利益を享受している人が存在しているはずである。不法就労の罰則強化と不法就労雇用主(間接雇用主も含め)の医療費支払い義務の強化を図るべきと思う。

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