マイナンバー法案の国会提出
マイナンバー法案が3月1日に政府より国会に提出された。
日経 3月1日 「マイナンバー」16年から 税や年金手続き簡単に 政府が法案提出
法案の名前は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」であり、概要、要項、条文は次の内閣官房のWebからDownloadすることができる。
産経には、民主政権時代の法案とほぼ同じであり、民主党も法案に賛成すると細野幹事長が述べたと報じている。(この3月2日MSN産経ニュース)今国会で成立し、日本も先進諸国に近づいたと思う。番号法について、更に思うことには、次のようなことがある。
1) 合理的な税制度と税執行
税は政府から見ると取り上げる(徴収する)モノであるが、人民と企業から見ると払う(納付する)モノである。政府の税の使い方という問題とは別に、公平な税制と税執行(徴収・納付)は身近な損得問題であり、公平さが保たれていないと悪人が得をして、善人が馬鹿を見ることになる。税の公平を保つ上で、番号制は重要なインフラであり、これを活用して税の公平を推進していくべきと考える。
2) 消費税の負担を所得税で軽減または還付
消費税で食料品の税率を低くすると言った複数税率案を唱える人達がいる。しかし、複数税率は手続きを煩雑にするだけでなく、低税率を悪用して儲けようとする人たちも必ず出てくる。それを防止するために制度が更に複雑になったり、納税者や税務署の作業量が増加することは、最終的には国民経済の負担増加となる。
そんな複数税率を採用するより、目的が低所得者の負担軽減であるなら、低所得者の税率を低くすることで対応するのが簡単である。現在既に低所得者の税率・税額が低くて、対応が難しければ、税額控除を採用し、納税額がマイナスになれば還付を適用すればよい。
例えば、給与所得控除を給与所得税額控除に変更するのである。給与総額300万円の人がいたとする。この人の、給与所得控除額は108万円であり、給与所得控除がなければ15万円となる所得税が7万円になっていると想定する。この人の場合、給与所得控除を廃止して、給与所得税額控除を8万円としても納付額は同じである。5%から8%への消費税負担増が6万円であるとして、それを全額埋め合わせるとすると給与所得税額控除を14万円に改訂すればよい。消費税10%での5%増加を埋め合わせるには、給与所得税額控除を18万円にして、所得税で3万円の還付をすればよい。
税を払ったり、還付を受けたりするのにその名目が同じである必要性はない。番号制でなければ管理しきれなかった税額控除制度を取り入れることができる。
3) 低額預金の利子所得税・地方税の廃止
このようなことも預金をする時に写真付きマイナンバーカードを預金窓口に提示して簡単に実施できる。現在でも、預金をする時には、身分証明書を求められるのであり、スムースに移行可能と思う。あるいは、預金の源泉所得税を確定申告で取り戻すことも考えられる。株式の場合では、売却損の他の所得との合算による節税も考えられる。土地等不動産の損失の合算(損益通算)も認めればよい。
4) 不在・不明地主対策
山林で相続登記がなされず、山林境界はおろか山林が何筆あったのか不明で、最近は山を持っていても負担ばかりで収入が見込めないと、相続に困難が生じているとの話を聞く。山が荒れる。手入れをしない山による災害がこれから増加する可能性がある。そのような山林の保有者を捜し、登記の実施を図り、責任体制を明確にすべきである。
なお、所有者の不在・不明現象は、都市部でも起こりつつある。起こっている。1950年代、60年代あるいはそれ以前に建築された都市部の家屋でも世代毎の住居となったことから、親が死ぬと空き家になり、放置される現象が生じている。相続登記をすると、それだけで20万円近い出費が必要であったりする。家屋も残しておけば、固定資産税の減免を継続できたりする。日本の、登記制度では、相続登記をせずに、この世に存在しない死人が不動産を所有していても、それに対する罰則がない。
そんな状態では、都市開発を含め、公共の利益の確保に問題が生じる可能性がある。番号制になれば、死者とその関係者も把握が容易となる。権利義務関係の相手が明確になり、法務省に正確な所有者の把握する事務執行の義務を求めることができる。
5) 生活保護
不正受給と生活実態の把握が問題視されることがしばしばあるが、番号制により、認定についても、支給についても活用できると考える。また、ボーダーラインの人についての調査やボーダーラインの人に対する支援策を考え、何か支援を実施する際にも役に立つと思う。
6) 情報漏洩
情報漏洩を懸念する人も多いと思う。しかし、情報漏洩は対策によりほぼ防止することができると考える。番号制は、デジタル情報である。端末で引き出すわけで、端末操作に捜査する人のマイナンバーカードをスキャンさせないと動かないようにし、操作の内容や取り出した情報を全て記録されるようにする。これを監視する制度も置くといったようなことの対策もあると考える。少なくとも、情報処理の専門家が十分な対策を施すことが実施にあたっての当然のことと考える。
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