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2013年4月30日 (火)

米紙ワシントンポスト社説の安倍晋三発言批判

次のワシントンポストの4月27日社説(The Post's View)における安倍晋三批判を読んだ。日本の新聞社説では、ここまで明確に政治家の姿勢を批判することはないように思う。読んで、頭の中がすっきりとなった気がする。

April 27 Washington Post (by Editoral Board) Shinzo Abe’s inability to face history

まずタイトルからして「安倍晋三の歴史認識不能」であり、日本の一般紙ではつけないと思った。

「侵略の定義は学問上も国際的にも確立されていない。国家間の出来事は、見る側により異なる。」(The definition of what constitutes aggression has yet to be established in academia or in the international community. Things that happened between nations will look differently depending on which side you view them from.)

との国会での発言に関連してである。

この国会発言とは、4月26日の衆議院内閣委員会における赤嶺政賢(日本共産党)委員の質問に対する答弁と理解する。(衆議院TV 4月26日 内閣委員会)赤嶺委員による村山談話の踏襲についての質問に対して、首相は明確な答えを述べていない。

首相の答弁に「侵略の定義は学問上確立されておらず諸説ある。」との発言はある。これに対して、赤嶺委員は国連総会決議3314で明確であると詰め寄って終わっている。ちなみに、国連総会決議3314とは1974年12月14日の「侵略の定義」(Definition of Aggression)であり、ここにある。添付(ANNEX)に記載の定義を承認するとの文章があり、ANNEXが続いている。なお、ANNEXのみの日本語訳はここにあった。

ところで、ワシントンポストの社説の論評のどの部分に一番感心したかというと、社説の最後の部分(以下に抜粋)である。

An inability to face history will prejudice the more reasonable goals to which South Korea and China also object. Mr. Abe has valid reasons, given the defense spending and assertive behavior of China and North Korea, to favor modernization of Japan’s defense forces. He has good reason to question whether Japan’s “self-defense” constitution, imposed by U.S. occupiers after World War II, allows the nation to come to the aid of its allies in sufficient strength. But his ability to promote reform at home, where many voters remain skeptical, and to reassure suspicious neighbors plummets when he appears to entertain nostalgia for prewar empire.

この社説から思うことは、平和を追求するには、近隣諸国を含む他の国々と相互理解を深めることが第一の出発点としなければならないことである。そのためには、過去の歴史を正しく認識する必要がある。相手を尊重することは、ビジネスにおいては、初歩の初歩である。軍備増強で平和がもたらされる訳ではない。

4月23日のNY Timesの社説はJapan’s Unnecessary Nationalism「不必要な民族主義」と自民党議員の靖国参拝を批判していた。(ここ

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2013年4月29日 (月)

2020年東京オリンピックの可能性ほぼ消滅

2020年東京オリンピック開催の可能性は、消滅したと思った。次の記事からである。

4月29日 時事ドットコム 猪瀬都知事、他候補を批判=20年五輪招致への影響も-米紙

「米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は26日付で」というわけで、NY Timesを見ると次の記事のようである。

NY Times April 26 In Promoting His City for 2020 Games, Tokyo’s Bid Chairman Tweaks Others

”Tweak”とは、「ひっぱる」とか「つねる」という意味であるが、記事本文には、次の文章がある。

But Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classes.”       

イスラム諸国が共有しているのはアラーの神だけで、彼らは互いに争っている。彼らの国には階級がある」との発言は、オリンピックを誘致しようとする都市の知事として完全に失格であるばかりか、人としても発言してはならないことである。

私も、イスラム教の信仰を持つ多くの人を知っている。男も女も全て、人間として、すてきな人です。イスラム教とは、神の前で平等であると同時に、この世においても、格差の少ない平等な社会を目指している宗教であると私は思っています。

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主権回復とは、変ではないか

政府は「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」(これ)を実施した。60年の節目というが、1952年からは61年の計算になるはずだし、そもそも主権回復とは、変である。日経記事は次の通り。

日経 4月28日 政府主催で初の「主権回復」式典 4野党や沖縄知事は欠席

1) サンフランシスコ平和条約は何と書いてあるか

サンフランシスコ平和条約第1条には「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」とあり、それまでから存在していたのであり、この条約で回復したのではなく、認めたのであり、領土・領海も同じである。英文では、この箇所は”The Allied Powers recognize the full sovereignty of the Japanese people over Japan and its territorial waters.”であり、日本国の領土と領海に関する日本国民の統治権を再認識したのである。

そもそも、サンフランシスコ平和条約は大東亜戦争終結による平和条約であり、戦争を終結して外交関係を結ぶための条約である。主権回復と言えば、それまで主権はなかったことになる。

(注)サンフランシスコ平和条約の日本語はこのWeb、英語はこのWebを見ました。

2) 日本国憲法

サンフランシスコ平和条約で主権回復なんて言ったら、国民と昭和天皇を馬鹿にしてる気もするのである。日本国憲法の前文は、次の文章で始まる。

日本国民は、・・・・・、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

日本国憲法は、1946年11月3日の公布で、1947年5月3日から施行であり、1951年9月8日に調印されたサンフランシスコ平和条約より前である。憲法において、日本国民が主権の存在を宣言したことは極めて重視すべきことと考える。

なお、日本国憲法の前に日本に主権はなかったのかと言えば、当然存在し、言葉として主権とは言わなくても主権は存在した。だから、江戸幕府も条約を締結したし、法に相当するものを制定していた。明治憲法(大日本帝国憲法)、第1条の「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」というのも、日本に主権・統治権が存在するとの考え方である。

3) 沖縄・奄美

サンフランシスコ平和条約が戦争終結平和条約であるから、当然領土と領海についての条約による取り決めが存在する。第2条においては、朝鮮の独立承認や朝鮮、台湾、千島、樺太他の権利の放棄等が述べられている。第3条には、北緯29度以南の南西諸島他について米国が行政、立法、司法に関する全権利を有することが述べられている。(北緯29度とは、奄美大島の少し北方であり、奄美群島は北緯29度以南である。)

条約であることから、妥協をせざるを得ない部分は生じる。切り捨てられたと感じる人々が存在する以上、政府や政治家が自慢をして喜ぶのは仕方がないとして、国民までが喜ぶようなことではないと思う。

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2013年4月26日 (金)

天然ガス輸送タンカーが爆発?

一瞬まさか?と思ったのですが、日経のWeb動画ニュースに次のタイトルと説明があったのです。(リンク方法は分からないので、文書をそのまま掲げます。)

天然ガス運搬船が連続爆発 米国
 米南部のアラバマ州モービルを流れる川で24日、天然ガスを運ぶ船2隻が複数回にわたって爆発した。地元の消防によると、3人が負傷して病院に運ばれた。爆発の原因は不明。

天然ガスは、船で運ぶことは、ないからです。天然ガス(メタン)は、同じ圧力・温度であれば、空気の半分強の重量なので、普通にタンクで輸送するには、効率が悪すぎるのです。パイプラインでの輸送が一般的です。地下にある天然ガスが採掘されている米国では、天然ガスパイプラインがはりめぐらされており発達しています。

NY Timesの記事は次です。

April 25 NY Times Explosions on River in Alabama Injure 3

The barges contained “raw” gasoline that had no additives, according to the Fire department .” と書いてあり、ガソリンのことを米国人はガスと呼ぶことが多くあり、そのために、この間違いが生じたのだと思います。なお、今回の事故発生はバージ(この米国語の意味も日本語のバージとは異なり、エンジン推進の小型船舶のことかも知れません)の修理中に発生しており、"raw" gasoline(ガソリンにする前の液体燃料と思いますが、NGL・コンデンセートかも知れません)は積んでおらず原因は今のところ不明とのことです。

NHKも同じ間違いをしていました。

NHK Newsweb 4月25日 米 天然ガス運ぶ船が爆発

但し、この記事NHK Newsweb 4月25日 米 爆発はガソリン原料運搬船(訂正?)を少し後で出していました。しかし、わざわざ記事の中で「消防は当初、はしけ船が運んでいたのは天然ガスだと発表していましたが」なんて書いて、誤報の上塗りにならないかと思いました。

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2013年4月24日 (水)

OECD報告書の日本経済についての提言

このロイター記事 4月24日 OECDの対日政策提言、有用と認識=甘利経済再生相は、「甘利大臣はOECD対日審査報告書での政策提言は有用なものと認識していると伝えた」と報じている。この日経記事 4月24日 OECD事務総長「農業改革推進を」 経財相を訪問 は、少しニュアンスが異なるが、実質は同じであり、ロイター記事の伝えるような会話があったと思う。

OECD報告書は、この日経記事 4月23日 OECD 対日経済審査報告の主なポイント(一覧)に概略がある。実際のOECDの発表は、この4月23日OECD News Japan is poised for expansion but must curb government debtである。

OECD発表におけるJapan is poised for an economic expansionとの部分は、「日本は経済成長に向けて尽力を開始した。」との意味に私は受け止める。続くbut long-term growth prospects remain contingent on additional efforts to revitalise the economy and reduce unsustainable levels of public debtと言う部分については、やはり真剣に受けとめるべきと考える。

OECD発表にグラフがあり、Japan must address unsudtainable public debtとは「持続不可能な公的債務問題に取り組む必要有り」との意味に理解するが、公的債務問題は重要であり、政府が倒産する時とは、極めて恐ろしい事態です。短期的に浮かれていても良いのであるが、長期的な取り組みは必要である。債務から資産を差し引いた純債務のグラフを書いてみた。(OECD発表のリンクにある巨大債務国としてのギリシア、イタリア、アイスランド、ポーランドに加え、標準的な国の一例としてドイツのデータをOECD資料から付け加えた。)

Publicdebtoecd20134_2
ギリシャより低いとして安心すべきではないと考える。そもそも金融資産を差し引きした純負債額がプラスであると言うことは、債務超過であるということに近い。フィンランド、ノルウェイ、スウェーデンと言った北欧諸国のように負債より資産が大きい国も世界には存在する。日本丸は、どうなるのか、「船頭多くして船山に上る。」なのか無責任体制なのか、そんな体制のことを議論するより、実際にどうすべきかを議論する方が建設的と思う。

なお、OECD報告書の全文は、読むだけであれば、次の絵をクリックすると無料で読むことができる。

OECD Economic Surveys: Japan 2013 | OECD Free preview | Powered by Keepeek Digital Asset Management Solution

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2013年4月22日 (月)

核燃料サイクル 次世代原発

朝日新聞4月22日の社説は、「核燃サイクル―もはや机上の空論だ」と題して、現核燃料サイクルを批判し、転換を求める社説を掲載していた。

何を求めているのか、全体像が今ひとつ明確ではなく、読んでも論点がよく理解できなかった。国際公約との言葉も出てきて、国際公約を破るとは何であろうか?使用済み核燃料をMOX燃料に加工して、一方でMOX燃料の利用の目処がないことを、そのように使っていると思える。しかし、廃棄の目処のないまま、プルトニウムとして保管していても、朝日の用語では国際公約違反となるはず。そんな小手先のことではない、本質問題を論じるべきと考える。

原発は運転をすれば核廃棄物(プルトニウム他)が生まれる。従い、MOX燃料の議論以前に使用済み各燃料の処分の方が問題であるはず。原発問題とは、放射能問題があるが、同時にエネルギー問題であり、そして核兵器問題である。本当に解くのが難しい問題である。

例えば、東日本大震災の前である2010年3月24日に原子力発電の輸出と題してブログを書いた。その当時「ゲイツ氏、東芝と次世代原発 私財数千億円投入も」というニュースがあったことから、書いたのであるが、この次世代原発とは、劣化ウランを主燃料とし燃料交換無しで運転するTraveling Wave Reactor(進行波炉)と呼ばれる原子炉である。同じような原子炉に、トリウム原発もある。トリウム原子炉もトリウムを燃料とし燃料交換無しで、使用済み燃料は、廃炉後も原子炉の中で保管管理する。放射線が強すぎて、核兵器への転用が困難であることが、核兵器消滅へ向かうと期待する人もいると理解する。果たして、何を次世代のエネルギー源として利用することになるのか、よく分からないのであるが、様々な可能性を求めて行かざるを得ないと思う。

なお、朝日新聞の社説は翌日になるとWebでは有料会員のみが読めることになるようである。朝日新聞は、有料化を進めているが、そんなことで良いのだろうかと思う。記事の内容が一番重要と思うが。

2010年3月24日のブログに日本のプルトニウムを含む核燃料物質の量についての表を原子力委員会資料と電気事業連合会資料から抜き出して掲げており、参考として再度掲載しておきます。

Photo 

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2013年4月20日 (土)

選挙制度改革

「0増5減」法案は、19日の衆議院政治倫理・選挙制度特別委員会において自民と公明の賛成多数で可決し、13日のブログで書いた野党の反対で参議院で採決されなくても、会期末の6月26日までに成立するストーリーで進んでいるようである。

日経の19日の記事は次である。

日経 4月19日 「0増5減」法案、特別委で可決 23日にも衆院通過へ

日経記事に、みんなの党と共産党は出席して反対したが、民主党と日本維新の会、生活の党は欠席とある。欠席した党の人たちについては、短期的な課題と長期的な課題を同一レベルで扱い、党利党略を優先しているとしか思えず、私としては理解に苦しむ所である。主権者である国民の意見を何よりも尊重すべきであるが、未だに政治指導を標語とする政治家・独裁者を理想と考えているのだろうか?

一人一票実現国民会議が、意見広告を新聞に掲載している。掲載日は、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞(大阪版)が20日(土)であり、朝日新聞(大阪版)、毎日新聞(西部版)、産経新聞(東京版)、読売新聞が21日(日)で、日経が22日(月)とのことである。

一人一票実現国民会議の意見広告に「例えば」としているが、おもしろい提案が記載されていた。

13日のブログでは、議員以外の人がケーキを切る人となり、原案を作成するイメージを浮かべていた。一人一票実現国民会議の意見では、比例180議席を衆議院のブロック比例制で、現小選挙区の300議席を全国一区の非拘束名簿方式比例代表制で選出するので、全て比例代表による選出となる。この制度で選出した議員に十分な議論をさせて主権者である国民の意見が反映される議員の選出となる新制度の立法を計るという提案である。

一人一票実現国民会議の提案をケーキを切る人と考えてもよいのだろうと思う。(当該部分(IV国家賠償訴訟の3)は、次のボックスに転記した。)

例えば、国会は「憲法は、人口比例選挙を要求している」と明言する最高裁判決に従うために、下記のわずか2ヶ条の1ヶ月の時限立法を立法できる。

1条: 現行公選挙法の、衆院の300議席の小選挙区割り規定を廃止する。
2条: 有権者は、300人の衆院議員を参院選の比例代表制(全国一区)と同一の選挙制度で選出する。

 衆院は、同時限立法施行日以後1ヶ月以内に、解散されるであろう。同法の下で新たに選出された国会議員が、時間を掛けて、十分議論をした上で、憲法の要求する人口比例選挙の選挙区割り(小選挙区制、中選挙区制、大選挙区制、等等のいずれでもよい。)を定める本格的改正を行えばよい。

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2013年4月17日 (水)

都バス24時間運行が良いのだろうか

なぜ都バスを24時間走らせる必要があるのだろうかと思った。

朝日 4月16日 「都バス、24時間運行に」 一部は年内実施、猪瀬知事

様々な疑問がわいてくる。発言をした知事は、誰にでも分かるように、数字付きのデータや予測を示して説明をすべきである。

疑問1 必要性

都バスなので、現在の路線を走ることになり、郊外には向かわず、23区内が主体と理解する。利用者は誰になるのか?なぜバスを走らせる必要があるのか?

疑問2 採算性

朝日の記事には、「片道1時間1本程度」とあり、利用状況によるし、料金設定にもよるが、採算性はどうなのか?赤字となるリスクもあるわけで、もし必要性が低いのであれば、リスクある事業に税金を投入する必要性はなく、止めるべきである。

疑問3 都営事業の必要性

民間バス事業者が、その会社の判断で、深夜運行をすることに基本的な問題はない。しかし、都営事業であれば、知事判断ではなく、都民判断で実施されるべきであり、そのための詳細な情報提供は欠かせない。安易に都営事業とするより、深夜時間帯については、民間事業者に東京都が保有している事業権の使用を認めて民間事業とする方が、合理的であると思うが、なぜ都営事業とするのか?

疑問4 他の旅客運送との関係

例えば、タクシー業界に与える影響はどうか?六本木-渋谷間のバス運行を考えた場合、六本木からバスに乗って、渋谷まで行って、渋谷から先はどうなるのか。交通は、特に公共交通は、線ではなく面に広がった交通網であり、都営バスの特定路線が24時間運行することに、どんな意義があるのか?

疑問5 バス運行労働者

都営バスだからスト権がない都職員で、知事が言えば、言うことを聞く(聞かざるを得ない)人だから、バス運行労働者(運転手のみならず運行に係わる人たち全員)の意向は、聞く必要はないと言うのだろうか?深夜労働の確保のために、昼のバス運行が減少するのか、都職員を増員するのか、このあたりもよくわからないのであるが。

次々と疑問が浮かんできて困る状態である。ところで、本来なら都民に発表することと思うが、なぜニューヨークで発表なのだろうか?偶然思いついたから発表したのなら、そのことについては、分かるのである。

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2013年4月13日 (土)

選挙制度改革へ動いて欲しい

政府は12日の閣議で、衆院小選挙区を「0増5減」して、1票の格差を是正する公職選挙法改正案を決定し、国会に提出したとニュースがあった。

日経 4月12日 「0増5減」法案を閣議決定 1票格差1.998倍に

日経記事には、26日までに衆院を通過させ、野党の反対で参議院で採決されなくても、会期末の6月26日までに衆院で2/3以上の賛成で再可決する政府与党の方針とある。「0増5減」は成立する可能性が高いと思う。

もう一つあったニュースが、選挙運動におけるインターネット使用の解禁である。

日経 4月12日 ネット選挙法案が衆院通過 4月中に成立へ

この機会に選挙制度改革について書くこととする。

1) ケーキの分配は切った人が一番最後

ケーキを公平に切り分ける方法は、切った人が最後に残っているポーションに手をつけるのである。自らが切って、自らが先に選ぶと、意図的に大きくしたあるポーションを自分の物とする不公平が生じ、諍いが発生する可能性がある。

選挙制度も議員が改革案をつくると自らに有利となる案しか作らない。その結果は、国民が不幸になる。国会が唯一の立法機関であり、そのことは尊重せねばならないが、案は議員以外の人が作成しても構わないのである。まずは、国会では、小手先の「0増5減」に続く抜本改革の選挙制度案を作り上げていく手順について話し合うべきと考える。

インターネットを使うことにより、多くの国民の意見を聴取することができる。日本の民主主義の制度はどのような制度であるべきか、十分話をし、意見交換や研究・検討をすべきと考える。

2) 問題ありすぎの小選挙区制

選挙制度改革として比例代表定数のみを削減する案を唱える政治団体が存在する。現実を見ることはせず、理念も理想も何もないと思える人たちと思える。過去2回の衆議院選を分析すると次のようになった。

過去2回(2012年12月と2009年8月)の衆議院選の結果の党派別当選議員数は次の表の通りである。

Shugiinelec20134a
これを党派別の得票率で見たのが次の表である。

Shugiinelec20134b_2
2012年12月の小選挙区選挙で自民党は43.01%の得票率で237(79%)の議席を獲得した。2009年8月の小選挙区選挙で民主党は47.43%の得票率で221(73.7%)の議席を獲得した。小選挙区制度の弊害が大きすぎると考える。政権交代で良いことは、ほとんどない。逆に、2009年8月の選挙後、政権党の人たちは、議論を受け付けず、マニフェストに書いてあったらからと、国民の意見を聞くことをしなかった。国民の意見に耳を傾ける政治家が欲しい。そのための一つの実現したい手段は、国民が投票したように議員が選ばれることである。

なお、参考として、投票数で議席を割り振ったらどうなるかやってみた。

Shugiinelec20134c

比例代表選出議員は、ブロック単位で議席が割り振られているので、小選挙区について小選挙区の得票率で党派別の当選者を割り振った。単なる試算なので、ブロックを採用せずに、全国1つの単位とし1人以下は四捨五入で当選者数を割り振った。現行制度との当選者数の差を議席差として表に記載した。

小選挙区制の場合、当選が予想できる議席数が見込めない場合、立候補を断念する中小政党があるので、この方法が正しいとは言えない部分はある。しかし、それでも大政党について大きな見込み違いはないはずであり、得票数と議席数を結びつけ、死に票を少なくした場合、2012年選挙では自民党は現在より108議席少なくなり、2009年選挙では民主党は79議席少なくなると言う結果が得られた。

3) 考え得る選挙制度

Dianmond Online(4月12日)に小林良彰氏が民主主義を機能不全に陥らせた「一票の格差」がもたらす3つの弊害を書いておられた。小選挙区制を一刻も早く廃止し、国民の意見が反映される民主主義を日本は樹立すべきであると考える。

なお、小林氏の書いておられる定数自動決定式選挙制度というのもおもしろいと思った。

衆議院は、徹底的に国民の投票が議席数に反映されるようにし、一票の格差を少なくすると同時に、死に票を少なくする。その一方で、参議院は1県1人枠を確保し、地域の切り捨てが生じないようにするというようなことも、衆議院選改革と同時に進めるべきと思う。2院制のあるべき選挙制度も考えるべきと思う。

ネット選挙解禁により、議員と国民とのネットによる意見交換がよりたやすくなったと思う。国民の意見を聞かない議員は当選できず、国民に自分の意見を述べると同時に、国民の意見を聞く議員が望まれる議員であると確信する。ネット選挙においては、従来の選挙区も変わって良いはずである。ネット選挙なのに、なぜ自分が住んでいる狭い地域の小選挙区に拘束されねばいけないのかと思う。遠距離でも、ネットは有効である。遠距離の候補者でも、自分が本当に投票したい人に投票したい。果たして、夢はかなわずとも、近づいてきてくれるのだろうか?

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2013年4月12日 (金)

多様性を認めることの重要性

本当は、多様性を認めるべきが、実は我々の周囲で、そうなっていないことが多いのだろうと思います。

日経BP Onlineに遙洋子さんが、『遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」』と言う題で連載を書いておられる。4月21日の周囲から嫌われても朝ごはんはおいしく食べるの内容がおもしろかった。そして、多様性を認めることの重要性なんてことを思ってしまったのです。

女性の生き方について議論をすれば、理想、現実、苦労、不満、喜び、楽しみ、要求、望み等々様々なことが思い浮かび、思っていることは人により全て違って当然と思う。不満にしても政府や社会制度に関することから、夫や子供、友人、隣人と様々にある。

それに対して、遙洋子さんが「誰かに承認されようとせず、周りが敵ばかりでも、好きに生きることを応援したい。」と書いておられたのが、愉快に思えました。

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2013年4月11日 (木)

長期のGDP推移から見た日本経済

アベノミクス効果による経済回復・活況化が期待されている現状で、統計結果から見た長期の日本経済を考えることを、この機会に試みてみました。

1) 1955年からのGDP推移

国民経済計算の統計を使って、1955年からの実質GDPとその前年比成長率のグラフを書いてみた。なお、2005年基準を採用しているが、発表されている統計では1955年からの期間について2005年基準はないので、ブログ主が調整計算をしている。
Gdp20134analysisa_2
次にGDPの推移グラフを一人当たり金額を計算して書いたのが次である。人口は、人口動態調査からです。
Gdp20134analysisb
2005年基準での一人当たりGDPが百万円を越えたのが1964年(昭和39年)、2百万円を越えたのが1973年(昭和48年)なので、当時は高度成長時代であった。1955年(昭和30年)当時の名目GDPでは一人当たり1万円に届かず、9,406円であったのです。

一方、1990年代に入ると、高度成長はストップし、90年代中頃からは実質は伸びていても名目は下がるデフレ状態になっている。デフレ=悪とまで決めるのは、行き過ぎであり、やはり1990年代からは飽和状態に近づいたと言える面があると思う。一人当たりGDPが百万円、2百万円の時代と4百万円の時代は、異なる部分があって良いはず。逆に、中国やインドが日本の1955年から1990年頃までの歴史をたどりつつあると思います。日本の役割の変化があるし、変化に対応することにより成長があると考える。

2) 支出側GDPから見ると

支出側計算からのGDPを100分比で表すと次のグラフになった。

Gdp20134analysisc

当然と言えば、そうであるがグラフの黄色で示している企業の設備投資に該当する総資本形成ー企業設備の割合が小さくなってきている。また公共投資に該当する総資本形成ー一般政府も同様に小さいと思える。そこで、この2つのGDPをグラフにしてみたのが次である。

Gdp20134analysisd

企業の設備投資が一時はGDP比20%を越えた時もあったが、今や15%にもなかなか達しない。政府の公共投資であるが、かつては道路を含めインフラ整備が中心であった。インフラ整備の結果、民間の企業活動の拡大を可能にした。1990年代中頃から民間の設備投資はGDP比15%を切った状態になった。その状態で、政府の設備投資が景気刺激策としての有効性はやはり以前と同等にはならず、低くなっていると考える。なお、設備のメンテナンス、取り替え、再建設は必要であり、民間にしろ、政府にしろ設備投資や公共投資がゼロになることはない。

GDPの100分比のグラフを見て、政府最終消費支出が増加を続けていることが分かる。政府最終消費支出には、健康保険の政府(税)負担分のように国民の財布を経由せずに支払われ受益者は国民であるが支出者は政府という支出が含まれている。国民経済計算では、支払者を基準にしているが、受益者を基準にした現実最終消費も金額として記載されており、最終消費支出と現実消費支出の双方の推移をグラフにすると次となった。

Gdp20134analysise

90%が税負担である後期高齢者医療制度のように政府負担の家計最終消費支出は今後とも増加していくと考えられる。消費税10%では、焼け石に水であったりして。

3) 経済活動別GDP

経済活動別GDPを見ておく。1970年からであるが、産業構造の変化が分かる。

Gdp20134analysisf

経済活動項目毎のGDP額の推移をグラフとしたのが次である。

Gdp20134analysisg

どの分野が成長産業であるかよくわかる。1990年代中頃までは、製造業が断トツであった。近年目立つのは、赤線で示した2000年代中頃から30兆円近くになった情報通信業である。次のグラフは、製造業の中での分野ごとのGDP推移である。なお、電気機械の分類には、発電機や電化製品・器具のみならず通信機械やコンピューターも含まれている。

Gdp20134analysish

これらのグラフが何かの参考になればと思います。

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2013年4月 8日 (月)

辺野古に移設するが埋め立てせずでは、どうなのか

政府は、3月22日に辺野古沿岸の公有水面埋めたてを沖縄県に提出。次の記事は3月31日の沖縄タイムスであるが、同社のアンケートに対し、県内の全41市町村長のうち36人が「評価しない」と考えていると報じている。

沖縄タイムス 3月30日 埋め立て申請「評価する」ゼロ 41市町村長

どのような進展になるのか、分かりませんが、埋め立てをせずとも、米軍普天間飛行場の辺野古移設は可能であると考えます。

1) キャンプ・シュワブ

米軍普天間飛行場の辺野古移設とは、2006年5月1日の再編実施のための日米のロードマップ(日本語外務省仮訳はここ)に「合意された支援施設を含めた普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ区域に設置するため、キャンプ・シュワブの施設及び隣接する水域の再編成などの必要な調整が行われる。」とあり、この合意に従って進んでいる。

キャンプ・シュワブ(Camp Shwab)を、Google Earthで見ると次の通りである。

Campshwab20134
青線で囲んだ部分であり、東西が1.6kmで、南北0.8kmが程度の米海兵隊の基地である。ちなみに、地図上で東西に黄色線を薄く描いており、これが1kmの距離である。

私の案は、北北東から南南西に黄緑色で線を引いており、これを新滑走路とする案である。長さは800mある。基地を東西に分断することとなるが、地下に横断道路を何本か建設すれば、対応不可能と思えない。当然、大規模工事となり、建物等もほとんど新築し直し、レイアウトも根本的に変更となるであろうから、特に問題があるとは思えない。

2) 800m滑走路(航空写真黄緑線)

800m滑走路で問題ないかという点については、オスプレイを使うのである。オスプレイは、日本国内に訓練飛行に反対する意見があるのは承知している。一方、米政府、米海兵隊はオスプレイの信頼性・軍事実用性に問題はないとしているはず。それなら、オスプレイを使用し、キャンプ・シュワブの800m滑走路案で、米側を説得することは、可能であると考える。

キャンプ・シュワブの飛行ルートについて、地元には住宅地を避けることの要請がある。従い、東西方向の滑走路は不可能であり、北北東ー南南西案が好ましい。埋め立てをしない自然環境保護を最大限努力するなら、地図黄緑色滑走路案になると考える。

3) 800m滑走路のオスプレイ使用の可能性

ここにWikiの日本語、ここにWikiの英語、そしてここにBoeing社のTechnical Specsのページがある。オスプレイ(V-22)の自重が15,032 kgであり、これに燃料が満タンクで6,513リットルなので6,000kg程度。最大垂直離陸重量が23,859kgなので、乗員、兵士、兵器、貨物の合計が2,818kgまで可能と計算される。最大積載重量がよくわからないが、15,000kgの2本つりフックがあるので、15,000kgは持ち上げれるのだと思う。

一方、わざわざ23,859kg(52,600ポンド)を 最大垂直離陸重量(Max Takeoff Vertical Weight)と読んでいるからには、これ以上の重量の場合は、滑走路を使用しての短距離離発着になると考えられる。日本語Wikiには、最大積載量を積んだ場合は垂直離着陸できない。離着陸には約487m(1,600フィート)が必要とあり、500mあれば可能なのだと思う。

そうなると800mあれば十分と思われる。

3) キャンプ・シュワブにおけるオスプレイの3月12日離発着

現実には、キャンプ・シュワブにおけるオスプレイの離発着が既に行われている。この3月17日 琉球新報の記事 低周波音 基準超え オスプレイ、国立高専裏離着陸にあります。国立高専の位置は、1)のGoogle Earthの航空写真で紫で囲んだ場所です。オスプレイが離発着したヘリポートの位置は不明だが、近くて低周波騒音が酷かったことは十分考えられる。対策は可能であると思う。埋め立てを回避できるなら、普天間からの移転が実現するなら費用の捻出は難しくないと思う。国立高専の場所を移転することによる解決もあり得ると思う。

私は、沖縄出身でもないし、住んでもいない。従い、沖縄の人たちの意見を尊重すべきと考える。しかし、文書による合意が成立し、そのなかで米海兵隊の移転が普天間飛行場の代替施設の完成と記載されており(この文書)、埋め立てをするしないに拘わらず、キャンプ・シュワブの整備はせざるを得ないと考える。オスプレイ使用による埋め立て中止が最も現実的な案と考える。

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2013年4月 6日 (土)

消費者庁の集団訴訟制度法案

山口弁護士の4月5日のブログで知ったのですが、消費者庁の集団訴訟制度法案について経団連他も拙速な立法であると批判をしています。

経団連他の提言は、次の所にあります。

3月25日 日本における集団訴訟制度に関する緊急提言

私も、この法案については、拙速であり、このような形で集団訴訟を日本に初導入することについては影響が大きすぎるように感じます。

なお、法案そのものは、未だ公表されていないと理解します。但し、制度案はここにあります。何故、特定適格消費者団体にのみ集団賠償訴訟の提起を認めるのかであり、この特定適格消費者団体とは総理大臣の認定を受けた団体に限るとなっている。実質、消費者庁の役人が暗躍する利権を得てしまうのではと思う。次の岸博幸氏が3月21日のDianmonndo onlineに書いている懸念が的を得ていると感じてしまう。

得をするのは弁護士と消費者団体だけ?日本版集団訴訟制度の法制化への懸念

集団的消費者被害救済制度として消費者庁を事務局とする研究会が2009年11月から2010年8月まで13回に渡り開催され、この報告書も作成されている。その他関連資料はこちらからDownloadすることができる。

米国のクラスアクション(集団訴訟)は、訴訟についての考え方・制度であり、消費者救済の意味はなく、あらゆる訴訟に適用可能な一般的な制度です。そのような一般的な制度を消費者救済にも使う、あるいは使うと効果的であるから使うのは、理解できる。しかし、消費者訴訟について特別に立法するなら、色々考えられると思うのです。訴訟は、裁判(司法)であり、政府(行政)の範疇ではない。政府が裁判に関与すると、三権分立を変にする。政府として被害者救済を支援するなら理解できるが、裁判を支援したり、制限したりすることは、根本的におかしいように思ってしまうのです。

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福島第一原子力発電所の事故調査

4月5日の衆議院予算委員会において自民党村上誠一郎委員が福島第一原子力発電所の事故について最初に質問をしていた。衆議院TVは、ここで9時からの部分にあります。

村上委員は、その発言の冒頭で、私が2011年4月7日に書いたこのブログで触れた3月12日の菅首相の福島原発をヘリコプターで視察に行ったことを非常識であり、ベントを遅らせ、どうして誰も止めなかったのかと批判をしていた。総理大臣であり、福島事故の原子力災害対策本部長となった菅直人を誰が、引き留めることができたのかとの疑問はあります。

当時、政府(民主党政権)は、福島原発について重大な事態には至っていないようなと思わせるメッセージを発していた。少なくとも、私は、そう受け取っていた。2011年3月13日にこのブログを書いて、「福島第一原子力発電所1号機で何かあったようですね」なんてタイトルをつけている。しかし、この3月12日15時36分は福島第一原子力発電所1号機原子炉建屋の水素爆発があった時である。

送電線を経由しての他の発電所からの電力、その発電所に設置してある非常用発電機、バッテリー電源の3つの電力を失えば、あらゆる設備は極めて恐ろしいことになる。何故なら、安全装置は作動しないか、作動しても信頼性が低い。計器も指示している値が間違っており、信頼することができない。津波の結果、福島第一原発は、この状態に至った。津波対策が不十分であったと批判しても、その後に起こりうる危険事態の防止や軽減に役に立たない。3月11日14時46分地震発生、15時42分津波到達、16時原子力安全委員会臨時会合開催、17時42分海江田経産大臣は菅首相と会談。しかし、菅首相は18時20分から与野党党首会議に出席。19時3分に原子力緊急事態宣言を発出。このように進んでいたが、19時3分からでも遅くはない。直ちに、自衛隊の出動をすべきであった。夜間かつ地上における照明がない地点においても、ヘリコプターによる人員派遣や物資輸送は、自衛隊も訓練をしていたはず。逆に、他にそのようなことを実施できる手段はない。バッテリーを輸送することもあり得たと思う。他の発電所の予備でも間に合ったと思う。そして、馬鹿げた報道を記憶している。菅首相は、情報が届かないことから、テレビを見て、判断していた。自衛隊に官邸と福島原発の直通通信の設置を命じておけば良かったはず。

福島第一原子力発電所の事故については、様々な観点から調査をして欲しい。原因究明で終わらない事故後の対応のまずさがあり、それも組織の運営や個人の性格・能力まで関係している部分があると思うからである。また当然のこととして、ルール上の問題点や改善すべきルールや追加すべきルールについての検討も含まれなくてはならない。アホが首相になっても大丈夫で安心できるルールが必要と考える。世界中には、400基以上の原発が存在する。それらの原発の運営者に対して福島から学ぶべきことを発信する義務がある。

日本国内において、新ルールの整備と併せて原発を再稼働させていくと考えるが、その場合でも、どの原発とどの原発といった個別の原発の考え方を整理しておく必要があると思う。そして、当然のことながら、超長期の廃棄物保管・処理及び核燃料サイクルについての方針を国民の合意を得て確立しておく必要がある。前政権は、大間原発の工事再開を決定したが、大間原発の核燃料装荷は国民の合意なくしてしてはならないと考える。

村上誠一郎委員の質問は、政権交代を思わせる内容であった。しかし、政権交代がなくてもあって不自然な質問や内容ではない。政権と政治は常に批判されていなければならない。政権交代の良い面を否定はしない。しかし、政権交代のためだとして国民の意思を反映しない政府を作ることには反対する。国民が参加する政府を作るべきと考える。

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2013年4月 4日 (木)

アベノミクス税制改正による経済活性化の効果

アベノミクス税制改正による経済活性化の効果は、おもしろいと思いました。次の記事からは、アベノミクスではなく、アソウミクスに訂正しなくてはいけなくなるのですが。

NEWSポストセブン 4月4日 接待減税打ち出した麻生財務相に「麻生様々ありがとう」の声

考えてみたいと思います。なお、盛り場の経営者ママさん、ホステスさんは、文句なしで歓迎で良いと思う。以下は、飲食業以外の事業経営者の立場での記載です。但し、飲食業の人にも、参考にはなると思うので読んで頂きたいと思います。

1) 交際費等の損金不算入の改正内容

租税特別措置法61条の4に交際費等の額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないと定められている。但し、条文の中に括弧書きがあり、資本金が1億円以下の法人については、交際費等が年6百万円以下の場合は、年間交際費の10%を、年6百万円以上の場合は、60万円と6百万円以上の交際費額が損金にならずであった。法人税がその対象であり、結果、地方法人税と事業税も対象になった。

2013年3月30日公布の法改正により租税特別措置法61条の4については、資本金が1億円以下の法人(以下、中小法人と略す。なお、資本金1億円は含まれる。)については、交際費等が年8百万円以上の場合に限り、年間8百万円を超過する分の交際費額を損金にしないことになった。

2) 節税金額

8百万円以下は、全額損金扱いになったのであり、昨年度まで5百万円の交際費を支出していた中小法人は次の金額の税金が少なくなるのである。

  5百万円 X 10% X 税率

税率については、所得金額8百万円以下の場合は措置法42条の3の2により15%であるが、復興特別税があり、地方税と事業税にも影響するので、低い場合は28%程度である。税率は所得金額が大きければ高くなり、38%程度になると思う。結果、5百万円の場合は、14万円から19万円の範囲と思う。

もし年1千万円の交際費を使っていたならば、73万円から99万円程度の節税となる。確かに、節税額としては大きく、経済活性化の効果は期待できるし、会社の接待関係の利用が多い飲食店は、歓迎する今回の税改正である。

3) 留意点

資本金が1億円を超える会社には、適用されないが、資本金5億円以上の会社の子会社にも適用されない。

なお、そもそもの前提として、赤字で法人税を支払っていない会社にも、適用はされるが、税金を払っていないので、節税にはならない。但し、将来に利益計上が期待される場合は、繰越欠損金の金額を大きくすることができるので、将来の節税にはなる。

更には、もう一つ重要な点ですが、交際費の支出とは、同額のキャッシュが社外に流出することであり、企業からすると、減税があるので、支出増をすべしと簡単にはならない。例えば、競争相手に勝たねばならずと取引先を接待する必要がある場合、競争相手も同じ中小法人であった場合、結局は消耗戦が激しくなるだけ。喜ぶのは、飲食店となりかねないのである。支出には、十分その効果を考えて実行すべきであります。

くだらないことですが、4月1日から施行であるが、4月1日以後開始する事業年度からなので、12月決算の会社の場合は、2014年1月からの適用となる。

4) どうだろう雇用者給与増加額による節税

2013年3月30日公布の法改正により租税特別措置法42条12の4として雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除が新設された。内容は、2012年4月から2013年3月までの人件費を基準とし、この基準人件費より5%以上人件費が増加した場合、増加額の10%を法人税額から3年間控除するという制度である。但し、最大控除額は法人税額の10%(中小法人の定義が少し広くなってはいるが、中小法人の場合は20%)まで。事業年度が4月-3月でない会社は、期間対応がずれて適用される。

源泉徴収税や社会保険負担額を差し引く前のグロス支払額が基準となる。但し、雇用者給与には、役員に対する給与は含まれない。しかし、パートや非正規雇用・臨時雇用も含まれ、会社が賃金台帳に記載している使用者が、全て対象となる。雇用者人数の変動は人員数・月数で割り算をして計算をする。

例として、1億円の給与を支払っている場合を考える。5百万以上増えれば良く、ボーナスで増加することになっても良い。3年間毎年計算するので、2年目が4百万の増加であった場合は、2年目は適用されない。5百万円の10%である50万円の節税となる。中小法人の交際費の場合は、支出額に加えて発生する税が節税になるのであるが、こちらの雇用者給与増額は増額した場合に10%は法人税額が減額される税金が給与負担をしてくれるというありがたい話に思える。但し、適用は中小法人でも法人税額の20%が最大なので、50万円が20%に相当するには250万円以上の利益を人件費増加後も計上している必要がある。

5) 評価

アベノミクス特有の実際の効果より、ムード的な相乗効果による期待感をふくらませるデフレ脱却期待を感じる。雇用者給与増額は、労働者側からしても面白い。5%の賃上げではなく、4.5%の負担で済むではないかと主張できる。会社の方も、余裕があるなら、これを機会に今年はボーナスを増やしてとインセンティブを掲げて、事業の改善、効率化、拡大を働く人たちに提案して、目標を示しやすい。目標を示して、達成時のボーナスを約束できる機会かも知れない。

但し、大前提がある。黒字であって恩恵に属せるのである。ここに3月に国税庁が発表した「平成23年度分「会社標本調査」 調査結果について」がある。72.3%が欠損法人であり、直前年度の欠損とは限らないが、繰越欠損(損失)金を抱えている会社である。欠損法人割合を業種別に見ると繊維工業は81.5%で欠損法人割合が高いが、それ以上が料理飲食旅館業の83.7%である。逆に、欠損法人割合の低いのは、その他の法人45.8%であるが内容は不明であり、分類項目にあるなかでは、67.4%の不動産業が欠損法人割合が低い。但し、それでも、半数以上は欠損法人である。

いずれにせよ、せめて、ムードだけでも明るくなりたいと思います。

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2013年4月 3日 (水)

電力システムに関する改革

2日の夕刊は、各社が電力システムに関する改革について報道している。次は、日経の記事です。

4月2日 電力改革3段階で 18~20年メドに発送電分離

閣議決定された文書は次である。(この文書では、電力システムに関する改革と題されており、これをこの言葉を本ブログ内でも使用している。)

2013年4月2日閣議決定 電力システムに関する改革方針

電力システムについての改革は必要であると考える。しかし、電気は生活においても、産業にとっても、欠かすことができない必要不可欠なモノ(眼に見えないモノとしておきます。)であり、体にとっての血液のような物質とも言える。そのように重要な事項であることから、思うことを書いてみます。

1) 原子力

この会社の報道には、「電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」に踏み切ることも盛り込んだ。」とあり、これでは発送電分離による新制度に移行するように思える。一方、閣議決定では、最終の5ページに「第3段階:法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保」とある。発送電分離について、方向性は正しいと考えるが、その姿やどこまで踏み込めるかについては、閣議決定のように、これから十分検討すべきである。

一番の課題は、原子力であると考える。原子力は、この2012年10月20日のブログ 停止中の原子力発電のコストに書いたように、原子力発電は、稼働していなくても1兆6千億円程度の費用が必要である。一方、完全自由化になれば、火力発電所や水力発電所の売却・分離が進む可能性がある。そうなると、誰も原発なんか買わないので、不良資産として残ることになる。不良資産が残った会社には、資産売却代金が入ってくるが、原発の維持費で短期間に支出されるであろう。その不良資産会社は、つぶすにつぶせない会社である。もし、原発のメンテナンスに失敗したら、津波が来ていないのに、放射性物質の飛散が生じる。何故なら、原子炉とは、放射性物質の塊であるから。廃炉にするにも、同様である。廃炉とは、順調に推移しても何十年を要する仕事である。

この毎日の3月26日の記事は、電力10社(9社と日本原電)の保有するプルトニウムの量は26.5トンと報道していた。このプルトニウムの量を重量ではなく、ベクレルで現すととなんと1100京ベクレル(0が16くっつく数字)となる。(1グラムのプルトニウムは、4400億ベクレルの放射性物質である。)そして、プルトニウムとは、この4月2日日経 北朝鮮、原子炉再稼働表明 プルトニウム抽出再開もで直接の表現はないが、核爆弾の原料となる物質です。従い、この東京新聞 3月21日 高浜原発 MOX燃料仏から輸送へ 3号機もプルトニウムの仏からの輸送について報道しているが、その日程や航路は最高機密に属し、ごく限られた人しか知っていない。プルトニウムは核爆弾になるが、1グラムで4400億ベクレルもあるので、ダーティー爆弾にも簡単になる。しかも、半減期は13300年と気が遠くなるほど長いのである。

電源開発も大間原発を建設中であるから、原発は11社となる。大間原発に核燃料を装荷しなければ、放射性物質の管理上では、現状にほぼ近い。この11社の責任であると発言して押しつけても何も解決しない。運転を再開しても、プルトニウム問題を含め核廃棄物問題は何も解決しない。「一義的には電力会社の責任である」なんて発言しても、上に向かって、つばを吐いているだけで、自分にはね返ってくる。電気料金と税金で負担する以外になく、その割合や、方法をどうするかの問題が残る。

2) 現状の自由化

50kW以上は、既に自由化されているのである。マンションの場合、管理組合で契約すれば、その地域の電力会社以外から電力を購入することが今でも可能である。電圧は6000V以上になるので、変圧器を管理組合が用意する必要があるが、そんなことは新電力会社がメンテナンスを含めて斡旋してくれる。

このような制度であるにも拘わらず、新規参入電力会社(PPS)のシェアは低い。しかし、かといって、無理に一般電位事業者9社(沖縄を除く北海道から九州まで)の発電所を分離していくと、1)で書いたような原子力問題の解決が直ちに必要となる。

2011年4月から2012年3月までの沖縄電力を含めた10社と新電力(PPS)及び自家発電の電力供給量は、次の表の通りであった。

2011fypowersupply_3

更にこの新電力PPSの電力会社別の内訳を見てみる。資源エネルギー庁の電力統計が2013年1月データまで発表されているので、2011年4月から2013年1月までの毎月のPPS各社の電力送電端供給量をグラフに書いた。

Ppspowersupply201112

PPSと称する電力会社の数は、2013年1月の統計で34社存在するが、上のグラフでは赤で示したエネットが2013年1月でも2011年4月から2013年1月までの全期間でも50%のシェアを持ち寡占状態にある。エネットのホームページは、ここにある。NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスの3社を親会社とする会社であり、上場されておらず、会社内容はほとんど公開されていない。エネットの発電所には、東京ガス扇島パワー(810MW)、東京ガス川崎発電所(800MW)、大阪ガス泉北発電所(1,100MW)等がある。ガス会社の発電所であり、LNGを燃料とした火力発電であり、実態としては、発電設備が少し小さいので、一般電気事業者より発電コストが少し高いと思われる。それでも他のPPSよりずっと大きな設備であり、他のPPSと比較すると発電コストは安い。

自由化したが、結局はガス会社のみという皮肉な結果なのだと思う。但し、競争原理は既に存在するわけで、これを合理的に発展させるにはどうするのかを検討すべきである。例えば、空売り、空買いが生まれたり、約束した電力量と実際の供給電力量に差が生じ、その結果は、停電が多くなったりする可能性がある。供給・消費を含め契約と実際の差に対する罰則規定の問題等もある。

現状では、エネットは、原子力という負債を持っていない分、会社としては安いコストが出せる。一般電気事業者には、kWhあたり2円弱の原子力負担費用がある。これを、PPSを含め電力のユニバーサル原子力負担費用とすべきかも知れないと思う。

3) 送配電事業

送配電事業と言うが、単に電線があれば、事業が可能と言うことではない。例えば、誰が新規投資をするかは、市場が存在し、事業投資とリターンが見合えば投資が成立すると言えるが、土地価格が高い日本で、それがうまくあてはまるのか疑問があると思う。

現在は発電所への給電指令と送電線の運用は一般電気事業者の中央給電指令所が実施している。送電網を拡充するにしても、技術的に複雑な面もある。例えば、中部電力と北陸電力が繋がっている500kVの送電線が存在するが、共に60Hzであるにも拘わらず、300MWの交直変換器が南福光連系所に設置されており、直流を通じての連係である。理由は、関西電力を経由した電力とのループを断ち切るためである。このあたり、交流であることと電力が流体のようにバルブで流量調整をすることができないことが関係していると思っていただければよいのではと思う。

新規住宅団地の開発をして、そこへの配電線は、ディベロパーがすることになるのだろうと思う。ところで、自由化は電力が安くなることかと言えば、基本的には強い者はより強く、弱い者はより貧しくなるはずである。2000年と2001年に米国カリフォルニアで電力危機が生じ、停電が頻発したが、その原因についてWikiは、caused by market manipulationsをあげている。現在の日本の電力取引市場において実施されているのは、翌日物の現物取引である。

また、電力自由化により市場価格が不安定になったことから、発電事業者と電力消費者または配電事業者が直接に長期契約を締結し、市場外の長期電力取引の方が、取引電力量では多くなっている国が大部分であるとの話を聞いたこともある。

マスコミ報道には、一部の例外的な場合を伝えることもある。その内容自身は、間違いではないが、それを全体像であると思うと、誤解になることがしばしばある。日本には、日本のやり方がある。そして、その際には、外国でのルールや現状は参考になる。自由化と言っても、様々な選択肢が存在する。あせって実施することが賢明と言えないかも知れない。根本の所は、停電がないことと安いことである。

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2013年4月 2日 (火)

自治体水力の重要な役割

自治体水力は貴重な資源であると思うのだが、朝日新聞は、東京地区では1面トップで次の記事を掲げていた。

朝日4月1日 自治体の売電、入札広がらず 水力発電持つ25自治体

1面トップでなく、単に事実を述べているのであれば、反発を覚えないのだが、大新聞が1面トップで報道するには、問題がありすぎると思った。

1) 各自治体とも合理的な価格で販売しているはず

東京都は、この3月15日の発表で、株式会社F-Powerと2015年3月末までkWh当たり14.50円で販売する2年間の契約を締結したと発表した。他の自治体個別の水力発電の電力販売価格を知らないが、Webで探すとこの公明党石川県議員団は金沢市水力発電所を視察 には、「発生した電気は1kwあたり15〜20円で北電に送電」とある。そうなると、東京都は、これより安く売っていることになる。

東京電力をぶったくりバーとの表現もあったが、違約金については、その契約に関する特別な事情があったのかも知れず、契約内容を知らない以上、コメントを差し控えざるを得ない。民事裁判で決着して欲しいと思う。

2) 河川水の利用

1)の公明党石川議員団のWebに「ダムに入る水は洪水調整などを除き発電所を通過、上水道やかんがい補給に利用」とあるが、河川水は、農業、生活用水、工業用水として使われる。また、洪水調整においてダムは重要な役割を果たす。発電とは、水を流すことであるが、発電の都合のみでダムからの放水を決定することはできない。多くの場合、水利用や洪水調整の都合で流量が決まるのであり、発電は付随的である。

例として利根川上流にある群馬県企業局奈良俣発電所の2012年の発電実績を、国土交通省のダム諸量過去データから推定すると、次のグラフとなった。

Naramata2012
2012年の年間発電推定量は47,000,000kWhであった。奈良俣発電所の最大出力は12,800kWなので、年間稼働率は約42%に相当する。しかし、上のグラフにあるように、季節による差が大きいのである。1・2月は3・4月の融雪による増水を見越してダムからの放流量が多く、農業用水を放流する5・6月も比較的放流が多く、8月末からの台風シーズンに向けてはダム水位を下げるための放流がある。一方、9月以降は、2012年は降水量が少なかったこともあり、ほとんど放流はなかった。なお、放流=発電と考えれば良く、発電せずに放流することは、まれであり例えば、洪水に備えてのゲート開放のような場合に限られる。

奈良俣ダムは、水資源機構のダムであり、そこに群馬県が水力発電所を設置しており、この発電パターンの電力をユーザーに直ちに売れるかというと、無理であり、他の電源からの供給と合わせ供給するサプライヤーがミックスしてエンドユーザーには販売せざるを得ないのである。

水力発電所には、様々な水力発電所がある。例えばJR東日本には千手、小千谷、新小千谷という3発電所(合計出力449,000kW)がある。これらは調整池式であり、出力調整が容易というべきか、電車の運行・走行にあわせて発電できるのである。それぞれ電力価値も異なるし、素早い応答性から周波数安定や電圧安定という電力システムの安定に寄与し、停電を防いでいる水力発電所も存在するのである。(自治体水力では、神奈川県の城山発電所(揚水発電所)が、この種の発電所である。)

3) 水力発電所の優位性

100年以上大きな事故もなく運転されている実績があるのは水力発電所です。発電にCO2は発生せず、世界中で最も大きな割合を占める再生可能エネルギーです。(水力発電のことを日本以外のほとんどの国々では再生可能エネルギーと呼んでいます。)

朝日新聞の批判でスタートしたが、朝日の自治体リストには抜けがある。この金沢市企業局のWebにあるように、金沢市は犀川と内川に5カ所の水力発電所を保有している。犀川でも内川でも、多目的(洪水調節、かんがい用水、上水道用水、工業用水、発電)であるとしている。このような場合、電力で収入増を図るより、時には更に重要な役割を果たさねばならないことがある。

全てを総合判断の上、決定すべきである。勿論、発電について条件や制約を示し、入札で決定しても良いし、その土地の一般電気事業者と交渉で決めても良い。50%はA社、50%はB社という選択もあるかも知れない。卸電力市場取引で販売しても良いのである。

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