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2013年4月29日 (月)

主権回復とは、変ではないか

政府は「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」(これ)を実施した。60年の節目というが、1952年からは61年の計算になるはずだし、そもそも主権回復とは、変である。日経記事は次の通り。

日経 4月28日 政府主催で初の「主権回復」式典 4野党や沖縄知事は欠席

1) サンフランシスコ平和条約は何と書いてあるか

サンフランシスコ平和条約第1条には「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」とあり、それまでから存在していたのであり、この条約で回復したのではなく、認めたのであり、領土・領海も同じである。英文では、この箇所は”The Allied Powers recognize the full sovereignty of the Japanese people over Japan and its territorial waters.”であり、日本国の領土と領海に関する日本国民の統治権を再認識したのである。

そもそも、サンフランシスコ平和条約は大東亜戦争終結による平和条約であり、戦争を終結して外交関係を結ぶための条約である。主権回復と言えば、それまで主権はなかったことになる。

(注)サンフランシスコ平和条約の日本語はこのWeb、英語はこのWebを見ました。

2) 日本国憲法

サンフランシスコ平和条約で主権回復なんて言ったら、国民と昭和天皇を馬鹿にしてる気もするのである。日本国憲法の前文は、次の文章で始まる。

日本国民は、・・・・・、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

日本国憲法は、1946年11月3日の公布で、1947年5月3日から施行であり、1951年9月8日に調印されたサンフランシスコ平和条約より前である。憲法において、日本国民が主権の存在を宣言したことは極めて重視すべきことと考える。

なお、日本国憲法の前に日本に主権はなかったのかと言えば、当然存在し、言葉として主権とは言わなくても主権は存在した。だから、江戸幕府も条約を締結したし、法に相当するものを制定していた。明治憲法(大日本帝国憲法)、第1条の「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」というのも、日本に主権・統治権が存在するとの考え方である。

3) 沖縄・奄美

サンフランシスコ平和条約が戦争終結平和条約であるから、当然領土と領海についての条約による取り決めが存在する。第2条においては、朝鮮の独立承認や朝鮮、台湾、千島、樺太他の権利の放棄等が述べられている。第3条には、北緯29度以南の南西諸島他について米国が行政、立法、司法に関する全権利を有することが述べられている。(北緯29度とは、奄美大島の少し北方であり、奄美群島は北緯29度以南である。)

条約であることから、妥協をせざるを得ない部分は生じる。切り捨てられたと感じる人々が存在する以上、政府や政治家が自慢をして喜ぶのは仕方がないとして、国民までが喜ぶようなことではないと思う。

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コメント

以下、専門家でもない素人の放言ですが・・・。要するに、確たる根拠はない・単なる思いつきなのですが・・・。

元々、「主権」という概念は多様で一義的でなく、概ね下記の3つとされています。
1:最高権(対外主権)
2:統治権(対内主権)
3:最高機関の地位(最高決定力)

で、日本国憲法においても、これら複数の意味で「主権」という言葉が用いられており、ご指摘の
「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」
と言う部分は、上記で言えば「3:」の国家における最高決定力の意であると考えられているようです。

今回、自民党さんが仰る「主権」というのは、文脈から考えると上記でいう「1:」の対外主権に主たる焦点があるように思います。この点では講和条約発効まで主権はありませんでした。
「主権があることを確認する」というのは「主権の3要素の総てが完全に(部分ではなくフルセットで)存することを認める=独立国として承認する」ということと殆ど等値ですし。
あと、上記で言う「2:」の対内主権は、日本国政府とGHQによる間接的占領統治の関係から微妙かとワタクシは思います。

奄美・沖縄・小笠原については、平和条約第3条により国連憲章による信託統治領とされた(日本でも日本人でもないとされた)訳ですから、日本国の対内主権は及びません(日本国憲法以下の法体系は適用されません)し、当然最高決定力も日本国とは別になります。
この点から言うと、沖縄が切り離されたという言い方は間違いではないでしょう。已むを得ざる仕儀の結果としても。

今回問題が拗れていることの一つに、この「主権」という概念の多様性があるのではないか?と思っています。

投稿: 秘匿希望。 | 2013年4月29日 (月) 12時34分

秘匿希望。さん

コメントをありがとうございます。

サンフランシスコ平和条約は、戦争がやっと条約上で終了し、多くの国に国家として認めてもらえるようになり、「主権」を他の国からも認めてもらった。従い、主権回復だとしてお祝いしても良いかも知れないが、多くの価値観や感情があると思うので、そのことを認めるべきと思います。

なお、サンフランシスコ平和条約を読み返すには、ちょうど良いタイミンクだったでしょうか。

投稿: ある経営コンサルタント | 2013年4月29日 (月) 17時30分

> 主権回復だとしてお祝いしても良いかも知れないが、
> 多くの価値観や感情があると思うので、そのことを認めるべき

管理人様、応答ありがとうございました。
このご見解には、同感です。
個人的には、例え「記念する式典」であって、「祝う式典」ではないと言っても、4月28日に「主権回復の日」として式典を行うことには否定的でした。主権の回復が望ましいことはその通りですけど。

ワタクシは本州の出身ですので、現地の人の機微を正しく理解する事は出来ないと思うので軽々しく口にすべきではないと思いつつ、違和感はありました。

せめて「講和条約発効の日」とか言い様はあると思っていますし、「完全な主権の回復」という言い回しについて、「完全な」の意味を端緒に、話がややこしくなるとも思っています。そういう意味で、自民党さんの政権公約を読んだ時から、違和感がありました。

沖縄の反発を受けてか、報道では奄美・小笠原・沖縄がセットで取り上げられていますけど、それを言い出したら北方領土(南千島)の問題は・・・という話でもあり、報道の仕方もどうかと思いもします。

投稿: 秘匿希望。 | 2013年4月29日 (月) 20時34分

秘匿希望。さん

そうですよね。「記念する式典」であっても「祝う式典」には、違和感を感じます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2013年4月29日 (月) 21時03分

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