後期高齢者医療制度を考える(その3)- 都道府県比較
後期高齢者医療事業年報には、都道府県別のデータがあり、このデータを使って、都道府県別の比較をしてみます。
1) 都道府県別の後期高齢者
人口の多い都道府県が高齢者も多いのですが、一体どのようであるかは、図で見るとわかりやすいのでグラフを書きました。日本の全人口127,515千人に対して後期高齢者は14,484千人であるので後期高齢者割合は11.36%です。
グラフには、各都道府県の人口と後期高齢者を棒グラフで表していますが、人口は青上軸で後期高齢者は赤茶下軸であり最大値をそれぞれ14,000千人と1,400千人にしたので、赤茶棒の方が伸びている都道府県は後期高齢者割合が10%以上ということです。東京都、神奈川、大阪、愛知、埼玉、千葉という人口が多い都道府県は後期高齢者割合が低く、若い人が多いことを示しています。
2) 都道府県別一人当たり後期高齢者医療費
都道府県別一人当たり後期高齢者医療費を見てみることとします。
上位トップ10と下位10位の都道府県には薄紫と薄青の色をつけました。一人当たり医療費では、最大の高知と最小の青森との間に43万円の差があり青森は高知の63%の医療費という結果です。医療費そして医療についてもその差があるのか、研究・調査する必要性を感じます。医療費については、後期高齢者医療制度の保険対象の医療の調査からなので単価は日本全国同じはずです。
一人当たり保険料も最高の東京都85,357円から最小の岩手県35,388円までずいぶん差があります。保険料を医療費で割り算した掛け金割合を見ると、また少し異なった様子がうかがえます。なお、現役並み所得の人の割合が多ければ、保険料は高くなるので、更に細かい分析が必要ですが、ここでは差があるという指摘に止めます。
3) 将来の都道府県格差
直前のその2で書いたように人口増加が後期高齢者医療費増加の一番の大きな理由です。一方、後期高齢者の増加割合は都道府県で、どのような差があるかを見たのが次の表です。
表の右の4項目は第2項目である増加割合の内訳です。右4項目を足しあわせると第2項目の割合になります。増加理由の大部分は75歳の年齢到達であり、減少理由の一番大きな理由は死亡です。第2項目は、年齢到達数から死亡数を引いた純増を割合で書いています。
各都道府県の増加割合は平成23年度の平成22年度からの増加割合なので、本当は将来の増加割合を人口予測から割り出して計算した割合ではありません。しかし、傾向は、この増加割合で大きな狂いはないと思います。現在後期高齢者の割合が低い大都市圏の都道府県ほど後期高齢者の増加割合が大きいのです。平成23年度の後期高齢者医療被保険者の増加数422,541人を都道府県別にしたのが次の円グラフですが、上位6都道府県で50%を越えています。
後期高齢者の増加は、2つのことに大きな影響を及ぼすと考えます。一つは、税金と他の医療保険の保険料の増加です。もう一つは、医療需要の増加であり、医師、病院、医療サービスの提供側のキャパシティーです。在宅医療を増やすとしても限界があると思います。入院日数の減少は、単にそれだけでは済まず、受け入れ体制の整備は必要です。どのように対処できるのか、研究・調査そして立案が必要であり、国民のコンセンサスも得るべきと考えます。
医療需給については、私にはその全体像を簡単には論じることはできず、次回は、税金と他の医療保険からの財政支援とそれらの保険料について考えてみたいと思います。
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