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2013年5月16日 (木)

後期高齢者医療制度を考える(その5)-将来予測

将来予測について書きます。

1) 後期高齢者人口の予測

国立社会保障・人口問題研究所(ホームページはここ)が日本の将来推計人口を発表しており、平成24年1月推計がここからダウンロードすることができます。そのなかの出生中位(死亡中位)の推計結果の人口予測を75歳以上と75歳未満に分けてグラフに書くと次のようになりました。

Koukikoureisha20135m

2050年には75歳未満の人口は113百万人から73百万に今より約35%減少し、75歳以上の人口は14百万人から23百万人に増加する。増加数では9百万人であるが増加率では60%以上です。

2) 後期高齢者医療費の予測

上の後期高齢者の人口予測に一人当たりの医療費を掛け合わせて後期高齢者医療費(総額)の予測をしました。その結果が次のグラフです。

Koukikoureisha20135n

年間増加率がゼロの場合は、1)で掲げたグラフの人口曲線と一致しますが、複利計算になるので増加率が高いとすごい金額です。5月15日に成立した平成25年度予算の税収見込みが42兆8千億円なので20兆円はその半分です。しかも、増加率ゼロの場合でも、2027年には到達する見込みです。もし、年率2.5%の増加率であれば、本年度の政府税収を2042年に越える見通しです。2.5%が決して過大でもないはずです。何故なら、今回のシリーズその3で掲げた次のグラフからです。デフレ下でも一人当たりの医療費は増加しました。

Koukikoureisha20135d

医療費を下げるために早期退院の推進や在宅医療の拡大があります。しかし、入院費が下がっても、訪問診療・看護・リハビリ・生活支援・搬送サービスその他支援制度を充実する必要があり、かけ声だけで実施することはできず、してはならないことです。また、介護の充実も必要と考えます。

3) 負担の予測

後期高齢者の医療費は増加率がゼロであったとしても2027年には20兆円に、そして年1.5%の増加率の場合は2038年に30兆円と予測される。その財源を現状のままであてはまると次のようになりました。

Koukikoureisha20135o

後期高齢者医療制度の財源としては、保険料10%、75歳未満の人が加入する医療保険から40%、公費(税金)から50%と説明されているが、実際には医療機関に直接支払う自己負担を除いた保険金に対して保険料が占める割合は2011年度で7.4%であり、75歳未満の保険から42.4%が、そしてそれら以外が政府・都道府県・市町村であり、事務費他運営経費もまかなわれています。上のグラフは、この2011年度の負担割合で将来についても負担が継続するとしての将来予測です。

すごい右肩上がりです。消費税20%時代が近いと思えるようなカーブです。

保険料については一人当たりで考えた方が実感がつかめるので、一人当たり金額も計算しました。この計算をするためには、今回の冒頭のグラフにある75歳未満の人を被用者保険(協会けんぽ、健保組合、船員保険、共済保険)の被保険者及び被扶養者の合計人数と市町村国保の被保険者の数を予測する必要があり、現状の割合で推移するとして予測すると次のようになりました。

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この被保険者数を使って後期高齢者医療制度の保険料を予測すると次のようになりました。

Koukikoureisha20135q

被用者保険や市町村国保の保険料負担が急速に増加します。理由は、75歳以上と75歳未満の人口割合が変化するからです。上のグラフで1.5%の増加率の場合の被用者保険の後期高齢者医療制度の財源負担が2050年で20万円を越えることになっているが、一人当たりであり、4人家族であれば、年間80万円の負担です。そして、それ以上に税金負担が生じるのです。

後期高齢者医療制度は、発展的解消をしないと持続不可能だと思えます。すぐ上のグラフは、後期高齢者の平均支払保険料は、この通グラフりですが、被用者保険や市町村国保の保険料負担は、この金額に前期高齢者の保険料負担や被保険者と扶養家族のための保険料があるので、実際の負担はこんなに小さくはありません。また、市町村国保は50%公費負担があるため被用者保険の半分にしていますが、被用者保険についても雇用主負担を別とし本人負担のみで考えれば市町村国保と同じです。

その1からを含め、様々なグラフを書きましたので、興味がある方は、じっくりご覧下さい。

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