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2013年5月31日 (金)

オリンピック憲章と2020年東京開催

2020年の東京オリンピック開催を目指して関係者は誘致活動をしている。

日経 5月30日 五輪招致へ治安・財政アピール 都知事、ロシアで

私は、この4月29日のブログで、「東京オリンピック開催の可能性は、消滅したと思った。」と書いた。さて今回、あらためてオリンピック憲章を読み返したのだが。

まず、オリンピズムの根本原則(Fundamental Principles of Olympism)の1であるが、次のように書いてある。(オリンピック憲章は、この日本オリンピック委員会のWebあるいはこの英語版がある。)

Olympism is a philosophy of life, exalting and combining in a balanced whole the qualities of body, will and mind. Blending sport with culture and education, Olympism seeks to create a way of life based on the joy of effort, the educational value of good example, social responsibility and respect for universal fundamental ethical principles.

オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、社会的責任、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重に基づいた生き方の創造である。

英語の方がしっくりと意味が分かる。体、意志、心がバランスした生活を求め、努力することの喜び、実践と社会的責任そして全世界的な普遍的・基本的倫理観の創造を目指すと理解する。

ちなみに、人種や宗教の差別については、根本原則の6に次のような文章がある。

Any form of discrimination with regard to a country or a person on grounds of race, religion, politics, gender or otherwise is incompatible with belonging to the Olympic Movement.

人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピック・ムーブメントに属する事とは相容れない。

Incompatibleであり、相容れないこととなっている。世界の平和を求め、人類の繁栄を追求するなら当然のことである。

そこでもう一度猪瀬氏の発言をチェックすると、このNY Timesの記事であるが、Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classesなんてこと以外にも、記事には次の文章もある。猪瀬氏にとっては自慢しての売り込みであろうが、聞く方にとっては、井の中の蛙の叫びで、インターナショナルでない不適格者とも思われる。

Inose has drawn distinctions between Japan and other cultures in other settings, too. When he visited London in January to promote Tokyo’s bid, he said Tokyo and London were sophisticated and implied that Istanbul was not.       

“I don’t mean to flatter, but London is in a developed country whose sense of hospitality is excellent,” Inose told reporters. “Tokyo’s is also excellent. But other cities, not so much.”

私は、オリンピック憲章のように生きていきたいと思う。

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2013年5月24日 (金)

それほど甘くはない米国のガス

米国のシェールガスが日本に来ると各社が報道していた。

日経 5月18日 シェールガス、17年にも日本へ 米政府が輸出解禁

資源エネルギー庁までが、次のような発表をしていた。

資源エネルギー庁 5月20日 米国フリーポートLNGプロジェクトの輸出承認について

こんなにうかれて良いのだろうかと思う次第である。

1) 日米ガス価格

日本のLNG輸入価格と米国のガス価格のチャートを書いた。

Lng20135a

基本的には米国の方が安かったのであるが、2010年以降は米国でガス価格は安くなった。しかし、日本のLNG輸入価格は高止まりであり、現在は百万BTUあたり14-16米ドルぐらいである。一方、米国の天然ガスの代表取引銘柄であるNYMEXのHenry Hubは5月23日でSpot4.18米ドルなので約3分の1である。

2) 価格は需要と供給で決定される

ガラパゴス諸島ではともかくも世界では需給が価格を決定するのである。すなわち、米国のガス価格は米国市場の需給で決まっているのである。シェールガス効果により供給が大きくなり価格が下がった。日本のLNGの輸入価格は長期契約の契約価格が主体であり、原油価格にスライドしている部分が大きい。次のチャートは日本、欧州、米カナダのガス価格の推移である。

Lng20135b

米国とカナダはガスパイプラインが繋がっており、ほとんど同一の市場と言える。ヨーロッパについては主要ガス供給国がロシアであり、ロシアのガスがパイプラインでヨーロッパ各国に繋がっており、そしてヨーロッパの中に北海ガス田も存在する。日本LNGと同一の市場と言えるのが韓国・台湾である。そして、この日韓台の市場に中国とインドも加わってきたのが実情である。即ち、ガスをLNGとして輸入する場合には、長期契約とならざるを得ず、その結果として、同じ市場の仲間になっている。

なお、中国はロシア産のガスをパイプラインで輸入することが可能であり、必ずロシア産ガスとLNGとを上手にかみ合わせてうまく購入する努力をすると思う。インドも、将来イラン産ガスを輸入するかも知れない。そうなるとパキスタンをパイプラインが走るが、パキスタンもその恩恵にあずかるなら問題はない。インドは、アフガニスタンの治安が回復すれば、トルクメニスタンのガスという魅力あるガスを入手できる可能性がある。

結局は、日本・台湾・韓国が一番高いガスを使い続ける可能性が高いと思える。

3) 高く売れる相手に、わざわざ安く売るだろうか

暴騰のチャートにあるようにLNGも4ドルぐらいの時があった。供給コストはその時と変化はない。16ドルで売れれば大もうけをしているのである。資源エネルギー庁の発表には、「一般に液化に約3ドル、輸送に約3ドル」と言っているが、普通の人ならおかしいと思うはずである。

例えば、ここに千代田化工の2012年1月13日のオーストラリア・イクシスLNGプロジェクト受注の発表がある。この中に、年840万トンのLNG液化プラントを150億米ドルで受注したことが書いてある。この150億ドルからLNG液化コストを推定すると百万BTUあたり2.5-3.0米ドルぐらいである。しかし、このNY Times5月17日の記事は、三井物産・三菱商事・GDF Suezが参加する年1200万トンのCameron LNG液化プラントは70億米ドルとも言われている。こらから推定すると液化コストは1.5ドルもしないと思う。2002年にTrinidad and Tobagoの液化プラントが完成した時はLNG液化コストは0.5ドルになったとも言われた。(Trinidad and TobagoのLNGの輸入が日本にあるが、やはり現在は15ドル前後である。)

輸送費にしても3ドルは、べらぼうのぼったくりである。現在LNGタンカーで1日10万ドルと言われている。大きなLNGタンカーであれば20万m3を越えるタンカーもあるが、通常の140,000m3で90,000トン積みとして年11往復航海すれば、百万BTUあたりの運賃は0.7ドル以下であり、1ドルしない。但し、Texasからの輸送だとパナマ運河が通れないことから百万BTUあたり2ドル近くになりそうでもある。

いずれにせよ、価格はコストから決まるのではなく、受給から決まるのである。

なお、米国人や米国産業の立場から考えれば、輸出を理由にガス価格が高くなるなら、輸出に反対するはずである。輸出で儲けて国内を安くしろとの意見は無茶としても、国内の需要まで輸出すれば、国内は供給不足となり価格は上昇する。

資源とは、一義的には存在するその地域の人の物である。しかし、それだけではなく、広く地球に生きる人々の物でもある。そして、現在の人の物でもあるが、将来の人にもそれを利用する権利があるのである。強引にかっさらうことはできない物である。

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2013年5月21日 (火)

いたずらに不安を煽る報道は好きではない

そのように感じたのは、次のNHKニュースです。

5月20日 都市部高齢化 施設や介護はどうなる

この中に、「2025年までの15年間に増える75歳以上の高齢者の数は、最も高い埼玉県で2倍、千葉県で1.92倍、大阪府で1.81倍、愛知県で1.77倍、東京で1.6倍などと、都市部で高齢化が急速に進み」とある。

私の5月18日の超高齢化社会の都道府県比較では、75歳以上の人口が各都道府県で全人口に対して占める割合を表にした。2010年と2040年を比較すると千葉県が9.05%から20.44%へ、大阪府が9.51%から19.75%へ、愛知県が8.90%から17.55%へ、東京が9.38%から17.38%である。75歳以上の人口割合では東京都の17.38%が一番低い。逆に最高は秋田県の28.45%が一番高い。

75歳以上の人口の増加予測を現在の人口に対して何倍になるかで計算するとNHKの数字になるはずである。しかし、増加は大都市圏に限られているのではない。むしろ、現在高齢化率の低い地域が高い地域に追いつくのである。高齢化社会とどう対応していくのかは、様々な対処方法がある。地価の安い地域に、医療施設、看護施設、介護施設、高齢者住宅を多く設置し、高齢化対応をしていくことも考えられる。逆に都市部の対応に終われて、税金を都市部のみに集中して、地方がおろそかになってもいけない。合理的な対応をしなくてはならない。

冷静に様々な面からも考えるべきである。NHKの表現が全体像を見据えずに部分情報で不安を煽る懸念がないか心配になり書きました。

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横浜市で保育所待機児童がゼロとなった

横浜市で保育所待機児童がゼロになったと報道各社が伝えていた。

朝日 5月20日 横浜市、待機児童ゼロに 保育所144園増設などで

ある横浜に住んでおられる方からもメールを頂きました。私の娘も保育所に入れることになりましたと喜んでおられました。

保育所の充実は、せねばならないことと考えます。人口問題ばかり書いているようですが、2040年の人口ピラミッドを書きました。もっとも、2040年のみではわかりつらいので、2013年と、2020年、2030年も加えています。

Japanesepopulation20135

63歳前後の団塊の世代を除けば現在人口の多い年齢層はアラフォーである。2040年になるとアラフォーは60の後半となり、この年齢層が一番多い。

20歳から60歳ぐらいまでの世代は毎年減少をする見込みです。そんな社会では男も女も働かなくては、成立しない。専業主婦は働いていないなんてことを言うつもりはありません。子どもは保育園で、大人は男女とも生涯を通じて、その人たちが望む本人と社会のニーズが合致した仕事をするのが理想だと思います。理想は、なかなか実現しないかも知れない。しかし、そのための環境作りとして、望む人は全て保育所に子どもを入れることができる状態にしておくことは重要と考えます。社会のニーズが変わっているのに、制度が依然として男は外で働き女は家庭という状態を向いているのは、不効率この上ないし、失われた20年の原因の一つになっていると思います。

上の朝日の記事には、3年間で370億円を掛け、認可保育所を144カ所、定員は1万人以上増やしたとあります。保育所は、政府と地方自治体が主体となって動かないと整備が進まない。保育所整備は、子ども手当より、はるかに意味があると思います。子ども手当とは何ですか?未だに意味が分からない。子ども手当を導入するために、15歳以下の子ども・赤ちゃんは扶養控除の適用外とした。税金取って現金をばらまくよりは、政府は、政府でなければできないことをすることが重要と考えます。

ところで、働いていないと保育所に子どもを入れることはできないのでしょうか?求職活動や求職のための職業訓練あるいは就学と言った場合でも、保育所を利用できて良いと思うのです。待機児童が存在する時に、優先順位はつけざるを得ないが、誰もが自由に利用できるのが本来の姿と考えます。子育ての環境が整えば、子どもが増え、明るい未来ができそうな気がします。

それからすると、未婚の母の支援制度や子どもが欲しい人のための養子斡旋制度の整備なんてことも研究すべきと考えます。

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2013年5月18日 (土)

超高齢化社会の都道府県比較

直前の後期高齢者医療制度を考える(その5)-将来予測を書いて、超高齢化社会が急速でやってくることを実感しました。そこで、都道府県別の比較を行ってみました。

Koukikoureisha20135r_3

2040年には75歳以上の人口割合が現在の11.08%から20.72%になる予測ですが、47都道府県のうち40道府県で20%以上となりました。最高は、秋田県の28.45%です。増加するパーセンテージで一番大きいのは北海道の12.87%です。

65歳以上の各都道府県の人口割合も出してみました。すると、全ての都道府県で30%を越えました。なんと、5つの道県では40%以上です。子どもも含めた全人口に対する割合なので、2040年には65歳でリタイアなんてあり得ないのかも知れません。

もっとも、高齢者を活用するのは、簡単なことではないでしょう。しかし、活用できなければ、衰退に向かうと思います。フェロー制度を導入して活用を図ろうとしている企業もあるが、全社員に適用するのは難しいかも知れない。そして、企業のみの問題ではない。やはり、高齢化社会を悪いことと捉えるのではなく、豊かな社会にするための資源として活用をするのが正解であると考えます。

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2013年5月16日 (木)

後期高齢者医療制度を考える(その5)-将来予測

将来予測について書きます。

1) 後期高齢者人口の予測

国立社会保障・人口問題研究所(ホームページはここ)が日本の将来推計人口を発表しており、平成24年1月推計がここからダウンロードすることができます。そのなかの出生中位(死亡中位)の推計結果の人口予測を75歳以上と75歳未満に分けてグラフに書くと次のようになりました。

Koukikoureisha20135m

2050年には75歳未満の人口は113百万人から73百万に今より約35%減少し、75歳以上の人口は14百万人から23百万人に増加する。増加数では9百万人であるが増加率では60%以上です。

2) 後期高齢者医療費の予測

上の後期高齢者の人口予測に一人当たりの医療費を掛け合わせて後期高齢者医療費(総額)の予測をしました。その結果が次のグラフです。

Koukikoureisha20135n

年間増加率がゼロの場合は、1)で掲げたグラフの人口曲線と一致しますが、複利計算になるので増加率が高いとすごい金額です。5月15日に成立した平成25年度予算の税収見込みが42兆8千億円なので20兆円はその半分です。しかも、増加率ゼロの場合でも、2027年には到達する見込みです。もし、年率2.5%の増加率であれば、本年度の政府税収を2042年に越える見通しです。2.5%が決して過大でもないはずです。何故なら、今回のシリーズその3で掲げた次のグラフからです。デフレ下でも一人当たりの医療費は増加しました。

Koukikoureisha20135d

医療費を下げるために早期退院の推進や在宅医療の拡大があります。しかし、入院費が下がっても、訪問診療・看護・リハビリ・生活支援・搬送サービスその他支援制度を充実する必要があり、かけ声だけで実施することはできず、してはならないことです。また、介護の充実も必要と考えます。

3) 負担の予測

後期高齢者の医療費は増加率がゼロであったとしても2027年には20兆円に、そして年1.5%の増加率の場合は2038年に30兆円と予測される。その財源を現状のままであてはまると次のようになりました。

Koukikoureisha20135o

後期高齢者医療制度の財源としては、保険料10%、75歳未満の人が加入する医療保険から40%、公費(税金)から50%と説明されているが、実際には医療機関に直接支払う自己負担を除いた保険金に対して保険料が占める割合は2011年度で7.4%であり、75歳未満の保険から42.4%が、そしてそれら以外が政府・都道府県・市町村であり、事務費他運営経費もまかなわれています。上のグラフは、この2011年度の負担割合で将来についても負担が継続するとしての将来予測です。

すごい右肩上がりです。消費税20%時代が近いと思えるようなカーブです。

保険料については一人当たりで考えた方が実感がつかめるので、一人当たり金額も計算しました。この計算をするためには、今回の冒頭のグラフにある75歳未満の人を被用者保険(協会けんぽ、健保組合、船員保険、共済保険)の被保険者及び被扶養者の合計人数と市町村国保の被保険者の数を予測する必要があり、現状の割合で推移するとして予測すると次のようになりました。

Koukikoureisha20135p

この被保険者数を使って後期高齢者医療制度の保険料を予測すると次のようになりました。

Koukikoureisha20135q

被用者保険や市町村国保の保険料負担が急速に増加します。理由は、75歳以上と75歳未満の人口割合が変化するからです。上のグラフで1.5%の増加率の場合の被用者保険の後期高齢者医療制度の財源負担が2050年で20万円を越えることになっているが、一人当たりであり、4人家族であれば、年間80万円の負担です。そして、それ以上に税金負担が生じるのです。

後期高齢者医療制度は、発展的解消をしないと持続不可能だと思えます。すぐ上のグラフは、後期高齢者の平均支払保険料は、この通グラフりですが、被用者保険や市町村国保の保険料負担は、この金額に前期高齢者の保険料負担や被保険者と扶養家族のための保険料があるので、実際の負担はこんなに小さくはありません。また、市町村国保は50%公費負担があるため被用者保険の半分にしていますが、被用者保険についても雇用主負担を別とし本人負担のみで考えれば市町村国保と同じです。

その1からを含め、様々なグラフを書きましたので、興味がある方は、じっくりご覧下さい。

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2013年5月14日 (火)

後期高齢者医療制度を考える(その4)-医療保険収支

後期高齢者医療保険の収支を書いておきます。

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収入の42%は、後期高齢者交付金として基金から支払を受ける収入です。この財源は、他の医療保険から後期高齢者支援金として払われたものです。そうなると、医療保険全体を眺めないと全体像がつかめなくなります。そこで、全ての医療保険の収支は次です。なお、船員保険は収入規模が321億円であり、省略しました。収支の内容は、健保組合とほぼ同じです。

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組合健保を例に取ると、保険料収入のうち保険給付に回るのは58%であり、21%は後期高齢者支援金に、18%は前期高齢者交付金になります。市町村国保の場合は、雇用主負担の保険料はないので、政府・都道府県・市町村の負担が多く発生し、更に退職後の前期高齢者も被保険者なので他の医療保険から前期高齢者交付金を受け取ることになります。

数字の記載ある表も掲げておきます。クリックすると拡大します。

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それでも複雑な制度で、直ちに一元化は無理でしょうが、統一して更に合理的な制度に変革していく努力が必要だと思います。

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2013年5月12日 (日)

後期高齢者医療制度を考える(その3)- 都道府県比較

後期高齢者医療事業年報には、都道府県別のデータがあり、このデータを使って、都道府県別の比較をしてみます。

1) 都道府県別の後期高齢者

人口の多い都道府県が高齢者も多いのですが、一体どのようであるかは、図で見るとわかりやすいのでグラフを書きました。日本の全人口127,515千人に対して後期高齢者は14,484千人であるので後期高齢者割合は11.36%です。

Koukikoureisha20135f

グラフには、各都道府県の人口と後期高齢者を棒グラフで表していますが、人口は青上軸で後期高齢者は赤茶下軸であり最大値をそれぞれ14,000千人と1,400千人にしたので、赤茶棒の方が伸びている都道府県は後期高齢者割合が10%以上ということです。東京都、神奈川、大阪、愛知、埼玉、千葉という人口が多い都道府県は後期高齢者割合が低く、若い人が多いことを示しています。

2) 都道府県別一人当たり後期高齢者医療費

都道府県別一人当たり後期高齢者医療費を見てみることとします。

Koukikoureisha20135g

上位トップ10と下位10位の都道府県には薄紫と薄青の色をつけました。一人当たり医療費では、最大の高知と最小の青森との間に43万円の差があり青森は高知の63%の医療費という結果です。医療費そして医療についてもその差があるのか、研究・調査する必要性を感じます。医療費については、後期高齢者医療制度の保険対象の医療の調査からなので単価は日本全国同じはずです。

一人当たり保険料も最高の東京都85,357円から最小の岩手県35,388円までずいぶん差があります。保険料を医療費で割り算した掛け金割合を見ると、また少し異なった様子がうかがえます。なお、現役並み所得の人の割合が多ければ、保険料は高くなるので、更に細かい分析が必要ですが、ここでは差があるという指摘に止めます。

3) 将来の都道府県格差

直前のその2で書いたように人口増加が後期高齢者医療費増加の一番の大きな理由です。一方、後期高齢者の増加割合は都道府県で、どのような差があるかを見たのが次の表です。

Koukikoureisha20135h

表の右の4項目は第2項目である増加割合の内訳です。右4項目を足しあわせると第2項目の割合になります。増加理由の大部分は75歳の年齢到達であり、減少理由の一番大きな理由は死亡です。第2項目は、年齢到達数から死亡数を引いた純増を割合で書いています。

各都道府県の増加割合は平成23年度の平成22年度からの増加割合なので、本当は将来の増加割合を人口予測から割り出して計算した割合ではありません。しかし、傾向は、この増加割合で大きな狂いはないと思います。現在後期高齢者の割合が低い大都市圏の都道府県ほど後期高齢者の増加割合が大きいのです。平成23年度の後期高齢者医療被保険者の増加数422,541人を都道府県別にしたのが次の円グラフですが、上位6都道府県で50%を越えています。

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後期高齢者の増加は、2つのことに大きな影響を及ぼすと考えます。一つは、税金と他の医療保険の保険料の増加です。もう一つは、医療需要の増加であり、医師、病院、医療サービスの提供側のキャパシティーです。在宅医療を増やすとしても限界があると思います。入院日数の減少は、単にそれだけでは済まず、受け入れ体制の整備は必要です。どのように対処できるのか、研究・調査そして立案が必要であり、国民のコンセンサスも得るべきと考えます。

医療需給については、私にはその全体像を簡単には論じることはできず、次回は、税金と他の医療保険からの財政支援とそれらの保険料について考えてみたいと思います。

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2013年5月 9日 (木)

後期高齢者医療制度を考える(その2)

後期高齢者医療制度についてのその2を書きます。

1) 医療費

後期高齢者の医療費は、一体いくらであるかについてです。後期高齢者医療事業年報のデータから、次の円グラフに書きました。

Koukikoureisha20135b

これだけではピント来ないので、医療費全体の中で、どのような割合を占めるかを見たのが次のグラフです。医療費全体のデータは、「医療費の動向」調査(年度版)からです。(なお、後期高齢者医療事業年報のデータと微妙な数字の差もあるが、わずかな差である。)

Koukikoureisha20135c_4

平成23年度の医療費は、公費分(生活保護医療費)と医療保険適用分医療費の合計で37兆7666億円であった。平成19年度は33兆4408億円であったので、5年の間に4兆3259億円増加した。後期高齢者医療制度が始まったのが平成20年度からであり、平成20年度以降の後期高齢者医療費が全体の医療費の中で占める割合を緑の線で示しており、毎年増加している。

増加割合を考える場合に、総額ではなく、一人当たりの平均額の増加率を見る方が適切と思えるので、前年度からの増加率を一人当たりの平均医療費で推移を示したのが次のグラフである。

Koukikoureisha20135d

後期高齢者の一人当たり平均医療費も毎年増加しているが、他の医療保険適用分医療費の増加率より低い。この意味するところは、人数の増加が多いと言うことである。

2) 後期高齢者医療制度の被保険者数

後期高齢者医療制度が始まった平成20年度からの被保険者数の推移が次のグラフである。

Koukikoureisha20135e

人口ピラミッドの75歳以上の部分を切り取って4年間について眺めたのと同じことと考える。グラフの凡例の各年度の箇所に記載の人数は後期高齢者医療制度被保険者数である。今後益々増加することが予想される。長寿は悪いことではなく、喜ばしいことである。そのために増加する医療費をどうするか、もう少し書き続けます。

グラフで75歳未満の被保険者が存在するのは、65歳以上で障害認定を受けて後期高齢者医療制度の適用者となる場合があるためである(50条2号の被保険者)。

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2013年5月 8日 (水)

川口順子が引き起こす異例中の異例事件

異例中の異例事件だと思いました。本日(5月8日)の参議院予算委員会が、与党の自民党と公明党議員の委員全員欠席の下、会議が行われた。安倍首相他は出席しており、審議は行われた。

日経 5月8日 与党、参院予算委異例の欠席 石井委員長が苦言

参議院予算委員会は開催されているので、参議院TVで見ることはできます。

自民・公明の欠席は、委員長である川口順子が4月25日の参議院環境委員会に出席せず中止となったことに対して、野党7党が川口順子の解任決議案を提出したことが原因である。

参議院は議席数では、与党より野党の方が多く、川口順子の解任は、自発的辞任がない限りは、成立するだろうと思うし、もし決議が行われれば、委員長でありながらの欠席であったことから、与党の中でも解任に賛成する議員がでるかも知れないと思う。

この人は、正しい判断をすることができない人であると思っていた。かつて、ブッシュ政権がイラク戦争をしようとする時に、真っ先に支持した好戦的な人と思っていましたが、単に正しい判断をすることができない人だったのかも知れないと思いました。

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2013年5月 7日 (火)

後期高齢者医療制度を考える(その1)

今、なぜとの感覚もなきにしもあらずですが、医療保険制度について考える上で、後期高齢者医療制度を考えずして、成り立たないのが実情です。2013年4月17日に厚生労働省は平成23年度後期高齢者医療事業年報を発表している。(次のWebからダウンロードできる。)

厚生労働省 (保険局調査課) 後期高齢者医療事業状況報告

この事業年報や国立社会人口問題研究所(ホームページはここ)の日本の将来推計人口(平成24年1月推計)等を利用しての分析結果をまじえて、ブログに記載し考えてみたいと思います。

なぜ後期高齢者医療制度を考えるか

年齢別の医療費を考えると医療の実態がよく分かると思います。次のグラフは厚生労働省(保険局)の医療給付実態調査報告(このWebページからたどれます)から作成した平成22年度の医療費の一人当たりの金額を年齢5歳毎の階級別に表している。

Koukikoureisha20135a

赤茶の横線は医療保険制度に係わる医療費総額33兆9267億円を国民健康保険、組合健保、協会けんぽ、共済保険、船員保険、後期高齢医者医療保険の被保険者、被扶養者である保険対象の人数合計1億1525万人で割り算した平均年間医療費285,690円の金額です。60-64歳の年齢層にならないと平均に達せず、年齢と共に増加していく。平均の一人当たり医療費では、75-79歳の年齢層になると全年齢平均の2.66倍の約76万円になるのです。(医療保険制度に係わる医療費と断っているのは、他にも生活保護医療費、労災医療費、自由診療の医療費等があるからです。)

高年齢になっても困らないように、若い時に収入に見合った保険料を支払って貯蓄するような形にならざるを得ない。国の制度として医療保険を維持することの重要性があります。損害保険であれば、自由競争とすることにより、有効な対策でリスクが低いと判断できれば、保険料が安く、逆にリスクが高ければ、保険料も高いとすることは合理的である。しかし、医療保険に自由競争を導入すると、一旦病気になれば、保険料は鰻登りとなり、保険料を安くするには、付保内容を悪くせざるを得ないという医療保険としては悪い保険と言わざるを得ない。

また高度先進医療のような新しい分野への対応が医療保険も求められるのであり、なかなか民間保険では馴染みにくい対応もあると思います。

後期高齢者医療制度を考えることは、後期高齢者のための医療制度を考えるというより、むしろ医療保険制度全般を考えることの性格が強いと考えます。このテーマはそのようなつもりで続けます。

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イスラエル空軍のシリア攻撃

イスラエルの空軍機がシリアの首都ダマスカス近郊の軍施設をミサイル攻撃した。

MSN産経 5月5日 シリアに空爆 イラン製ミサイルが標的か

次のアルジャジーラのニュースには動画があり、爆発音も入っている。

ALJAZEERA 6May2013 Syria warns Israel after 'latest air raids'

外国の軍用機がやって来て、ミサイル攻撃をすることは、恐ろしいことだと思う。国連は、このニュースUN chief calls for maximum calm and restraint after reported Israeli air strikes in Syriaを出して、戦闘沈静を呼びかけている。

あまりにも複雑な状態である。シリア人からすれば、イスラエルから攻撃を受ければ、いよいよ反イスラエルの気持ちは強くなる。ヒズボラのイスラエルへのテロ活動も支持が広がる可能性もあると思う。国民からすれば、シリアとレバノンの間に国境なんてないのだろうと思う。イスラエルとアラブの間の対立が激化する可能性もあるかもと思う。

これから、どのようになるのか分からないが、気になるのは米国と中国だろうか。

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2013年5月 4日 (土)

憲法改正について

5月3日は現憲法の施行が開始されて66年目であり、日本国民が日本国の主権者であるとなった記念日であり、日本国民からすれば、勝利の日である。66年を経過すると、改正を唱える人も多くなったようである。

日経 5月3日 憲法記念日、各地で集会やイベント 参院選の焦点に

この機会に改正を考えると。

1) 政治家が96条の改正を唱えるのは間違い

多くの政治家が96条の改正を唱えているが、現行の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議」との部分が改正に容易ではないことが、その理由である。では、具体的に現憲法のどの部分を改正しようというのか、改正の中身の議論が重要であり、手続きを定めた96条を先に議論するのは、本末転倒である。

仮に第9条の改正であるとする。強い反対論、実態に合わせるべきであうとする改正論そして現状でも困っていないのに何故改正するのか、あるいは政治家を牽制するために現在の第9条を改正すべきではないとする意見等があると思う。このような議論を戦わせ、国民の中でも多くの議論が行われ、実際に改正手続きに入いる。その時の改正手続きの実際の経験を取り入れて、96条をどうするかの議論をすべきである。改正をしたこともないのに、最初に96条の改正議論をすることは、どう考えてもおかしいのである。

次に今の3分の2にしても、小選挙区制であれば、得票を少し取れば達成できる可能性がある。政治主導と言って独裁政権を誇示した人たち、短い時間で深い議論もせずに非難を浴びせた事業仕分けとか、国民のことを、どう思っていたのかと感じる。憲法15条の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」との公務員に議員や大臣も含まれると私は解釈しているし、天皇陛下も国事行為を行う時は公務員であると考える。

2) 自民党憲法改正草案

具体的に憲法改正を考えるとなると改正案の一つの参考案として読むことができる。しかし、読んでみると、全てが改正ではなく、改悪に思える。

条文の全てに表題を記載しているが、現状の表題無しの方が、条文が意味することを適切に理解できると考える。改正条文案にしても、基本的人権について現憲法は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」となっている文章を「国民は、全ての基本的人権を享有する。」に変更する案である。憲法の存在以前に人は基本的人権を享有しており、その人権の享有を妨げることは駄目であるとするのが本来の筋である。自民案では、人権は享有するが・・・・となる。

12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」のアンダーライン部分を自民案は「国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」としている。公益とは何であるか、私には、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律が頭に浮かんでしまう。そもそも、公益という言葉は、非課税法人の要件として使われていたと言うのが私のイメージである。一般の株式会社は不純であるのか?不純な会社も確かに存在するが、悪徳企業を除けば、全ては企業活動を通じて社会に貢献しているのである。農家は農産物を提供し対価を得る。立派な公共の福祉への貢献である。NHKは、自らを公共放送と言うが、民法を含め全て公共放送である。

憲法は、良心に従った解釈をすれば、素直に読める文章がよいと考える。

自民党の憲法改正草案で、国民を虐げようとする条文と思えるのが、政党に関する条文の追加である。政党が政治活動の自由を保障されるのではなく、国民が政治活動を始めあらゆることの自由を保障させるのである。自民案には「国は」との用語が頻出する。意味不明の使い方である。現憲法で「国は」と使っているのは、25条2項の「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」であり、この国はの意味は、政府のみならず議会、裁判所、国民全てであると私は解釈する。

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