電気事業競争導入
6月24日に衆議院小選挙区を「0増5減」する改正公職選挙法が衆院本会議の再可決で成立した。(日経 6月24日 「0増5減」の衆院区割り見直し法が成立 5年ぶり再可決)
電気事業法改正についても、今国会中に成立することが予想される。(日経 6月13日 電気事業法改正案が衆院通過 発送電分離めざす 、日経 6月17日 電気事業法改正案、参院で審議入り)
1) 電気事業法改正の内容
成立すると予想される法案には、その理由として「現下の電力市場をめぐる状況に鑑み、段階的な電気事業に係る制度の抜本的な改革の一環として、今次、電気事業の遂行に当たっての広域的運営を推進する機関に係る制度の創設等の措置を講ずるとともに、・・・託送制度の見直し等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」と記載があり、内容としては、日本全体の広域的な電気事業の遂行に当たつての広域的運営を推進することを目的に広域的運営推進機関を設立することである。それほど大きな改正ではないと考える。
但し、附則第11条として、末尾に掲げた条文(衆議院における修正を盛り込み済み)があり、本文よりこの附則の方がキイポイントと考える。従い、成立後にこれをどのように実現していくかの課題が大きい。勿論、自由化に賛成であるし、競争が働くことにより正常な発展が持続すると考える。しかし、急ぎすぎて失敗をしてもいけないのである。
2) ユニバーサルサービス
現状でも6.6kVで受電すれば、誰でも、その地域の電力会社以外から電力を買うことができる。附則11条は、2015年を目処に全面自由化を行うとしている。自由化されていない電力とは100V-200Vの電力である。配電コストは、人口密集地では低く、過疎地では高い。もし、自由化されたら、人口密集地で電気料金は下がり、過疎地で上がることが確実と思う。なお、2012年度の電力供給870,915MWhのうち62.1%が自由化電力で37.9%が自由化されていない電力供給であった。
附則11条5項8号は、島部のことについて触れているが、人口密集地と過疎地で料金が異なることが予想される。逆に言えば、同一料金を強制するなら、現状の総括原価方式と何ら違いはないからである。
ユニバーサルサービスのための料金を固定電話のように徴収する方法もあるが、電力の自由化は送配電線を自由化し、誰もが電力供給事業に参加可能とすることが根底にあり、ユニバーサルサービス料金を徴収しても、誰にどう分配するのかもよく考えないとうまく機能しなくなる。
3) 原発問題
原発をどうするのか、簡単には決められないと思う。原発は使用しないと決めても、費用は50年以上と言うべきか、燃料を含め高濃度放射性廃棄物の廃棄に係わる管理費用まで考えれば1000年以上の期間にわたり費用が発生する。
原発とは、発電コストが不明とも言える。更にやっかいなのは、原発を止めても費用が発生し、管理を継続しなければならないので、原発を保有する電力会社を倒産させることはできない。原発とは、ある方向から見れば、燃料費が安い発電設備であるが、別の方向から見れば金食い虫の負の遺産である。しかも、道楽息子であれば、勘当すれば済むであろうが、原発とは放置すれば放射性物質をまき散らす可能性があるばかりか、核兵器の原料や放射線を撒き散らすダーティー爆弾の原料に使われる可能性もある。
電力自由化の仕組みの中に既存原発をどのように組み入れるのか、誤りを犯すと、取り返しのつかないことになると思う。
2013年6月衆議院可決の電気事業法改正案附則第11条
政府は、この法律の円滑な施行を図るとともに、引き続き、次に掲げる方針に基づき、段階的に電気事業に係る制度の抜本的な改革を行うものとする。
一 平成二十八年を目途に、電気の小売業への参入の全面自由化を実施するものとし、このために必要な法律案を平成二十六年に開会される国会の常会に提出すること。
二 平成三十年から平成三十二年までの間を目途に、変電、送電及び配電に係る業務(以下この条において「送配電等業務」という。)の運営における中立性(送配電等業務について、特定の電気供給事業者に対し、不当に優先的な取扱いをし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱いをし、若しくは不利益を与えることがないことをいう。第三項第一号において同じ。)の一層の確保を図るための措置(次項及び第三項において「中立性確保措置」という。)並びに電気の小売に係る料金の全面自由化を実施するものとし、このために必要な法律案を平成二十七年に開会される国会の常会に提出することを目指すものとすること。
三 電気事業に係る制度の抜本的な改革の各段階において、当該改革を行うに当たっての課題について十分な検証を行い、その結果に基づいて当該課題の克服のために必要な措置を講じつつ、当該改革を行うこと。
2 前項の電気事業に係る制度の抜本的な改革は、中立性確保措置を法的分離(同一の者が、送配電等業務及び電気の小売業のいずれも営み、又は送配電等業務及び電気の卸売業のいずれも営むことを禁止する措置をいう。以下この項及び次項において同じ。)によって実施することを前提として進めるものとする。ただし、法的分離の実施に向けた検討の過程でその実施を困難にする新たな課題が生じた場合には、必要に応じて、中立性確保措置を機能分離(送配電等業務に係る機能の一部を推進機関が担うこととすることをいう。)によって実施することを検討するものとする。
3 政府は、中立性確保措置を法的分離によって実施する場合には、次に掲げる措置を講ずるものとする。この場合において、第二号に掲げる措置を講ずるに当たっては、金融市場の動向を踏まえるものとする。
一 送配電等業務を営む者の役員の兼職に関する規制その他の送配電等業務の運営における中立性の一層の確保を図るために法的分離と併せて講ずることが必要な規制措置
二 電気事業を営む者たる会社の社債権者に、その会社の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を与えるための経過措置、前号の規制措置に係る経過措置その他の電気の安定供給を確保するために必要な資金の調達に支障を生じないようにするための措置
三 送配電等業務を営む者及び電気の卸売業を営む者が相互に連携して電気の安定供給を確保するために必要な措置
4 電気の小売に係る料金の全面自由化は、これを平成三十年から平成三十二年までの間に実施することとした場合に、電気の小売業を営む者の間の適正な競争関係が確保されていないことその他の事由により、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときに限り、その実施の時期を見直すものとする。
5 政府は、電気の安定供給の確保、電気の小売に係る料金の最大限の抑制並びに電気の使用者の選択の機会の拡大及び電気事業における事業機会の拡大を実現するため、第一項第一号及び第二号に規定する法律案を国会に提出するに当たっては、次に掲げる措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
一 送配電等業務を営む者に、次に掲げる事項を行わせるための措置
イ 電気の小売業を営む者から電気の供給を受けることができない者への電気の供給を保障すること。
ロ その送配電等業務を営む区域において一元的に送配電等業務を営むとともに、その供給する電気の電圧及び周波数の値を一定の値に維持すること。
二 送配電等業務を営む者が送電用の電気工作物の設置に要する費用その他の送配電等業務に要する費用を適切に回収することを可能とするための措置
三 電気の小売業を営む者に、その事業における電気の安定供給を確保するために必要な供給能力を確保させるための措置
四 推進機関に、発電用の電気工作物の設置を促進するための業務を行わせるための措置
五 電気の卸売業への参入の全面自由化及び電気の卸売に係る料金の全面自由化
六 電気事業に係る制度の抜本的な改革に関する情報提供を充実強化するための措置、スマートメーター(電気の小売業を営む者の効率的な事業運営及び多様な電気の小売に係る料金その他の供給条件の設定並びに電気の使用の節減に資する機能を有する電力量計をいう。)の導入を促進するための措置、卸電力取引所(電気の卸売に係る電気について取引をするために必要な市場を開設している者をいう。)における電気の取引量を増加させるための措置、電気の先物取引に係る制度の整備その他の電気の小売業を営む者の間又は電気の卸売業を営む者の間の適正な競争関係を確保するための措置
七 原子力政策をはじめとするエネルギー政策の変更その他のエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴って特定の電気の小売業を営む者又は特定の電気の卸売業を営む者の競争条件が著しく悪化した場合又は著しく悪化することが明らかな場合において当該特定の電気の小売業を営む者又は当該特定の電気の卸売業を営む者の競争条件を改善するための措置
八 離島における電気の使用者が離島以外の地域と同程度の料金により電気の供給を受けることができるようにするための措置及び離島における電気の安定供給を確保するための措置
九 前号に掲げるもののほか、沖縄地域における電気事業の特殊性を踏まえた措置
6 政府は、電気事業の監督の機能を一層強化するとともに、電気の安定供給の確保に万全を期するため、電気事業の規制に関する事務をつかさどる行政組織について、その在り方を見直し、平成二十七年を目途に、独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織に移行させるものとする。
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