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2013年6月25日 (火)

電気事業競争導入

6月24日に衆議院小選挙区を「0増5減」する改正公職選挙法が衆院本会議の再可決で成立した。(日経 6月24日 「0増5減」の衆院区割り見直し法が成立 5年ぶり再可決

電気事業法改正についても、今国会中に成立することが予想される。(日経 6月13日 電気事業法改正案が衆院通過 発送電分離めざす 日経 6月17日 電気事業法改正案、参院で審議入り

1) 電気事業法改正の内容

成立すると予想される法案には、その理由として「現下の電力市場をめぐる状況に鑑み、段階的な電気事業に係る制度の抜本的な改革の一環として、今次、電気事業の遂行に当たっての広域的運営を推進する機関に係る制度の創設等の措置を講ずるとともに、・・・託送制度の見直し等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」と記載があり、内容としては、日本全体の広域的な電気事業の遂行に当たつての広域的運営を推進することを目的に広域的運営推進機関を設立することである。それほど大きな改正ではないと考える。

但し、附則第11条として、末尾に掲げた条文(衆議院における修正を盛り込み済み)があり、本文よりこの附則の方がキイポイントと考える。従い、成立後にこれをどのように実現していくかの課題が大きい。勿論、自由化に賛成であるし、競争が働くことにより正常な発展が持続すると考える。しかし、急ぎすぎて失敗をしてもいけないのである。

2) ユニバーサルサービス

現状でも6.6kVで受電すれば、誰でも、その地域の電力会社以外から電力を買うことができる。附則11条は、2015年を目処に全面自由化を行うとしている。自由化されていない電力とは100V-200Vの電力である。配電コストは、人口密集地では低く、過疎地では高い。もし、自由化されたら、人口密集地で電気料金は下がり、過疎地で上がることが確実と思う。なお、2012年度の電力供給870,915MWhのうち62.1%が自由化電力で37.9%が自由化されていない電力供給であった。

附則11条5項8号は、島部のことについて触れているが、人口密集地と過疎地で料金が異なることが予想される。逆に言えば、同一料金を強制するなら、現状の総括原価方式と何ら違いはないからである。

ユニバーサルサービスのための料金を固定電話のように徴収する方法もあるが、電力の自由化は送配電線を自由化し、誰もが電力供給事業に参加可能とすることが根底にあり、ユニバーサルサービス料金を徴収しても、誰にどう分配するのかもよく考えないとうまく機能しなくなる。

3) 原発問題

原発をどうするのか、簡単には決められないと思う。原発は使用しないと決めても、費用は50年以上と言うべきか、燃料を含め高濃度放射性廃棄物の廃棄に係わる管理費用まで考えれば1000年以上の期間にわたり費用が発生する。

原発とは、発電コストが不明とも言える。更にやっかいなのは、原発を止めても費用が発生し、管理を継続しなければならないので、原発を保有する電力会社を倒産させることはできない。原発とは、ある方向から見れば、燃料費が安い発電設備であるが、別の方向から見れば金食い虫の負の遺産である。しかも、道楽息子であれば、勘当すれば済むであろうが、原発とは放置すれば放射性物質をまき散らす可能性があるばかりか、核兵器の原料や放射線を撒き散らすダーティー爆弾の原料に使われる可能性もある。

電力自由化の仕組みの中に既存原発をどのように組み入れるのか、誤りを犯すと、取り返しのつかないことになると思う。

2013年6月衆議院可決の電気事業法改正案附則第11条

政府は、この法律の円滑な施行を図るとともに、引き続き、次に掲げる方針に基づき、段階的に電気事業に係る制度の抜本的な改革を行うものとする。
 一 平成二十八年を目途に、電気の小売業への参入の全面自由化を実施するものとし、このために必要な法律案を平成二十六年に開会される国会の常会に提出すること。
 二 平成三十年から平成三十二年までの間を目途に、変電、送電及び配電に係る業務(以下この条において「送配電等業務」という。)の運営における中立性(送配電等業務について、特定の電気供給事業者に対し、不当に優先的な取扱いをし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱いをし、若しくは不利益を与えることがないことをいう。第三項第一号において同じ。)の一層の確保を図るための措置(次項及び第三項において「中立性確保措置」という。)並びに電気の小売に係る料金の全面自由化を実施するものとし、このために必要な法律案を平成二十七年に開会される国会の常会に提出することを目指すものとすること。
 三 電気事業に係る制度の抜本的な改革の各段階において、当該改革を行うに当たっての課題について十分な検証を行い、その結果に基づいて当該課題の克服のために必要な措置を講じつつ、当該改革を行うこと。
 前項の電気事業に係る制度の抜本的な改革は、中立性確保措置を法的分離(同一の者が、送配電等業務及び電気の小売業のいずれも営み、又は送配電等業務及び電気の卸売業のいずれも営むことを禁止する措置をいう。以下この項及び次項において同じ。)によって実施することを前提として進めるものとする。ただし、法的分離の実施に向けた検討の過程でその実施を困難にする新たな課題が生じた場合には、必要に応じて、中立性確保措置を機能分離(送配電等業務に係る機能の一部を推進機関が担うこととすることをいう。)によって実施することを検討するものとする。
 政府は、中立性確保措置を法的分離によって実施する場合には、次に掲げる措置を講ずるものとする。この場合において、第二号に掲げる措置を講ずるに当たっては、金融市場の動向を踏まえるものとする。
 一 送配電等業務を営む者の役員の兼職に関する規制その他の送配電等業務の運営における中立性の一層の確保を図るために法的分離と併せて講ずることが必要な規制措置
 二 電気事業を営む者たる会社の社債権者に、その会社の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を与えるための経過措置、前号の規制措置に係る経過措置その他の電気の安定供給を確保するために必要な資金の調達に支障を生じないようにするための措置
 三 送配電等業務を営む者及び電気の卸売業を営む者が相互に連携して電気の安定供給を確保するために必要な措置
 電気の小売に係る料金の全面自由化は、これを平成三十年から平成三十二年までの間に実施することとした場合に、電気の小売業を営む者の間の適正な競争関係が確保されていないことその他の事由により、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときに限り、その実施の時期を見直すものとする。
 政府は、電気の安定供給の確保、電気の小売に係る料金の最大限の抑制並びに電気の使用者の選択の機会の拡大及び電気事業における事業機会の拡大を実現するため、第一項第一号及び第二号に規定する法律案を国会に提出するに当たっては、次に掲げる措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
 一 送配電等業務を営む者に、次に掲げる事項を行わせるための措置
  イ 電気の小売業を営む者から電気の供給を受けることができない者への電気の供給を保障すること。
  ロ その送配電等業務を営む区域において一元的に送配電等業務を営むとともに、その供給する電気の電圧及び周波数の値を一定の値に維持すること。
 二 送配電等業務を営む者が送電用の電気工作物の設置に要する費用その他の送配電等業務に要する費用を適切に回収することを可能とするための措置
 三 電気の小売業を営む者に、その事業における電気の安定供給を確保するために必要な供給能力を確保させるための措置
 四 推進機関に、発電用の電気工作物の設置を促進するための業務を行わせるための措置
 五 電気の卸売業への参入の全面自由化及び電気の卸売に係る料金の全面自由化
 六 電気事業に係る制度の抜本的な改革に関する情報提供を充実強化するための措置、スマートメーター(電気の小売業を営む者の効率的な事業運営及び多様な電気の小売に係る料金その他の供給条件の設定並びに電気の使用の節減に資する機能を有する電力量計をいう。)の導入を促進するための措置、卸電力取引所(電気の卸売に係る電気について取引をするために必要な市場を開設している者をいう。)における電気の取引量を増加させるための措置、電気の先物取引に係る制度の整備その他の電気の小売業を営む者の間又は電気の卸売業を営む者の間の適正な競争関係を確保するための措置
 七 原子力政策をはじめとするエネルギー政策の変更その他のエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴って特定の電気の小売業を営む者又は特定の電気の卸売業を営む者の競争条件が著しく悪化した場合又は著しく悪化することが明らかな場合において当該特定の電気の小売業を営む者又は当該特定の電気の卸売業を営む者の競争条件を改善するための措置
 八 離島における電気の使用者が離島以外の地域と同程度の料金により電気の供給を受けることができるようにするための措置及び離島における電気の安定供給を確保するための措置
 九 前号に掲げるもののほか、沖縄地域における電気事業の特殊性を踏まえた措置
 政府は、電気事業の監督の機能を一層強化するとともに、電気の安定供給の確保に万全を期するため、電気事業の規制に関する事務をつかさどる行政組織について、その在り方を見直し、平成二十七年を目途に、独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織に移行させるものとする。

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2013年6月24日 (月)

都議選完敗の結果、民主党は変われるのだろうか

東京都議選の結果は、民主党にとっては、完敗であった。

NHK選挙速報によれば、各党の議席数は自民59、公明23、共産17、民主15、みんな7・・・・となっており、第1党から第4党へと転落した。

自民、公明、共産他が得票を多く取れたのは、民主党が信頼を失った結果である。2009年衆議院選挙の勝利が頂点であり、破滅に進んでいるように感じる。

1 寄り合い所帯の単なる利権集団

様々な経歴やバックグラウンドを持っていることは、悪いことではない。しかし、烏合の衆が集まりその目的は、与党になることのみで、与党になって、どうするのかは議員個人は持っていたが、党としては持っていなかったと思う。従い、選挙目的で甘く作ったマニフェストを推進するとしか主張できず、熟考や十分な討議・検討を経て作成されていないことから、ほころびが出て崩れていった。

民主党の議員の中に立派な考えを持ち、立派な活動をされておられる方がいることは認める。しかし、党としては思想なく、国民には政権交代としか訴えられなかった。その結果、政権につくと何もできなかった。

しかも民主党自身の反省もないように思う。

2 国民から離れていった

マニフェスト中心主義の欠陥と言うべきか、それ以外に持っていなかったから仕方がなかったこともあるが、マニフェストに忠実であることは、国民の声を聞かないことと同一である。あんな盛りだくさんのマニフェストの全てを支持して投票した人なんか少ないはずと思う。選挙の投票とは、支持政党や支持候補を持っている人は別にして、相対的な判断で投票をするはずである。

それと公約やマニフェスト以上に自分たちの意見を反映してくれるかが大きな関心である。そのためには、国民の声を聞く必要がある。尖閣諸島で保安庁の船に追突してきた漁船を釈放したことも国民が支持したことなのだろうか?釈放前にビデオは公開せず、釈放は検察庁が独自にしたと発表した。年金にもほとんど何も取り組まなかった。

3 民主党再建の道

党が分裂しようが、崩壊しようが構わないと思う。国破れて山河があり、党崩壊して個人は依然として残る。良心を持った人が、党を作ればよいと思う。小選挙区制の廃止に向けて活動すべきである。小選挙区制が故に、権力欲のみで集まったのであり、国民を裏切ったし、ボス政治になってしまったのである。

立派な人、国民のための活動ができる人が議員になり、立法に携わり、政府を指導すべきである。小選挙区制は、残念ながら、そのような方向に向かわない。全国一つの大選挙区でも良いはずである。ネット選挙運動が可能であるので、小選挙区にする必要性がない。

民主党の人で、今回の東京都議選結果を真剣に反省する人は、小選挙区打破に動いて欲しい。

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2013年6月22日 (土)

JR東海リニア中央新幹線の電力消費および経済性

先日(6月3日)に山梨リニア実験線に営業車両の原型が投入され、9月からは、42.8kmに延伸した実験線において、営業最高速度の500km/hでの約2分間の走行試験をも実施予定であるとのニュースがあった。

日経 6月3日 JR東海、リニア500キロ走行に向け試験本格化

日テレ・中京テレビのニュースは6月21日に開催されたJR東海の株主総会ではリニア中央新幹線についての質問も相次いだと報じている。

日テレ・中京テレビ 6月21日 JR東海の株主総会、リニアへの質問相次ぐ

未だ、試験段階であり、JR東海は実施を決定したわけではないが、気になることが多いのである。

1) リニア中央新幹線の電力消費

国土交通省に中央新幹線小委員会が2010年3月に設置され、2011年5月までに計20回の委員会が開催され、2011年5月12日にこの答申が出された。委員会での配付資料や議事録は、この国土交通省のWebからダウンロード可能である。

本来であれば、答申に中央新幹線の電力・エネルギー消費の予測がその根拠と共に記載されていなければならない。しかし、答申が出された同日の2011年5月12日の第20回配付資料に含まれているパブリックコメント結果報告には、17番目のコメントとして「消費電力と電磁波の影響が公開されるべき」とあり、最終ページに次の表がある。

Choulinear20136a

単位がエネルギー単位(電力の場合は、hが加わったkWh)ではなくkWになっている。500km/hでの走行時に35MWとあるので、もしこれを平均エネルギー消費とするなら40分の所用時間を12分間隔(5本/時間)で運行するなら片道3.3列車で往復6.6列車となり、それに35MWを掛けると233MWになる。実際には、加速時と登坂時に多くのエネルギーを必要とし逆に減速時と下り坂ではエネルギー回収が可能である。いずれにせよ、この270MWや740MWは、電車のみの平均エネルギー消費としての大雑把な計算と思える。

参考まで、東海道新幹線N700系であれば、1列車は平均8~9MW程度である。従い、列車のみで考えて、レール式電車の3倍以上のエネルギーを必要とするように思える。速度が違うので、距離で考えると差は縮まる。

本題は、これではなく、超伝導の維持エネルギーである。2005年5月の記事であるが、Nikkei BPnet リニアモーターカー用の「高温」超伝導磁石、JR東海によれば、高温超伝導磁石を開発したとあるが、マイナス253度である。LNGが、マイナス162度であるから、高温と言っても、極低温というのが実際である。保温材で温度が上昇しないようにするが、常時冷却することが必要である。2011年2月28日の委員会の配付資料にコスト低減等への取り組みについてがある。この12ページに液体ヘリウムを使わない直接冷却のことも書かれている。もし、温度が上昇したならば、コイルから熱が発生し、電気抵抗は大きくなり、たちまちリニア新幹線は運転できなくなる。また、メンテナンス時には、常温にせざるを得ないかも知れない。そうなると、この1週間は、リニア中央新幹線運休しますなんて発表が相次ぐ気がする。

中央新幹線小委員会の議事録や資料を読んでも、極超低温のことについては、私の見落としがあるかも知れないが、全く触れられていない。リニアモーターそのものには技術課題はないはずである。しかし、超伝導の利用に関しては、例えば、粒子加速器での利用はあるが、点の設置であり、鉄道のような線の設置ではない。新規技術の利用については、大きなリスクがあることも忘れてはならない。

なお、上に書いた270MWや740MWは、冷却に要する電力も含んでいる可能性もある。しかし、その場合は、電車が走行していても、いなくてもほとんど変化がなく、1日中、365日絶え間なく多大の電力を消費するお化けである。一旦、停電が起こると、1週間以上の運休となるので、電力不足の際は、一般家庭30万戸を停電にすることになるかも知れないことを危惧する。

JR東海も国土交通省も上に書いてあることに対して、技術データを含め情報を開示して欲しい。

2) リニア新幹線の経済性

資料を読むと気が狂っているのではと思ってしまう。次の2つの表を見てください。

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Choulinear20136c

上の表は答申からで下の表は第3回配付資料からです。維持運営費は、一番コストが小さくて済む南アルプスルートでさえ年間3080億円になっており、更に設備更新費が1年当たり1210億円となっている。一方、収入増は2720億円なので、誰が考えても収支が合わない。2720億円の収入の根拠金額(すなわちx1.1x1.15の元となる額)は東海道新幹線の収入金額ではなくJR東海のバスを含む全ての収入金額です。

取締役選任決議案がよく株主総会で可決されたと思います。もっとも、こんなことを言うと、なぜ株主総会が終了してから書くのだと叱られそうですが。

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2013年6月20日 (木)

成長戦略一人あたり国民総所得150万円増加

安倍総理が6月5日の成長戦略第3弾スピーチで述べた中に含まれている一人あたり国民総所得を10年後には150万円以上増やすことについて、考えてみたい。

1 国民総所得と国民総生産

国民総所得とはGross National Income(GNI)であり、国民総生産とはGross Domestic Income(GDP)です。GNIとGDPの違いは、GDPが日本国内で生じた付加価値であるのに対して、GNIは日本の人が海外で稼いで得た収入も含むが、一方で日本国内で生み出した付加価値分の海外に対する利息や配当の支払を差し引きます。

国外に製造拠点が移った場合、国内のGDPは減少するが、海外生産による利潤が送金されてくるとGDPは国内製造に係わる付加価値分が減少するものの、GNIは海外生産による配当金の受け取りは増加する。増加と減少とどちらが大きいのかと同時に、製造拠点を移さなくてジリ貧になれば、もっと減少が大きいとも言える。

最近の傾向としては、図表1の通り、日本についてはGDPよりGNIが多くなり、かつその差(海外からの所得の純受取額)は増加傾向です。

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2 10年後150万円増加の意味

安倍総理のスピーチは首相官邸のWebのここにあるのですが、2012年度の国民総所得(GNI)は、490兆1730億円でした。これを人口1億2775万人で割ると一人当たり383万7千円となる。10年後の人口を1億2750万人として一人当たり150万円の増加を計算すると平均年3.3%の増加が必要との答えが得られる。

そこで、アベノミクスはインフレターゲット年率2%であったので、実は実質年1.3%の増加率を目指すことになるのではと思う。スピーチでは明確でない部分と思う。

3 給与金額は

6月14にこの成長戦略の最重要事項は給与アップを目指すことであるを書いた。そこで、気になる給与をGDP、GNIと共に比較をしたのが次の図表2である。なお、年1%の増加でも失われた20年と比較すると良い成績である。

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GDPとGNIは前年度からの伸び率では、ほとんど一致している。給与年収は、厚生労働省の毎月勤労統計調査からであるが、比較のために内閣国民経済統計に含まれている雇用者報酬/賃金・棒給の前年度増加率も表示した。給与年収と雇用者報酬/賃金・棒給はほぼ同じであることが分かる。

GDP・GNIの伸びと給与の伸びを比べると、どうも給与が低く抑えられているように思えて仕方がない。そこで、図表3として1995年を100としての指数表示のグラフを書いた。

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給与が下回っている。給与をあげるために頑張らなくてはならない。

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2013年6月19日 (水)

子宮頸がんワクチンについて

子宮頸がんワクチン接種の副作用について、以下のような気になる報道がなされているが、本質が伝っていないと思いました。

読売 長野 6月18日 子宮頸がんワクチン推奨中止で波紋

NHK 6月17日 子宮頸がんワクチン 方針転換波紋広がる

2011年9月3日に、私は、このブログを書きました。当時も今も、私は考え方に差はありません。読んでいただくと、ほぼ理解できると思います。もし、現在の報道に関して申し上げるなら、あらゆる医薬品や医療について期待できる効果と同時に副作用があります。当時から子宮頸がんウイルス・ワクチン(HPVワクチン:Full Nameは、Human Papillomavirus Vaccineです。)を接種した場合に、低くはあるが副作用があることは知られていました。副作用があるが、なぜ接種するのかは、効果が大きいからです。すなわち、リスクとリターンの関係です。

この6月14日の厚生労働省の各都道府県知事宛勧告を読むと、どう感じられますか?特に、勧告に添付されているこの説明を読むと、私には、報道とは全く逆に読めてしまいます。重い副反応は、ワクチン接種と関係がない事例を含めて96万回に1回や30万回に1回とか書いてあります。

WHOのこのHPVについての説明にも、子宮頸がんは女性が罹患するがんの中で2番目に多いと書いてあります。日本は、どうであるのか、国立がん研究センターがん対策情報センターの罹患データ(全国推計値)を使ってグラフを書きました。

Cervical_cancer2013a

子宮頸がんは赤色で示しましたが、第5位でした。一方、この罹患率は、国際比較を可能とするための世界人口モデルをベースにしており、日本人口モデルをベースにすると高齢化が進んでいることから罹患率は少し高くなり図表2のようになります。

Cervical_cancer2013b

なお、この先が重要なのですが、年齢別に見ると、様子が変わってしまうのです。子宮頸がんの罹患率は若い年齢に高いのです。図表3は、上皮内がん含まない場合であり、図表4は上皮内がんを含む場合です。上皮内がんとは、上皮細胞と間質細胞(組織)を隔てる基底膜を破って浸潤していないがんで、切除により治ります。上皮内癌が最もよく観察されているのが子宮頸がんとのことです。また、罹患率とは、新たに診断されたがんの率です。

Cervical_cancer2013c

Cervical_cancer2013d

子宮頸がんは100種類以上あるHPVの幾つかの種類(15種類が高リスク型とされています。)が原因であると考えられています。HPVワクチンはHPVの全てに有効である訳ではないが、相当の効果が期待できます。但し、HPVに既に感染している場合には、発症していなくても、ワクチンの効果はありません。またHPVの感染原因は、ほとんどが性交渉です。それ故に、日本政府は13歳から16歳のワクチン接種を助成することとしたのです。

今回の騒動でワクチンを接種したがまだ3回目が終わっていない方がおられたら、必ず3回終わらせてください。そうしないと意味がありません。またHPVワクチンを接種したとしても、子宮頸がんに罹患するリスクは低くなったものの、ゼロになったわけではないので、がん検診は必ず受けて下さい。図表3や図表4のように若くても子宮頸がんの罹患リスクは、それなりに高いのです。なお、最後に女性のがんによる死亡率を図表5として掲げます。子宮頸がんと子宮体がんが区別されていないが、死亡原因になりえます。データは厚生労働省の人口動態統計からです。

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2013年6月17日 (月)

大阪地検による過度な弁護士懲戒請求

気分のすぐれない事件と思っていました。

毎日 6月1日 取り調べDVD:録画映像放映 「証拠、検察だけのもの?」 弁護士「懲戒」に反論

毎日 6月1日 取り調べDVD:証拠は国民のもの…NHKに提供の弁護士

毎日 6月6日 NHK:取り調べ映像の使用 松本会長「問題ない」

この事件について江川 紹子氏が懲戒請求の当人である佐田元真己弁護士とインタビューを行って、記事を書いておられる。

Yahooニュース 6月16日 【裁判記録は誰のものか】「これは国民の知る権利の問題です」 (江川 紹子)

大阪地検は、刑事訴訟法281条の4(Yahooニュースは281条4項となっているが、正しくは独立した281条の4である。)に違反したとして、大阪弁護士会に懲戒を請求した。

刑事訴訟法281条の4は、一番下に参考として掲げたが、この条文が追加されたのは、2004年(平成16年)の刑事訴訟法改正の時であった。実は、この法案が提出された時は、日弁連も「改正法案から証拠の目的外使用条項の削除を求める会長声明 (ここにあり。)」を出していた。

なぜ証拠の目的外使用条項が当時追加されたのかは、、長引く裁判を避け公判前整理手続において検察が開示する証拠の範囲を広くする改正を2004年(平成16年)に行った(刑事訴訟法316条の2~316条の32)。その際に、検察が開示した証拠について目的外使用の禁止に関連する281条の3~281条の6を追加をしている。

目的外使用の全てをあらゆる場合について禁止するのは、行き過ぎであり、社会の正常な発展を阻害すると私は考える。今回の佐田元真己弁護士のケースでは、起訴された人は1審で無罪が確定しており、且つこのDVDの提供を承諾している。また、佐田元真己弁護士は、NHK大阪の報道する趣旨と内容を把握した上で提供している。このような場合にまで、禁止をすることは行き過ぎと考える。

ところで、今回の佐田元真己弁護士のケースは、現段階では検察が弁護士会に懲戒を請求しただけである。大阪弁護士会のWebを見ても本件について未だ何も出ていないようである。私は、大阪弁護士会は、懲戒をしないことを決定し、検察も、それ以上の要求をしないという可能性もあると思う。

そこで、今回の事件をどう考えるかであるが、大阪地検による問題提起であったと思う。大阪地検が懲戒請求をしなかったなら、この条文のままで281条の4他が当面の間残る。これを機会に国民が声を上げれば、法改正があり得る。法は政治家、議員、官僚が作るものにあらず。国民が声を上げることにより立法される。

 刑事訴訟法 第281条の4  被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一  当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
二  当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続
ロ 第349条第一項の請求があつた場合の手続
ハ 第350条の請求があつた場合の手続
ニ 上訴権回復の請求の手続
ホ 再審の請求の手続
ヘ 非常上告の手続
ト 第500条第一項の申立ての手続
チ 第502条の申立ての手続
リ 刑事補償法 の規定による補償の請求の手続
② 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。

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2013年6月15日 (土)

あたり馬券の所得税に関係する大阪地裁判決

5月23日に大阪地裁で所得税法違反で懲役2月・執行猶予2年の刑事判決があったが、この判決を不服として検察庁は控訴した。

読売 5月31日 外れ馬券判決 地検が控訴

読売 5月31日 外れ馬券判決 地検控訴へ「課税根幹に関わる」

この大阪地裁の判決が裁判所のWebに公開された。

平成25年05月23日  大阪地方裁判所 所得税法違反被告事件

判決文を読んだのであるが、興味を引いた。そして、思ったことは、大阪地裁判決は筋が通っており、国税庁は地裁判決の考え方を採用して課税するのが合理的であると思った。なお、所得税法241条は、正当な理由がなくて確定申告書等を提出期限までに提出をしない場合は、一年以下の懲役又は50万円以下の罰金とすることを定めており、まさにこれを理由として執行猶予付き懲役2月の判決となったのである。この部分については異論はない。

1) 馬券配当所得について政府・国税庁の課税扱い

国税庁の馬券配当に関する所得税の扱いは、所得税基本通達34-1の(2)として競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等は一時所得に該当するとなっており、一時所得扱いである。一時所得とは、他の所得に該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない所得と所得税法でなっている(34条)。

一時所得の所得金額は、年間ベースで一時所得に係る収入金額からその収入を得るために支出した金を控除し、さらに一時所得の特別控除額50万円を控除した金額となる。そして、他の所得と合算する際に2分の1とする。

一時所得の扱いの場合、50万円を控除して更に2分の1とした金額が課税ベースになるのであり、不合理とは言えない。但し、50万円以外に控除できるのは収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限られるのであり、馬券配当の場合は、その馬券を購入した金額のみである。すなわち、他のレースの外れ馬券については控除できない。

競馬の勝馬への投票は、趣味、嗜好、娯楽であり、馬券の購入費用は楽しみ賃であり、個人の趣味、嗜好、娯楽に対する支出は所得税の計算に影響を与えるべきではないとする考え方である。

2) 馬主の場合の所得についての扱い

馬は動産であり、譲渡をすれば譲渡所得になる。一方、懸賞金は保有に係わる事業所得または雑所得として扱われる。(参考:所得税法施行令200条、所得税基本通達27-7)事業所得または雑所得となった場合、50万円の控除や2分の1にする扱いは受けられず、必要経費のみが控除できることとなる。複式帳簿をつけて青色申告をすれば青色申告控除も受けられるが事業所得の場合に限られる。

同じ競馬でも馬券購入者と馬主で課税の扱いが異なると言うのもおもしろいのですが、馬主の場合は、支出を税務署もほぼ把握できる。一方、馬券配当の所得を雑所得として扱うと、ハズレ馬券の購入費も必要経費であるとの主張が出てくる。しかし、ハズレ馬券をいくら見せられても、その人が購入したかどうかが明確ではない。もし、ハズレ馬券が必要経費となるなら、競馬場で拾ったり、安く他人から買い受ければよいのである。

3) 日本中央競馬会PAT

1)と2)に書いたことは、これまでの常識であったのですが、世の中は変わるのです。インターネットで馬券が購入でき、配当が受けられるA-PATと即PATという制度を日本中央競馬会がやっているのです。参考:ここ

大阪地裁の事件の被告(Aさんとしておきます。)は、PATを使って馬券を購入し、配当は自分の銀行口座に振り込まれるようにしていたのです。取引記録は全て電子的に残り、明朗会計が実現したのです。その記録は、判決文によれば、次の通りであった。

2007年 馬券配当 7億6778万円 馬券購入額 6億6735万円

2008年 馬券配当 14億4683万円 馬券購入額 14億2040万円

2009年 馬券配当 7億9518万円 馬券購入額 7億8177万円

雑所得として扱い、ハズレ馬券の購入額をも差し引くかどうかで、2分の1になるどころではなく、まるで金額が異なってくる。Aさんは、非常に多数・多額の馬券を買っており、現在の株価乱高下の一因として言われているコンピューター自動取引のようにPATで馬券取引をしたのです。全競馬場の新馬戦及び障害レースを除く全てのレースにおいて馬券を購入し、競馬開催日1日当たり数百から多いときには1000を超える買い目について馬券を購入し、その購入金額は1日1000万円以上に上ることがほとんどであったと判決文にある。継続性、恒常性があり、一時所得には該当しないと大阪地裁は判断した。

大阪地裁の判断は、合理性があるように思う。但し、PATを使わず、昔通りの方法で馬券を購入し、払い戻しを受けた場合は、継続性の判断ができず、一時所得として扱うことでよいと思う。同じ所得でありながら、PCで行う場合と、PC以外で扱いが異なるのは、おかしいとの考え方も生じる。しかし、所得は全て正しく申告され課税されるのが本来の姿であると考える。PATの場合、銀行口座経由となり、全ては中央競馬会のコンピューターにも記録される。株式の取引の場合に、専用口座の申告書類を証券会社が用意するように、中央競馬会がPAT取引顧客に用意し、かつ税務署にも情報を提供するようにすればよいと考える。

Aさんの場合は、税務申告をしなかった。勿論、税務申告をしたところで、税務署は否認し、結局は裁判で争うことになる。しかし、その場合は、刑事裁判ではなく、税務に関する裁判である。弁護士費用・裁判費用も馬券で得た利益の範囲内に収まったはずである。

本件については、法改正をすればよいと考える。法改正して、国民が正直に税金を申告し、納付できるような制度にすることが最も重要と考える。

4) 宝くじは?

ところで、宝くじの賞金が気になるのであるが、宝くじは大丈夫である。何故なら、「等せん金付証票法」により発行・運営されており、13条に「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。」と定められているからである。

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2013年6月14日 (金)

成長戦略の最重要事項は給与アップを目指すことである

「アベノミクス」の「第3の矢」と報道されている「成長戦略(案)」を、総理大臣を本部長とする日本経済再生本部が6月12日に発表した。(このページからダウンロード可能。)

日経 6月12日 首相「次元違うスピード感で」 成長戦略を取りまとめ14日に閣議決定

様々な戦略が記載されているが、やはり最重要なことは、我々の給与が上がることであり、給与アップを目指すべきであると考える。そして、そのためには、首相任せ、与党任せ、官僚任せでは無理であり、我々自身が自分の手でもぎ取るべく努力することも極めて重要と考える。

今回のブログでは、厚生労働省の毎月勤労統計調査の分析結果をお伝えすると共に、私のコメントを加えることとします。参考にしていただければと思います。

1) 給与金額はどう推移しているか

図表1が、1990年1月以降の毎月の給与金額です。

Salary20136a

現金給与とは、給与支払総額であり、残業料もボーナスも含んだ税引き前の金額です。従い、夏と冬に金額が増加している。夏の増加額が小さいのは、全ての平均であり、夏のボーナスは会社により6月支給の会社もあれば、7月支給の会社もあるためです。所定内給与とは、残業を含んでいない給与金額(税引き前)です。

失われた20年間には、給与が全く増えなかった。ボーナスもだんだん減少している。少しわかりにくいので、ボーナスを含めた年収で示したのが図表2です。

Salary20136b

デフレだから減少していてもよいではないかとの意見もあるでしょうが、最高の1997年と比較すると2012年は446万円から377万円へと15%のダウンです。これじゃ、生活を切り詰め消費を押さえざるを得ないし、妻はパート労働をせざるを得ないというのが実情に思えます。(なお、このグラフは毎月勤労統計調査の歴月の平均月額を12倍した金額を年収としています。)

2) 労働者数

一体何人が給与所得を得ているか、毎月勤労統計調査からのデータです。

Salary20136c

厳密には、人数は調査産業の合計であるが、2013年3月末で45,475千人。うち一般労働者が32,098千人で、パート労働者が13,377千人となっている。2013年3月の業種別の労働者数は図表4の通りです。

Salary20136d

労働者のほぼ30%がパート労働者で、しかも飲食サービス業に至っては、77%がパートさんであり、卸売業、小売業も小売業のみのデータがないが、あればおそらくパート割合が相当大きいと思います。

なお、毎月勤労統計調査におけるパート労働者とは、1日の所定労働時間が短い労働者または1週間の労働日が短い労働者です。残業を含む労働時間は図表5の通りです。

Salary20136e

3) 一般労働者とパートタイム労働者の給与

図表5にあるように労働時間が異なるので、一般労働者とパートタイム労働者の給与を比較するため、時間外を含む給与額を労働時間で割った時間当たり賃金(時給)を示した図表を作成した。なお、ボーナスは含んでいない。

Salary20136f

時間当たりの給与額は、一般労働者とパートタイム労働者で見事に分かれました。勿論、平均であり、平均より上の人も、下の人も存在する。しかし、平均が一つの重要な指標であることに違いはない。

成長戦略の一つに、パートタイム労働者の給与アップが含まれるべきであると考える。当然、3号被保険者制度は廃止すべきである。パートタイム労働者の給与があがれば、年金財政も改善するし、医療保険財政もよくなるし、税収も増加する。消費も増え、国民の生活もよくなり、景気もよくなる。日本が不況から脱出できない理由の大きな要因として、パートタイム労働者の低賃金労働があると思う。その証拠が、図表3である。1990年には、パート労働者は、475万人と現在の1317万人の3分の1近くであった。

このパート労働者には、主婦パートだけではなく、数ヶ月単位の労働にもつけない若者も含まれているはずである。パート労働者を使うと、企業にとっては、経費面でメリットが大きいのである。企業負担の厚生年金と医療保険がないので、それだけで人件費が10%安い。しかし、その結果は、他の企業や国民全体の負担になっているのである。そして、ひいては労働市場の単価を安くしているのである。図表2で全労働者の平均給与のグラフを掲げているが、だんだん平均が安くなっている理由の中に、低賃金パート労働者の増加がある。

やはり給与生活者の収入増を目指すことは成長戦力において、重要なことと考えます。

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2013年6月11日 (火)

米サンオノフレ原発廃炉決定から考える原子力リスク

米サンオノフレ原発の廃炉決定は、不自然とは思えず、むしろ当然である気がする。

時事ドットコム 6月8日 米加州原発、再稼働断念=三菱重工に賠償請求-放射能漏れ

サンオノフレ原発(San Onofre Nuclear Generating Station 略称SNGS)の78.2%を所有しているSouthern California Edison (上場会社は、親会社・持株会社のEdision International:NYSE略称EIX)の発表は次です。

SCE NEWS June 7, 2013 Southern California Edison Announces Plans to Retire San Onofre Nuclear Generating Station

2号機と3号機の廃炉ですが、1号機は既に廃炉の工事中です。1992年に運転を停止し、1993年に燃料抜き取りを完了。廃炉工事の終了は現時点では2030年末の予定です。

1) 三菱重工への損害賠償

損害賠償裁判を提起することは間違いないと思う。勿論、裁判前に和解の可能性が全くないわけではないが、話がつくとすると、感覚でしかないが、1000億円以上の金額になる可能性もあると思う。そして、他社からの同様な賠償要求が加われば、三菱重工の企業存続困難な可能性もある思う。

三菱重工に対して損害賠償がなぜ起こされるかというと、2号機と3号機双方の蒸気発生器(各2基で合計4基)を2009年と2010年に三菱重工が交換したからである。このNY Times June 7, 2013 Nuclear Power Plant in Limbo Decides to Closeによれば、Those parts, called steam generators, cost more than $600 million.とあり、600億円以上のビジネスであったのでしょうか。なお、SNGS2号機・3号機は三菱重工が納入したのではなく米Combusion Engineeringであり、同社は原子力から撤退しているので、蒸気発生器を同社から購入できない。従い、三菱重工から購入したのですが、当然高く売りつけることができたと思います。

但し、本当に高く売れたのか、損をしなかったのかは、損害賠償問題がどうなるかで決まってくる。

ちなみに、上に掲げたNY Timesの記事の表現はおもしろい。損害は誰が、負担するのか、株主か、電気料金か、保険会社か、三菱重工か、未だ決まっていない。

Division of costs between Edison’s shareholders and ratepayers, its insurers and Mitsubishi Heavy Industries, which supplied the heat exchangers, has not been determined.

2)  加圧水型原発蒸気発生器問題

SNGS3号機は、2012年1月31日に蒸気発生器細管からの漏れによる放射能を検知して緊急停止をした。SNGS2号機は2012年1月9日より定期補修により運転停止中であったが、蒸気発生器細管を検査したところ、同様な損耗問題が発見された。2号機については、蒸気発生器細管のうち損耗が発見された6管に加え186管にも栓をして、結果として出力を70%程度に下げて運転に入る予定であった。しかし、その2号機についても70%出力での運転見通しが立たず、3号機と共に廃炉を決定した。参考:NRC Confirmation Action Letter March 27, 2012

加圧水型原発の蒸気発生器は、事故がこれまでも生じている。日本でも関西電力美浜2号機は蒸気発生器の取り替えをしている。世界中でも、蒸気発生器の取り替えを実施した、または既に発注済みという原発が少なくないと聞いている。

蒸気発生器は、福島のような沸騰水型原発にはなく加圧水型原発の装置である。しかし、だから加圧水型は危険であるとまでは言えず。同様に、三菱重工の蒸気発生には欠陥があるとまでは言えない。B787のバッテリー問題も同じような部類と考えるが、完全に解明できているとは言えず、リスクがつきまとう。リスクとどうつきあうかが重要と考える。

なお、SNGS2号機・3号機は原子炉熱出力3,438MWであり、電気出力1,100MW程度である。

3) 日本での原子力リスク

まず三菱重工は、損害賠償が発生した場合の、賠償保険を付保しているだろうか?何らかの保険を付保していると思うが、原子力に関連する保険や相手先の逸失利益に対する保険は付保できていない可能性もあると思う。

そして思いが及ぶのは、トルコ他への原発輸出(参考:三菱重工 2013年5月7日 発行 Press Information)である。安倍首相がバックアップしているが、将来事故が起こり、トルコ政府や企業から損害賠償を求められたら、どうするのだろうか?企業が、自らの判断でビジネスをすることに問題はないと考える。しかし、政府が絡むと、複雑になる。三菱重工が払えないなら、日本政府が払うべきであるとならないかという点である。

日本の税金が損害賠償に使われることを日本国民は、どう思うだろうか?福島原発事故では、税金が使われ、電気料金が高くなることに間違いはないと思う。その根拠については、追って書いてみたいが、あまりにも国民は原子力リスクに不感症になっていると思う。大飯3号機・4号機を運転し、他は運転をしていないが、その理由がよく分からないし、今後どうするのか全く分からない。多分、敦賀2号機は廃炉だと思うが。(参考47ニュース 6月6日 

リスクが低く大丈夫であると判断されれば、運転してよいだろうと思う。しかし、誰が判断するかと言えば、国民である。そのための必要な情報の開示はなされなくてはならない。なお、リスクについては、核燃料サイクルと使用済み核燃料および廃棄物処理の問題も含むのである。

福島事故は、原子力災害賠償法で、東京電力のみに責任を押しつけたが、それが社会や産業の発展のための正しい選択であるのだろうか?原子力災害賠償法第3条改正の検討必要性はどうだろうか。製品の欠陥は、誰が責任を持つべきか?責任を負担すべき者が負担することで、市場経済が成立し、市場経済による正しい発展が期待できる。

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2013年6月 8日 (土)

番号法の利用を考えよう

マイナンバー法とも呼ばれている番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)が5月31日に公布され、3年以内に施行される。(公布に関する5月31日官報号外112号の目次はここ

法には、第1条に的として「行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が」となっており、政府、政府機関、地方自治体を主語として書かれており、行政事務を効率的に実施し、国民の利益や福祉の増進をすることが大きな目的である。同時に、第3条第2項に「行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮して行われなければならない。」とあり、行政事務に止まらず、広く国民の利益増大に結びつけるべく、努力すべきと考える。番号制は、今後国民がその有効利用を試行錯誤も含め有効に開発し、国民の利益を増進するデファクト・スタンダードとして利用すべきと考える。

1) 法人番号

番号は、個人のみならず、法人にもつけられる。法58条において、国税庁長官が法人番号を指定し、これを当該法人等に通知することとなっており、更に法人番号の指定を受けた者の名称、所在地及び法人番号を公表することを定めている。番号は、株式会社のみならず、社会福祉法人もNPO法人も役所もあらゆる法人全てである。

変な勧誘電話を受けたなら、法人番号を名乗ってくださいと要求すればよい。信用情報も法人番号に基づいて流され、誤認は少なくなり、MRIのような怪しい投資情報についても、的確な情報が得やすくなることを期待する。また、会社法939条、940条の決算公告であるが、法人番号の実施により媒介者が安価にNetで決算公告を提供するようにすれば、法人の信用情報は得やすくなる。正しい信用情報が得られれば、ビジネスは拡大し、経済は発展する。MRIの情報で一般投資家が疑心暗鬼に陥ると経済は停滞する。法人番号に基づく信用情報の提供は、民間が実施可能であり、NGO・NPOでも可能である。

法務局も、番号法を機会に、法人の登記簿情報をNetで入手可能なようにすればよいと思う。株式会社の決算公告も、これを機会に法務省が自らNet提供するように整備すべきと考える。番号法施行まで3年あるから法改正が必要でも可能と思う。

番号法は、法人も含まれるので、マイナンバーや個人番号と呼ぶより単に番号法と呼ぶのが適切と思う。

2) 税徴収と税額控除給付の適格な実施

正しい税徴収には、税額の基となる所得等を正しく把握する必要がある。番号法の実施で直ちにとは行かないが、正しい把握が容易になると期待する。脱税で不幸になるのは、税務署や政府ではない。国民全体が不幸になり、脱税額を埋め合わせるのは、納税者である。ここで言う税は、法人・個人の法人税、所得税、消費税、相続税、地方税を含めあらゆる税のことである。

税には、制度から生じる不公平があるとしても、不正行為による不公平は許してはならない。番号法が存在しないために把握が困難な部分があったかも知れないが、番号法施行後は番号法を有効に活用して国民のために脱税を摘発して欲しい。

番号法付則6条7号に給付付き税額控除のことが触れられているが、消費税の逆進性解消については、複数税率制ではなく、所得税の税額控除を給付付きで実施するようにして欲しい。番号法の下では、税金を政府が国民に支払うことが可能となるのであるから。

2014年1月よりNISAと呼ばれる上場株式等・公募株式投信の配当・譲渡益への非課税制度がはじまり、2014年から2023年迄の計10年、毎年100万円迄の新規投資から得られる分配金や譲渡益が、最長5年間非課税となる。(租税特別措置法9条の3と37条の14)現在の10%課税が20%課税になることからの措置であるが、原則一人一口座という制限があることを含め、複雑な制度である。番号法の番号で管理すれば、一人一口座なんて変な制限を設ける必要はない。そもそも、預金についても適用すべきである。少額の預金についても、投資と同様に税を徴収しないというのは、すっきりするし、番号で管理可能である。あるいは、累進課税の一般の所得と合算することも可能にすればよい。そこまで進むと、株式投資で損をした場合に、その損失を所得合算・通算して損をすれば所得税が少なくなるようにして、一般の人も、ベンチャーキャピタルに投資しやすくすればよい。法人も個人も番号で管理可能であり、不正は防げると考える。

3) 医療情報他

調剤薬局ではお薬手帳に張り付けるスリップが渡される。薬剤や医療の管理・記録は重要であるが、一元的にシステム管理した方が、効率的である。病院を変わっても、以前からのデータが全て自動的に引き継がれる。複数の医療機関で治療を受けることも容易である。一方、過剰受診の自己負担も導入可能である。10年前のX線やCTデータもいつでもどこでも見ることができる。

個人情報流出を恐れる必要があるだろうか?もし、医師や医療機関を疑うなら、医療を受けることができない。自分のデータは自分自身であれば、アクセスできるようにすべきである。一方、業務でデータを扱う人については、政府・地方自治体を含め、端末を操作する場合は、IC個人番号カードでログインし、どのデータを誰が取り出したか、入力したか全ての記録を管理すべきである。電子データの保存コストは安くなっている。インターネットにはつなげない情報を含め合理的に管理すれば不正なデータ流出は防げると考える。故意の不正流出は、犯罪として記録が残るようにしておく。医療データシステムも、公衆回線で流す情報と一般回線とは切り離した専用線でつながったシステムの2つの構成にすることも考えられる。専用と言っても、日本中に光ケーブルが存在するのであり、その中での利用故、高コストでないと思う。

番号法の施行には3年あり、我々自身が、番号法により幸福になる社会を目指すべきと考える。

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2013年6月 6日 (木)

暴走党が似合うのかな

6月3日にこれを書いた時は、ここまで明確に述べるとは、思っていませんでした。

日経 6月6日 橋下氏、首相と会談 オスプレイの本州訓練を提案

この記事の中に、「受け入れ先として大阪府八尾市の八尾空港を提案した。」とあります。

八尾市の地元は、日経 6月3日 オスプレイ構想に反対 大阪・八尾市長が表明 にある通り、受け入れ反対と思います。結果、反対運動が拡大すると思うのです。維新の会の参議院選の得票増になるか減少になるかですが、少なくとも八尾市の人たちは、維新の会について、反対に投じると思いますし、他の地域でも、地元の意見を受け入れない政党であると思う人が多く出ると思うのです。

考えれば、昨年10月、維新の会に加わった人物を、暴走老人と例えた人がいました。暴走老人ばかりか、党全体が暴走党であるように思いました。

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2013年6月 5日 (水)

再生可能エネルギーの証券化

再生可能エネルギー発電に関する証券に投資をしないかと勧誘する電話を受けた。電話では、金融庁の名前を出したりして、もっともそうに説明をし、最後には○○県の方限定で特別に募集をしているとか言っていた。

それ以上は、相手は語らなかったのであるが、MRIの投資で、巨額資産消失により損失を被っておられる方が現実におられるわけで、再生可能エネルギー証券投資で同じように投資に失敗する人が出ないとも限らず、念のため、思うことを書いてみたい。

1) 証券化とは?

株式や社債のみならず何でも証券化は可能である。例えば、MRI事件もこの47ニュース 5月30日 MRI社長を詐欺容疑で刑事告訴 巨額資産消失疑惑にも、「MRIは診療報酬を保険会社などに請求できる権利を債権化した金融商品への出資を募っていた。」とある。詳細は、私もつかんでいないが、多分手が込んだ手法で素人が騙されやすいスキームを使っていたのだろうと想像する。

金融商品になじみがない人にとっては、デリバティブと聞けば、恐ろしそうという印象を受けると思う。しかし、××の権利を証券化した安全な投資ですと説明されれば、安心してしまうかも知れない。金融商品とは、納得できなければ、投資をしてはいけないモノです。そして、一旦投資(購入)をしてしまうと中途解約・中途売却はできないのが通常と思うべきです。株式が売却できるのは、証券取引所に上場しているからです。

2) 誰が証券化して売るか?

金融の常識はこうです。儲かる投資なら、誰にも売らないか、高く売りつける。あるいは、あるプロジェクトを仕組んで立ち上げたとするなら、それを細分化し、その中で、自分は低リスクで高収益を得られる部分を取り、高リスクで低収益となる部分は他人に売るのです。一つのプロジェクトで低収益部分を多く作れば、高収益部分のリターンはめちゃ大きくなる。

そのようにして作ったハイリスク・低収益部分の投資を歩合給でセールスマンを使って、やたらめったら電話を掛けさせて売りまくるのです。不況下なら、セールスマンを雇うことは簡単だし、やばいことをしていると気がつかれても、核心部分は教えないし、ぶら下がったニンジン目指して走るセールスマンなわけです。

再生可能エネルギーで、そのようなことは可能かと言えば。メンテナンス契約をする会社を作って、そこで高利益を手にすることが考えられる。まして、再生可能エネルギーなんて脚光を浴びているわけで、自然エネルギーなんて訳の分からない言葉を発している人もおり、セールスで騙すのは、容易な分野と思う。

3) 再生可能エネルギーの未来は明るいか?

もしかして明るいかも知れない。しかし、50年以上先のことかも知れないし、それ以上要するかも知れない。

少なくとも、今は開発段階、試験段階です。「そんなことはない。現実に太陽光発電に投資をし、洋上風力も出てきている。」と仰る方もおられるはずです。では、電気料金の請求書を見てください。そこには、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」との項目が書かれています。現在は、0.35円/kWhですが、これに更に太陽光発電促進付加金(電力会社により異なり、0.02円/kWh~0.09/kWh)です。太陽光発電促進付加金は、2015年3月で終了するが、終了しても再生可能エネルギー発電促進賦課金は、現在より高くなることは間違いがなく、毎年値上げが続くと予想される。発電促進賦課金は、この3月までは0.22円/kWhであった。2014年3月には0.35円/kWhから更に値上げ確実です。

なぜ、再生可能エネルギーの電力は高いかと言えば、業者の言いなりの価格で購入することを政府は2012年に決定してしまったからです。未だ、それらの設備は全量稼働しておらず、稼働すればするほど電気代を高くして、業者への支払に充当する制度だからです。少し前までは、太陽光は、住宅用を高くしていたが、買電可能な電力は家庭で消費した余剰分という考え方であった。ところが、現在同一価格で、且つ全量販売される。そして、一旦設置された再生可能エネルギー発電設備は稼働可能な限りフル稼働となる。一旦、契約すると販売電力価格は10年間固定である。

私は、再生可能エネルギーの利用について賛成する。しかし、適度な調和を保って、推進すべきである。未来の技術であり、上手に利用できるようになって本格的に利用できるのである。但し、現状でも大きな無理はなく利用できる場合もあると思う。その場合は、発電しても許容範囲と言えるコストに収まるはずである。

2003年4月以降の認定分については、少し買い取り価格は下がった。太陽光の場合では、40円プラス消費税等から36円プラス消費税等へと。しかし、促進付加金は上昇を続けるのであり、どこかで消費者からと産業ユーザーから不満が出てくる可能性がある。従い、現段階で予想される再生可能エネルギーの投資収益の期待が今後とも継続するかは不明であると思う。

再生可能エネルギーへの投資勧誘について今回書いたのですが、投資勧誘を電話で受けた際は、相手の身元がはっきりしない場合、いくら甘い言葉をささやかれても、オレオレ詐欺の同類項だと思った方が間違いがないと私は思います。

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2013年6月 4日 (火)

都道府県別平均寿命

高齢化社会のことを書いていたこともあり、都道府県別の平均寿命の表を作成した。資料は、厚生労働省が2013年2月28日に発表した平成22年都道府県別生命表の概況(ここからダウンロード可能)による。(トップテンはピンクで、低い方の10都道府県はブルーで彩色した。)

Avelifepref20136

長野県が男女ともトップです。1970年と比べると男で10歳近く、女は11歳以上平均寿命(0歳の平均余命)は伸びている。なお、1970年について沖縄県のデータは資料になく、1975年の平均寿命を記載した。

1970年頃は、55歳定年の会社が多かったように思う。それからすると、65歳定年が今の当然の姿と思える。しかし、単に定年が10歳延長となったのみでは、進歩がない。多様化してよいはずで、子供が独立した後は、収入より社会貢献を重視した生き方の選択とか、若い頃にできなかった生き方を選べるようにするとか。残念ながら、まだそんな社会の実現には至っていない。しかし、努力をして、そのような方向に向けていきたいことと思う。

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2013年6月 3日 (月)

大阪はオスプレイ訓練を受け入れるのか

突然のことで、不思議なニュースとしか思えないのです。

読売 6月3日 オスプレイ訓練 大阪府知事が受け入れ表明へ

読売の記事には、「受け入れの候補地は、関西、大阪(伊丹)、八尾の3空港などが想定される。」とあるが、次の朝日の記事は八尾空港と報道している。

朝日 6月2日 オスプレイ訓練、八尾空港で受け入れの意向 松井知事

沖縄の負担軽減は良いのであるが、本筋としてオスプレイが米軍の展開になぜ必要か、日本で訓練が必要かと言った議論なくして、知事が大阪と言って、大阪の人は受け入れられるのだろうかと思う。

大阪(伊丹)は、国内民間機の発着でオスプレイ受け入れの余地はないと思う。関西の場合は、民間航空機との共用になるが、安全性を含め、関係先の同意は可能なのだろうか。そして八尾については、読売の記事には「八尾市の田中誠太市長は3日、地元との調整や市民への事前説明がない中で、発言は誠に遺憾だ」と見解を表明した」とある。

八尾空港(国交省大阪航空局八尾空港)は滑走路が1490mとジェット機が離発着できず、民間定期便の就航はないが、次のYahoo航空写真のように住宅地の中にある。

通常であれば、可能性について大阪府知事が無視している訳はないが、この発言はどうなのだろうか?混乱を引き起こしているだけなら、知事として失格と思う。私の案は、とりあえずのつなぎとして辺野古に埋め立てせずに移転する案であり、4月8日にこのブログで書いた。

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2013年6月 1日 (土)

橋下市長問題と公明党

橋下徹大阪市長に対する大阪市議会での問責決議案が30日夜の大阪市議会で否決されたが、問責に対する公明党の反対がこの否決に大きく関与した。

日経 5月31日 橋下市長の問責否決 慰安婦発言で大阪市議会 橋下氏は出直し選の可能性否定

毎日 5月31日 橋下市長問責否決:公明、参院選への影響懸念で

毎日の記事には、「公明党にとって、大阪選挙区は公認候補を擁立し、比例票の上積みを目指す重点地域だ。橋下氏が出直し市長選に出馬すれば、相乗効果で参院選でも維新が票を伸ばし、公明党の選挙運動にも影響する恐れがある。党幹部は「出直し市長選になれば『橋下氏一色』になり、参院選がかき消されかねなかった」と説明する。」とある。

公明党のWebを見たが、橋下問責反対についての説明を私は見つけることができなかった。毎日記事にある「橋下氏が出直し市長選をちらつかせたことで、参院選への悪影響を懸念した公明市議団が一転して反対に転じたためだ。」が理由であれば、有権者・市民・国民としては、どうなのだろうかと思う。

すなわち、正義より市民・国民の幸福追求よりも自分たちの政党の利益が優先するという考え方を持っていると思わせないだろうか?最近の政治家は国民の利益より選挙での勝利が優先しすぎていると思う。マニフェスト至上主義や自分たちの考え方の至上主義であり、広く国民の意見を聞いて国民の幸せを追求することを放置していると思う。

この公明党の決断について思ったことは、公明党の支持者の中からも支持離れをしていく人がいないだろうかである。単に大阪市の有権者だけではなく、ニュースは日本全国に届くのであり、国民の中に公明党に失望した人もいるのではと思う。

ところで、小選挙区制と今回のことは関係しているのだろうか。小選挙区制の結果、議員は支持を得ることより、党の中で公認を得て、選挙で勝つことを目指さざるを得ない。一人の人間として国民と対話をしつつ自分を磨いて世の中のために活動することが今の小選挙区制では困難であることも、関係している気がするのである。

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