大阪地検による過度な弁護士懲戒請求
気分のすぐれない事件と思っていました。
毎日 6月1日 取り調べDVD:録画映像放映 「証拠、検察だけのもの?」 弁護士「懲戒」に反論
毎日 6月1日 取り調べDVD:証拠は国民のもの…NHKに提供の弁護士
毎日 6月6日 NHK:取り調べ映像の使用 松本会長「問題ない」
この事件について江川 紹子氏が懲戒請求の当人である佐田元真己弁護士とインタビューを行って、記事を書いておられる。
Yahooニュース 6月16日 【裁判記録は誰のものか】「これは国民の知る権利の問題です」 (江川 紹子)
大阪地検は、刑事訴訟法281条の4(Yahooニュースは281条4項となっているが、正しくは独立した281条の4である。)に違反したとして、大阪弁護士会に懲戒を請求した。
刑事訴訟法281条の4は、一番下に参考として掲げたが、この条文が追加されたのは、2004年(平成16年)の刑事訴訟法改正の時であった。実は、この法案が提出された時は、日弁連も「改正法案から証拠の目的外使用条項の削除を求める会長声明 (ここにあり。)」を出していた。
なぜ証拠の目的外使用条項が当時追加されたのかは、、長引く裁判を避け公判前整理手続において検察が開示する証拠の範囲を広くする改正を2004年(平成16年)に行った(刑事訴訟法316条の2~316条の32)。その際に、検察が開示した証拠について目的外使用の禁止に関連する281条の3~281条の6を追加をしている。
目的外使用の全てをあらゆる場合について禁止するのは、行き過ぎであり、社会の正常な発展を阻害すると私は考える。今回の佐田元真己弁護士のケースでは、起訴された人は1審で無罪が確定しており、且つこのDVDの提供を承諾している。また、佐田元真己弁護士は、NHK大阪の報道する趣旨と内容を把握した上で提供している。このような場合にまで、禁止をすることは行き過ぎと考える。
ところで、今回の佐田元真己弁護士のケースは、現段階では検察が弁護士会に懲戒を請求しただけである。大阪弁護士会のWebを見ても本件について未だ何も出ていないようである。私は、大阪弁護士会は、懲戒をしないことを決定し、検察も、それ以上の要求をしないという可能性もあると思う。
そこで、今回の事件をどう考えるかであるが、大阪地検による問題提起であったと思う。大阪地検が懲戒請求をしなかったなら、この条文のままで281条の4他が当面の間残る。これを機会に国民が声を上げれば、法改正があり得る。法は政治家、議員、官僚が作るものにあらず。国民が声を上げることにより立法される。
刑事訴訟法 第281条の4
被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
二 当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続
ロ 第349条第一項の請求があつた場合の手続
ハ 第350条の請求があつた場合の手続
ニ 上訴権回復の請求の手続
ホ 再審の請求の手続
ヘ 非常上告の手続
ト 第500条第一項の申立ての手続
チ 第502条の申立ての手続
リ 刑事補償法 の規定による補償の請求の手続
② 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。
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