核燃料サイクル破綻の警告
朝日新聞に、日米の研究者が今月、日本がこだわる再処理政策を転換する処方箋を朝日新聞社に提言論文として寄せてきたとする記事があった。
朝日 8月26日 「テロの標的に」 日米研究者が「脱再処理」で改革提言
この記事の全文は朝日に会員登録をしていないと読めないのであるが、投稿文は上記の記事の中程部分あるいはこのページの「※論文全文はPDFでお読みいただけます [論文PDF(日本語)] [論文PDF(英語)]」で[論文PDF(日本語)][論文PDF(英語)]にリンクがあり投稿文を読むことができる。なお、英語の投稿文の最後に”This is a short version of a report that is to be published by the International Panel on Fissile Materials, http://www.fissilematerials.org.”とあり、探すとこれがlong versionと思われる。
核兵器に転用可能な高濃縮ウランとプルトニウムの削減についての活動を行っておられる方々であり、その論調は当然なのであるが、投稿文や論文を読み、正しい主張であると思った。興味がある方には、読むことをおすすめしたい。なお、朝日への投稿文と同じ文書は英語のみであるがここでも読むことができる。
私が感じたことを述べると、
1) 使用済み核燃料からプルトニウムを分離することは核戦争・核テロのリスクを高める
使用済み核燃料からのプルトニウム分離は、高速増殖炉の燃料として使用する場合に意味があり、高速増殖炉の目途がない中では意味をなさない。発電用に核燃料再処理したプルトニウムは核兵器転用できないというのは間違いである。長崎原爆はプルトニウム爆弾であったが既に日本は長崎原爆5000発分のプルトニウムを保有している。
日本が保有するプルトニウムは核兵器に使用されないように厳重に保管をせねばならないが、他の国が核燃料サイクルを理由としてプルトニウムの保有を望んだ場合に、日本がこれに反対するなら、日本もその時までには、核燃料サイクル方針を放棄していなければならない。
2) 原発を(例えば2030年代までに)全廃するなら核燃料サイクルはあり得ない
2030年代までに原発を全てなくすと前政権は宣言したが、この時、核燃料サイクルを放棄していない。核燃料サイクル方針を継続することはプルトニウムの分離を継続することであり、原発を廃止する一方でプルトニウムを作り続ければ、そのプルトニウムは核兵器製造を目的としていることになる。前政権は、国民に説明をしなかったが、腹の中ではそのようなことを考えていたのだろうか?
日本以外の世界中の国が高速増殖炉の開発を断念した。一方、日本でも見通しは全く立っていない。使用済み核燃料を、プルトニウム分離をせずに、そのままで保管する方法は存在する。分離済みのプルトニウムも、そのまま保管するかMOX燃料として使用する方法はある。
いずれにせよ、どのような方法であれ、放射能は全く減少せず、厳重な管理が必要であると考えるべきである。
3) 福島事故を安全神話で欺されていたと言うなら、核燃料サイクルは真剣に議論が必要
私は、核燃料サイクルは原発再稼働より問題含みであると考えている。実は、同じようなことを昨年9月17日原子力に関する閣議決定と日本学術会議の高レベル放射性廃棄物処分についての意見で書いたことがある。当時は、民主党政権であったが、核燃料サイクル方針については見直さず、現政権も未だ何の検討もしていない。
一方、現政権は安全が確認された原発から再稼働する方針と述べており、それなら同時に核燃料サイクルをどうするのかの検討をロードマップを持ち実施すべきである。
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