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2013年8月28日 (水)

核燃料サイクル破綻の警告

朝日新聞に、日米の研究者が今月、日本がこだわる再処理政策を転換する処方箋を朝日新聞社に提言論文として寄せてきたとする記事があった。

朝日 8月26日 「テロの標的に」 日米研究者が「脱再処理」で改革提言

この記事の全文は朝日に会員登録をしていないと読めないのであるが、投稿文は上記の記事の中程部分あるいはこのページの「※論文全文はPDFでお読みいただけます [論文PDF(日本語)] [論文PDF(英語)]」で[論文PDF(日本語)][論文PDF(英語)]にリンクがあり投稿文を読むことができる。なお、英語の投稿文の最後に”This is a short version of a report that is to be published by the International Panel on Fissile Materials, http://www.fissilematerials.org.”とあり、探すとこれがlong versionと思われる。

核兵器に転用可能な高濃縮ウランとプルトニウムの削減についての活動を行っておられる方々であり、その論調は当然なのであるが、投稿文や論文を読み、正しい主張であると思った。興味がある方には、読むことをおすすめしたい。なお、朝日への投稿文と同じ文書は英語のみであるがここでも読むことができる。

私が感じたことを述べると、

1) 使用済み核燃料からプルトニウムを分離することは核戦争・核テロのリスクを高める

使用済み核燃料からのプルトニウム分離は、高速増殖炉の燃料として使用する場合に意味があり、高速増殖炉の目途がない中では意味をなさない。発電用に核燃料再処理したプルトニウムは核兵器転用できないというのは間違いである。長崎原爆はプルトニウム爆弾であったが既に日本は長崎原爆5000発分のプルトニウムを保有している。

日本が保有するプルトニウムは核兵器に使用されないように厳重に保管をせねばならないが、他の国が核燃料サイクルを理由としてプルトニウムの保有を望んだ場合に、日本がこれに反対するなら、日本もその時までには、核燃料サイクル方針を放棄していなければならない。

2) 原発を(例えば2030年代までに)全廃するなら核燃料サイクルはあり得ない

2030年代までに原発を全てなくすと前政権は宣言したが、この時、核燃料サイクルを放棄していない。核燃料サイクル方針を継続することはプルトニウムの分離を継続することであり、原発を廃止する一方でプルトニウムを作り続ければ、そのプルトニウムは核兵器製造を目的としていることになる。前政権は、国民に説明をしなかったが、腹の中ではそのようなことを考えていたのだろうか?

日本以外の世界中の国が高速増殖炉の開発を断念した。一方、日本でも見通しは全く立っていない。使用済み核燃料を、プルトニウム分離をせずに、そのままで保管する方法は存在する。分離済みのプルトニウムも、そのまま保管するかMOX燃料として使用する方法はある。

いずれにせよ、どのような方法であれ、放射能は全く減少せず、厳重な管理が必要であると考えるべきである。

3) 福島事故を安全神話で欺されていたと言うなら、核燃料サイクルは真剣に議論が必要

私は、核燃料サイクルは原発再稼働より問題含みであると考えている。実は、同じようなことを昨年9月17日原子力に関する閣議決定と日本学術会議の高レベル放射性廃棄物処分についての意見で書いたことがある。当時は、民主党政権であったが、核燃料サイクル方針については見直さず、現政権も未だ何の検討もしていない。

一方、現政権は安全が確認された原発から再稼働する方針と述べており、それなら同時に核燃料サイクルをどうするのかの検討をロードマップを持ち実施すべきである。

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2013年8月26日 (月)

東京電力福島第一原発の事故当時の所長吉田昌郎氏

東京電力福島第一原発の事故当時の所長吉田昌郎氏は、食道ガンにより7月9日に死去され、8月23日に告別の会が執り行われた。

吉田昌郎氏に関して、門田隆将氏が『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP)を書いておられる。私も、門田隆将氏が著した本を未だ読んでいないが、門田隆将氏が吉田昌郎氏から取材した内容等について、次のWebで少し知ることができるので紹介をします。

現代ビジネス 8月19日 東電・吉田昌郎(元福島第1原発所長)さんへのレクイエム 「あの時、確かにひとりの男がこの国を救った」 ありがとう、そしてお疲れさまでした

BLOGS 月刊誌『Voice』 【福島原発】<追悼・吉田元所長> 社命に背いて日本を救った男の生き様〔1〕―<対談> 田原総一朗×門田隆将 [2]はこちら

私が変に感想を書くより読んでいただいた方が、誤解を生むこともないと思います。

私としては、当時2011年4月に福島第一原子力発電所事故の背景福島第一原子力発電所ベント遅れの他の可能性そして菅首相と福島原発ベント遅れの関係を書いたことを思い出します。間違っていたこともあるが、やはりと思う部分もある。吉田昌郎氏が、福島第一原発所長であったことが、やはり幸いしていると思います。ありがとうございましたとお礼を申し上げたい。

東京電力福島原発問題と題するブログを書き、その続きが吉田昌郎氏に関するブログとなったのですが、設計外や予想外の事態に対しても対応できるのが人間であり、その能力が高い人が優秀なのだと思います。逆に、トンデモない人が首相になってしまい、その結果生じる被害もあり得る。そんなリスクさえも考慮に入れて対応策を考えておかねばならないのだと思います。それからすると、内閣総理大臣を原子力災害対策本部長とすることを定めている原子力災害対策特別措置法(17条)等は再検討が必要であるように感じる。

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2013年8月25日 (日)

東京電力福島原発問題

つい先日の8月12日に東京電力福島原発の汚染水流出問題から思うを書いたが、更に事態は悪くなっている様子もうかがえる。水貯蔵タンクから300トンの汚染水が漏れていた問題はINES(国際原子力事象評価尺度)のレベル3に相当することで懸念を持つと同時に東京電力による対応に不安を感じる。

ブルームバーグ 8月23日 安倍政権の原子力政策に暗雲-福島第一原発の汚染水問題が深刻化

しかし、この原子力規制委員会委員長定例会見8月21日速記録の規制委員会田中委員長他委員会側の発言を読むと、多くの実施すべき事項がある中で優先順位を考慮して実施せざるを得ず、完璧を期待することは無理であるが、万全を尽くしたに近いようにも思える。速記録に、毎日新聞の記者と理解するが「2011年12月に収束宣言と冷温停止状態という政府の宣言を取り消す考えがあるか」と質問があり、これに対し、「・・政治的にそういう表現が使われていたわけで、技術的にこれで安全になったから収束ですという意味での収束ではないということは、私も再三申し上げてきた・・」との田中委員長の発言を読んでも、その通りと思う。技術的に考えるべき事項は技術的に考えるのが正しく、政府首脳の発言に惑わされるべきではない。

原子力発電所の事故後の対応については、技術的な評価を最優先とし、ポピュラリズムによる対応はすべきではない。放射線・放射性物質についても、問題がないレベルであるなら、政府は説得に努めるべきであり、風評被害があるからと安全性を過度に厳しくすべきではない。過度な要求は破綻するリスクがある上に、結局は大きな国民の税負担または電気料金の負担にもつながる。

ブルームバーグの記事が触れている東京電力の法的な企業整理については、私は反対である。福島原発は、マイナス資産価値であり、誰も買わない。その結果は、国(政府)が管理せざるを得ない。政府が引き受けるなら、その体制を構築・整備した上でなければ管理不十分に起因する事故の拡大になると予想する。そして、本質としては、やはり、福島及び他の全ての日本の原子力発電の運転と管理は、どうすべきかをじっくりと検討すべきである。この任務は、原子力規制委員会に委ねるべきではない。新しく、組織をつくり、幅広い専門家を入れ、シミュレーションも実施し、全ての議論を公開して、国民が納得できる形で決めるべきである。

私は、原子力発電の単純な国営化には反対である。経営の中身が国民に情報提供され、国民が安心して委ねることができる組織が良い。働く人が公務員の守秘義務を気にするより、内部通報制度で通報者が適切に保護される組織が良い。例えば、日本加圧水型原子力発電株式会社と日本沸騰水型原子力発電株式会社か、60Hz原子力発電株式会社と50Hz原子力発電株式会社が、政府出資があってもよく、既存電力会社と一般株主というような構成が考えられると思う。

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2013年8月19日 (月)

変な議論が舞い起こる消費税論議

これは変だと思う主張を紹介します。

MSN産経 本田内閣官房参与「景気は強くない」 消費税1%刻み、重ねて主張

消費税(本日のブログでは地方消費税を含めて消費税とします。)を1%刻みで上げていくなんてとんでもないことです。消費税は、負担者は一般国民が大部分になる最終消費者であるが、納税義務者は事業者である。納税義務者は消費税申告をしなければならず、その納税に関する経費をどう考えているのかと言いたくなる。

所得税では本年1月1日から、法人税では確定申告ベースで早い法人では本年5月31日から、復興特別税が始まった。法人税の場合は、法人税の申告書とは別に、復興特別税の申告書を作成・提出しなければならない。所得税については、給与のみならず当然全ての所得に渡るわけであり預金利息の利息の所得税15%の2.1%相当になる利息額の0.315%の復興特別税が課せられている。従い、預金利息の場合は、昨年までは地方税を含め20%の税率が現在は20.315%であり、これが2037年12月末まで続く。

きちがいと思える税金である。納税経費、徴税経費、調査経費が莫大で意味のない税金と思う。

消費税を1%刻みで上げていくと、同様な事態が発生する。毎年4月1日に税率が上がるなら3月末頃に消費は増加し、4月にはモノは売れなくなる。このような心理を馬鹿は理解できない。勿論、4月1日からは消費税アップ分吸収セールも予想される。この場合、価格の抑制・値引きを求められて苦しむのは、弱小業者である。失われた20年で、報いられることが全くなかったのが、弱小業者である。力の強い企業は、円高であれ、円安であれ、法人税率変更であれ、ほとんどの事象を自らの利益拡大に結びつけて行こうとし、かつ多くの場合成功もしている。

なお、1%刻みの毎年アップをすると、実は事業者の消費税事務も大変になる。税率アップ前の仕入れとアップ後の仕入れは厳密に区別をしなければならなくなる。結果、税務調査も大変になるはずである。何故なら、ごまかして、数千万円-数億円を脱税するなんて簡単になるからである。3月末消費税アップ前の大セールを述べたが、3月末に売れ残った場合は、仕入れ元に返品し、4月に再度仕入れたことにするのである。卸業者が不正をするのか、消費者販売業者が不正をするのか分からないが、3月と4月の1%の税率差を操作して不正が行われる可能性はある。日本の消費税は付加価値税のように伝票が無く、付加価値税より不正は容易であるはず。

税制は、簡単で誰でも申告・納税ができる制度であるべきであり、不正は容易にばれる制度でなければならない。復興税制も「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」なんて長たらしい名称の変な法律を作らず、単純に租税特別措置法の改正でやれば対応できたと考える。馬鹿な政権与党であったと思うから、現政権にはまじめに取り組んで欲しい。

7月28日の消費税8%・10%への増税にまじめに取り組むべきで書いたことであるが、番号法の税金面での実施を早め、2015年10月からの消費税率10%となる時には、給付付き税額控除の実施を検討すべきである。2015年10月までには後2年と少ししかなく、直ちに検討を始めないと実施ができなくなると予想する。実施ができなければ、貧困層の増大や社会不安の増大にならないかと懸念する。かといって、消費税率を上げずに法人税や所得税を上げられる見通しもなく、その場合は、医療と年金が破綻し、長期金利上昇に伴う住宅関連の大不況と国債償還問題も起こりうるのではと懸念する。

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2013年8月13日 (火)

集団的自衛権を考える

集団的自衛権とは、何であろうか?8月15日を間近にして思う。

次は、ウィリアム・H. マクニール著、増田 義郎/佐々木 昭夫訳の「世界史」下巻にある第一次大戦に関する出だしの部分である。

 

Aworldhistorywmcneill

戦争とは望んでいなくても起こり、それに自分の国が参加することになりうるのである。

集団的自衛権とは、直接に攻撃を受けていなくても、共同して武力攻撃に参加することであるとするなら、望まぬ戦争に入っていく可能性が高くなるように思う。もっとも集団的自衛権を有していないと宣言しても、戦争に巻き込まれる可能性もないとは言えないが。

Wikiで集団的自衛権を引くと、国連憲章51条の規定のようにあるが、これには私は異論を唱える。次が国連憲章51条であるが、collective self-defenceとは単独の国家による防衛ではなく複数の国家による防衛ではあるが、ある国が攻撃を受ければ他の国が無条件に防衛に参加するとは読めない。

国を守るための決断をするのは国民である。政府を転覆させる権利さえ国民にある。8月15日とは、戦争に関して様々なことを考えて良い日なのだと思う。

 

Article 51

Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defence shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.

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2013年8月12日 (月)

東京電力福島原発の汚染水流出問題から思う

東京電力福島原発からの汚染水流出については、政府も腰を上げ、様々な検討がやっと始まるようである。

日経 8月8日 首相「汚染水、東電任せにせず」 国が前面に

私としては、当然のことと考える訳で、7月24日の東京電力財務諸表から読み解く福島原発事故に書いたように、財源についての当事者能力を失っている東京電力に責任を押しつければ、そのツケは国民に跳ね返るのであり、合理的な解決を図るべきである。即ち、東京電力による累計補償支払額は2014年3月末には3兆7893億円に達する見込みであり、この金額には汚染水料出対策費用や廃炉のための費用を含んでいない。そして、東京電力を倒産させると廃炉ができないことや、放射線汚染対策もできなくなる大問題に遭遇する。

1) 基準適合の海洋放出は当然の答え

日経 8月9日 政府、9月に海洋放出で具体策 福島原発の汚染水 にある「基準値を下回る地下水の海への放出の可能性も含め早急に検討したい」は、当然の答えであると考える。これができなければ、何のための基準であるのか、基準が間違っているなら、基準を訂正すべきであり、合理的な考えができない社会の不合理であり、不幸に陥るのみである。

原因は、東京電力による地元の漁業協同組合への説得失敗によるのか、不合理な地元漁協の対応であるのだろうか。説明がつかない風評被害による将来の増税と電気料金値上がりを国民が賛成するとは思わないのであるが、無責任体制においては、将来の不幸へと世の中は動く。

汚染水の海洋流出は、8月3日の時点では日経 8月3日 福島第1の汚染水、地下の遮水壁越え海に流出かのように1日に100トン程度との話であった。ところが、8月7日には日経 8月7日 福島原発の汚染水、1日300トンが海へ 経産省試算 のように推定値は3倍になった。

日経 8月9日 護岸の地盤改良完了 汚染水くみ上げへ 福島第1原発のように、地下水に高濃度の放射性物質が検出されているなら、それをくみ上げて流出を防ぐ以外に方法はない。しかし、くみ上げても、流れ込んでくる地下水の量が増加するので、いたちごっことなる。流れ込まないように、汚染する手前でくみ上げて海に放出する方法が望ましいはず。

冷凍遮水壁も検討されているようであるが、効果が見込めないのであれば、実施すべきではない。コンクリート遮水壁の法がよほど効果があると思う。いずれにせよ、東京電力に全てを任せるのではなく専門家による検討とその結果の公表を望む。

2) 民主党政権の悪夢を断ち切るべき

事故が起こった時、全ては東京電力の責任であるとして、自らの任務を放棄した前政権のやり方は絶対にすべきではない。国民の幸福を追求するためには、何をすべきかを基準に考えるべきである。

企業がすべきことと政府がすべきことは、同一ではない。その役割に違いはあり、最も合理的な役割を果たすようにせねばならない。そして、その際において、法案の国会提出権を有し、広範囲にわたる様々な組織を動かすことができる政府が中心的役割を果たすべきと考える。

国民の幸福の追求というテーマにおいて一企業に判断を委ねることは、おかしいと考える。

3) 未来のために

事故原因の追及をしなければならない。単純に東京電力が悪かったでは、将来に何も残さない。東京電力の株主総会が6月26日に開催された。その全議事録として東洋経済OnlineがWebに掲載している。その中に、緑の党グリーンピースジャパンの質問がある。原子炉の設計や建設、設備、保守サービスなどが、福島原子力発電事故の原因に関係していたかどうかの調査を東京電力は当事者として進めていくべきであるとの意見であり、東京電力の第89回定時株主総会開催ご通知を読むと、定款変更を求める提案であることから、定款変更で対処することは適当ではないとして取締役会は反対したとある。(議事録の当該部分はこのページの下の方から始まります。)

東京電力は、定款変更の必要性は認めなかったものの、原子炉の設計や建設、設備等の事故原因の可能性調査については調査を継続するとの回答と理解する。交直全ての電源が失われ且つ設備も地震と津波による損傷を受けていた。シビアな状態が重なったのは確かであるが、日本に地震があるのは常識であった。事故からは、少なくとも、未来のための教訓が残らねばならない。福島事故の後に残されている課題は、除染と廃炉作業のみではない。未来のために事故を分析し、事故が発生しないための成果を残さなければならない。

6月11日に米サンオノフレ原発廃炉決定から考える原子力リスクを書いたが、LA Times 7月18日  Edison starts legal action in San Onofre nuclear plant shutdownによれば、三菱重工への損害賠償手続きを開始したようである。サンオノフレ原発の蒸気発生器問題は、単純な問題なのか、原発に起因する特有の問題を持っているのかよく分かっていないが、裁判で争うことで明確になるなら、それも良いと思う。

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2013年8月 7日 (水)

国連の核兵器無存在地域

広島と長崎原爆について語られることが多い8月初旬です。国連に核兵器軍縮廃絶に関係しているUNODA(国連軍縮部)がある。広島・長崎に関しては、よく報道されるが、国連UNODAの核兵器廃絶活動に関しては、報道されることが少ないと思うことから、Webから読んだ情報を書いてみたいと思います。

1) UNODA(United Nations Office for Disarmanet Affairs)

UNODAを外務省は、日本語で国連軍縮部と訳している。UNODAのWebホームページは、http://www.un.org/disarmament/であり、核軍縮廃絶・不拡散、大量破壊兵器・化学・生物兵器の軍縮廃絶と通常兵器特に内戦・内乱で多用される地雷や小兵器の軍縮廃絶を推進している。

2) 無核兵器地域

UNODAのこのWebには無核兵器地域(NWFZ: Nuclear-Weapon-Free Zones)が書かれている。無核兵器地域とは、国連総会において無核兵器地域と認定され、条約等により核兵器が存在していないことが取り決められており、核兵器が存在しないことが査察を含め確認が可能である国際的な手段が存在していることが条件となっている。

具体的には;

a) 中南米33諸国: Treaty for the Prohibition of Nuclear Weapons in Latin America and the Caribbean (中南米諸国ほぼ全て)

b) 南太平洋13諸国: South Pacific Nuclear Free Zone Treaty (オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、クック諸島、フィージー、サモア、ソロモン諸島、トンガ他)

c) 東南アジア10諸国: Treaty on the Southeast Asia Nuclear Weapon-Free Zone(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

d) アフリカ52諸国: African Nuclear-Weapon-Free Zone Treaty(調印したが未批准の10国あり)

e) 中央アジア5諸国: Treaty on a Nuclear-Weapon-Free Zone in Central Asia (CANWFZ)(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)

f) モンゴル: 2001年1月12日国連総会決議 55/33

g) 南極: 南極条約

h) 月を含む宇宙: 宇宙条約(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約 )

i) 海底: 海底軍事利用禁止条約 (Treaty on the Prohibition of the Emplacement of Nuclear Weapons and Other  Weapons of Mass Destruction on the Sea-Bed and the Ocean Floor and in the  Subsoil Thereof )

g)、h)、i)は特殊な所でありますが、この9地域が無核兵器地域です。外務省の説明はここです。 外務省は、非核兵器地帯と呼んでいる。

3) 日本は無核兵器地域外

国連の関係において、日本は無核兵器地域にはなっていない。何故か、一つのヒントはこの2013年4月25日の産経記事:人類共存へ核不使用を NPT準備委で共同声明 日本、賛同国に加わらずにあるが、よく分からない。朝日は、この8月6日の記事で、その理由について「米国の核の傘に依存する安全保障政策への配慮からだった。」と報道している。

広島、長崎の原爆の日に、追悼や誓いだけではなく、日本政府に国際的な活動として何を求めるのか、米国の核の傘とは何であるのか、国民の間でよく議論すべきであると考えます。

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2013年8月 4日 (日)

「脱原発」は敗れ去ったのか

自分でも、衝撃的なタイトルであると思う。8月2日のダイアモンドオンラインに森達也氏がタイトルを勝手につけるな。批判するなら最後まで読め として書いておられる記事を読んで、その中で森達也氏が批判されている次の毎日新聞(福井地方版)の記事に、このような衝撃的なタイトルがついているので驚いたのである。

毎日 6月2日 今「原子力」を考える:新聞労連・新研集会 なぜ「脱原発」敗れ去った 排除の論理を疑問視 /福井

毎日の記事は、再稼働反対の熱気は冷めつつあり、これで良いのかと再稼働反対派に問いかけ、警鐘を鳴らしているとのニュアンスも感じられるが、タイトルで「敗れ去った」と使っており、この断定表現には、問題があると思う。福井県には、敦賀、美浜、大飯、高浜があり、原発集中地域である。集会で発表した森達也氏自らが記事で内容を不正確と述べていることから、それに間違いないと思うし、このような読者に誤解を与える記事は良くないと考える。

1) 運動は敗れ去ったのか

下火になったとか、熱気が失われた、あるいは参加者が少なくなったと言うのは、報道される回数も少なくなったことからして、やはり事実であると思う。しかし、それは、敗れ去ったと言うことではない。形を変えて発展することもあると思う。支持者が拡大し、共通の目的として掲げる内容が異なることもあり得る。これらは、敗退ではなく、発展である。

私のあるブログで頂いたコメントに「反対運動では、対案は不必要としている。」というのがあった。実は、多くの日本の運動のスローガンで「・・・に反対」と言うのを掲げていて、ではどうするのかとの対案がないことやあるいは参加者により対案についてはバラバラであることもある。

運動を成功させるためには、そのことに対する正当な説明をすることが可能で、また批判にも耐えられなばならないと考える。原発の運転には、放射能汚染があり得るからとの懸念は、正しい。一方、そのリスクの度合いと大きさやメリット・デメリット等についての議論なしで運動は成功するのだろうかと思う。むしろ、そのような議論の展開をすることにより成功すると思う。但し、その主張が正しい場合であり、直ちにではなくても、然るべき近い将来に実現・達成となる可能性も十分ある。

2) 政権の問題

3.11の時の政権には、大いに問題があったと思う。例えば、原発のストレス・テストを首相は要求し、原発を保有する電力会社に実施させた。何のためであったのか、今でも私には分からない。大飯原発が現在運転されているが、どのような基準か、他の原発に同じ基準を当てはめたらどうであるのかと思う。不透明な基準で原発の運転の可否を決定すべきではない。

福島第一原発の事故に際しても、国民を欺いた。原発から交・直全ての電源喪失の通知は政府に対して発された。緊急事態であるとして、現状把握と通信コミュニケーションの確保は、最重要であったはずである。自衛隊には緊急通信網を設置する力があるはず。そして、あらゆる専門家を動員して対処すべきであったと考える。何故、そうしなかったのか?首相の問題なのか、役人の問題なのか?現政権は、安全と確認された原発から再稼働すると述べている。しかし、緊急事故に対する政権や政府内部の対応能力はどうなのか、福島事故の問題はどうでったのかを国民に開示し、反省と対応を述べるべきである。想定外は、永遠に無くならない。想定外の事故でも、対応能力を持つべきと考えるし、人間だからマニュアルに書いていなくても、最善を尽くす対応があると信じる。

3) 論理と議論

論理と議論が下手な国は滅びると思う。論理は、必ずしも正しいとは限らない。批判を受け、議論を積み重ねて、発展し、適用可能となる。

事業仕分けでスパコンについて「何故1位にならなければならないのですか?」との質問が有名であった。1位になることが目的ではないにも拘わらず、この質問をしたのである。スパコンに、それだけの税金を投入することに、どのような意義があるのかを議論すべきであり、結果としては、もっと税金を投入すべきであったのかも知れない。事業仕分け自身は、情報開示につながることから賛成するのであるが、短時間で一方的な議論に陥りがちであることを忘れてはならない。下手をすると、与党議員のパフォーマンスと宣伝の場に利用されるだけとなる。論理がない議論になれば、無駄なだけである。

論理や議論は、時間を要する。原発問題で言えば、推進派と反対派の2つに単純に分かれるものではないが、両者を含め、個々の問題を正当に評価し、判断して、その方向性やロードマップを作るべきと考える人を含め、内容ある議論をすべきと考える。なお、原子力については、工学や物理の専門的知識が必要な部分もある。これについては、専門家は、国民に対してできる限り説明を尽くすとともに、そのような関連を書いた文書やWeb等を紹介すべきである。

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2013年8月 2日 (金)

憲法改正に関する政治家発言

議員・政治家の発言とは、ころころ変わるのか、本音がつい出るのか、何も考えていないのか、浅はかなのか、賢いのか、乱れた世界にいて常に混乱しているのか、よく分からないのですが。

1) 麻生太郎発言

日経 8月1日 麻生副総理、改憲巡る「ナチス政権」発言を撤回

よく撤回される人です。どのようなニュアンスで発言したのか不明なのだが、このMSN産経の8月31日記事が伝える麻生太郎の29日講演発言要旨を読むと、撤回に際しての麻生氏発言と余り変わらないように思う。しかし、物議を醸し出す発言が多い人であるとは思う。

2) 片山さつき

しんぶん赤旗 7月31日 “9条なかったら中国艦を撃つ” レーダー照射

テレビ朝日の29日の番組で発言したのでしょうね。テレビ朝日にはビデオも残っているし、番組を見ていた人も大勢いるはず。

こんな発言を聞くと、憲法第9条改正絶対反対と言いたくなります。

現在の世界の軍隊は、紛争を避けることがその使命である。レーダー照射を受けても、実弾が飛んでこなければ、事実を事実として残し、紛争を起こさないようにするのが使命である。第一次世界大戦は、誰も、どの国も望まないにも拘わらず、長期の世界大戦になってしまったとの分析もある。

3) 平和憲法

片山さつきの発言を聞くと、憲法の平和主義について書きたくなります。前文に次の文章がある。

・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。・・・日本国民は、恒久の平和を念願し、・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、・・・。われらは、全世界の国民が、・・・平和のうちに生存する権利を有することを確認する。・・・
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

平和という単語が何度も書かれている。どうあれ、平和の追求に尽力すべきと考える。さて、第9条は、

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

日本政府は、その解釈をしていないが、第2項を「前項の目的を達するための陸海空軍その他の戦力」というような解釈をすると、国際紛争を解決するためではない自衛のための戦力は保有できるとの解釈になる。

今は世界で一番よく戦争をしていると思える米合衆国の役所は、U.S. Depatment of Defenseである。ちなみに、日本の防衛省は、Ministry of Defenseである。

憲法前文や9条を変えてしまったら、心の支えが無くなってしまうような気がする。大東亜戦争で多くの人は何のために死んでいったのだろうかと思う。

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