シリアを軍事攻撃すべきではない
この日経ニュース9月1日 米大統領、仏大統領にシリア軍事介入決断伝える は、オバマ米大統領が米国のシリアへの軍事介入を決断し、仏オランド大統領に電話したと報道している。
理由は、米国の調査によればシリア政府軍の毒ガス使用が判明した事である。(日経 8月31日 米大統領、シリア限定攻撃を検討 報告書で化学兵器使用を断定)
なお、シリア政府軍が毒ガスを使用したかどうかは、現状不明である。国連調査団はシリアで採取したサンプルを持ち帰り、31日にオランダに到着したのであるが、国連はその調査結果を未だ発表していない。
そこで、私の「シリアを軍事攻撃すべきではない」であるが、例えシリア政府軍の毒ガス使用が確実になった場合でも、軍事攻撃はすべきではないとの意味である。
米国による軍事攻撃とは、地中海の米軍艦からのトマホーク・ミサイルの攻撃である。そんなことをして、シリアで多くの人が死ぬ。戦争で犠牲になるのは、民衆である。おそらく軍事攻撃をしたならば、20年-30年の間、シリアの人々は言い表せないほどの苦しみに入ることになるだろうと思う。バッシャール・アサド大統領が失脚し、アサド政権が倒されるだろうか?そんな可能性は低いと思う。一方、むしろアサド政権が倒れたならば、その後の政治こそ、極度の混乱となる可能性さえあるのがシリアである。
米ブッシュ・ジュニアのイラク戦争が終わってから10年以上を経過したイラクでは、どうなったかを知って欲しい。考えて欲しい。戦争の以前と以後での違いは、サダム・フセインがいなくなったことであるが、治安は明らかに悪くなり、物騒になった。テロ攻撃が日常生活の中であるかも知れないと、死の恐怖の中で暮らしていくことの恐ろしさを考えて欲しい。貧しくても、平和があり、食料がある方が、死の恐怖があるより、よほど良い。では、イラクでは貧困がなくなったかと言えば、違う。分け前にありついたのは、イラク国外も含め石油の恩恵を受けることができる一部の人達だけである。
余りにも複雑なのがシリアである。イスラエル・パレスチナ問題をもシリアに関係している。反体制勢力との戦闘に従事しているのは、政府軍のみならずヒズボラもそうである。ここに末近浩太氏が8月28日付で書いておられる「シリア「内戦」の見取り図」との文書がある。シリアの問題について、よく書いておられるので、一読をおすすめします。
なお、「シリアを軍事攻撃するべきではない」と言って、どうするかであるが、軍事力を使わずして毒ガス使用を中止させれば良いだけの事である。シリア政府は、国連の調査団を受け入れているのであり、今後とも受け入れるはずである。毒ガスを使用したのは、反体制武装勢力の可能性がある。あるいは、双方かも知れない。シリア問題の解決は容易ではないが、だからといって軍事行動が許されるわけではない。国連による当事者の合意による監視体制を整備することが、本筋であり、忘れてはならない。
| 固定リンク
コメント
米国の産軍複合体が、新たな戦争ビジネスの展開に乗り出すのでしょうか。 政治的には、イランと近いシリアを叩く良い機会なのでしょう。
米国は、過去からデッチ上げで戦争の切っ掛けを作って来た国ですから、現政権派が生物化学兵器を使用した、との情報も信用出来ません。 北ベトナム爆撃の理由であった「トンキン湾事件」はデッチ上げ、イラクの大量破壊兵器の存在もデッチ上げ、これでは信用せよと云うのは無理でしょう。
そもそも、内政に他国が干渉すべきではありません。人道的に放置出来ない事情があれば、国連決議を経て平和維持軍の派遣等で対応すべきです。 地理的に自軍が攻撃を受けない遠隔地から空爆を加えるのみで、他国に干渉するのは、ミサイルや最新兵器の実験場にして人的損害を増やす結果になるだけです。 何の解決にもなりません。 尤も、産軍複合体にとってはそれで良いのでしょうが。
投稿: とら猫イーチ | 2013年9月 2日 (月) 12時47分
とら猫イーチ さん
コメントをありがとうございます。
他国に軍事的に干渉するのは、基本的に禁手と思います。人道的その他の理由でやむを得ないことがあるなら、国連に訴えて国連の議決を経ることをすべきだと思います。
投稿: ある経営コンサルタント | 2013年9月 2日 (月) 21時18分