JR東海発表によるリニア中央新幹線の電力消費
JR東海が9月20日にリニア中央新幹線の敷設に伴う環境影響評価準備書を公表した。
47NEWS 9月20日 【リニア新幹線】 環境への影響、厳しい目で点検しよう
JR東海のこのWebをたどっていくと、環境影響評価準備書をダウンロードすることができる。電力消費そのものの数字は書かれていないが、CO2発生量が記載されており、その根拠としている電力消費についても記載がある。
次のグラフは環境影響評価準備書の東京都についての部分の資料編で「14 温室効果ガス」のページ環14-2-1にあるグラフです。
リニア中央新幹線のCO2発生量は東京-大阪間で乗客1人あたり29.3kgと言う訳です。即ち、新幹線N700系「のぞみ」が7.1kgなので、4.12倍のCO2を発生する。バスと比較しても、バスよりもCO2を発生する乗り物なのです。このグラフからすると、航空機や乗用車よりCO2排出面でリニア新幹線は優れている。
しかし、本当なのだろうか?リニア新幹線が次世代の乗り物であるなら、次世代の競合する乗り物と比べるべきと考える。即ち、三菱MRJは従来より20%以上燃料節約になると宣伝している。さて、乗用車もホンダは、フィットのハイブリッドを燃料消費36.4km/Lと発表した。この36.4km/Lを使って、CO2排出量を計算すると、JR東海が計算に使った514km走行で29.8kgとなった。何のことはない、リニア中央新幹線とはホンダFITと変わらない。いや、もしホンダFITに2人以上乗れば、絶対にリニア新幹線になんか負けない。もし、FITに5人乗れば6.0kgなのでN700系のぞみにも勝ってしまう。
CO2排出面でリニア新幹線は、劣後しているようである。何故こんなものを今の時代に建設するのか、もう一度考え直すべきかも知れない。
次に、電力消費であるが、同じ環14-2-1ページに”3.5万kW x 加速・勾配考慮 約1.1 x (走行時間67) / 60分 ≒ 43.8MWh"を電力消費とし、乗車率61.2%、座席数1000席で更に電力のCO2排出係数0.409kg-CO2/kWhを使って計算していることから、時間あたり38.3MWhの電力消費で東京・大阪間500kmで43.8MWhであることが分かる。
しかし、これにも疑問を挟まざるを得ない。何故なら、東京発で名古屋のみに停車し大阪着の計算と思えるからである。実際には、途中駅で停車するリニア中央新幹線がある。これはどうなのだと言いたい。なお、43.8MWhをもし重油火力で発電したならば、9KL程度の重油使用となる。現新幹線N700系「のぞみ」であれば、2.1KL程度で済むのであるが。
私は、リニア新幹線なんかより、省エネルギー型輸送システムを整備して欲しいと思う。少なくとも、これからは、省エネルギーで原発には依存を拡大しない社会に向けての取り組みが必要と考える。
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コメント
Wikipediaより
JRと航空機の旅客シェア
東京都 - 大阪府間[26]
1995年度 84:16
2000年度 72:28
2005年度 65:35
2009年度 83:17
JR東海の資料
図14-2-5 各ケースに置けるC02排出量(東京都大阪府間)
の元にしたデータ2005年は、航空機の追い上げを受けて、極端に鉄道輸送の比率が少ない年でした.
JR東海は故意に、鉄道輸送の少なかった年のデータを元にして、CO2の排出量を予測しています.
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『もしホンダFITに2人以上乗れば、絶対にリニア新幹線になんか負けない。もし、FITに5人乗れば6.0kgなのでN700系のぞみにも勝ってしまう。』
この比較も正しくありません.
FITの燃費データは、燃料満タンで一人乗車の数値です.二人乗れば当然悪化します.
N700のデータは、乗車率61.2%のデータで、定員乗車すれば、これよりも良くなります.
N700の電力消費量は、初代0系に比べて、現状の速度では68%、
0系と同じ210kmの速度にすれば、51%だそうです.
FITと比べるならば、FITも270kmで走らせる必要があります.
自動車に比べ、鉄道の走行抵抗は1/5~1/10程度なので、どんなことをしても、自動車の燃費が鉄道より良くなることはありません.(CO2も同様に考えてよいはず)
故意に、自分の都合のよい数値を並べるのはいけないことだと思います.
投稿: ルミちゃん | 2013年9月27日 (金) 03時18分
ルミちゃん
コメントをありがとうございます。
航空機の燃料消費の根拠は、調べていませんが、FITについてはHondaのカタログ値のJC08モードの燃料消費率を使っています。私は、JC08モードは乗員を乗せての条件であり、多分定員の5名が乗車している前提だと思っています。
なお、FIT Hybridの車体重量は1,130kgであり、仮に5人乗って、1,430kgとなった場合は、1,130kgが0人の数字であり、重量比例で増加するなら7.54kg-CO2となる。但し、高速道路を利用し、加減速があまりないとするなら、重量比例の割合は100%にならないはずです。
いずれにせよ、一つの参考比較であって、絶対比較ではない。鉄道の走行抵抗が低い。その良さを生かして、リニアではない鉄レール式の鉄道をもっと普及させることを考えて良いように思います。
投稿: ある経営コンサルタント | 2013年9月27日 (金) 18時27分
測定条件(10.15モード)
3,000km 慣らし走行後の車両
完全暖機状態 60km/h 15分暖機後モード測定
走行抵抗設定 車両(空車)状態+110kg(2名乗車分)
搭載電気機器 OFF状態
エアコン OFF状態
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JOC8モードでも、運転パターンの違いだけで、この条件は同じだと思います.
2名乗車が正解です.
測定に際して、地面の代わりの車輪の乗ったドラムに対して負荷をかけるのですが、その負荷のかけ方に重量区分があります.
そのために、FITの場合で言うと、一番燃費のよい車種は、最下位の一グレードだけで、この車種は燃料タンクの容量が、他のグレード40Lに対して、32Lしかありません.(燃料は満タンで測定するため、燃料の重量と、燃料タンクが小さい分軽くなる為、燃費計測時に負荷をかける重量区分が一ランク下がり、良い数値が出る)
FITで、第二東名利用、90km/h、1名乗車で25km/L程度が、現実的な数値の一例として報告されています.
いずれにしろ、カタログデータと、実用的な数値を出してきたであろう、電車の数値を比較するのはいかがなものでしょうか.
実用燃費と、モード燃費がかけ離れているのは誰もが良く知っている事実なので、馬鹿げた比較は止めるべきだと思います.
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鉄道輸送のCO2排出量は、トラック輸送の排出量の1/8と言われています.
国鉄民営化の頃の、東海道線の貨物輸送のシェアは5%と言われていたのですが、現在はどうなのでしょうか?
エネルギー消費を考えたとき、貨物輸送を鉄道輸送に置き換えるのがもっとも効果的のはずなのですが、現在のJR貨物にやる気があるとは、到底考えられません.
利益優先、儲からない部分を切り捨てることしか考えていません.これはJR貨物が悪いだけでなく、例えば北海道の信号所で、行き違い、追い越しで20分以上停車したり、第3セクター化された線路の利用料が上がったりで、現状ではやる気を出せと言う方が無理な気もします.
名古屋地区では、国鉄末期に建設中で、高架路盤がほぼ完成していた貨物線を取り壊し、住宅用地として売ってしまいました.迂回ルートになる愛知環状鉄道も同様で、複線分あった駅用地を半分売ってしまったところがあり、いかんともしがたい状況になっています.
東海道新幹線の大規模改修に際して、在来線を増発すれば良いと言う人がいますが、もう既に現状の輸送量に合わせて設備を簡素化してしまい従来の東海道線の輸送力はないと思われます.車両もなく、わずかな期間の為に設備投資を行うことは無理です.
もっぱら、バスと飛行機の増発に頼ることになるのでしょうか?.
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台湾を例にすると、台湾は九州より小さく、貨物輸送はほぼ全滅と言って良い状況です.わずかなコンテナ輸送と、石炭輸送が残っているだけです.
けれども、昔からそうなのですが、台湾の複線区間は単線並列型で、同一方向に対する列車の追い越しも出来る設備になっています.駅の設備も余裕を持った設備が維持されていています.(駅の高架化に際して、失われつつありますが)
ですから、故障した列車があっても、それ以外の列車は普通に運行できるのですが、日本の場合は数珠つなぎになっておしまいです.
投稿: ルミちゃん | 2013年9月29日 (日) 07時43分
ルミちゃん
コメントをありがとうございます。
10.15モードの測定条件を教えていただきありがとうございます。JOC8モードでも、この条件は同じでしょうね。
国鉄民営化は、労働組合つぶしと税金投入の理由付けが、目的であったのかも知れないと、今では私は思ってしまいます。鉄道路線をどう整備するかの観点や鉄道のどの部分を発展させるかの展望は何もなかったように思います。
あげくの果てがJR北海道ですが、「JR四国、橋50本補修せず 点検記録不備も1000本超」(日経ニュース http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2706K_X20C13A9CC1000/)がありJR四国も同様の状態に思う。JR北海道、JR四国、JR九州、JR貨物は国営会社ですから、私は、これら3社をJR東日本、JR東海とJR西日本の3社にくっつけて全て上場会社とし、必要なら政府と補助金額について交渉せよというのが良いように思うのです。
台湾の話、おもしろいですね。
投稿: ある経営コンサルタント | 2013年9月29日 (日) 12時52分