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2013年10月21日 (月)

特定秘密保護法の不可思議

安倍晋三首相は機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案の早期成立について21日の衆院予算委員会で、強い意欲を示したとのことです。

47ニュース 10月21日 首相、秘密保護法成立へ意欲 衆院予算委スタート

論理的に考えると、なぜこんな法律が必要であるのかと思う。その点を書いていきます。

1) 現行法では不十分なのか

現行法でも公務員には守秘義務があり、例えば次の国家公務員法100条である。

職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

公務員以外には、適用されない法律である。罰則は、109条であり、一年以下の懲役があり得る。但し、自衛隊法では、防衛秘密を漏らしたときは、五年以下の懲役となっている。

内閣は、現行法では、対処できない理由を国民に説明すべきである。もし、10年以下の懲役として罰則を強化する提案であれば、その点に絞っての改正案でも対処可能と考える。

2) 憲法問題

機密とは何であろうか?公務員が機密漏洩違反だとして刑事罰に問われたとして、当然裁判を受ける権利は存在する。刑事裁判では、漏洩した機密が懲役○年に相当するのかが争われる。当然それは、重大な機密であるかどうかとなるが、特定機密であるから一切公開できないとすれば、公平な裁判は開けず、重大な問題が生じる。憲法82条1項に裁判は公開法廷で行うことがあり、もし公開しない場合は、裁判官の全員一致となっている。更には、政治犯罪、出版に関する犯罪又は国民の権利が問題となつている事件の対審は、常にこれを公開しなければならないとなっており、機密漏洩がこの公開義務に該当した場合は、公開で裁判が行われ、裁かれねばならない。

三権分立とは、政府の判断が最終ではなく、憲法を含め法の基で正しいかどうかの判断は裁判所の判断であるとすることである。裁判所が判断をするためには、裁判官は判断に必要なあらゆる情報が得られる状態でないと正しい判断が下せない。刑事裁判では、証拠によらずに有罪とはできない。

3) 米国問題

冒頭にリンクを掲げた47ニュースの記事には「各国の情報機関と意見交換を行う上で秘密の厳守は大前提だ。」安倍晋三首相が述べたとある。現行法の下でも、秘密厳守は確保されていると考えるが、どうだろうか?政府に外国政府への説得能力がないのか、外国政府が過度の要求をしているのか、それとも現行法に欠陥があるのか。欠陥があるなら、その点を具体的に、どの条文が不十分か示すべきである。

ゲスの勘ぐりで言えば、米国が日本にも応分の防衛負担をさせたく、そのためにはある程度の情報共有が必要であるが、そうすると相当多くの部分の情報が日本に流れるため、新規立法を要求しているのではと想像してしまう。実は、そうであれば、日本は独立国なのか、USAの属国であるのかに行き着く気がする。そこまでしてまで、米国の傘の下に入っていなくても良いのではないかと思うのである。米国情報も、イラク戦争で、必ずしも信頼できないことが立証されているのだが。

4) そもそも政府はデタラメ

そう思ってしまうのが、前政権の尖閣諸島における中国漁船による海上保安庁に対する公務執行妨害である。公務執行妨害をした船の船長を裁判もせずに釈放した。撮影した動画は機密だとして政府は公開しなかった。動画は、一職員が個人で公開したのであるが、それさえなければ、すべては闇の中に葬られた。政権の上層部が、機密保持を隠れ蓑にできるとなれば、どのような恐ろしいことも可能となるように思う。

5) 日弁連意見書

いくつかの新聞社説においても、特定秘密保護法案に反対する意見が出されている。ここでは、日本弁護士連合会の反対意見を紹介しておきたいと思います。

ここに意見書を内閣官房内閣情報調査室に提出したとあり、ここでその意見書を読むことができます。

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