厚生労働省は6月3日の会保障審議会年金部会で「平成26年財政検証結果」及び「オプション試算結果」を発表した。次の厚生労働省のWebから資料をダウンロードすることができます。
平成26年6月3日 将来の厚生年金・国民年金の財政見通し 発表資料
予想されていた通りの内容であり、驚くべきことは何もないと思うのですが、このNHKの報道などは、誤解を招く恐れがあるように思います。それからすると次の日経記事なんかは、冷静に述べているように思います。
日経 6月3日 年金、現役収入の5割割れも 厚労省が財政検証
少し見てみます。
1) 年金、現役収入の5割割れ
NHKは、「経済が順調に成長すれば、・・維持」と言っており、日経は「働く女性や高齢者の割合が大きく増えなければ、・・・3~4割目減りし」なので、NHKと日経の差は極めて大きいと感じる。
そこでまず第一に言いたいのは、そもそも誰も50%を保証していないことである。モデル設定をしての話なので、財政検証結果の資料の数字を使えば、現役時手取り月額34.8万円の人は年金月額21.8万円となっているので62.6%が年金水準である。しかし、現役時月額手取り50万円の人は25.8万円であり51.6%であり、現役時55万円の人は27.1万円で、逆に現役時20万円の人は18万円である。
公的年金は社会の制度であり、50%を維持することより、誰もが高齢者になっても健康的で文化的な生活を維持できるようにすることを目指すのが重要であるはず。
2) 3号被保険者問題
3号被保険者制度は見直すべきかなと考えます。1)の中で、現役時20万円の人は18万円月額の年金が受給できるように書きました。しかし、トリックがあります。配偶者の受け取る年金を含めて18万円であり、配偶者がいなければ11.6万円です。手取り20万円ぐらいで、どうにか頑張っている人も多いと思います。独身の人も多いと思います。しかし、夫婦18万円は一人あたりだと9万円だから、11.6万円あればとの話も成り立つ気がします。いずれにせよ、架空の話をするより、実際がどうなのかが重要だと思う。
共稼ぎだったらどうなるかですが、厚生年金の場合は、総支給額に相当する標準月額報酬が62万円で頭打ちなので、この62万円が手取り55万円に相当するとすれば、夫婦で手取り55万円以下だと影響なし。すなわち、夫婦合算で手取り55万円は年金額でも夫婦合算で27.1万円です。しかし、夫婦それぞれ55万円だとすると、受け取り年金額は41.4万円です。但し、これも現役時代110万円で、これに比例して保険料を納付していたのであるから37.6%になるのは、公的年金は、金融商品ではないので、保険料と年金受領額がストレートに結びつかないとは言っても割り切れない気持ちも残ります。
3) 労働力問題
日本の公的年金は、賦課方式と積み立て方式のあいの子の様な方式で、本当はよく分からないような不思議な制度です。保険料を払う人が多ければ、キャッシュフローはよくなり、受給者が増加すると悪くなる。だから、財政検証では2110年までキャッシュフローと積立金の予測計算をしているのですが、鉛筆をなめるのもやりやすいのか、労働力が増え、保険料収入が増えるシナリオが年金破綻リスクも低くなっています。
年金財政から言えば、保険料を払わない3号被保険者が働き高給を取って、多額の保険料を納付するのが財政健全化に向かう。同じように、高齢者が高給で働けば、年金を支給しなくて済む。あるいは中位の給料で働けば、年金支給額を減額できる。年金から見れば、最高です。
4) 年金は個人の問題
間違っても政治家の言うことを信じてはいけない。年金が破綻すると受給者が一番に困るであろうが、将来の受給者にとっても年金が受給できない或いはそれまでに支払った保険料がゼロに近い価値となってしまう。
普通の取引は、約束が守られなかったら、その履行を求めて裁判ができる。公的年金は、それができないのです。何故なら、タコが自分の足に要求するようなものですから。消費税を8%にしたのは何故ですか?年金を守りたかったから、基礎年金50%国庫負担を継続可能な状態にするためだったはずです。
民主党政権も最後に消費税アップという良いことをしてくれた。しかし、その後の政権交代で消費税分を年金に回さずに土木工事に回し始めたから、年金もかわいそうになります。
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