最高裁の父子関係についての判決
最高裁は、7月17日にDNA鑑定にからむ父子関係をめぐる3つの裁判で判決を出しました。6月10日にこのブログを書いたことから、その続編として書きます。
1) 高松の事件
民法は、『妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。(民法772条)』としているが、 夫は子の出生を知った時から一年以内に家庭裁判所に訴えなければならない(民法777条)としており、1年以内の制限がある。なお、妻(母)は、親子関係の否認はできない。
子どもが何歳になった時か、時期は不明ですが、夫(父親)はDNA鑑定で自分の子どもでないことを知った。そこで、夫は、裁判を起こしたのであるが、認められなかった。最高裁へは、民法777条が憲法違反だとして提起した。
最高裁は、憲法違反ではないとして、上告を棄却した。当然だと思います。
もし、DNA鑑定を優先するなら、夫婦の親からの要求が出る場合もあり、ほとんど全ての夫婦が出産時(或いは前)に子どものDNA鑑定をすることになってしまう危険性を危惧する。妻は、可能性があれば、DNA鑑定の前に中絶をする。それが違法かどうかなんて関係なく、中には22週を過ぎてもヤミで行う。DNA鑑定についても、怪しい業者が広告合戦と値引き合戦を繰り広げる。少子化がますます進む。
我々は、どのような社会を望んでいるのでしょうか?愛のある世の中、人が互いに信頼できる社会を私は望みます。
2) 大阪の事件
子どもから父親に対しての、親子関係不存在の訴えである。(但し、まだ6歳であり、母親=妻が代理で提起)
2004年に結婚。2007年に単身赴任なった。しかし、月に2・3回は帰宅をし、また妻とも共に旅行をする等通常の状態であった。しかし、妻は、その2007年に子どもの父親である男と交際を開始することとなった。2008年に妻は妊娠し、夫にもそのことを告げた。(子どもの父親のことについては内緒にした。)2009年に妻は無事に子どもを出産し、夫は保育園の行事にも参加し、子育てをした。2011年に、夫は子どもの父親のことを知った。その年、妻は子どもを連れてDNA鑑定で父親とされている男の元へ行った。2011年に、この親子関係不存在の訴えを提起した。2012年4月に離婚調停を申し出たが、5月に不成立となり、2012年6月に離婚の裁判を起こした。
このいきさつをどう思われますか?
3) 札幌の事件
大阪の事件と同様に、子どもから父親に対しての、親子関係不存在の訴えである。(こどもはまだ4、5歳であり、母親=妻であった女が代理で提起)
1999年に結婚。しかし、子どもは生まれず、妻は父親である男と2008年から交際を開始し、2009年に妊娠。しかし、子どもが夫の子ではないことを知っていたから、夫には告げず、更には出産の際も夫には病院名を告げなかった。そこで、夫はその病院を探し出し、誰の子かと訪ねた。「2、3 回しか会ったことのない男」と言われ、夫は自分を父親とする出生届を提出した。2010年に協議離婚が成立。2011年6月にこの親子関係不存在の訴えを提起した。
4) 愛
ある程度大阪の事件と札幌の事件は似ています。両方とも父親は子に対する愛を持っているのだと思います。
それと、どちらを自分の父親とするかは、子どもが決定権を持つと思います。もし、母親の訴えが通るなら、子どもは出生届を父として提出してくれた人が父ではなくなるのです。成人になったなら、もはや出生届の父は父ではないとして親子関係不存在の訴えを起こす。もっとも、それで何の利益が得られるかは疑問ばかりと思います。むしろ、20歳になれば、その時もその父を父として受け入れているなら、DNA鑑定の父を養父として養子縁組をするのが一番賢いと思います。そうすれば二人の父親を持つことができる。
民法とは、人の社会の根幹のルールであり、感情も入り交じって成立している。愛に反する民法、愛に反する民法の運用や解釈は許されないことと思います。
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