次の記事を読むと、私は、大いなる疑問がわいてくるのである。
日経 10月17日 JR東海社長、リニア着工認可「交通史上に残る大きな一里塚」
超電導磁気浮上リニアについては、調べれば、調べるほど、欠陥ばかりが目につき、こんなリニア浮上鉄道など5兆5千億円も費やして建設する意義はなく、次世代に負の遺産を残すようなものだと思うようになってきたからです。
1) 国鉄分割民営化の分割の不合理が生み出したJR東海(東海道新幹線)
国鉄分割民営化は1987年4月にJR東日本、JR東海、JR西日本の本州三社とJR北海道、JR四国、JR九州の三島会社およびJR貨物の7社に加え、新幹線鉄道保有機構と国鉄清算事業団が設立された。そして、新幹線(東海道、山陽、盛岡までの東北と上越)を保有していた新幹線保有機構から本州三社に1991年10月に分割払いで譲渡された。新幹線保有機構は、その時点で鉄道整備基金となり、1997年に船舶整備公団と統合されて運施設整備事業団となり、一方で国鉄清算事業団は日本鉄道建設公団に1998年に吸収され、そして2003年10月に日本鉄道建設公団と運施設整備事業団が統合されて現在の鉄道建設・運輸施設整備支援寄港(鉄道・運輸機構)となった。
超複雑な歴史であるが、本州三社が民営化(上場開始はJR東日本1993年、JR東海1997年、JR西日本1996年)にあった以外は、政府の支配組織(子会社)の組織再編・変更でしかなく、複雑化して国民の目を誤魔化すためのご都合改革とさえ思える。実際、鉄道・運輸機構の財務諸表は読んでみても、複雑怪奇で財務諸表の大原則である「事業内容と財政状態について明瞭に情報提供をする。」に反していると思える。財務諸表のみが問題なのではなく、事業内容が支離滅裂なのである。例えば、内航船の建造費融資を事業とする船舶整備公団の事業を鉄道支援事業と同じ組織が実施するのはきちがいとしか思えない。
それはさておき、本州三社に譲渡された新幹線の価格であるが、次の表を参照願いたい。
表の第1行目が新幹線譲渡価格である。JR東日本については有価証券報告書に記載があったがJR東海とJR西日本は開示がなく、他の資料から推定した。事業会社の資産とは、将来のキャッシュフロー獲得に貢献する便益の源泉であり、その価額は将来キャッシュフローの割引現在価値である。それぞれの譲渡価格がどのように計算されたかはチェックしていないが、JR東海が一番高値であった。
本州三社は、新幹線を年率3.73%の利息付きの分割払いで購入しており、年間の元利合計支払額は4400億円を越えるのである。問題は、2013年度の元本減少額から推定した最終弁済日が2019年6月に到来するのである。今から5年後である。この話だけを単純に聞くと、問題はない。しかし、実は、この資金こそ、JR三島会社の支援に使われているのである。勿論、この資金は、旧国鉄の債務償還にも使われ又整備新幹線の建設他にも使われているのである。
ところで、2019年6月以降はどうするのであろうか?JR東海に勝手に中央リニアなんかに投資されては、たまったものではないと思えてしまう。国民の財産東海道新幹線を一企業の私欲のために使うのではなく、その収益は国民全体に利益が及ぶようにすべきではないだろうか。最も利払い額720億円なんて、消費税を1%あげることで得られる1兆円と比べれば、微々たる金額ではあるが。
2) JR各社を比較すると
JR各社を比較すると、よく分かるのである。次の表(クリックすると拡大表示)は本州三社は有価証券報告書より三島会社とJR貨物は決算公告より作成した比較表である。
トップ3行の営業距離を見ればよく分かるが、線路の営業距離と売上高がJR各社で差が大きいのである。JR北海道はkmあたり3千万円の収入であり、JR東海は20倍以上の6億円以上である。三島会社の鉄道事業の厳しさが伺える。最も条件が厳しいJR北海道の事故や本州会社でも厳しいJR西日本はやはり事故があった。そんなことも影響しているかも知れないと勘ぐってしまう。
鉄道事業損益1と鉄道事業損益2としたのは、鉄道事業損益1が旅客運輸収入から運送営業費を差し引いた営業利益であり、鉄道事業損益2は有価証券報告書の営業利益と一致する鉄道線路使用収入、雑収入を加え、一般管理費と諸税、減価償却費を差し引いて計算した利益である。三島会社は、営業収益と営業費用のみの表示であるため不明である。
比較の結論としては、三島会社とJR貨物の4社は鉄道事業損益1と鉄道事業損益2は赤字、本州三社は3社とも黒字であること。そして重要なことは、JR全7社を合計すると鉄道事業損益1と鉄道事業損益2は黒字になるのである。
私の結論は、JR7社の経営については、最適化をすべきと言うことである。分割した結果のある部分は黒字で他の部分は赤字と言うのは、その分割が正しいのかを見直すべきである。方策を国民的視点に立って、考えるべきである。
3) 鉄道・運輸機構の不明朗会計
鉄道・運輸機構は会計検査員の監査対象となっており、不正な会計処理は行われていない。しかし、財務諸表は、変な法律にガンジリガラメに縛られて、理解不可能な状態である。その中で、JRに関して読み解けていることを述べると、1)の表にある本州三社から鉄道・運輸機構への金の流れである。
もう一つの金の流れは鉄道・運輸機構から三島会社へであり、2)の表の中で「経営安定化基金利息収入」、「鉄道・運輸機構受取利息」と書いた金額である。この金があるから、三当会社は存続できているのであり、1)で書いた新幹線の分割払いが終了すると鉄道・運輸機構に財源はなくなり、税金で補填するのではと思ってしまう。後3年すれば、三島会社は倒産するのだろうか?三島会社を倒産させてまで、中央リニアを建設する意味があるのだろうかと思ってしまう。
経営安定基金とは三島会社が鉄道・運輸機構に運用を委託した資産であり、JR北海道を例に取ると、7523億円が貸借対照表に計上されている。しかし、純資産の部に経営安定基金として6822億円が計上されている。鉄道・運輸機構の貸借対照表ではJR北海道からの長期借入金(最終返済期限2017年3月)として1149億円が計上されている。何故このように計上され、表示されているのか読み込んだが結局は分からなかった。
国鉄分割民営化以来の不明朗会計を引きずり、今再び、中央リニアとか言って、国民の目を欺くらかすことを実施しようとしていると思えてならない。JR東海さん!説明をお願いします。
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