アスベスト訴訟の国家賠償責任最高裁判決
国(政府)の賠償責任を認める最高裁判決が10月9日にあった。
日経 10月9日 泉南アスベスト訴訟、国の賠償責任認める 最高裁
判決文は、
A) 事件番号: 平成26(受)771(大阪高裁で国家賠償が認められ、政府が上告していた事件)判決結果概要 判決文
B) 事件番号:平成23(受)2455(大阪高裁で賠償責任なしとされ、元従業員が上告していた事件)判決結果概要 判決文
1) 国会賠償法
国会賠償法の第1条第1項の賠償責任に関する争いであった。その第1条第1項の条文は次の通りである。
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2) 最高裁は何故国会賠償法の賠償責任を認めたのか
国家賠償法1条1項の適用上違法とされる期間は、昭和33年(1958年)5月26日から昭和46年(1971年)4月28日までである。この期間の開始日の昭和33年(1958年)5月26日とは、労働省労働基準局長が都道府県労働基準局長宛てに「職業病予防のための労働環境の改善等の促進について」と題する通達(基発第338号)を出した日である。粉じん作業等につき労働環境の改善等予防対策のよるべき一般的措置の種類を技術指針とし、 その実施の促進を指示した。
石綿肺の被害状況については、昭和31年度及び昭和32年度の委託研究の調査結果、勤続3年以上の労働者の石綿肺の発症率が29.6%~45%であり、かなりの高率であり、石綿工場の労働者の石綿肺り患の実情が相当深刻なものであることが明らかになっていることを、労働省は昭和33年頃には認識していた、また医学的知見についても確立していたと最高裁は判断した。
石綿の粉じん防止策として発散源となる石綿工場の機械に局所排気装置を設置することが最も有効な方策であり、労働者が石綿の粉じんにばく露することを相当程度防ぐことができたと認められるとした。労働省は、昭和30年頃から局所排気装置の設置を指導していたものの設置を義務付けなかった。昭和33年5月26日の通達においても義務とはしなかった。旧労働基準法により厚生労働省は省令制定権限を適切に行使し,罰則をもって義務付けを行って局所排気装置の普及を図るべきであったと最高裁は判断した。
労働安全衛生法による旧特定化学物質等障害予防規則(労働省令)により昭和46年に局所排気装置の設置を義務づけた。
高い危険性が存在し、かつ相当程度危険性を低める対策が存在するにも拘わらず、有効な対策を採らなかったことによる政府の責任を認めたのである。
3) 石綿工場とはどんな所?
Webを探すと次のスライドがありました。
大阪・泉南地域の石綿被害実態と石綿公害問題の検証 2009年7月26日 高木基金成果発表会
写真もある。石綿から糸を作る製糸工場や紡績工場もあったのです。
多分、当時としては、法令違反はしていないとのことで、問題にはならなかったのだと思います。
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