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2014年10月 8日 (水)

素直に喜べない面がある青色発光ダイオードへのノーベル物理学賞 

2014年のノーベル物理学賞は、青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3人の受賞が決まった。ノーベル財団の発表は次です。

The Nobel Prize in Physics 2014

青色発光ダイオードへのノーベル物理学賞が決まって嬉しい。LED照明が現在の社会にもたらした恩恵は大きく、ノーベル物理学賞に値する開発であり、3人の方にはお祝い申し上げたい。ノーベル財団の説明(一般向け)はここにあり、さらに詳しい説明はここにあります。

ところで、素直に喜べない面があると書いたのは、中村修二氏と日亜化学工業の裁判です。2004年1月の東京地裁判決は日亜化学工業に中村修二氏に対する約604億円の発明対価の支払いを命じたのです。日亜化学工業は、これを不服として控訴。東京高裁は、6億円の和解勧告を2004年12月に出したのである。中村氏は、最高裁に上告せず、米国に帰っていった。中村氏が、何時米国籍を取得したのか知らないが、2005年以後であったのかも知れない。いずれにせよ、東京高裁の和解勧告には大きな不満を持っておられた。

日亜化学工業は、株式譲渡について取締役会の承認を必要とする譲渡制限付の会社であり、上場会社ではないが、決算公告は行っておらず、有価証券報告書を提出している。従い、EDINETで見ることもできます。資産内容は連結総資産6235億円で、負債815億円と純資産5420億円という会社であり、しかも純資産のうち利益剰余金が4350億円です。過去の推移を見ていませんが、青色発光ダイオードでメチャ儲けて、こんなに金を貯め込んで、一方で中村氏にはたったの6億円を支払って終わりにしたという風に思ってしまいます。

正直、中村氏が当時述べたように日本の社会は、どこかおかしいのではと思います。しかし、一方、中村氏については、どうして最高裁まで争ってくれなかったのかと残念です。そして、更に残念なのは、世界に通用する研究・発明・技術を日本の若者が目指す仕組みが整っていないことです。マネーゲームは、一方で大もうけがあるのは、その分を損している人がいるからです。研究・発明・技術は、今回の青色発光ダイオードのように世界への貢献が大きなこともあり得るのです。電子技術にしても、日本はマイクロソフトやグーグルに遙かに及ばず、スマホもダメ。ガラパゴス技術ではない世界に通用する研究・発明・技術が日本に育つには、研究者・技術者への革新技術開発に対する大きな報酬期待(ニンジン)が必要だと思います。

以上のようなことで、素直には喜べず。むしろ課題が大きいと思いました。なお、これを書くにあたり、次の2つ文書を参考にしました。

1. 日経ビジネス 2014年10月7日 ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか

2. パテント 2005 Vol.58 No. 5 日亜化学工業対価請求事件の和解による終結に関する考察 (パテントは日本弁理士会の月刊誌です。ここ

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コメント

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141018-00000103-jij-soci
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単に青色ダイオードでは用途が限られていて、青から緑に、青から赤に変換するフィルターによって白色が得られるようになり、照明用途がいっぺんに拡がりました.
この特許収入が5億円だそうですから、中村氏の6億円も妥当な数字かもしれません.
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シリコン太陽光パネルのフォトダイオードの特性は、青色はシリコン素材の表面だけ、赤色は素材の深くまで浸透するため、青=1とすれば、緑=2、赤=3の出力が得られます.
実験室レベルですが、青色を赤色に変換するフィルターを通すことにより、2倍の出力が得られることが分っています.

投稿: rumityan | 2014年10月19日 (日) 00時57分

rumityanさん

コメントをありがとうございます。

紹介いただいた「青色」支える蛍光体の記事は、おもしろいですね。確かに一つだけの技術で製品化されているのではなく、複数の技術が組み合わさっています。それぞれの技術をいくらで評価するか、また会社と個人との分配がどうあるべきかは個別の技術の内容や会社と個人の関係で様々だと思います。一方的に、個人がとか、会社がとかは、基本的には良くないと思います。当事者通しが納得できることと、新技術を開発するのは、最終的には個人の能力によるところが大きいのであり、日本は優秀なエンジニアが競って新技術を開発し、その結果日本と世界が豊かになっていって欲しいと思います。

しかし、私には、頭脳流出が多いように思え、また有能な研究者を育てる教育環境が整っていないように思え、そうだとすれば、問題だと思います。

なお、蛍光体の特許料5億円は年間なので、20年だとすると100億円ですよね。

投稿: ある経営コンサルタント | 2014年10月19日 (日) 16時04分

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