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2014年12月22日 (月)

大間原発で問われるもの

日経が12月21日の社説で「大間原発審査で問われるもの 」と題する社説を掲載していた。

日経 12月21日 社説 大間原発審査で問われるもの

私としては、単に原発審査ではなく、大間原発に関して問われるべき事項を書いてみたい。

1) 利益とリスク(狭義)

本来は、原発の利益とリスクを問わねばならないが、この項ではシンプルに電力に関する利益とリスクについて考える。多くの人は、発電会社である電源開発(株):Jパワーであると考えると思う。しかし、それほど単純ではない。

日本における電力自由化が一般家庭についても適用されるのが2016年5月の予定であり、この時に現在の一般電気事業者、卸電気事業者、PPSの区分はなくなり、小売電気事業者、送配電事業者(厳密には一般、送電、特定の3区分)と発電事業者の区分となる。

Jパワーは、2016年5月の自由化前までは卸電気事業者であり、卸電気事業者に該当するのは、Jパワーと日本原子力発電である。Jパワーも日本原子力発電も卸電気事業では、10電力である一般電気事業者に卸売りをしている。その卸売り販売の方法は、長期契約であり、コストプラスフィーのような形である。だからこそ、Jパワーの電力卸販売平均価格は2014年3月期でkWhあたり8.08円である。

大間原発の電力卸販売契約は、どのようになっているのであろうか?私も知らない。しかし、同じ卸電気事業者で原発の電力を卸売りしている日本原子力発電と同じとすると、考えてしまう。次の表が、日本原子力発電の売上・利益である。

Japc201412a

原子力発電とはほとんどが固定費であるため、コストプラスフィーのような販売の場合には、このように利益は少額かも知れないが安定的なビジネスが生まれる。Jパワーの大間原発も、日本原子力発電と同じような電力卸販売契約が既に締結済みであると思うのである。その場合は、大間原発が反対運動により稼働しなくても、Jパワーは一定の利益を確保し、一方で一般電気事業者と消費者は電気料金で大間原発分の高い電気料金を支払うこととなる。

2016年5月の自由化以後は、10電力の一般電気事業者は一般送配電事業者となる。おそらく、原発の電力引き取り義務が一般送配電事業者に行くと思うのだが、いずれにせよ単純にJパワーの責任とリスクにはならないと思う。大間原発のリスクは国民であることを認識して判断をする必要がある。大間原発の電力販売契約は公開すべきと考える。

2) 大間原発は未だ核燃料未装荷

大間原発は未だ核燃料は装荷されていない。従い、今なら、ただの鉄とコンクリートであり、廃棄簡単である。しかし、一旦核燃料が装荷されたなら、放射性物質を含む高濃度放射性廃棄物が生まれる。日本において、放射性物質が大量に存在する場所を作るかどうかは、国民の判断だと思う。

3) 大間原発は最新原発

大間原発は最新原発である。その点からすれば、最も運転中のリスクも低く、もしかしたら飛行機が原発に激突しても大丈夫かも知れないと思う。原子力規制委員会は12月17日に関西電力の高浜原子力発電所3、4号機の再稼働に関する審査書案を了承したが、高浜原子力発電所3、4号機は1985年に運転を開始した原発である。

民主党が政権に就いた時は、2030年時点での将来案は原発発電割合50%であった。時代は、あの時とは、変わっている。安全原発再稼働論にしても、どの原発を稼働し、将来に向けてどうするのかの将来構想なくして、再稼働をすすめるのではなく、安全性を原発毎に評価して、その結果を国民に発表することも重要と考える。以前、菅政権時代にストレステストなるものを実施した。その結果、何が判明したのか、テスト結果がどう使われたか全く解らない。あのような無駄なことをすべきではない。

4) 大間原発はMOX燃料専焼

日本の原発は発生したプルトニウムを全量再処理して再度核燃料として使用する核燃料サイクル案で運用している。現状、運転をしていないのでプルトニウムは生産されていないが、それでも核分裂性プルトニウムが英国と仏国における保管量を入れると30トン存在する。もんじゅの見通しが立たない状態で、核燃料サイクルを続けるならMOX燃料を軽水炉で使用することは、どうしても必要となる。その場合、大間原発ならMOX燃料専焼で設計されているのであり、他の原発でMOXを使うより安全かも知れない。

本当の所は、私も解らない。大間原発とMOX専焼を私にも解るように説明を求めたい。

それと共に、重要なことは、核燃料サイクルである。プルトニウムは廃棄するとしても問題であり、保管するとしても問題が大きい。プルトニウムこそ核爆弾の原料である。使用済み燃料を直ちに核爆弾の原料として使用できる訳ではないが、核爆弾に加工する技術ハードルは今や低いと私は思っている。どのようなテロリストからも安全に保管せねばならない。また大間原発でMOXを使ったとしても、その使用済み燃料にはプルトニウムが存在し、それを再びMOX燃料へと加工する再々サイクルが始まる。

考えれば、原発とはやっかいなモノである。大間原発の運転開始までに日本の核燃料サイクルの方針を確立するまでの必要はないと考えるが、核燃料サイクルをどのように考えていくかのロードマップは作る必要があると考える。検討に関するロードマップなしで、原発再稼働は問題が大きいと言いたい。

5) 政治家ではなく国民が決定すべき

無責任な政治家に任せてはならない。2012年9月であったが47ニュース 【大間原発の継続容認】枝野経産相、青森知事に表明  島根3号機も念頭にとのニュースもあった。私が上に書いたようなことを、どのように考えていたのかと思う。

政治家とは人気取りと選挙票のことしか頭にない人達である。そのような人に依存してはならない。国民が判断する。国民が判断できるように必要な情報が国民に届くようにして欲しいのである。

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