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2015年3月31日 (火)

神話をつくってはならない

福島第一原発事故に関しての政府対応に関してのブログを書いたことの関連です。重要な反省すべき点は、神話をつくってはならないことである。

原発事故後の報道で原発地元の方が、「絶対安全と聞かされていたし、そう思っていました。」とTVのインタビューで答えておられたのを記憶している。これって神話に他ならない。本当は、高い安全性を持つように設計、製作、施工され運転されているとするのが本当の姿であり、人間の仕事である以上、どこかに抜けがある可能性もあるとするのが正しい考え方である。

神話として成立し継続したのは何故かを問いかける必要がある。成立したのは、日本のエネルギー事情もあっただろうし、神話であるが故に恩恵を受けた人も存在する。立地県の知事にとっては、誘致を行い、建設が始まれば、神話は都合が良かったはず。神話を批判をする人間は、政敵であり、神話を根拠にして反論すればよいのである。大東亜戦争において、上官の命令は天皇陛下であり、貴様は天皇陛下に逆らうのかと、非論理的な議論を認めない方法を押し通すことができる。

日本で福島第一原発事故以前において大事故はなかった。新潟地震においての柏崎刈羽原発の事故も、外部への地震の結果としての放射性物資による汚染はなかった。本当は、原発安全性を考えるシンクタンクがあり、そこが安全性についての報告書を作成・公開して多くの国民が安全性を議論できれるようになっていることが重要と考える。そのシンクタンクは政府とは独立していなければならない。あるいは企業が問題点やリスクを調査・研究し、報告してビジネスに結びつけても良いと思う。アル・ゴアの不都合な真実という本と映画があるが、問題を提起すると言うことでは、すばらしい内容である。

日本では、なかなか起こらないのだろうか。日本のマーケットは、政府の意向の影響を受けやすいと言える。マスコミは政権首脳の方を向いて報道をしているように感じてしまうこともある。また、企業もトップの意向が全てみたいになってしまう。トップは、トップとしての営業セールス活動をしており政権首脳とつきあう以上は、そうなってしまうこともあるが、所詮ビジネスは、それぞれ個別であり、矛盾していっこうに構わないと思うのである。

日本が今後発展を目指すなら、多様性が重要である。企業なんて矛盾する幾つかについて同時に投資しても構わない。どれが成功するか分からないのであるから。企業は神話を作ってはならない。政府も、同じであり、そして国民は神話はないと思うことである。ただし、宗教は人の能力を超越したことにも及んでいることから、宗教神話を否定するつもりはありません。

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福島第一原発政府対応の反省すべき点

直前のブログで原発再稼働にあたっては政府のBCPが必要とすることを書いた。そこで、私が考える福島第一原発事故への政府対応の反省点を書くこととする。

1) 緊急事態への自衛隊の派遣

福島第一原発によるこの発表によれば、3月11日16時36分に原子力災害対策特別措置法第15条1項の原子力緊急事態発生に関連する通知を経済産業省に発した。原子力緊急事態の発生を認め、原子力緊急事態宣言そのものを発するのは、首相になるのであるが、19時30分に原子力緊急事態宣言となった。その時の官房長官記者発表はこれであるが、予防的措置とも述べ原子炉そのものに今問題があるわけではないと発表している。

しかし、実際には非常用発電機の源源はおろかバッテリー電源も失われたのであるから、原発は糸の切れたタコ状態になっていたのである。どのようなことかと言えば、原発は炉心近くに人間は近づけない。放射線量が高いからである。そもそも原発の運転とは炉心の反応等を計器等により計測した結果にもとづき実施しているのである。まして地震の後で全ての電源が失われていれば、計器は信頼できず、破損した配管があれば、そこから放射性物質を含む蒸気が出て、近づけない場所もある。そもそも電気がないのだから真っ暗である。大量の放射性物質が存在する原発で、このような危険な状態になっているにも拘わらず当時の官房長官発表のようなことを言っていて良いのだろうかと思う。現状把握ができないことは、同時に適切な対策を講じることができないことである。

仮に、官房長官発表はパニックを回避するための国民へのまやかしとするなら、それもあり得るかも知れない。もし、そのような事情なら、後日その旨の発表をして国民に謝罪すべきである。しかし、実際にはなかった。とすれば、やはり現実を直視せず国民の不幸を招いたと考える。

本来なら16時36分の福島第一原発からの通報を受けて、17時ぐらいには原子力緊急事態を宣言して欲しかった。そこには内閣のみならず経産省の責任も存在する。原子力緊急事態であれば、首相命令で自衛隊を派遣することは可能と考える。自衛隊には、夜間でも離着陸可能なヘリコプターが存在ているはずである。夜間離発着可能なヘリコプター部隊が存在するなら、その支援によりあの水素爆発はせめて防げたのではと思うからである。

福島第一原発の発電設備は交直全ての電源を失った。しかし、免震重要棟には自家発設備もあり、また福島第一原発と東電本店との間はテレビ電話が使えた。本当は、福島第一原発の緊急事態総責任者を首相が任命して東電本社に派遣して、完全にその人に全権をあずけて対応すべきであったと思う。多分、その人は、東電では動かすことのできない警察や自衛隊の救援を求めただろうと思う。政府部内に衛星携帯電話がいくつあるか知らないが、ある程度の数を原子力緊急事態用として使用して、誰かが正確な情報管理をする体制を作れなかったのだろうかと思う。福島第一原発の現場には衛星携帯電話があったと思うが、追加を自衛隊が運搬することも可能であったし、あるいは発電所のアンテナ等が破損して十分に使えないのであれば、非常用の通信装置を自衛隊が設置して、通信手段を確保することも可能であったと思う。もっとも、吉田調書によれば非常用通信回線は福島県と大熊町にはつながっていたとのこと。しかし、相手は電話に出れる状態になかった。これも少し通信関係の人が細工をすれば、福島第一原発と官邸間の電話ホットラインにもなったと思う。重要免震棟と各原子炉1~6との間のコミュニケーションも容易ではなかったようであるが、自衛隊の通信部隊が臨時的通信設備を設置したらなら、相当の効果も期待できたと思う。

ところで福島第一原発の場合は、炉心緊急停止には成功しており核分裂反応は起こっていない。しかし、放射性物質のα崩壊やβ崩壊による安定した物質への壊変による熱発生は続いているのであり、何としても冷却する必要がある。大部分の熱は核燃料棒からであり、これが水の中にあれば、水の温度より少し高い温度で安定する。この水の冷却の継続は必要であり、冷却できなければ、蒸気が多く発生し、300℃以上になると原子炉圧力容器の圧力限界(圧力容器8.62MPag+格納容器の設計圧0.43MPag)を越える圧力が発生するし、900℃以上になると水素の発生が生じる。燃料棒の一部が水面上に出てしまったら、水面上での周囲は水ではなく蒸気であり、冷却効果が低くなり、直ちに高温となる。水と接する部分では水素が発生した。壊変熱は酸素が不要であり、壊変は人間がコントロールできない物理現象なので、やっかいである。

圧力容器の水を電力がなくとも冷却を継続できる装置が1号機のICや2・3号機のRCICであった。又、電力がなくとも圧力容器の圧力以上の圧力で水を注水できるポンプがHPCIである。しかし、バッテリーの直流電源もない場合は、長時間運転は望めない。(電発ではないあるプラント設計の関係者から「安全装置を設計する場合、最後の信頼を置くのが直流です。」と聞いたことがある。)吉田調書には、吉田氏の次のような発言も記録されている。

絶望していました。基本的には、私自身で、すね。シビアアクシデントに入るわけですけれども、注水から言うと、全部のECCSが使えなくて、ICとRCICが止まって、HPCIがありますけれども、それらが止まった後、バッテリ]が止まった後、どうやって冷却するのかというのは、検討しろという話はしていますけれども、自分で考えても、これというのがないんですね。

全てが使えなくなると外部から水を入れざるを得なくなる。全電源を失った直後から、その準備に福島第一原発は入った。消防ポンプは吐圧力は0.5MPa程度であり、圧力容器のバルブ(SRV)を開け、格納容器に蒸気を出す。今度は格納容器の耐圧が問題となるから、外部へベントせざるを得ない。ある程度の放射性物質がベントスタックから排出されるのは、非常時につきやむなしとの考える。

しかし、ベントやSRV開放と言っても電動弁(MOV)や圧搾空気を動力源とした空気弁(AOV)であり、放射線量が高い場所にあると同時に人力で簡単に動く訳ではない。高放射線レベルで作業時間も限られた中、照明はなくMOVやAOVを開けると言っても、これぞと思う配線や配管を引っぱがしつなぎ替えて持参したバッテリーやエンジン式コンプレッサーにつないで弁を開けるのである。高放射線レベルでの限定された作業時間でもあり、暗い中でもあり時間を要した。結局1号、3号は水素爆発となり、3号からの水素と思われるが4号建屋も爆発した。

もしも少しでも多くのバッテリーが現場にあったならと思う。バッテリーとエンジン充電器なら自衛隊は、ある程度持っていただろうし、各号基の真っ暗な操作室を明るくする非常照明も持っていただろうと思う。「一義的には東京電力に責任あり。」なんてことばかり言わずに、可能な支援を政府は提供し、国民を災害から守り、国民の損失を防ぐことを努力して欲しかったと思う。

2) 無意味な自衛隊ヘリコプターの水まき

3月17日から自衛隊ヘリコプターが3号、4号に水まきをした。必要な時に出動せずに、復旧のじゃまをした。次の「福島第一原発事故7つの謎(講談社現代新書)」は、3月17日午前10時から所内の電源復旧に取りかかり、夕方までには配電部門が持ち込んだ移動式の電源盤までケーブル敷設をおける計画であったと書かれている。(296ページ)無意味なヘリコプター水まきにより工事は中断せざるを得なくなり、電源復旧は1、2号3月20日、3、4号3月22日となってしまった。電源を普及させ、ポンプによる確実な冷却を実現するという王道を邪魔したのである。

3) 撤退防止のための首相東電本社訪問

東電本社訪問自体で現場が迷惑した訳ではないが、実情を理解することができない人がやはり存在するという点であり、理解することの重要性です。単純に、吉田調書からの引用を掲げる。この話そのものは、絶対伝わってこない。しかし、そのような状態で仕事をしていることを理解していないと、リーダーはつとまらない。この話は、福島第一原発2号でSRVもベント関係の弁も開いたが、圧力低下が確認できなかった時です。もし圧力が低下しないと、水蒸気爆発が起こることになる。

廊下にも協力企業だとかがいて、完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態が来ましたので、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだど思ったんです。
これで2号機はこのまま水が入らないでメノレトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまう。そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくて、チャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう。そうすると、1号、3号の注水も停止しないといけない。これも遅かれ早かれこんな状態になる。
そうなると、結局、ここから退避しないといけない。たくさん被害者が出てしまう。勿論、放射能は、今の状態より、現段階よりも広範囲、高濃度で、まき散らす部分もありますけれども、まず、ここにいる人間が、ここというのは免震重要棟の近くにいる人間の命に関わると思っていましたから、それについて、免震重要棟のあそこで、言っていますと、みんなに恐怖感与えますから、電話で、武藤に言ったのかな。1つは、こんな状態で、非常に危ないと。操作する人間だとか、復旧の人聞は必要ミニマムで置いておくけれども、それらについては退避を考えた方がいいんではないかという話はした記憶があります。

4) 参考資料のリンク

福島第一原発事故は終わっていない。今後何十年経って分かる部分もある。未だ分析・検討・研究は十分と思わないし、課題は多い。今後の為にも報告書等のリンクを以下に書きとめる。

国会事故調

政府事故調査・検証委員会 最終報告書

東京電力事故調査報告書 最終報告書 中間報告書

民間事故調の報告書はWebではダウンロードできず、一般の書籍として発行されている。

吉田調書他政府事故調のヒアリング記録はここでダウンロード可能です。

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2015年3月29日 (日)

原発再稼働にあたっては政府のBCPが必要と考える

原発の再稼働が近づいているようで、様々なニュースがある。例えば、次のようなニュースである。

日経 3月27日 九電、川内原発の安全対策を公開 7月再稼働へ準備

原発保有電力会社としては、設備稼働に向けて尽力するのは当然のことである。何故なら、原発とは保有には多大のコストを要するが、運転費用は安いというコスト構造だからである。(2014年11月25日ブログ2012年10月20日ブログで原子力発電の発電コスト分析を書いたが、2013年4月から2014年3月の1年間の原子力発電のコストは発電量8,501GWh(関西電力大飯が稼働)に対して日本原電を含めた10社の原子力発電コストは1兆3915億円であった。

原発の運転は、現状において、法で禁止されている行為ではない。法で定められた一定の条件下において許されている正当な行為である。今後について、法改正を行い、ルールを変更していくことは、あり得るのであり、中長期的な課題として国民一人一人が考えコンセンサスを作り出すべきである。再稼働反対論には、中長期的な課題が多く含まれていると思うのであり、国民の多くが賛成できるルールを対話を通じて作り上げていくべきと考える。その中には、コンセンサスを作り上げていくスケジュールやそのための必要アクションが含まれていなければならない。

当面の再稼働に関しては、稼働するなら政府のBCP(Business Continuity Plan)が必要であるとするのが私の考えである。政府のまずい対応の結果として多くの帰宅困難、住居制限、避難指示解除準備地域が存在することになっているのではないかと思うからである。即ち、大量の放射性物質の飛散は、政府対応が適切であれば、避けられていたか、或いはもっと少量の飛散に押さえることができた可能性があると思うのである。事故調査報告書は、事故そのものについては焦点を当てているが、政府の対応の適切さについてもっと分析をし、将来に活かすべきと考えるのである。

東日本大震災に関する福島第一原発事故の政府の不適切な対応としての代表例は当時首相であった菅直人氏の言動である。BCPがあったなら、あそこまでの不適切さは防げ、政府による適切な支援や行動が期待できたのではと思うのである。菅氏に言わせれば、誰も全く考えていないことが起こったのであり、自分としては最善を尽くしたとの反論になると思う。しかし、そのような弁明は首相としてはしてはならない弁明と考える。一方、BCPがなかったことは、大いに反省すべきことと考える。原発事故の対策として地方自治体の避難計画策定も必要であろうが、政府のBCP作成も極めて重要と考えるのである。

BCPとは、事故や災害が起こった際の対応・行動等について予め検討・研究しておき、マニュアルとして準備しておく災害対応計画である。企業のみが作成すべき対象ではなく、消防、地方自治体、病院のみならず、政府もBCPを作成する必要がある。そして、常に見直しを行い、不備や不都合は修正していく必要がある。BCPと災害復旧計画との違いは、BCPは災害復旧のみならず必要な機能を維持し活動を継続することも視野に入れることである。

政府の場合、各省ごとに作成するのではなく、やはり全ての省府庁を網羅して、イベント毎に作成するのが有効かつ効果的な又意味のあるBCPとなると考える。東日本大震災を例に取れば、同時に多くの災害・事故が発生したのである。現状把握だけで、膨大な仕事量である。その対策や必要な機能の維持に関しては、現状把握より遙かに多い2桁以上の膨大な仕事量になり、それを通常機能が失われている中で短時間に効率よくこなしていく必要があった。総理大臣の仕事は、適切な人間を適切に配備することであるが、イラ菅とも呼ばれた当時の首相は自らは能力もないのに福島原発にヘリコプターで行ったり、無茶苦茶した。政治主導として役人の意見はほとんど聞かなかったと思う。官房長官も損害賠償責任は東京電力にあるとの発言をしていた。これも間違いとは言わないが、それで何?である。現実には3月12日のブログに書いたが、東京電力が支払った賠償金の累計は4兆7千億円で更に今後も増えていく。資金源は国債である。それは誰が最終的に負担するのかと言えば、税金であるか電気料金であるか不明であるが、国民が負担することに違いはない。「損害賠償責任は東京電力にある」と言う発言は弁護士的発想の内閣の責任逃れであり、必要な政府のアクションがおろそかになってしまった可能性はないのだろうかと思うのである。

カナダ政府の公共安全省がBCPが考慮すべきリスク・イベントとしては次が含まれると書いており、参考として掲げる。

- Natural disasters such as tornadoes, floods, blizzards, earthquakes and fire
- Accidents
- Sabotage
- Power and energy disruptions
- Communications, transportation, safety and service sector failure
- Environmental disasters such as pollution and hazardous materials spills
- Cyber attacks and hacker activity.

ちなみに、BCPを作成する必要がある組織としては、次のように書いており、政府を含めあらゆる組織(all orgainizations)としている。なお、当該BCPの説明はここにある。

While governments, not-for-profit institutions, and non-governmental organizations also deliver critical services, private organizations must continuously deliver products and services to satisfy shareholders and to survive. Although they differ in goals and functions, BCP can be applied by all organizations.

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2015年3月25日 (水)

1票の格差是正に対する提案(全国1選挙区制)

福岡高裁は、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟について、九州5県の計25選挙区についての判決が3月25日にあり、選挙を違憲と判断した。

日経 3月25日 14年衆院選は「違憲」 福岡高裁、選挙無効は認めず

判決要旨および判決文は、NPO法人一人一票実現国民会議のWebにアップされており、読むことができます。

福岡高裁 3月25日 判決要旨 判決文全文

憲法第41条は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」です。日本において強制力を持つ法律を定めることができる唯一の立法機関が国会であり、衆議院及び参議院の両議院で構成されている。各々その総議員の3分の1以上の出席で成立し、出席議員の過半数で議決する。その議員を選任する選挙において1票の格差があることは、国民が平等に扱われていないことを意味する。私なんかは、2倍の格差でも、不平等でありけしからんと思う。

そもそも、公職選挙法改正も国会で審議・議決されるのであるのであり、格差解消の結果が選挙で選任されないリスクにつながるなら、議員にインセンティブは働かない。選挙地盤の地元対策と適当なジェスチャーで渡り歩くのが賢い世渡りとなる。

そこで提案であるが、全国1選挙区の大選挙区制を導入するのである。

その理由を以下に述べてみたい。

1. 1票格差ゼロの究極の国民(有権者)の意志の反映

1票の格差をなくし、国民の意志を反映することは、重要なことと考える。死票がなくなり有権者の投票したとおりの国会の議席配分が実現する。いつも選挙に名乗りを上げて、誰も当選しない幸福実現党も議席を得るかも知れない。極右政党も当選者を出すかも知れない。それで良いと考える。言論の自由は重要であり、正当な活動をすることについて制限をしてはならない。

全議員比例代表制も国民の意思の反映を忠実に実現する方法かも知れない。しかし、政党の固定化が生まれる可能性があると思う。議員が政党を次々と移ったり、結成したりしても構わないと思うし、認めざるを得ないとも思う。比例代表で政党を選んだにも拘わらず、主義があわないと変わるのは有権者の気持ちとしては納得がいかない。政党を選んでも良いし、個人を選んでも良い。政党なしでも立候補可能とする。多くの人の関心も高くなる。

2. ネット時代にふさわしい

ネット選挙が解禁になった訳であり、日本全国1区であっても、ネットを使えば、費用を抑えて全国展開の選挙活動も可能である。多分サポーターを集めることができれば、相当有利な選挙運動も可能と思う。正しい意見を述べる人は、それだけ人々に訴えることができ、当選する可能性が高くなる。

昔の参議院選に全国というのがあり、タレント議員が多く出た。多分、政治的主張よりドラマや番組出演等でのかっこよさで票を集めて当選するタレント候補者も多く出るであろう。しかし、考えれば、現在の比例区にタレント人気にあやかって党の推薦を受け当選しておられる方もいるように思うので、それほど変わらない気もする。

少なくとも有権者が正しい選択をすれば、問題は何もないはず。

なお、少し先も話かも知れないが、マイナンバー制を使った、選挙方法も考えられると思う。投票所入場券を持参する必要もなく、マイナンバーを使って不正投票を管理する。投票も電子投票にすれば、選挙費用も格段に安くなる。マイナンバーでの本人確認なら、指定された投票所での投票でなくても実施可能である。ネット時代をうまく有効に活用することは重要である。

3. 最適候補者への投票可能

小選挙区選挙とはつまらない選挙である。候補者調整の結果、自分の選挙区には投票したいと思う人がいなくなったと感じた経験をお持ちの方もおられると思う。そんなことは全国1選挙区にすればなくなる。

小選挙区制の欠陥として大政党のボスの権力増大と政党内部の権力争い増加がある。小選挙区制とは大政党の公認を得られないと当選できる見込みがなくなる制度である。議員になって欲しい人がいても、大政党公認なしでは、当選する見込みがない。被選挙権は誰もが持つはずであるが、大政党が国民の権利を奪い、大政党の欲望が先行する。

全国1選挙区制では政党の力は弱くなる可能性がある。それでも良いと思う。しかし、逆に政策研究の仲間・グループは力が強くなり、正しい政策を考える仲間が自然に力のある政党として成長していくなら、それもよいと考える。

小選挙区制における2大政党制は、無意味であることを民主党政権が証明してくれたと考えている。あれ以来、私は全国1選挙区論者である。Thanks to 民主党。

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朝日新聞の問題ある記事表題

福島第一原発の事故当時の吉田所長の調書に関する記事は、関心を引くことを目的として不適切な表題とした問題ある朝日新聞と思っているが、3月24日の「(国策の果て 岐路の原発:1)信じた発展、福島の悲しみ」と題したこの記事もタイトルが酷いと思う。

原発事故から4年を経過するにも拘わらず、原発に近い地域に住んでおられた方々は、今も大変であり哀しいことであると報道が伝えることは、重要なことと考える。

しかし、わざわざ「国策の果て」という修飾語を表題の冒頭に持ってくる感覚に朝日新聞の人達の自分たちの新聞が売れ、自分たちに金が入ればよいとするような浅はかな知能にあきれかえるのである。

原発の推進政策は間違っていると述べるなら、それで悪くない。こんな悲惨な状況を生み出すリスクを考えるなら原発は廃止すべきであると、その論を新聞に述べればよい。どう考えたって、この記事の「国策の果て」の前には「間違った」と言う修飾語が入る。何が間違っていたのか、その反省すべき点とそれを踏まえた今後に向けての政策を論じるべきである。さもなければ、「国策の果て」は単にお涙ちょうだいの意味で書いた浅はかな記事である。

もう一点は、国策なる言葉であり、日本国の政策である(この場合はエネルギー政策)。国の政策は、国民が作るのである。国民不在で時の権力者が自分の都合や利益のために作った政策を国策と言えるか疑問に思う。マスコミだって政策作りに影響を及ぼしている。一方、朝日の記事の文章から引用すると「福島県知事の佐藤善一郎は双葉郡への原発誘致を表明」とある。福島県民の意見や意志はどうであったのだろうか。国策という言葉を朝日は軽々しく使っているが、国の政策とは、竹を割ったような単純なものではない。今現在の日本の原子力政策についても、様々な意見があり、私は一本に纏まってはいないと考えている。政府の政策イコール国策ではないし、まして安倍総理が述べる原発に関する方針は、単なる総理談話であり国策ではない。

政治家やマスコミの言葉には嘘が多いと思うが、こと国策なんて言葉を使っている時は、本当に大嘘をついている時である。

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2015年3月24日 (火)

日本風力開発のMBO

日本風力開発がMBOを発表した。

日経 3月23日 日本風力開発、MBOで非公開化へ 1株580円でTOB

会社発表はここ

会社発表は、日本風力開発の文書が24ページ、JWDホールディングスの文書が.24ページであり、相当の量である。(JWDホールディングスとはベインキャピタルと日本風力開発社長の塚脇氏が先月2015年2月に設立した会社で、公開買付者である。)

私にとって日本風力開発について記憶が鮮明なのは、やはり粉飾決算である。金融庁から実態のない風力発電機販売斡旋取引に係る売上を計上して10億円以上の粉飾をし、課徴金金3億9,969万円の納付命令を受けた。(ここに金融庁の2014年8月29日の発表がある。)粉飾決算の時期は、2009年3月期のことである。この粉飾決算を行った財務諸表を元に2009年9月に新株予約権付社債30億円を発行し、2009年11月17日に3000株を1株236,345円で発行し8億円弱を手に入れ、更に2010年1月29日に新株予約権も発行した。

但し、日本風力開発は粉飾決算を認めておらず、2014年9月26日に東京地裁に取消訴訟を提起している。すごい会社である。

2013年9月に1株を100株に分割する株式分割を行っていることから2009年11月発行の1株236,345円は、分割後の株数で換算すると2363円である。保有していれば、これを580円で売って、1783円の損となる。投資額が最終的に25%となるバカな投資をしたこととなる。参考に、日本風力開発の2005年からの10年間の株価チャートは次である。

Nihonfuryokukaihatsu20153

会社のMBOの発表には、在庫として保有する蓄電池売却が急務であると書かれている。しかし、粉飾決算の会社の言うことであり、信じられないし、実際に蓄電池を保有しているとしても少額なはずである。或いは、相当の多量であった場合は、新規建設中の案件用である。もっとも、日本風力開発は建設中の案件はないと有価証券報告書にも書いている。しかし、貸借対照表には建設仮勘定が計上されており2014年12月末で70億円となっている。

見方によっては、倒産間違いなし。MBOをやって生き残る戦略なのかも知れないと思う。多分従業員はほぼ全員解雇なのだと思う。太陽光もそうであるが、風力も従業員は基本的にゼロでも済むやくざ課業である。問題ある企業は、投資家から誤魔化して資金調達ができなくなった時は、MBOを選択する。その結果は徹底したコスト削減に向かうはずである。そして借入金の返済猶予を求める可能性が高いと思う。日本風力開発の場合は、2014年12月末で264億円の借入金がある。どうなるのだろうか?基本的には広い意味での放漫経営が原因と推定するが、株主から集めた金が累計203億円。一方、580円のMBO価格で計算すると97億円となる。株式投資とはだましあいの世界なのだろうか?そうだと思って、投資先については自ら十分な分析をすることが重要で、ムードや雰囲気で投資をしないことである。

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2015年3月23日 (月)

国民健康保険の改革

3月16日の日経社説は次であった。

日経社説 3月16日 医療の効率化へ試される都道府県の力量

社説の主張を間違いとは言わないが、根本的な部分を置き去りにしているように思う。社会保障審議会医療保険部会での医療保険制度改革案(持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案)の関連である。ニュースは、次であった。

日経 2月20日 国保財政安定へ関連法案提示 厚労省、都道府県へ移管が柱

日経 3月3日 大企業健保の負担増へ 医療改革法案を閣議決定

国民健康保険のみならず組合健保、協会けんぽ、船員保険、後期高齢者制度も含んでいる改革案であり、記事によっては、組合健保の保険料のことが大きく取り上げられていたりする。3年後の2018年3月からの施行である。審議会の性格からして、当面の改革が重要であり、将来の課題や問題点については議論の対象として取り上げることすら難しい面はあるものの、この改革は根本的な部分を置き去りにしてパッチワークで繕いでいるのが実態と評価する。3月4日にこの医療費と医療保険を書いたこともあり、少しは課題について書いてみることとする。

1) 保険料の市町村差

受けることができる医療と治療を受けた時に支払うべき金額は日本中どこでも同じである。しかし、保険料として支払う時は、地域差がある。今回は、都道府県単位の広域で保険事業を運用して、せめて都道府県内部での格差は縮小しようとの方向である。その先に目指すべき方向は、日本中同じ条件の国民健康保険を実現することである。そのような本来の姿や方向も法律に書いておいてよいと考える。保険料の市町村格差を示す表として次表を作成した。

Kokuminnkennpo20153

標準化保険料算定額とは所得を国保対象の人の全国平均として各市町村国保の料率で保険料を算定した金額と考えて良い。実際には、国保対象の人は都道府県により所得分布に相当大きな差がある。都道府県では、東京都は一人あたり92万円をであるが、沖縄県では35万円である。市町村毎に見ると最高は230万円を越えている所がある一方で14万円も存在する。

国民からすれば、都道府県も市町村も関係ない訳である。地方創世なんてのはバカしか考えないスローガンであり、無駄が増える可能性の方が高いと思う。

2) 国民健保における改正法での都道府県と市町村の役割

このWeb Pageから2月20日の医療保険部会の資料をダウンロードできる。法案そのものはないのであるが、次の文章を読んでも、よく理解ができない。

都道府県は、安定的な財政運営、市町村における国民健康保険事業の効率的な実施の確保等都道府県及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の健全な運営について中心的な役割を果たすものとすること。
市町村は、被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項、国民健康保険の保険料の徴収、保健事業の実施その他の国民健康保険事業を適切に実施するものとすること。

第2項に都道府県と書かれているが、抽象的表現である。中心的役割を果たすことが義務がというなら、単に議長を務めるだけでも義務を果たしたことになると思う。まさかザル法を作ると思わないのだが、保険部会の委員の人達は何を思っていたのだろうと不思議さも感じる。

もし、厚生労働省の役人に操られているだけなら、そんな委員会は不要である。むしろ、このブログで書いた国税庁の対応の方が、よほど国民の方を向いて仕事をしている。

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2015年3月19日 (木)

太陽光発電による電気料金値上げ

太陽光発電により、電気代が年間3,000円値上がりすることになり、負担額は5,688円になるとのニュースです。5月検針分から適用されます。

日経 3月19日 再生エネ家庭負担、年5688円に 15年度から電気代上乗せ倍増

経済産業省の発表はここにあり、「平成27年度の賦課金単価は、1kWh当たり1.58円【標準家庭(一ヶ月の電力使用量が300kWh)で月額474円】と決定しました。」との記載があります(474円を12倍すると5688円となる。)。現在0.75円なので2.1倍強の大幅値上げです。

今後まだまだ値上がりします。年間何万円もの負担になる時期は、そう遠くないのかも知れません。2014年11月11日に、この再生可能エネルギー買取制度は早急に法改正をすべきを書きましたが、日本の再生可能エネルギー政策は、間違っています。業者の売値を基準とし、負担は消費者であるとする考えの法律だからです。

ところで業者とは誰でしょうか?国民と日本の産業が払った年5688円ものお金を受け取っている業者です。即ち、発電事業者、機器メーカーとサプライヤーそして工事業者です。大規模な太陽光発電設備の場合、一番金額を大きく占めるのが、太陽光パネルですが、中心は中国企業です。例えば、ある会社のWebにも太陽光パネルの世界シェアがありますが、上位は中国企業です。大規模太陽光パネルの架台まで、中国からの輸入品がほとんどです。再生可能エネルギー付加金を管理しているのは一般社団法人低炭素投資促進機構(ホームページはここ)で、平成26年度予算では収入5463億円となっています。これが、今年は1兆3千億円程度になるのです。

一方、日本企業はというと、現代ビジネスのシャープに関する記事がここにありますが、その2ページ目に「液晶と並ぶ看板事業だった、太陽光パネルの生産から全面撤退することが検討されているようです。」とあります。シャープは、本日付でこのような発表をして、日経の記事シャープ支援2000億円に 主力行に上積み要請 シャープ、希望退職3000人 国内で来年度 経費300億円計上 については、様々な検討をしているが会社が発表したものではありませんと述べている。

大口電力消費事業者の場合、1kWh当たり1.58円が0.316円となる減免制度があります。申請が必要ですが、年間100万kWh(年間電気代で約2千万円以上)でかつ電力多消費(製造業の場合、千円の売上に対して5.6kWh以上の電力消費。従い、電力コストが12%-15%も占める場合)に適用されます。従い、多くの中小企業は対象外であり、例えば、毎月の電気代を50万円払っている場合は、年間で電気代負担は約26万円増加し年間約50万円の負担になるとの私の概算です。

再生可能エネルギーの利用を拡大することには賛成です。しかし、その前提は国民が賛成できる制度であることであり、合理的な制度を思考すべきと考えます。

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2015年3月17日 (火)

右傾化が著しい八紘一宇の礼賛

記事のタイトルだけを見ても、驚いた。

東京新聞 3月17日 「八紘一宇」を礼賛 参院予算委で自民・三原氏

八紘一宇とは、Wikiがここにあるが、大正時代に使われ始めた言葉である。訳の分からない言葉であるが、当時の権力者にとっては、都合良く使うことができた言葉である。天皇主義が、そもそも権力者の都合でしかなかったのであるが、「天皇の御為」と言っておけば、全ての反論が排除可能であり、相手に自分の都合を押しつけることができる。

考えることを否定する言葉、あいまいな言葉は理性で考えるべき時に使うべきではない。想像が入るが、イスラム国の考えはコーランを都合の良いように解釈して権力者が都合良く達振る舞っているのだと思う。少し前、”おもてなし”とか”絆”とかの言葉を使う人がいた。何を意味するのか、当然のことを言っているのか、それなら、わざわざ使う必要がないと思うし、かと言って深い思想や主張があるのか、それもよく分からない。

しかし、八紘一宇は、村山談話と併せて考えると、「遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」に深くつながり、「わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。」に通じることとなる。

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2015年3月16日 (月)

あたり馬券の所得の一律的扱いを変更する方針

3月11日に競馬のあたり馬券の所得税の扱いで国税庁の敗訴確定と題して書いたブログの続きです。

国税庁は、この発表で「判決の内容を精査し、パブリックコメントの手続を行った上で、所得税基本通達34-1を改正する予定です。」として、判決と同様の馬券購入行為の態様、規模等により馬券の払戻金を得ていた所得については、雑所得として扱うことが適当と考えていると発表した。

判決結果を受け、パブリックコメントも得て、法に関する役所の解釈を変更していくことは、公平で民主的な手続きです。ほとんどの役所も、同様の対応と考えるが、万一そうではない役所があれば、国民がそれを是正させるべく声を上げるべきと思いました。

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2015年3月12日 (木)

富裕層の税貢献

合理的な規制緩和や市場主義は経済発展を促進し、社会を豊かにする。但し、一方で格差拡大に向かう面もあり、行き過ぎを避けると共に、低所得者層や弱者に対する適切な支援と格差解消政策も欠かせない。税は、所得再配分の機能があると共に、支援を初め様々な政府政策を実施する為の財源であり、税制は重要である。

さて富裕層に対する最近の税制改正及び改正案は、注目してよいと考える。

1) 所得税と相続税の富裕層課税

2013年3月の改正での富裕層に対する税率アップが2015年の所得から適用され、来年の所得税確定申告において2億円を越える課税所得額(収入総額ではなく必要経費や控除を差し引いた残額)の場合には、2億円を超えた金額について昨年までより5%アップする。

2013年3月の改正では相続税の税率もアップとなっており、遺産額から基礎控除額を差し引いた残額を法定相続人の数によりあん分した額が2億円を越えた場合には、税率が超えた額の5%アップする。(3億円から6億円の範囲内で少しアップ率が低い場合もある。)なお、相続税も2015年1月からであるが、相続時を基準とするため既に適用となっている。又、基礎控除の額の見直しもあることから、アップ率は実質少し大きい。

それでも所得金額が2億円を越えるような人はやはり富豪だと思います。土地の売却益は分離課税で10年以上保有は20%であり、対象外です。又、相続税にしても相続人1人あたりで2億円ですから、3人なら相続財産が6億円以上ある訳で、やはり富豪だと思います。

2) 富裕層の財産債務調書の提出

現行では、合計所得金額が2千万円越える場合、所得税法232条により財産債務明細書の提出の義務がある。今年の改正案では「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の中に、6条の2として財産債務に係る調書の提出の条文が追加され、所得税法232条は削除となっている。

この改正結果は、合計所得金額が2千万円を超え、かつ、年末時点において3億円以上の財産又は1億円以上の有価証券等(未決済デリバティブ取引の権利を含む。)を保有する場合は、確定申告期限までに、財産債務調書を提出しなければならないとしている。その上で、財産債務調書に過少申告や無申告があれば加算税が課せられるとしている。もっとも、提出の必要がなくなった人の方が数の上では多いはずです。

確定申告さえまじめにしていれば良かったのだが、富裕層にとっては、財産債務調書の提出が義務付けられ、その結果として所得の捕捉度は上がり、所得税と相続税の申告は正直にならざるを得なくなる。マイナンバー制が加わり、税の公平度が進み、正直者がバカを見るような状態が解消されるのは望ましいことと考える。

3) 国外転出をする場合の有価証券の譲渡所得の特例

所得税の改正で60条の2他が挿入されたりしている。この改正で想定しているのは、やはり富裕層である。即ち、国外転出とは、海外旅行ではなく、住民票を日本から抜き、居住地を外国にすることです。

所得税は、居住地で税を納付する制度であり、所得税法も「居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある。」とし「非居住者は、国内源泉所得がある場合に、所得税を納める義務がある。」としている。従い、住民票を抜き、税が安い外国に一時的であれ移住し、そこで有価証券等を売却すれば、その国の税を納付すれば良いこととなる。含み益のある有価証券を保有していれば、合法的節税が可能となる。これを封じようとしている改正である。外国に住所を移してまで節税をするのは、節税額がそれに見合う人であり、やはり富裕層です。

従来だったら、日本株や外国証券投資信託だって日本の証券会社に売買委託をする形であり、私はそれほど詳しくないが、住民票を抜いたって、非居住者の国内源泉所得として扱われ節税は難しかったと思う。しかし、今やグローバル化時代であり国境を越えて金融商品は取引されている。デリバティブなんて差額決済だから、国境なんて薄い壁と思います。

この特例は、国外転出をする場合に保有している有価証券等を、国外転出時の時価で売却または決済したとみなして所得税を課す制度である。なお、この特例は保有している有価証券等の時価が1億円未満の人には適用されず、富裕層で住民税を抜いてと考えている人以外はほとんど関係なしです。万一、多額の金融資産を保有している人が海外転勤となる場合は、納税猶予を一定の手続きで受けることも可能です。

4) アベノミクスと富裕層課税

アベノミクスで貧富格差が拡大したとの批判があるが、個人に対する税制を見れば、所得再配分にも配慮は行われていると感じました。

なお、法案は財務省Webでも見ることができるし、衆議院の法案のWebでも見ることができます。

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クラウドサービスの消費税は国外事業者にも課税

2013年11月18日にこのブログを消費税を払わない方法というタイトルで書いたのですが、その続編です。本年の「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されており、与党が過半数を占めており3月中には成立間違いないと思います。

所得税法等の一部を改正する法律案の第4条は消費税法の一部改正であり、この中に国外から日本に対するネット通信を媒介としての役務の提供を課税取引に変更する案が記載されている。財務省の平成27年度税制改正の大綱ではこのページに説明がある。

法案では、事業者向け電気通信利用役務の提供を特定資産の譲渡等とし、現行では国外が譲渡・提供地となっているのを、国内に改正している。結果、日本国内で事業者が行うネット通信を媒介としての役務の提供は消費税対象の取引となり、2015年10月から適用されることとなる。今後クラウドサービスのようなビジネスは確実に増加すると思う。その場合、国内事業者が日本向けのビジネスにおいて消費税で不利になるのは、よろしくない訳で、しかもソフト関係となると益々変に思える。従い、この改正は妥当なのだと私は思います。

課題としては、国外事業者が消費税を納付するのかと言う点です。幾ら法律を作っても、日本法は日本国内でしか強制力を持たない。そこで、今回の改正案は特定資産の譲渡を受けた日本国内の事業者に申告と納税の義務を負わせている(これをリバースチャージ方式と呼ぶそうな)。

しかし、これで完結しないのが、今回の改正案である。即ち、附則部分の案も読む必要がある。附則第38条で、特定資産に係るものについては、当分の間、仕入れ税額控除を適用しないとしている。その上で、国外事業者が登録国外事業者として税務署に申請し登録されている場合は、仕入れ税額控除が受けられるとしている。外国事業者としては、登録国外事業者になっていなければ、販売した相手の会社が仕入れ税額控除を受けられなくなり、登録が進み、かつ登録国外事業者による消費税の納付もある訳で、財務省も考えましたねと思った。

なお、附則で、課税売上割合が95%以上である場合には、当分の間、国内において行った特定課税仕入れはなかったものとするとある。課税売上割合が95%以上なら、仕入れ消費税全額控除なので、支障はないとしたと思います。

2013年11月に書いたことがあり、今回どのような改正をしようとしているかと法案を読んで、思ったことを書きました。

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強行すぎると感じてしまう辺野古調査

次の琉球新報の写真を見ると、海上保安庁警備艇の乗組員にその気はなかったのでしょうが、危険だなと感じます。

琉球新報 3月11日 辺野古沖、海保艇が男性に追突 抗議ボート排除中

記事には「男性に大きなけがはなかったが、」とあり、大事には至らなかったと思います。しかし、3月12日の琉球新報の社説 「海保艇追突 事故責任うやむやにするな」は、海保艇の行為が大惨事と紙一重だったことは一目瞭然だとしており、またこの社説の最後の方には『今月4日には、海上保安官が抗議船船長に「腐れナイチャー」と発言するなど、権力を持つ側からのヘイトスピーチまで飛び出した。』ともあり、行き過ぎがあるように思います。

ところが政府は日経記事 3月12日 沖縄防衛局、辺野古の海底掘削調査再開の記事のように12日午前に昨年9月に中断した海底ボーリング(掘削)調査を再開したのです。

対話を失えば、良い結果が生まれるはずはない。特に私は2013年4月8日のブログで書いたように、辺野古の現在のキャンプ・シュワブの敷地中に滑走路を建設することでオスプレイとヘリコプターは使用可能であり、海兵隊の作戦や行動に支障はないはずであると考えています。埋め立てして建設するV字型1600m滑走路(オーバーランを含め1800m)の必要性も再考する必要がある。(民主党は、政権に就いた時、県外移設を唱えていたが、一度も埋め立てなし案を言わなかったと思う。)

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電力自由化と原子力発電

いっそうの電力自由化に向けての法案が3月3日に閣議決定されたことから、電力自由化についてマスコミ他さまざまな所で取り上げられている。閣議決定された法案(電力のみならずガスと熱供給の自由化についても)は、次の経済産業省のWebからダウンロードできる。

経済産業所 電気事業法等の一部を改正する等の法律案が閣議決定されました

電力自由化については、2013年11月20日に電気事業法等の一部を改正する法律が公布され、更にその後2014年6月18日に改正がなされ、今回は最終版ともなる改正の案である。基本的には、自由化により電力料金の値上がりが予想される過疎地と島嶼地域に対しても不利益が生じることないように電力システムの供給安定が確保されれば反対する理由はない。

現在の日本の電力システムは供給源の電力品質が悪くても、消費者には規格通りの電力が届くという電力システムであり、品質維持サービスの対価や商品化をすることが更に合理的な制度とするための課題であると思う。

一方、電力自由化と表裏一体として考えなくてはいけない課題が原子力問題である。そもそも、電力自由化の下で原発を保有・運転する馬鹿はいないはずである。リスクが高すぎるのである。

東京電力は、4年前の地震・津波の結果どうなったかである。次の表1が2011年3月期移行の決算において東日本大震災による特別損失として計上した金額ならびにそのなかで福島第一原発に関連して計上した特別損失である。

Tepco1f20153a

福島第一原発の被災資産の損失としている金額は累計で約1兆4千億円である。但し、2014年3月末で計上している災害損失引当金が5950億円であり、実際に支出した金額は約7800億円である。引当金で特別損失を計上しているのであり、将来更に増加する可能性はあるし、安全な廃炉を実施するための費用は莫大と思います。福島事故の結果、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」と略す。)から1兆円の増資を受けた。

なお、会計上で損失として計上していない支出がある。(正確には、同額の収入と支出を計上している。)それが、原子力災害賠償金の支出である。こちらは、表1より更に大きな金額であり、表2の通りである。(なお、現金支出で記載しており、見込み計上額は除いている。)

Tepco1f20153b

4兆7千億円が支払われている。一方、被害を受けた人達にとって十分とは言えない金額のはずである。

表2の金額は、機構から受領した金額と同一である。機構が行っているのは、資金援助であり、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法により原子力事業者から一般負担金そして東京電力からは特別負担金の支払いを受ける。2014年3月20日に平成25年度負担金額として機構が発表した金額はここにあるが、一般負担金総額1630億円と東京電力の特別負担金271億円である。

原子力発電とは、お荷物である。費用に関する見通しが分からない。通常の経営感覚で扱える対象ではないし、市場競争にはマッチしない代物である。自由化を機会に、原発保有会社を統合し、市場競争原理ではない国民の管理・監視下の会社にすべきと考える。

安全な原発から再稼働なんて言っても、その先をどうするのかの方針もなく、市場原理に任せとするのは、余りにも無責任と考える。

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2015年3月11日 (水)

競馬のあたり馬券の所得税の扱いで国税庁の敗訴確定

2013年6月15日に書いたこのブログの時点では、大阪高裁の判決だったのですが、2015年3月10日に最高裁の判決が出され、検察(国税庁の考え)の敗訴が確定した。次の判決です。

所得税法違反被告事件 最高裁判所第三小法廷判決 判決文全文

所得税がかからないと言うのではなく、所得税の計算方法についてです。即ち、はずれ馬券の購入支出を収入を得るための必要経費とするか、それとも遊興費であり個人が自分の楽しみのために支出した費用であり必要経費ではないとするかの点です。

競馬は合法的な賭博であり、遊興であります。あたり馬券の収入は一時所得に該当するとして国税庁は取り扱っていました。一時所得とは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」と所得税法上で定められており、あたり馬券の収入は一時所得であり、はずれ馬券の支出は遊興費であり、収入を得るための必要経費ではないとの国税庁の考え方です。一時所得の場合、年間50万円までは税がかからないし、50万円を越えた場合でも、超えた額の2分の1が課税所得金額です。実態は、そんな大きくあたることはないし、税の確定申告までしている人はほとんどないと思うのです。

このケースの場合は、馬券全てをNetで購入し且つ払い戻しをすべて銀行振り込みで受け取っていたのです。相当多くの馬券を継続的に買っていた訳で、特殊なケースと言えると思います。

但し、このようなケースが今後増加するかも知れないし、マイナンバー制により競馬等のあたり収入が国税庁の把握が容易になるだろうと思います。

タイトルに、国税庁の敗訴確定と書いたのですが、国税庁の勝利と考える方が正しいように思います。何故なら、このケースは確定申告義務違反による刑事裁判であったのです。刑事罰については、大阪地裁の一審で懲役2月執行猶予2年間で確定しているのです。

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2015年3月 9日 (月)

地域での取り組みに反対する訳ではないのですが

次の記事を読んで思ったことです。

朝日apital 3月9日 徘徊高齢者、社会で見守ろう 地域包括ケア@新潟:6

認知症への対応は大きな課題です。しかし、市役所が中心となり、PC、スマホ、携帯に徘徊高齢者情報を登録されている探索協力者に同時一斉メールを送る。そして協力者が当該高齢認知症の人を探す。メールだから、写真も送付可能であり、細かい情報も伝えることができるから、効果が大きいと考える。

市役所と書いたのであるが、情報伝達を始め中心となる組織や人は多くの個人情報を扱うこととなる。勿論、探索を依頼する人も開示したくない情報もあるであろうし、協力者にしても情報項目を限定する人もいるはずである。それでも、大きな組織になればなるほど、個人情報の扱いには注意を要するし、問題が発生する可能性も大きくなる。信頼を得られる組織・団体が運営する必要があるが、地方公務員が公務として実施する体制であれば、地方公務員としての機密保持義務も生じることから、問題発生の可能性は低いと考える。

ボランティア組織を否定する訳ではないが、有効な運用には地方公共団体が関与すべきと考える。

aptalの記事の最後に、施錠の徹底は根本的な解決策にはならないように書かれている。万能な解決は存在しないが、施錠は相当有効な手段であると考える。JR東海共和駅構内認知症男性事件の妻に360万円の支払いを命じる名古屋高裁の判決があった。このことに関して2014年5月10日(これ)、5月13日(これ)、5月17日(これ)と3つのブログを書いた。監督義務者が刑事罰に問われることはないであろうが、民事賠償責任は逃れることはできない。センサーを認知症高齢者に持たせることを当時書いたが、キイで内側から施錠できる錠も設置すべきと考える。キイは認知症高齢者には持たせないのであるが、24時間施錠しておかなくても、必要に応じ施錠することでも良いと考える。

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大川小学校被災校舎保存

大川小学校の被災校舎が保存されるようです。

河北新報 3月9日 <大川小>保存が解体を上回る 地区住民調査

石巻市立大川小学校では、2011年3月11日の津波で全校児童108人中74人、教員13人のうち10人が死亡又は行方不明となった。2011年6月5日にこのブログで書いたことがある。

何故そんなに多くの児童と教員が亡くなったのかであるが、2014年2月26日付け大川小学校事故検証報告書によれば、小学校がある釜谷地区の住民209人中での死者は175人であった。被災死亡率は、むしろ住民の方が多かった。

地震が発生した14時46分直後の緊急地震速報があり、宮城県の予想は津波高さ6mとされた。これが宮城県について10mに変更されたのが15時14分であり、大川小学校付近に津波が到達した予想時刻は15時24分頃で、15時32分頃にピークとなったと推定される。津波警報を聞いて、校庭に集まらずに、避難をしていれば助かった可能性が高い。しかし、釜谷地区の住民についての避難行動調査結果(避難ができた人に関する調査:大川小学校事故検証報告書の75ページ)では、行動が判明した30人のうち津波について津波を見聞きする前に避難行動に入った人が3人、津波そのものを目撃して避難行動を取った人が10人、津波を目撃した人に言われて避難行動に入った人が17人である。警報を聞いて、避難したと答えた人がいなかった。

ほとんどの人は、津波は来ないと安心しきっておられたのだと思う。標高は約5mだが、海岸からは2.4km程入った所である。集落が存在するそのような場所は、日本中どこにでもある。そのような場所で起こった津波災害であるからこそ、将来に向けての警告のために校舎保存がされることは望ましいと考える。決して釜石市の学校関係者や市役所、消防等の職員のみの為だけではない。気象庁を含め政府関係者は勿論であるが、私たちが常に注意を払っておけるためでもある。

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2015年3月 7日 (土)

少年法改正に反対する

日経Web版に「少年法の見直し、どう思う?(クイックVote)」(ここ)というページがあった。そのアンケート結果の途中経過をクリックすると、非常に多くの人が厳罰化や対象年齢を引き下げを望んでいると回答をされていた。

ある程度の人は、衝撃的な川崎中1殺人事件の直後なので、そのような回答をされるとは思っていた。日経アンケートの最初の質問が、「少年法の内容を知っていますか」となっているが、誘導尋問であり、名前を知っているだけでも、自尊心から「知っている」に答えることになると考える。

少年法について整理をすると、次のようになる。

項目 回答
少年法の目的 少年の健全な育成と非行のある少年に対しての矯正と保護処分ならびに少年の刑事事件について特別の措置を講ずること
20歳以上との刑罰差 1)少年でも18歳以上は20歳以上と同じ。最高死刑。
2)14-17歳は、最大20年懲役又は禁錮。
3)13歳以下は、刑事罰の適用なし。(刑法第41条)
最近の少年法改正 2014年4月18日公布の少年法一部改正
(参考:
日経 2014年4月11日 改正少年法が成立 有期刑上限20年、検察立ち会い拡大

18歳に選挙権を与える法改正が成立すると見込まれるが、選挙権と少年法の適用を混同してはならない。仮に少年法の適用を18歳未満とした場合、刑事罰の適用については、現在と全く変わらない。影響を受けるのは、18・19歳で、家庭裁判所を始め現行で保護を受けれられ、矯正や保護処分の機会を受けれる少年の権利が奪われることである。(13歳以下にも矯正や保護処分はあり得る。)

3月5日のブログで書いたが、少年事件とは大人社会の歪みが生み出した結果と言える面があり、大人社会にこそ問題が存在する可能性もある。大人社会を正すべきが、問題児を罰することで解決したと誤解することは、あってはならない。

少年法を1年も立たないうちに改正して、厳罰化して行くのは、きちがいと思える。様子を見るべきである。人間社会とは、そんな単純ではない。

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2015年3月 6日 (金)

少年犯罪は減少している

直前のブログで少年法の厳罰化には慎重であるべきと書いた。統計データを元に議論することが重要であり、統計データから作成したグラフを紹介する。

政府は自らが管轄する行政事項に関する統計を作成、発表しており、警察庁も同様である。警察庁統計は、このWebからダウンロード可能である。その中には、次の少年非行情勢に関する報告書も存在する。(少年は、少年法においては20歳に満たない者と定義しており、少女も含む。本ブログにおいても、同様とする。)

警察庁生活安全局少年課 少年非行情勢 平成26年1~12月)

この少年非行情勢を読めば、以下のことは、全て読み取れるが、このブログなりのグラフを作成した。

1) 最近10年間の少年犯罪(刑法犯)検挙人数

図1の通りであり、減少している。

Shounen20153a

この10年で少年犯罪(刑法犯)検挙人数は123,715人から48,361人へと半分以下の60%減少した。少年犯罪でもっとも多いのが窃盗犯であり、この分類の中で一番少ないのが風俗犯である。但し、風俗犯は唯一2005年の383人から2014年の445人へと増加している。なお、その他の刑法犯に分類されているなかで最も多いのは60%以上になる占有離脱物横領であり、拾得物横領のような犯罪である。

2) 1950年からの統計

この10年間のみならず更なる長期間を比べる必要もあり、同じように作成したグラフが次の図2である。

Shounen20153b

少しグラフの形が変わってきた。その上で、一部に言われている少年犯罪が近年増加しているとの表現は正しくないと考える。

3) 警察庁把握少年非行数

図1や図2において14歳から20歳未満と注記した。刑法に触れる行為をしても14歳未満は少年法第3条1項2号により家庭裁判所の審判となり、検挙にはならない。次に、刑法ではなく軽犯罪法、迷惑防止条例、青少年保護育成条例、銃刀法、大麻法、覚取法等に抵触するケースがある。このようなケースも分析対象とする。

さらに関連する事項として補導を受けた人員数がある。これらの4分類で10年間の人員数の推移を表したのが図3である。なお、補導については警察が関与していない場合もあり、警察庁統計からの図3の補導人員については、警察が補導した人員であり、他の機関で補導された人員は含んでいない。

Shounen20153c

刑法犯少年のみならず補導人員他を含めたとしても、非行少年は最近10年減少傾向にあると考える。全体がよければ個別も良いとは限らないが、個別をもって全体を判断することは誤りである。個別の事件は、個別の事情として深く掘り下げて対策を考えるべきである。

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2015年3月 5日 (木)

川崎中1殺人事件の主犯と推定される18歳実名報道

川崎中1殺人事件は、多摩川河川敷でナイフで殺されるという残酷・悲惨・非道な事件です。主犯と推定されるのは18歳の少年であり、悲しい事件である。感情からすれば、この犯人は極刑にすべきと思います。

この事件の18歳推定犯人の実名と顔写真を『救いがない「川崎中1殺人」の全景 鑑別所でも更生しなかった「18歳主犯」の身上報告』という記事の中で週刊新潮3月12日号が掲載した。

週刊新潮のホームページはここにあるが、次のようなことが書かれている。

* ウォッカをラッパ飲みして人を殺してぇー
* 熟練の手口だったという常習さい銭泥棒の合い言葉
* 鉄パイプのオヤジ狩り同行少年が目撃した狂気の目
* 逮捕直前インタビューに応じた共犯17歳都合の良い話
* 動機に直結上村君の青アザお礼参りを知る警察の無力
* 殴られ続ける息子に気づかない哀しき家庭環境

短時間に随分調査したと思います。さて、少年法61条には記事等の掲載の禁止を定めている条文がある。なお、週刊新潮3月12日号は「「少年法」と「実名・写真」報道に関する考察」とする記事も掲載している。そしてここに「詳細は3月5日発売の同誌を確認していただきたい。」としているその要旨が掲載されている。少年法には罰則条文が存在せず、61条違反がどのようになるのか、私もよく分からないが、社会的批難のみかも知れない。

一部の報道や人々に、少年だから罰則が弱いとか、少年法の厳罰化をすべきと言った意見があるようです。しかし、このことについては、慎重にすべきと考える。その理由を、以下に述べます。

1) 18歳1月でも死刑の例あり

光市母子殺人事件です。確定した最高裁判決はここにあります。犯人は、最初から犯行を全て認めており、警察、検察、裁判所でも自分の犯行であることを一切否定しなかった。そして、最高裁判決の宮川光治裁判官の反対意見のなかに「被告人は犯行時18歳に達した少年であるが,その年齢の少年に比して,精神的・道徳的成熟度が相当程度に低く,幼いというべき状態であったことをうかがわせる証拠が本件記録上少なからず存在する。」との文章もある。しかし、精神的成熟度は測定することの困難さと刑事罰の量刑判断への取り入れ方の困難さがある。結果、裁判官全員一致の意見で、上告棄却の判決となり、死刑が確定した。

2) 少年事件の難しさ

人はその生育環境に大きく左右される。光市母子殺人事件の犯人も12歳の時に母親が自殺し、父親からは暴力を受け続けた。少年事件(少女も含む)は、少年事件に多く係わった専門家が調査して、問題点を洗い出す必要がある。厳罰化で解決する問題ではないし、少年事件とは大人社会の歪みが生み出した結果と言える面があり、大人社会にこそ問題が存在する可能性もある。正しい調査を望むし、その結果としての社会への警告が正確に伝わるようにして欲しいと思う。

3) 現行少年法

次が少年法第51条です。

(死刑と無期刑の緩和)
第51条  罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

18歳0月であっても、死刑の適用はあり得る。死刑反対論者の私としては、死刑判決は望まないが、18歳以上に刑事罰について成人と同じ扱いとする現行法で良いと考える。成人以上の厳罰を与えることには、反対である。少年法厳罰化を望む人達は、18歳未満についても死刑を適用せよと言うのだろうか?厳罰化することと解決・改善をすることは、必ずしも一致しないし、特に少年事件とはそのような事件である。

最後に、
情報機器の活用を検討すべきと考える。

スマホやGPSの時代である。被害を未然に防ぐことは重要であり、少年が希望する場合には、ボタンで危険信号を発する機器を無償供与するのである。例えば、この事件の場合、被害者は何度も過去に同じ相手から、呼び出しを受け、犯罪行為を受けているのであり、過去に警察に相談したこともある。警察が少年に対し、警報発信装置を与えていれば、犯人に気づかれずに警察に危険信号と位置情報を発し、警察は対応が可能である。

警察や学校、児童相談所等へも同時に信号を発するようにするかどうかは、被害可能性社の判断である。但し、本人が希望しないにも拘わらず保有させることは、少年といえどもプライバシー侵害であり、してはならないと考える。希望する場合である。

もう一つは、自分の位置を発信する装置を加害可能性者に装着させることである。大前提として保護観察処分等になっていることが必要であるが、検討をしてみても良い課題と思える。

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沈没した戦艦武蔵を発見

米ポール・アレン氏が1944年10月24日に米軍の航空機(艦載機)攻撃で沈没し、海底に沈んでいる戦艦武蔵を発見したとのニュースがあった。

Huffington Post 3月4日 「戦艦武蔵を撮影」ポール・アレン氏が動画公開 46cm主砲の姿も

Huffington Postには、動画もあり、幾つかの写真掲載されている。一方、次はポール・アレン氏のWebで、動画(英語で少し動画内容も異なる。)がある。又、イメージギャラリーやハイレゾ写真へのリンクもある。

Paulallen.com FINDING THE MUSASHI (ポール・アレン氏のホームはここ

戦艦武蔵は、1944年10月22日、ブルネイをフィリピンのレイテに向け、同型艦の戦艦大和を含む栗田艦隊に組み込まれて出航した。しかし、レイテには到着することなく、翌々日フィリピンのシブンヤン海で米航空機による魚雷と爆弾を受けて沈没した。Wikiには、出港時の乗員は2,399名であったが、生存者は1,376名とある。しかし、救助された乗員で最終的に日本に帰還できたのは、たったの56名だったとのこと。

大東亜戦争の悲劇の象徴みたいです。三菱長崎で1938年3月に大和2番艦として起工され、1942年8月に呉海軍工廠で完成した。膨大な政府予算をつぎ込んで建造されたのである。なぜ大和と武蔵を作ったのかであるが、米国との戦争準備の為である。米国と戦争をしても勝てないまでも、簡単に負けはしないようにしたのである。即ち、46cm砲である。大きな大砲の砲が、遠くに、しかも爆発力の大きな砲弾を飛ばせる。大和・武蔵の船幅は38.9mである。戦艦は横方向に向けて大砲を撃つ。その反動力を基準として戦艦の船幅が決まってくる。米国の戦艦は大西洋と太平洋の双方で運用できる必要があり、そのためにはパナマ運河通過が条件である。実は、パナマ運河の幅は現在でも33.5mであり、船幅32.5mがギリギリである。米国の戦艦より大砲のリーチが長く、訓練で命中精度を高めていれば、米国との海戦に勝てると期待したのである。

戦艦大和・武蔵というのは、このような論理に基づいて建造されたのである。しかし、その論理はもろくも崩れたし、現実を正確に分析していれば、航空機の発達や国力の差を始め、論理的に成立しても残念ながら有効と判断できなかったはずである。本当は、大艦巨砲に税金を投入するのではなく、国民を豊かにする経済発展を目指すべきであった。日清戦争以来、日本はひたすらに戦争へと向かっていった。その課程で、戦艦大和・武蔵もあったのだと私は整理をするのが正しいように考えている。

それを考えると、集団的自衛権なんて、馬鹿言っちゃいけないよと思う。中途半端な考えは、暴走してコントロールが効かなくなることを肝に銘じる必要がある。日清戦争は、当初朝鮮半島をめぐる日清の駆け引きであった。半島への出兵を決めた公式目的は「在留邦人保護」であったし、伊藤首相は清との衝突回避を当初考えていた。集団的自衛権の閣議決定を受けての法改正案を近いうちに政府は出すであろうが、内容的には、集団的自衛権ではなく、個別自衛権の範囲と考えるべき内容が大部分と理解する。そうであれば、つまらない集団的なんて言葉を抹消すべきである。PKOに自衛隊が参加しても、武器を使用できないからと言うのは、論理のすり替えである。共に行動する外国のPKO部隊は、自国の範疇と考えれば良いのである。

戦艦武蔵発見は、戦争と防衛について考える良い機会とも思う。最後に、日清戦争について書かれた大谷正氏の中公新書と吉村昭氏の戦艦武蔵を紹介しておきます。知らなかった面を多く知った本でした。

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2015年3月 4日 (水)

医療費と医療保険

政府は公的医療保険制度改革の関連法案を閣議決定したとのニュースがあった。

日経 3月3日 大企業健保の負担増へ 政府、医療改革法案を閣議決定

2月27日に医療費の総額推移としてブログを書きましたが、医療保険について考えてみたいと思います。

1) 医療費と医療保険

医療保険区分別医療費の支払金額について表1を作成した。データは、厚生労働省の国民医療費の統計であり、最新データが平成24年度なので、平成24年度分を表にしている。なお、表の下の円グラフは表のグラフ化である。

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2) 医療保険別の主要項目収支

表1は、医療費の保険者区分での表であるが、それぞれの医療保険制度が保険料で賄われているのではなく、保険制度間の交付金や支援金があり、国庫負担と都道府県・市町村負担があり、複雑である。その概要を示すために作成したのが表2である。

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医療保険の支払金額30兆円強の40%余り(12.6兆円)は、後期高齢者制度による保険金であり、この12.6兆円のうち5.3兆円が他の医療保険制度が負担している。国民健康保険は、後期高齢者負担金を拠出すると共に前期高齢者制度と退職医療制度の負担金を健保組合他から受け入れている。

保険料の支払(天引き)時に負担金額は分かるが、それから先は保険事業者間でのやりとりであり、解りつらいのである。

3) 一人当たり平均保険給付と保険料

医療保険制度毎の保険給付額と保険料をそれぞれの制度が対象となっている保険対象者(各医療保険でカバーされている人数)で割算して平均保険給付額と保険料を計算したのが次の表3である。

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このブログの冒頭に掲げた日経記事で大企業の健康保険組合と言っているのは、表では2行目の組合健保と称している医療保険である。収入に対する保険料率で比較をしたのが次の表4であり、組合健保は保険料率では最も低いのである。(表4における保険料率は保険料、平均年収と表3の被保険者数で計算し、雇用主負担を除外するために1/2としている。保険料率の統計結果とは第19回医療経済実態調査の数字である。)

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組合健保は協会けんぽより保険料は常に安いのである。もし、高くなったら、組合健保は存続の意味がなく解散して協会けんぽを選択すればよいのであり、制度的に可能である。それもあって国民健保より少額ではあるが、協会けんぽには国庫による税金も入っているのである。

4) 日本の医療保険

1)から3)で、表であらわしたのが日本の医療保険であり、基本的には収入比例で保険料を支払い、どのような疾病になっても保険で医療を受けられる制度である。

医療保険で税金が投入されているのは表2の国庫負担と地方自治体負担の合計11.8兆円であり、保険給付総額30.9兆円の38%である。

2月24日に日経ビジネスOnlineにブラジルで見た「医療難民」のリアルとの記事があった。米国のオバマケアの新しい課題については、堤未果さんの次の「沈みゆく大国あめりか」に書かれている。

日本の医療保険制度に競争原理や市場主義原理はない。市場主義で医療保険をつくったなら、自動車保険のようになるだろう。例えば、喫煙していれば、保険料は高くなる。高齢になるほど保険料はアップする。疾病になると、「あなたの保険では、選択可能な治療方法は1、2,3の選択で4と5は保険金は全額カバーされません」のような保険会社の回答になると予想されます。医療保険については、社会主義がよいように思うです。

5) 年齢による医療費

表4において、後期高齢者医療制度では払った保険料の12.7倍もの保険金が受け取れることになっている。(と言うか、結果であり、平均で12.7倍です。)考え方次第で、若い時に払った保険料が戻ってきている結果かも知れない。年齢階級別の医療費(保険金のみではなく自己負担も含めた金額)が、厚生労働省の国民医療費の統計にあり、それをグラフにしたのが、次です。

H24iryouhi20153e

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