国民健康保険の改革
3月16日の日経社説は次であった。
社説の主張を間違いとは言わないが、根本的な部分を置き去りにしているように思う。社会保障審議会医療保険部会での医療保険制度改革案(持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案)の関連である。ニュースは、次であった。
日経 2月20日 国保財政安定へ関連法案提示 厚労省、都道府県へ移管が柱
日経 3月3日 大企業健保の負担増へ 医療改革法案を閣議決定
国民健康保険のみならず組合健保、協会けんぽ、船員保険、後期高齢者制度も含んでいる改革案であり、記事によっては、組合健保の保険料のことが大きく取り上げられていたりする。3年後の2018年3月からの施行である。審議会の性格からして、当面の改革が重要であり、将来の課題や問題点については議論の対象として取り上げることすら難しい面はあるものの、この改革は根本的な部分を置き去りにしてパッチワークで繕いでいるのが実態と評価する。3月4日にこの医療費と医療保険を書いたこともあり、少しは課題について書いてみることとする。
1) 保険料の市町村差
受けることができる医療と治療を受けた時に支払うべき金額は日本中どこでも同じである。しかし、保険料として支払う時は、地域差がある。今回は、都道府県単位の広域で保険事業を運用して、せめて都道府県内部での格差は縮小しようとの方向である。その先に目指すべき方向は、日本中同じ条件の国民健康保険を実現することである。そのような本来の姿や方向も法律に書いておいてよいと考える。保険料の市町村格差を示す表として次表を作成した。
標準化保険料算定額とは所得を国保対象の人の全国平均として各市町村国保の料率で保険料を算定した金額と考えて良い。実際には、国保対象の人は都道府県により所得分布に相当大きな差がある。都道府県では、東京都は一人あたり92万円をであるが、沖縄県では35万円である。市町村毎に見ると最高は230万円を越えている所がある一方で14万円も存在する。
国民からすれば、都道府県も市町村も関係ない訳である。地方創世なんてのはバカしか考えないスローガンであり、無駄が増える可能性の方が高いと思う。
2) 国民健保における改正法での都道府県と市町村の役割
このWeb Pageから2月20日の医療保険部会の資料をダウンロードできる。法案そのものはないのであるが、次の文章を読んでも、よく理解ができない。
2 都道府県は、安定的な財政運営、市町村における国民健康保険事業の効率的な実施の確保等都道府県及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の健全な運営について中心的な役割を果たすものとすること。
3 市町村は、被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項、国民健康保険の保険料の徴収、保健事業の実施その他の国民健康保険事業を適切に実施するものとすること。
第2項に都道府県と書かれているが、抽象的表現である。中心的役割を果たすことが義務がというなら、単に議長を務めるだけでも義務を果たしたことになると思う。まさかザル法を作ると思わないのだが、保険部会の委員の人達は何を思っていたのだろうと不思議さも感じる。
もし、厚生労働省の役人に操られているだけなら、そんな委員会は不要である。むしろ、このブログで書いた国税庁の対応の方が、よほど国民の方を向いて仕事をしている。
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