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2015年4月29日 (水)

フィッチの日本国債「シングルA」へと1段格下げ 

フィッチが日本国債を「シングルA」へと1段格下げしたニュースがあった。

日経 4月27日 フィッチ、日本国債を1段階格下げ 「シングルA」に

フィッチの発表そのものは、ここにあります。

日経の記事は、金利への影響はないと述べた人のコメントを出している。確かに、国債金利への影響は期近ではなしと考えて良いと思う。しかし、1年以上先あるいは更にその先を考えた場合、可能性はあり、深刻であると思う。

その理由は、Fitchの文章では” the Japanese government did not include sufficient structural fiscal measures in its budget for the fiscal year April 2015-March 2016 (FY15) to replace a deferred consumption tax increase”であり、政府財政の健全化見通しがないならば、誰がそんなバカな国債を買うかである。債務者である発行主体が無能力・無財産であるなら与信はできない。

短期的には、日銀が購入しているから、低金利で発行できている。しかし、日銀が買わなくなると金利上昇は間違いないと思う。安倍政権は黒田総裁をして国債を買い続けさせると予想するかも知れない。しかし、バブルは何時の日か崩壊するのである。

日本政府財政破綻と日本経済大不況の日が近づいているとしたならば、どうすべきか?解決は一つだけである。政府財政を破綻させないように、その前に大増税を実施するのである。実は、現政権は、法人減税を更に実施し、年金支給額切り下げ、医療費自己負担増額、高額医療費支給減額、高齢者医療費自己負担額増額、医療保険支払い制限、介護保険料増額等へ梶を切りつつある。増税しても、これらは必要であるかも知れない。

増税と負担増は、できれば避けたい。しかし、破綻した場合は、実はもっと悲劇的な状態になる。

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東洋ゴムの免震ゴム問題に思う

4回たて続けに書いてしまうようで、すこしタイトルを変えました。

4月25日にネパールで大地震があり、深刻な被害が生じている。東洋ゴムの免震ゴム問題は、単に企業犯罪として片付けてはならない将来の為の課題・教訓として考えねばならない点があると考える。

1) 信頼しうる検査機関

東洋ゴムの免震ゴムは国土交通省から建築材料として認定を受ける申請書に社内検査のデータを書き込むことで認定が受けられることから発生したと考える。全製品の出荷前に実施する検査項目には含まれないような検査であったのだと思う。だからこそ、東洋ゴムは2015年2月、3月までは、社外への公表をせずに隠し通そうとしたと考える。

重要な検査は、4月23日のブログに書いたような国営試験所あるいは信頼できる検査機関による検査を受けることを建築基準法で義務付けるべきと思う。建築物の場合は、完成後は破壊検査は不可能であり、建築中でも破壊検査は制限が大きいと考えるからである。建築関係者の方々には、検討いただけないかと思う。なお、私に誤解がある場合は、申し訳ないですが、コメント欄への書き込みでご指摘をお願いします。

2) 証明書

建築基準法に建築確認申請、中間検査や完了検査、検査済証の交付がある。しかし、建築基準法は、第1条に最低の基準を定めるとあり、更に高い基準の建築物を建設することは、より望ましいことであると考える。

耐震性のみならず断熱性能、遮音性能も過度に高性能である必要はないと考えるが、考慮すべき事項である。また、例え設計が高性能な水準を目指していても、工事に手抜きがあったり不良品・欠陥品が使われていれば問題である。しかし、一般住宅(高層住宅を含め)の場合、自らチェックすることは、知識と暇がない限り不可能である。

そこで、建築物性能証明書のような制度がないかと調べてみると、ここここのような会社・法人は存在する。現状についてはどう評価できるのか、分からないが、制度が発展していけばよいと思う。

昨年8月に広島で住宅を襲った豪雨による土砂崩れがあった。建築物性能証明書は単に対象とする建築物のみならず、その建物に関する豪雨、土砂崩れ等の危険性、津波の恐れ等の評価についても記載に含めて欲しいと思う。

3) 地震保険・損害保険

リスクと保険料が完全に見合っている保険市場であれば、保険市場が耐震性や安全性をリードすると考える。例えば、阪神淡路大震災の時には、倒壊した建物も多かったが、無事であった建物はそれ以上に多かった。何が、分かれ目であったのか、保険会社・技術者・研究者は調査・分析・研究している。その結果に基づき保険会社は保険料を決めていく。

しかし、どうもそうではない気がする。保険会社のWebからだと保険料はもっと単純であると思える。耐震性が低くても地震保険を提供せざるを得ない面もある。現状が妥当なのかも知れない。一方、東洋ゴムの免震ゴムを採用している建物の地震保険は、どうなるのだろうか?

建築基準法違反の建築であるが、地震保険は引き続きそのまま存続するとするのだろうか?4月27日のブログで触れた仙台市の3棟の建物が東日本大震災で地震保険の支払い対象となっていないなら、他の多くの建物で地震保険事故を認定したであろうから、保険としては奇妙な状態になるように思う。

本当は、保険の仕組みと防災は車の両輪の関係のようになって発展し、保険が耐震性や安全性の向上に貢献するのがよいと考えるのである。

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2015年4月27日 (月)

東洋ゴム免震ゴム問題(その3)

東洋ゴムの免震ゴムを採用している建物に居住あるいは事務所があり働いておられる方々は不安を感じておられると思います。何しろ、建物と地面との間を支えているのが東洋ゴムの免震ゴムですから。

建築基準法適合品に早期に取り替えるとしても、建物全体をジャッキアップするような大工事が必要であると思うのです。費用の全額が東洋ゴムであったとしても、東洋ゴムが何時個別の建物の免震ゴム取替工事を実施するのかが明らかになるのは、相当の時間を要する気がする。

一方、欠陥製品である免震ゴムを採用している建物でも、ある程度の地震に対しては機能するように思うのです。2015年3月13日の発表では、東洋ゴムは「東日本大震災時に宮城県仙台市宮城野区・青葉区(震度 6強~ 6弱の地域)に建設されていた3棟については、震災後に現地調査を実施した管理会社等から構造体損傷は生じなっとの報告を受けており ます。」と発表している。

東洋ゴムは、同社の免震ゴムが最低でもどれだけの強度を有していると、そう考えられる根拠と共に発表し、採用している建物がどの程度の地震震度・加速度までは問題がないか、想定震度毎に建物がどのような損傷を受けるかの予想を発表すべきであると考える。さもないと、欠陥建物にいる人にとっては恐ろしくてならないと思う。万一、東洋ゴムの対応が不十分であれば、国交省が一旦費用を立て替えて、技術者・専門家に検討を依頼し、結果を報告すべきと考える。勿論、税金で負担すきではなく、裁判をしてでも、原因者である東洋ゴムに費用を負担させる必要がある。

また、東洋ゴムは仙台市宮城野区・青葉区の3棟の建物の固有名詞と損傷の報告書を公表すべきと考える。どうしても嫌だというなら、固有名詞については省いても良い。しかし、建物の位置と図面は公表すべきで、さもないと分析・評価もできないと考える。耐震、免震等は実際の地震を経験した建物等の分析結果で評価可能であり、将来の建物やインフラストラクチャーの設計・建設に役立てることができると思う。

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2015年4月24日 (金)

東洋ゴム免震ゴム問題(続)

一つ前のブログで東洋ゴムの免震ゴム問題を書いたのですが、にわかには信じられないような内容の報道があり、混乱します。

1) 狂った会社の東洋ゴム

この産経の4月24日の報道昨秋に「出荷停止」決定も直後に撤回 中間調査報告、25年夏に不正の兆候認識かには、何年も前から不正を会社は把握していたことが書いてある。

東洋ゴムの「社外調査チームによる中間調査報告書の概要」(以下報告書と略す。)はここにあり、読んでみたら、報道以上の狂った会社の実態が書かれていた。

A) 不正の内容

問題の製品(SHRB-E4:報告書ではG0.39と書かれている)を開発したのは、東洋ゴム化工品株式会社(報告書ではCI)のA氏であり、A氏が国土交通大臣への建築材料としての認定を受けるための申請書を作成した。その際に虚偽のテストデータを書き込むという恐ろしいことをした。振動試験は実施していないにも拘わらず、数字を記入する。姉歯事件以上の恐ろしいことが行われたとも言える。建築材料の認定を受けてしまえば、1商品に止まらず、全てに及ぶのであるから。

そして、A氏は大臣認定の性能試験合格品であるとして社内の生産管理部や品心保証部の人達を欺して、製造・出荷を行った。

誤魔化した部分は、報告書の表3が水平等価剛性と等価粘性減衰定数の比較になっていることから、水平剛性と粘性減衰定数であると思うが、免震ゴムの性能において最も重要な点である。まさに犯罪である。

B) 不正の発覚、頰被りの決定から公表へ

報告書から不正の発覚時期を読み解くと、A氏が異動となりC氏が引き継いだのが、2013年1月である。C氏は不正に気づき、東洋ゴム化工品の開発技術部長E氏に2013年夏頃報告をする。その後同社の代表取締役D氏に報告が上がるのは2014年2月である。

報告書からはC氏他が問題の重要性を認識していたのは確かと思う。一方で、頰被りを決め込む人が大半であったようで、発覚から1年経過したはずの2014年9月14日の会議で問題なしとして出荷の継続を決定する。この会議には当時の東洋ゴム社長(現会長)も出席していた。

事態は、東洋ゴム法務部の人達も把握。弁護士に相談。2015年2月2日に弁護士から今後の立会検査・出荷はすべきではないとの助言を受ける。

2015年2月6日、東洋ゴム社長も出荷停止に合意。2月9日国交省に本件を報告する。

2015年3月13日、ついにこの発表を東洋ゴムは行った。

2) 立会検査とは何?

一つ前のブログで横浜市は、部材メーカー・工事監理者・施工会社立会いのもとで製品検査を行い、合格したものだけを工事現場へ納品する体制であると報告していることを書いた。しかし、どうやら立会検査では実施対象外の検査項目があるように思える。東洋ゴムは、この盲点を見事に突いたのである。

でも考えれば、簡単な盲点である。自分が白と言ってしまえば、検査がない以上は、誰も黒とか赤とか言えないのである。黒であっても、役所に白と言って認定を受け、その後は白であると言い続け、検査は自分しか実施しないから、していなくても問題はなく、白と言い続ける。

免震装置など、信用しない方が良いのかも知れない。

3) 3.11大地震

報告書によれば、2004年7月から2015年2月までの間に、合計55 件の物件に対して問題の免震装置が出荷されている。2011年3月11日の東日本大地震で揺れがあった建物にも東洋ゴムの免震装置を採用してる物件があったようである。問題発生の報告はない。

設計強度以下の強度しかなくても、荷重が弱ければ問題は生じない。免震構造なんて、建物が加速度計を設置して、地震の揺れを計測できるようになっていないと免震になったのかどうかすら分からないし、どの程度免震されたかなんて測定できない。

免震装置は不正の温床となりうる。結果、東洋ゴムに対しては、不正が内部で判明していても、頰被りを決め込む力が働いた。

4) 企業犯罪

不正の実行者A氏も、良心が痛んだとしても、完全犯罪に近い以上は、会社内部のプレッシャーには打ち勝てなかった。問題をA氏個人の犯罪としてしまっては、トカゲのしっぽ切りで終わってしまう。企業犯罪を分析しないと真相に突き当たれない。

有効な対策を考えねばならないと思う。

かつて日本には多度津工学試験所の15m x 15m大型高性能振動台が存在しました。このような振動台で、試験をして、判定をするようにでもしないと不正は防ぎようがないようにも思う。なお、多度津の振動台は、小泉政権当時の無駄の廃止とやらで2005年9月に撤去されてしまって今はない。

横道にそれるが、再度、大型高性能振動台を建設すべきではないだろうか。原子力発電所再稼働を進めるなら、政府は地震対策を実施するべきである。地震対策とは、実際に揺らしてみて、安全であるかを確認することで可能なはずである。セウォル号転覆角度のように計算のみでは判断がつかない。MRJ飛行機も飛行させて認定が受けられるのである。

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2015年4月23日 (木)

東洋ゴム免震ゴム問題

東洋ゴムの基準に適合しない免震装置が使われた建物が多くあることが問題となっている。次の日経ニュースは、全部で145棟と報道している。

日経 4月21日 東洋ゴム、免震不適合新たに90棟 計145棟に 検査担当4人が改ざん関与の疑い

このページに東洋ゴムHRB-35シリーズの建築免震ゴムの商品紹介があり、外径が600mm~1500mmで高さが300mm~450mm程度の円柱形の製品で建物の下部にこの免震ゴム(20製品以上が普通と思う)が建物を支え地震の揺れが多少は緩和されることを期待するものである。一つの製品の支持荷重が1トンから20トン程度で、例えばこの長野市の報告では、市庁舎とホールが同一の建物となっている大建築と思われるが90基の免震装置が使用されているる。東洋ゴムは154 棟(全3,673 基)と言っているので、1つの建物で平均23・4製品が使用されているようである。

免震装置とは、ここに経済産業省産業技術環境局の「建築免震用積層ゴム支承のJIS を制定」という発表があり、その5ページに免震効果の例が記載されている。霞ヶ関の免震構造の建物(中央合同庁舎3号館)、耐震構造(中央合同庁舎6号館)と制震構造(中央合同庁舎2号館)を比較して、2011年3月11日の地震の際の揺れ加速度が、3つの建物において階数は多少異なるが、免震構造12階94Gal、耐震構造20階208Gal、制震構造21階121Galであり、免震構造の場合に揺れの低減があったことが書かれている。免震構造とは、固有振動周期を地震波より長くして特に上の階の揺れ幅を小さくしようとする考え方である。免震だから揺れない訳ではないし、設計が適切でないと効果が生まれないし、危険な場合もあり得ると考える。

さて、問題の東洋ゴムの免震装置であるが、ここに東洋ゴムの発表 2015年4月21日がある。原因として「免震ゴム製品の性能検査時に、測定した実測データに対し、技術的根拠のない補正や恣意的なデータ操作を行ない、所要の性能を有する製品として販売していた事実が認められました。」と書かれている。

ここに横浜市の市庁舎耐震補強工事に関する書類があるが、そこには「免震装置は、製造工場において、部材メーカー・工事監理者・施工会社立会いのもとで製品検査を行い、合格したものだけを工事現場へ納品します。」と書かれている。これは、横浜市が特に採用した措置であるのか、不明であるが、建物を支える基礎であり、全量検査して不合格品は直ちに破砕するのが常識と思える。何故なら、検査には特別の検査装置が必要であり、出荷してしまえば、検査ができない。しかも、外観や重量、寸法からは欠陥品かどうか判別がつかないのである。実測データに対し、技術的根拠のない補正や恣意的なデータ操作を行なうとは、不合格品を誤魔化して合格品にしてしまうことである。これをやられたら、どうしようもない。

国営免震装置試験所という機関を国土交通省が設置し、ここが全量検査をして、合格品しか使えない制度にでもしなければならないような気もする。その分、免震構造の建物は価格が高くなる。しかし、誰も困らない。何故なら、免震にせずとも、耐震、制震で問題はないからである。逆に危険な免震建物が建てられるより良いように思う。

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2015年4月18日 (土)

韓国のセウォル号沈没の原因

304人という多くの人が死亡・行方不明となった韓国のセウォル号が沈没して1年を経過したが、未だ、その事故原因の究明は不十分である。

日経 4月16日 韓国大統領、犠牲者を追悼 旅客船沈没事故から1年

以下が私なりの原因究明に関する推測である。

1) 船の浮力と重心の位置関係

船が横倒しとなって沈没した。船とは、どの様な時に横転するのか、あるいは何故浮かぶことができるのかを先ずは考える。

Sewol20154a

青の四角と赤の四角が船体で赤が傾いた状態である。傾いていない時は、船体の重力中心(重心)と浮力中心(浮心)は双方とも船体中央部で垂直関係にある。船体が傾くと(上の絵は右に傾いた時)傾いた方が沈み、逆が浮くこととなる。(絵では右が沈み、左が浮いている。)沈みが大きい方が浮力は大い。従い浮心位置は沈みの大きい方へ移動する。一方、重心の方も傾いた方へ移動する。重力は地球中心に向かっており、重心から垂直方向下向きである。一方、浮力は海水面に対して上向きの垂直方向である。浮心の水平移動距離が重心の水平移動距離より大きければ、復元力が働くこととなる。これが、船が海面上に安定して浮かんでいることができる重力と浮力の関係である。もっとも、傾きがない位置は復元力ゼロであり、傾くことにより復元力が出てくることから、傾きのない位置をゼロとするバネ状態であるとも言える。このバネが横揺れ(ローリング)と関係している。

2) セウォル号の復元力の推定

セウォル号は、全長146.6m、全幅22.2m、喫水6.26m、全高14.0mであると報じられていた。本来は、船形を表した図面がないと計算できないのであるが、全長100.00m、全幅22.2m、全高14.0mの直方体が喫水5.00mで浮かんでいると仮定する。そして、重心位置が船底中央より9.5mの場合、10mの場合と10.5mの場合の3通りについて傾斜角が変わっていった場合に重心と浮中の水平距離がどう変化するかのグラフを作成した。

Sewol20154b

船形を直方体に置き換えて計算した結果であり、想定の域を出ないが、それほど大きな差はないと考える。

重心位置が10mの場合は52度以上傾くと復元力がマイナスとなり元の状態に戻らない。重心位置9.5mの場合は、53度まで耐えられる。一方、10.5mと高かった場合は48度が限界である。最大復元傾斜は重心位置が0.5m動くと最大許容角度が3-5度程度変化する。

しかし、更に重要なのは復元力に相当する重心と浮心の水平距離である。重心位置が10mの場合は35度傾斜で水平距離0.88mである。重心位置が0.5m低い9.5mの場合は、36度で1.17mと計算される。しかし、0.5m高い10.5mに重心位置があった場合は、33度で0.60mとなる。10.5mの重心位置では、9.5mの重心位置の場合の復元力の51%であり、約半分になってしまう。

3) セウォル号の沈没原因

セウォル号に関する報道には、過積載であり、その為バラスト水を十分に積載できていなかったとする内容がある。セウォル号の場合は、過積載もバラスト水不足も重心位置を上昇させる。また、沈没寸前には相当急な急旋回をしている。10ノットの速度で19秒間45度旋回したとの話がある。もし、このような旋回をしたとなると、働く横Gは00.2Gである。転覆させるモーメントは、重心位置と浮心位置の垂直方向の距離に対する横Gであり、これに対する抵抗する力は傾斜した時の復元力モーメントである。

仮にセウォル号の復元力曲線が、上の想定曲線通りであったとすると、重心位置が船底から10.5mの場合の復元力モーメントは最大0.6Gmである。一方、転覆させるモーメントは浮心位置が船底から8mであったとして8m x 0.02G = 0.16Gmである。

復元力モーメントが0.6Gmあれば、0.16Gmより大きいので問題がないように思ってしまう。しかし、風による転覆モーメントが加わった時や波の影響によりローリングをしていた場合には、転覆の危険性は高くなる。更には、セウォル号のようなフェリーの場合には、積み込んでいるトラックの固縛がはずれ傾斜した方に貨物が偏ってしまう可能性もある。セウォル号の場合、中央にあった100トンの貨物が横に10m移動したとすると0.1GMの転覆モーメントが生じると予想する。上の想定曲線のように、重心位置が船底から10m程度であれば、0.9GMの最大復元力も期待できるので、大丈夫と思う。しかし、重心位置が船底から10.5m以上あると、危険性は非常に大きくなる。

4) 原因究明の必要性

しかし、3)では原因究明をしたことにはならない。何故なら、セウォル号の船長も船会社も、セウォル号はどのような状態になった時に転倒するかをよく知っていたはずであるからである。沈没寸前の急旋回にしても、何かを回避しようとしてしたのか、そうであれば、それは何であったのかを究明する必要がある。

過積載にしても、バラスト水不十分にしても、その原因は何であるのかである。船長は、過積載を拒否できる。この関連で思うのは、Korean Airナッツリターン事件である。もしかして、韓国には悪徳オーナーの傲慢独裁犯罪が多く、その為に安全無視が多いのかも知れないと思ってしまう。もし、そうであれば、韓国が発展するためには、悪徳オーナーの処罰・撲滅が必要である。

船は、重心位置を比較的容易に計測できる。判明している重量物(バラスト水でもよい)を右から左に移して船の傾斜角の変化を計ることにより重心位置が計測できる。船長は、沈没に対して大きな責任があるが、船長も横転すると思っていなかったはずである。科学的に事実解明をすることが必要であるが、一方で死刑を求める声がある場合に、どこまで解明が進むのかと思う。

救助活動も十分であったのか、船内放送も含め、検証すべき事項は多い。しかし、進んでいないのは、何故なのだろうと思う。

14日の広島空港でのアシアナ航空機着陸失敗については、ボイスレコーダーもフライトレコーダーも回収されており正しい原因究明が実施されるはずである。今後アシアナ航空は、原因究明を生かしてより安全な航空輸送を確立していくことを期待する。

(お詫び)

本記事の「3) セウォル号の沈没原因」の文章の中で0.02Gとすべき数字が0.2Gとなっており、「3) セウォル号の沈没原因」については、一部文章を訂正いたしました。(2015年5月3日)

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2015年4月16日 (木)

関西電力高浜原子力発電所3、4号機運転差し止め仮処分

福井地方裁判所は、関西電力高浜原子力発電所3、4号機運転差し止め仮処分の申立を認めて運転してはならないと決定した。

日経 4月14日 高浜原発の再稼働認めず 福井地裁、新基準「合理性欠く」

福井地方裁判所決定の全文はここにある。

また、この決定に関し日経は4月5日にこの社説を掲載している。

多くの人が原発に関して考えるようになればと思う。福島事故は、安全性が高いとされていた日本の原発についてのその根拠は脆弱であることを示した。原発による発電がなくても経済も生活も存続できることも分かった。その上で、どうすべきなのかである。

高浜原発についてと言うより原発政策についてであるが、福井地裁決定文の8ページの「使用済み核燃料の処分方法」として書かれている次の文章がある。

我が国においては,使用済み核燃料は,ウランとプルトニウムを分離・抽出して発電のために再利用すること(いわゆる核燃料サイクル政策)が基本方針とされているが,このサイクルは現在機能していない(現時点に おいて破綻しているかは争いがある。)。

原発については、運転中(及び休止中)の放射性物質の飛散リスク以外にも検討する必要があるリスクがある。例えば、廃炉にしてた廃棄物をどこに捨てるのかの処分問題もそうである。核燃料サイクルも極めて複雑である。米国はイランと核協定締結に向けて最終交渉中であるが、このReuters記事 Apr 2, 2015 Full U.S. text on preliminary nuclear accord with Iranの中に、次の事項が記載されている。

• Iran has committed indefinitely to not conduct reprocessing or reprocessing research and development on spent nuclear fuel.

使用済核燃料の再処理および再処理に関する研究をイランは一切実施せずと約束を米国は取り付けているのです。何故か?理由は簡単です。使用済核燃料の再処理とは、核兵器と結びつくからです。日本が使用済核燃料再処理を目指すのは、エネルギー資源の有効活用や処分場の問題があると同時に、実はこの再処理の権利を保有していたいとしている人達もいると理解します。まさか、日本で核兵器製造を目指しているのではないと思いますが。

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2015年4月15日 (水)

医療に関するマスコミ報道

医療関係のことを続けて書きます。

東京女子医大と群馬大の付属病院の特定機能病院の承認が取り消される見通しとなったとの報道がある。

朝日 4月15日 東京女子医大と群馬大、特定機能病院取り消しへ 厚労省

安全管理体制が不十分であったとの判断のようです。誤解をしてはいけないのは、鎮静剤のプロポフォールの使用は正しくなかったと理解することです。薬の添付文書を読むと、副作用や危険性のことが、メーカのプロテクションのためでもあるのかも知れないですが、どの薬にも沢山書かれています。薬とは、効果と副作用が同時に存在し、その出方は個人差が大きいのです。幼児に対してプロポフォールに代わる鎮静剤としては何が有効で安全なのかを考えなくてはなりません。実は、幼児に対しては安全な鎮静剤など存在しないとも聞きます。

腹腔鏡については直前のこのブログで書いたとおりです。腹腔鏡手術は危険だと考えるべきではないのです。

もう一つ、神戸国際フロンティアメディカルセンターにおける生体肝移植手術による8例中4人の手術後1月以内の死亡という報道があります。

朝日 4月15日 生体肝移植で4人死亡、病院「医療ミスではない」 神戸

次の読売新聞の報道によると、日本人2人、インドネシア人2人で、4人のうち2人は15歳未満だったとのことです。

読売 4月14日 生体肝移植、患者7人中4人死亡…神戸の新病院

読売の記事には、4人は胆道閉鎖症であったとも書かれています。ここに日本小児外科学会の胆道閉鎖症に関する説明があります。その中に「手術後も黄疸がなくならない場合や黄疸がなくなっても肝臓が徐々に硬くなるような場合には,やがて肝硬変となり,さらに 肝不全 に進みます.このような場合は腹水が溜ったり,栄養状態が悪くなって成長できなくなったりしますので,残念ながら現段階では肝臓移植以外には治療の方法がありません」との説明もあります。果たして、神戸国際フロンティアメディカルセンターの4人の胆道閉鎖症が、どの程度の病状であったか、報道はないのですが、重大な症状であり、肝移植以外に選択の余地もなく、リスクも承知の上での手術であったかも知れないのです。

マスコミは時として医療パッシングに走ります。本当に真実を突いて批判しているなら良いのですが、そうではなく、スクープ合戦の結果のマスゴミ報道が多い気がしてならないのです。最先端医療とはリスクとのおつきあいである面があります。マスコミ報道が正確さにおいて十分ではない場合、医療者・病院はリスクを取らずに、安易な治療を選択する方向に向かってしまいます。そうなると医療の発展は望めません。豊かな社会を目指していくべきと思います。医療もたくさんの選択の余地がある。しかし、残念ながらパーフェクトはありません。どれも、なにがしかのリスクが存在する。昔だったら、万病に効く「がまの油」がありました。もう少し最近は、この病気にはこれと治療方法も固定されていたように思います。選択の幅が広がることは、同時リスクも広がる可能性はあるものの、良いことだと私は思っています。

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2015年4月13日 (月)

開腹、腹腔鏡、ダビンチ

開腹、腹腔鏡、ダビンチとは外科手術の言わば方法の名前ですが、このダイアモンドオンラインの記事に『日本の医療界ではダビンチ旋風が吹き荒れている。前立腺がんの手術数で開腹、腹腔鏡と比較したダビンチの割合は上昇の一途、ついには開腹、腹腔鏡を追い抜いた。』という記述があった。

ダビンチとは外科手術支援ロボットで、この説明などを参考にすれば良いのですが、3億円ほどもする高価なロボットで「ダビンチの割合は、ついには開腹、腹腔鏡を追い抜いた。」というので驚きでした。

腹腔鏡手術は、群馬大付属病院の報道で有名になったのでしょうか、腹腔鏡をおなかの中に入れてディスプレイに映した画像を見ながら実施する手術です。開腹手術は旧来からのおなかを切り開いて肉眼で見て手でメス等を操作して行う手術です。

誤解してはいけないのは、どの手術が安全化と単純に言えないことです。例えば、このM3の記事のように、何がリスクが高いとは簡単に言えない。どのような手術であるか、部位はどこか、ガンの進行度等様々な条件が異なる以上、単純比較をして判断することは危険です。腹腔鏡手術が増加していることから、医師によっては、腹腔鏡手術の方が、同じ手術なら安全に実施できると言われる方もいると聞く。あるいは、群馬大付属病院の報道があったので、腹腔鏡手術には不安を覚えるので、開腹手術を希望される人もおられると思う。そのような場合は、開腹手術で対応する医療機関を選ぶことも良いと思う。どの場合でもリスクゼロでなない訳で、精神的なストレスを感じないようにすることも重要と考える。

医師と相談し、自分で判断することが重要である。ダビンチが悪いとは言わないし、私自身はダビンチについて評価・判断を下せない。冒頭のダイアモンドオンラインの記事の表現からダビンチが追い抜いた(前立腺ガンの手術と思うが)で、頭に浮かんだことが「病気・病状・治療」に関して考えた上での判断ではなく、ムードや噂で病気の治療を決めている人が万一いるなら、良くないこと思った。

なお、ダイアモンドオンラインの記事の4月18日号の広告に「ガン再発なら貯蓄1000万円が尽きる」なんて、どんな計算をしたのだろうと思う。医療費だけなら、高額医療費の保険負担があり、差額ベッド料を除き年間100万円以内に収まるはず。初期ガンなら職場復帰も可能だしと思う。むしろ、高いガン保険料を無理して払って生活が大変になることを恐れます。

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2015年4月12日 (日)

町村議会の廃止が可能であるなら市議会の廃止はどうか

4月11日の朝日新聞が次の記事を掲載していた。

朝日 4月11日 (自治の力)議会か総会か、町や村の未来

記事は、今現在実施している町村議会は未だないが、人口減少を背景にして、小規模な町村議会ではその廃止を検討する動きが出つつあると述べ、高知県大川村のような人口約400人で村議員数が6名の村において村議会を廃止して村民総会とすることも有力な案になっていると報じている。

朝日の記事にあるが、町村議会を廃止して総会とすることができる根拠は、地方自治法95条であり、次がその条文である。

第89条 普通地方公共団体に議会を置く。

第94条 町村は、条例で、第89条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。

現行法では、町村に限られており県と市については総会に代えることはできない。しかし、市についても94条により総会とすることが各市の判断で可能とするように法改正をして良いと考える。

4月12日は統一地方選であったが、投票率は低かったようである。自治とは自分たちが自分たちで考え選択し決定していくことである。選挙権の行使でしか参加が望めないのではなく、総会で決定できるとなれば多くの人は関心を持つはずである。市町村長は廃止にならない。市町村役場は機能し、市町村長が提出する予算案や条例案その他がネットに公開され、Web上で質疑応答がなされ誰もがそれを読め、ネットで投票ができれば、地方自治の一つの理想とする姿が実現できる気がする。インターネットやスマホが普及した現在、それを利用し、自分たちの理想とする社会の実現を目指すことはすばらしいと考える。マイナンバー制を利用すれば、本人確認が容易となり、不正投票を防止することも可能と思う。中には、ネットを利用していない人や利用が得意ではない人もいる。そのような人には、郵送による投票等代替手段を提供し、総会が有効に機能するようにする手段は存在すると思う。

平成の大合併で多くの町村合併があったが、合併特例債による収入増と合併によるコスト削減がその目的であったのではと思う。しかし、町村合併で失ったものとして、多くの場合住民と町村議会・役所の距離が遠くなり、意思疎通の疎遠が生じていると思う。本来、おらが村・町として町村議会・役所と話ができる関係が望ましいと考える。

町村議会廃止は議会により条例を制定する必要がある。中には、職と収入を失うと反対する議員がいるかも知れない。さあ究極の身を切る改革に議員さん達は乗り出すだろうか。でも、選挙民が運動すれば、反対することはできない。

市も対象とする法改正は、国会による立法が必要である。国会議員は、どのように反応するであろうか?国会も国民総会とすることを検討しても、おもしろいと思うが、憲法で唯一の立法機関と定めており、法律は強制的に適用されるのであり、国民総会とすることの危険性も十分検証する必要がある。当面は、市町村議会のうち個別自治体の判断で総会を選択し、その実施に関わる効果・不都合もよく検討した上で拡大していくのがよいと考える。国会についてはこのブログで書いたように、全国1選挙区制がよいと考える。 

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2015年4月10日 (金)

認知症の監督者には損害賠償責任あり

子供の蹴ったボールによる事故での、親の賠償責任について4月9日最高裁判決があった。一部には、認知症の監督者も責任を負う必要がないようなことが言われている。例えば、このNHKニュースには「専門家からは、民法の同じ規定を基に判断された認知症の裁判などにも影響を与えるのではないかという声も出ています。」との文章も入っている。

最高裁がどのような考えで判決を下したかを正確に理解する必要がある。次が最高裁の判決です。

4月9日 最高裁第一小法廷判決 判決文

事件は、放課後の校庭開放をしている小学校で開放中の校庭で起きた。ゴールネットが張られたサッカーゴールに向かってフリーキックの練習をしていた11歳の小学生が、ボールを蹴りそこねて、高さ1.3mの南門扉を越え、さらに南門と道路を隔てる1.8mの側溝上の橋を転がり、道路に出てしまった。偶然、自動二輪車を運転してこの道路を西方向に進行してきた86歳の人は、そのボールを避けようとして転倒し、左脛骨及び左腓骨骨折等の傷害を負って入院し、この事故から1年と4月半後に亡くなった。死因は誤嚥性肺炎。

最高裁は、「サッカーゴールに向かってフリーキックの練習をすることは、校庭開放をしている小学校での通常の行 為である。」と、また「折からこの道路を進行していた86歳の人がボールを避けようとして生じたものであって、この子どもが殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もうかがわれない。」として、「親が監督義務を尽くしていなかっ たとすべきではない。」としたのである。

本件の事故について判断したのであり、一般的に通用することとしては「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によっ てたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能で あるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかっ たとすべきではない。」との文章が判決文にある。

なお、小学校あるいは設置者(市?)の責任は、どうなのかなと思う。実際を知らないので、何も言えないが、校庭で球技の練習や遊びを許している場合は、高い網のネットを校庭の周りに張り巡らせてボールが不用意に外に出ないように配慮することも必要と思うのである。

日経のこの記事は、誤解を生む部分がある。民法714条は次であり、日経記事が指摘している部分は、714条1項の但し書きであり、但し書きの前の部分も読む必要がある。

713条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 

② 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

日経記事に認知症の高齢者が車を運転して交通事故が多発とある。もし、認知症高齢者が運転する車がぶつかってきて、物損事故や人身事故が起き、自分が被害者だとすれば、認知症の人が能力を欠くので責任はないと言われれれば、監督者に損害賠償や慰謝料を求めざるを得ない。

JR東海の認知症損害賠償事件については、2014年5月にこのブログこのブログを書いたのですが、JR東海の事件の認知症の人は過去にも徘徊をしており、タクシーの運転手に保護されて帰宅したこともある。徘徊する傾向がある認知症の人をケアをしている場合は、徘徊の結果、他人に迷惑をかけるかも知れないと思って、一人では外出させない等の気配りをすべきと考えます。

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2015年4月 8日 (水)

朝日新聞偏りすぎだと思います-再生可能エネルギー

朝日新聞は4月8日の朝刊で次の記事を掲載していた。

朝日 4月8日 経済優先の電源構成 2030年、原発20%前後・再生エネ20%台前半

経済優先でどこが悪いとも言いたくなるのですが、あえて言えば、産業界の団体である経団連等の主張を組み入れすぎであると言いたいのでしょうか。経済とは全ての人が豊かになるようにするには、どうするかを考えることであり、電気料金は安いことは悪いことではない。電気を消費する国民にとっても、また電気を使って製造される物品や電気を使用するサービス業も価格を下げて提供できるのであり、何も悪くない。発電時に温室効果ガス排出がない再生可能エネルギーは、コストが高くても最終的には地球環境に貢献し、地球環境対策費を削減できるから良いのだと言うのでしょうか。意味が分かりにくい記事である。

経済優先と使っていることから、再生可能エネルギーが高コストであることを認めていると考えるが、そうならば、どこで折れ合うのが最良であるかを多面的に検討・議論すべきである。3月19日に電気料金に併せて支払う再生可能エネルギー賦課金の単価が1kWhあたり1.58円となり2.1倍の値上げになると3月19日にこのブログで書いた私としては、抽象的な議論ではなく、金額を示して、議論すべきと主張します。1kWhあたり1.58円とは電気代として支払う金額の5%以上が再生可能エネルギー賦課金となる。工場等では、従量料金の10%近くが再生可能エネルギー賦課金となる。そしてこの賦課金は今後とも高くなる。どこまでの金額なら再生可能エネルギー発電の支援金として国民は負担すべきかは重要な事項であり国民的な議論が必要である。例えば、一定額以上は全電力消費者とし、それ以上はボランティアで再生可能エネルギー発電推進者が払う方法もある。

朝日の記事には再生可能エネルギーと原発を比較した表があるが、再生可能エネルギーと原は同じ土俵で比べることができないのであり、誤解が生じるだけである。記事中で『環境相は「再生可能エネルギーを最大限伸ばす方向にがんばっていきたい」と意欲を示し、両省の考え方には隔たりがある。』としているが、再生可能エネルギーを最大限伸ばすのは誰もが賛成することと思う。そのために、どこまで支援金を払えるかがポイントである。焦点がはずれたマヌケ記事である。

間違っている点は多いのであるが、「送電網の受け入れ容量を超える太陽光を入れると、火力の発電量を減らして調整しなければならず」と言うのは、文章としてはあり得ても現象としては無茶苦茶である。送電網の容量を越えて送電すれば、事故が発生する。現実には事故防止のために安全装置が働くし、そのような送電を送電網監視・管理者は危険であるため行わない。フランスで自ら落っこちたドイツ機のようなことはしない。通常は、太陽光と風力の出力変動を火力で調整している。しかし、燃料が節約できることであり、それ故に再生可能エネルギーを推進するのである。論理的に間違ったことを書かずに、すこしでも自ら勉強し調査して記事は書くべきである。

なお、再生可能エネルギー発電を利用する場合(特に太陽光と風力)は、出力変動対策に多くの投資が必要であり、そのような投資も考えて検討すべきであることを付け加える。身近な例をあげると、家庭の屋根ソーラーにしても同じ変圧器を利用している家庭が全て設置した場合は、変圧器の容量が不足するはずで、大型変圧器に変更する必要がある。

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2015年4月 7日 (火)

誰もが持つ人の権利

誰もが持つ人の権利を考えました。次の記事が朝日新聞4月6日夕刊1面にあったのです。

朝日 4月6日 声なき詩、命の証し 脳性まひの20歳、1200編

記事は20歳の東京都に住む脳性まひの女性が心を動かす詩を書いていることを伝えています。

この記事を読んで、思ったことが出生前診断です。日経の2014年6月27日の記事「新出生前診断 染色体異常、確定者の97%が中絶 」によれば、診断結果で異常がある可能性を知ると人工妊娠中絶をしている人は多いと報道している。

法律上は、どうなっているかと言うと、次の母体保護法2条2項と14条1項です。

第2条2項 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

第14条1項 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

胎児が母体外において、生命を保持できない時期とは、指定医師(産科医)が個々の事例について判断され、通常は妊娠22週未満です。妊娠の週数は起算が最終月経開始日なので、受精からカウントするとほぼ20週です。胎児発育曲線から想定すると、22週頃には体重は500グラム近くに育っているのが標準です。こんな比較は、叱られそうですが、猫の誕生時の体重は平均100gだそうで、妊娠22週でも既にある程度の大きさです。

もう一つ大事なのは、母体保護法14条による人工妊娠中絶が許される場合は、限られており、生まれてくる子供に障害の可能性が予想される場合は、想定されていないのです。

法なんて改正すれば、どうにでもなるのであり、法に従えと言ってどうかなる事柄ではない。私の言いたいのは、倫理観や宗教観です。倫理や宗教は人により異なり、他人から強制されることではない。障害のある子をもっておられる人も、出生前診断の結果人工妊娠中絶を選ばれた人も悩んでおられるのが実情と思います。

少し前だと、母体外において生命を保持できない時期ももっと後だった。出生前診断もなかった。そのような頃の倫理観・宗教観を今でも変えずに持ち続けて良いのかということもあります。そして、出生前診断も更に発達します。例えば、超音波エコー診断だって機器が進歩すれば、使って得られる結果もより多くなります。発展することは良いことだと単純に考えられない面があります。実は倫理観・宗教観というのは非常に大事だと思います。医療以外についても、同じように思います。

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役員報酬14億円強を受領のユーシン会長兼社長

会計ニュースコレクターさんのブログ(これ)で知りました。自動車部品会社ユーシンの会長兼社長が一人で受け取った役員報酬14億円強が過去最高を記録したと東京商工リサーチが4月3日に報じた。東京商工リサーチのニュースはここにあります。

ユーシンは自動車部品等の製造メーカであり、過去2回社長を公募したことでも有名である。(参考:東洋経済 2014年08月29日 ユーシン、2度目の社長公募はどうなった?後継者選びに挑んだ80歳社長

なお、過去の役員報酬の支払い記録と業績を調べると次表の通りであった。

Ushin20153a

2014年11月期は12億5千万円の純利益であったが、連結業績は4億3千万円の赤字であった。2011年11月期を除き、連結ベースの方が業績が悪い。即ち、赤字子会社が多いことを意味する。

また、役員基本報酬にしろ賞与にしろ圧倒的に田邊耕二氏に対する支払額が多く、2014年11月期は86%が同氏への支払いである。優秀な人材が来れば、10億円を越える報酬も支払いますよと更に3回目の社長公募への布陣なのかも知れないが、分かりません。

考えれば、会社法以前の商法時代は役員賞与は利益処分として扱い多くの会社では株主配当金のより少ない金額を役員賞与の総額としていた。決して、それが正しいとは限らないが、会社法にだって次の361条1項がある。

第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

ユーシンの112回定時株主総会(2013年11月期)招集通知を見ると、4号議案として取締役の報酬額改定の件とある。しかし、取締役の報酬額総額を年額10億円以内から年額30億円以内に改訂するという内容であった。個人別の役員報酬額は年1億円以上の場合、2010年3月期以後の有価証券報告書でコーポレートガバナンスに関する項目として開示が義務付けられた(参考)。従い、有価証券報告書が株主総会の後で提出される場合には、1億円以上であっても役員報酬は総額の開示で通用する。本当は、株主配当金や役員報酬については、株主総会で議論されても良いことと思うのであるが。なお、ユーシンの株主配当金は年間3億円弱。また、田邊耕二氏の持ち株は1%未満である。

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2015年4月 6日 (月)

辺野古埋め立てに関する知事・官房長官会談

4月5日那覇市内のホテルで沖縄県翁長雄志知事と菅義偉官房長官の会談が約1時間行われた。

日経 4月5日 官房長官、沖縄知事と平行線 辺野古移設巡り初会談

会談の内容は予想されたとおりであり、悲観すべき内容はないと思う。しかし、今後の見通しが明確になった訳ではない。

琉球新報が会談の冒頭発言全文をWeb版にも出しているので紹介します。

琉球新報 4月6日 <翁長知事冒頭発言全文>「粛々」は上から目線

琉球新報 4月6日 <菅官房長官冒頭発言全文>県民の信頼取り戻す

琉球新報の4月4日の記事では、次の報道をしています。

琉球新報 4月4日 ナイ元国防次官補、辺野古「再検討を」 地元民意を重視

ジョセフ・ナイ元国防次官補の意見は、私にとっては違和感がありません。強い反対運動がある軍事基地の価値は、低いと言えると考えるからです。反対運動がある中での1600m滑走路と埋め立てしない800m滑走路とどちらが米国にとって有利なのでしょうか?

可能性として、沖縄県の人が反対運動を継続する。それがして政府に米国と交渉を開始させる。私の読み通りであれば、米国は800m滑走路に同意する。但し、その場合、埋め立てを含め工事費が安くなった分以上の負担を日本政府に求めるとは思います。

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2015年4月 5日 (日)

再生可能エネルギー発電は全体の何%まで可能か

次のような記事があった。

日経 4月3日 再エネ発電量、30年に全体の24%に 環境省試算

朝日 4月4日 再生エネの導入、2030年に4倍可能 全発電量の35% 環境省試算

環境省が試算をするのも構わないのですが、実は環境省のWebを探してもなかなか見あたらない。日経が24%と朝日は35%と報道している。朝日は非公開の専門家検討会と述べており、よく分からない。国民の税金を使っているのであり、もし非公開としているなら環境省のその役人は首にしてしまえと思う。

エネルギー政策や環境政策のような重要な課題は政党間の争いの道具としては使って欲しくない。政権が変わっても日本の資源量(地下資源のみならず環境資源を含めた全ての資源・資産)は不変であり、基本路線は国民を含めた議論を踏まえて決定されるべきである。もし、朝日の言うように非公開であるなら、誠にけしからん。税金返せと言いたい。

さて、その環境省の報告書であるが、多分これであろうと思う。24%か、35%かを含め、読んで参考とすべきこと、誤りがあるところについて後日報告をしたいと思う。

なお、日経と朝日の記事にある経済産業省の試算とは2014年9月10日開催の総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第3回)の配布資料4(これ)と思う。こちらは、たどり着きにくくはあるが、審議会・研究会等のWebを探していくと、たどり着きました。

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2015年4月 1日 (水)

米軍沖縄上陸から70年

70年前の4月1日、米軍は沖縄西海岸に上陸し、6月末頃まで太平洋戦争での日本における唯一の日米地上戦が始まった。

本日の沖縄の新聞社説は、沖縄県民の思いをあらわしているのだと思う。

沖縄タイムス 4月1日社説 [米軍本島上陸の日に]もう捨て石にはならぬ

琉球新報 4月1日社説 本島上陸70年 軍は住民を守らない この教訓を忘れまい

考えれば、普天間があるのは沖縄を守るためではないし、辺野古移設も同じで、迷惑施設でしか他ならないばかりか、もしかしたら米軍の敵は米軍基地をめがけて攻撃を行い、沖縄県民に犠牲者が出るかも知れない。杞憂だと思っていたが、イスラム過激派が沖縄米軍基地へ自爆攻撃なんて「ないよ」と言い切れないようになってきている気がする。

3月12日に強行すぎると感じてしまう辺野古調査なんて書いたが、3月12日のこれで書いたようにオスプレイなら短い滑走路で運用できるので埋め立ては不要となる。実際、TVのニュースで普天間の空撮が出てくるとオスプレイしか並んでいないように思える。世界の兵器、軍事情勢、米軍方針だって不変ではなく、時代とともに変わっている。見通しもなく最低でも県外なんてことを言うのではなく、真剣に向き合って努力を重ねていけば解決すると思うのである。

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