« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »

2015年5月31日 (日)

安全保障関連法案

安全保障関連法案が国会に提出され、審議が開始されている。そのような中、日経は次の社説を掲げていた。

日経社説5月30日 安保は感情論でなく理詰めで論議せよ

社説という文の長さからであろうが、この社説にも感情論ではないかと思える部分がある。

社説の中の『首相が自席から野党議員に「早く質問しろよ」とやじるのは品がない。』については、その通りであるが、それ以上の部分があり、人格や・・・と浮かんでくる。質問が不適切で持論を述べることに終始していると考えるなら、答弁の中で指摘すべきである。

安全保障関連法案のみならず法案は、感情論ではなく、理性や論理で科学的に考え、審議すべきである。それにしても国会に提出された安全保障関連法案は複雑である。法案は、2つあり、そのうちの一つである「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」なる法案は自衛隊法を改正すると読んでしまうが、「等」と言う文字があることにより次のようになっている。

第1条  自衛隊法の一部改正
第2条  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部改正
第3条  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の一部改正

第4条  周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律の一部改正

第5条  武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の一部改正

第6条  武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律の一部改正

第7条  武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律の一部改正

第8条
 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律の一部改正

第9条  武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律の一部改正

第10条  国家安全保障会議設置法の一部改正

そして、もう一つの「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」は新規立法案である。

これだけ多くの10もの法を改正し、あらたに一つの法を制定するというのは、十分な議論を尽くすべきであり、野党に求められているのは、反対することも重要であるが、個別の法案の一言一句について問題点があるなら、それを国民に知らせることも重要な役割であると考える。しかも、非常に重要な法である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月27日 (水)

マスコミ誤報道

次のニュースがありました。

47共同ニュース 5月27日 週刊文春巻頭ページに謝罪命令 名誉毀損訴訟で東京地裁

どのような内容の記事であったか知らないのですが、『文芸春秋は「不当な判決だ」と即日控訴した。』とあり、まだ見守る必要があるのかも知れません。

次の報道については、朝日新聞が訂正・おわび記事を掲載しており、誤報道と断定できる。

朝日 4月17日 社会福祉法人「ひまわりの会」の記事を訂正し、おわびします 

この朝日の謝罪原因となっている誤報道も、朝日は上の謝罪文とともにこの記事でWebに掲載しており「当時配信した記事は以下の通りです。」と書いてある下の部分が謝罪対象の記事原文です。

元の謝罪対象記事と謝罪文を同時に読むことができ、なぜ誤報道が生じたのか考えることができます。マスコミ報道には何らかのバイアスがあり、かつ記者の意図や能力、報道機関の姿勢等様々なことが関係していると思う。それと常々思うことは、マスコミ報道は読者の注意を引くべく例外を大きく報道する傾向があり、真実の姿をわかりにくくしていることは多いと思う。重要なこととして、マスコミ報道をそのまま鵜呑みにして自らの思考を失ってしまうことは危険であることを常に認識していることと考える。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月23日 (土)

簡単ではない核兵器削減

NPT(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons:核拡散防止条約)の会議(Review Conference)は4月27日から4週間にわたって国連本部で開かれたが、宣言の採択なしで終了した。

日経 5月23日 NPT、最終文書採択できず閉幕 中東の非核化で溝

この手のニュースは、報道機関によるバイアスが程度の差はあれ、存在する。比較的バイアスが少ないと思う日経を選んだのだが、外国のメディア報道も読んだ方がおもしろい。と言うことで、WashingtonPostは次である。

WashingtonPost May 22 U.N. nuclear conference collapses over WMD-free zone in the Middle East

日本の報道とは、ほんの少し違う。日経は中東の非核化と言っており、WPはWMD-free zoneと言っており、もう少し意味が広い大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)との用語を使っている。いずれにせよ、核兵器保有確実であるイスラエル問題が存在し、イスラム国を唱える人たちもいる。だからこそ大量破壊兵器無存在地域を取り決めようとする努力は重要と思うのであるが、米英は議論の時期を決めることにも反対する。カナダはイスラエル抜きの会議に反対する。それぞれが、どのような意図で発言しているか分からないと理解できない複雑さである。

WPは、米ロ対決にも触れているが、核開発を放棄した形のイランが核保有国は直ちに新規核兵器開発を中止すべきであるとの演説をしたというのもおもしろいと思いました。南アフリカ代表の「核兵器保有国を5カ国に限定することについての他の非保有国への正当性の説明はどうされるか?」とはすごい正論です。なお、核不保有国宣言(Humanitarian Pledge)なる宣言をした国が現在までに107カ国あり、南アフリカはそのうちの1国です。日本は、当然しておらず、核兵器をNPTとの関係では保有できないのですが、核不保有国宣言はしておらず、米国が日本のために核兵器をしようすることを期待しているのでしょうか?核不保有国宣言107カ国の名前は、このWebで分かります。アジアにもそのような国があり、核戦争になりそうだったら、そこに逃げていったりすべきなのかとも思ってしまいます。

ちなみに、日本のますゴミが報道していた「世界の指導者に広島・長崎への訪問」なんて表現は、外国の報道には全くないようです。そうなんですね。国際関係や外交に関する報道なんて、バイアスばっかりで、政府や政治家の都合によりひん曲げられてフィルターがかかってなされるようです。日本近隣の大国の報道がそのようだと伝える日本の報道があるが、日本も程度の差はあれ、同じようなものかも知れません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月22日 (金)

安倍晋三首相の歴史認識弱いのは本当なの?

次の朝日新聞の記事から思ったことです。

朝日 5月22日 ポツダム宣言「本当に読んでないようだ」 志位氏が皮肉

5月20日の国家基本政策委員会両院合同審査会における党首討論での討論における発言なので、動画が政府インターネットテレビにアップされており、このWebで見ることができる。

安倍晋三首相が歴史認識に弱いのか、党首討論の攻防の作戦上の答弁としてとぼけているのかは、動画を見て自分自身で考えるのが一番良いと思う。

ちなみに私は、朝日の「世界征服のための戦争であったと明瞭に判定しているポツダム宣言の認識を認めないのか」との志位氏の質問と報道していることについては、誤報が含まれると認定する。私が、動画を見た限りでは、志位氏の質問の主体は「間違った戦争であったとの認定を認めないのか」であった。

志位氏の質問に対しては、安倍首相は村山談話を初め過去の認識を継続するとは言ったが、直接的には答えていない。しかし、ポツダム宣言に関しては、朝日の報道にあるように「その部分をつまびらかに承知をしていない。読んでいない。論評できない。」とのように安倍首相が答えている部分がある。

ポツダム宣言はこの国会図書館のWebにあり英文はこのWebの右上のEnglishをクリックすると英語原文が表れる。ポツダム宣言は、外交文書であり、そこには駆け引きや圧力さらには妥協もあり、受諾をしたから、その内容がすべて正しいと認めることになるとは思わない。しかし、その大枠を否定したら、国際関係はおかしくなるはず。首相が承知をしていない、読んでいない、論評できないと言うのは、やはり首相失格と思う。積極的平和主義と言うのであれば、やはりポツダム宣言受諾も踏まえてという論理構成であるべきと考える。

なお、朝日の記事に、月刊誌「Voice」2005年7月号の対談で、当時幹事長代理であった安倍氏が「ポツダム宣言が原爆投下の後」と発言したのであれば、とんでもない間違いの歴史認識である。7月26日にポツダム宣言があり、原爆投下は8月6日と9日である。ソ連の日本への宣戦布告8月8日、9日戦争開始となり8月15日の玉音放送がある。ポツダム宣言やヨーロッパV Dayの5月8日から遅くない時期に戦争を終わらせていれば、原爆投下はなかった。そんなことが簡単にできるような日本国内や日本軍の状況ではなかったことはある。しかし、原爆投下に関しても複雑な要素があり、単純に米国を非難することはできないと思う。それゆえ、原爆反対運動とは、二度と核兵器を使わず、破棄することを目指す運動であると考える。また、その運動の成功のためには、正しい歴史認識は重要である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月17日 (日)

大阪都構想否決に思う

大阪都構想は、反対多数で否決された。

大阪都構想、住民投票で反対多数確実 橋下氏の求心力低下へ

当然の結果だと思うが、これほど大阪都構想に賛成する人が多くいるとは思っていなかった。特別区になって良いことなんか何もないと思えるのだが。

それからすると、大阪都構想に反対する反橋下派が特別区になることの不利な点を訴えることの不十分さがあったのかもしれないと思う。お祭は、華やかであり、元気や勇気を与えてくれる。しかし、1年中お祭りであることはできない。お祭のつもりで大阪都に賛成を投じた人はいないと思うが、閉塞感のようなものを吹き飛ばすには、大阪都構想が良いのではとムード感で賛成した人も中にはおられると思う。

橋下氏が開票結果後の会見で、『けんかを仕掛けて』と述べていた。住民投票をけんかとか表現しており、この人は、ごろつき弁護士でしかないのだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月10日 (日)

九州電力の再生可能エネルギー発電設備の出力制御実施

九州電力が、種子島で再生可能エネルギー発電設備の出力制御(制限)を5月5日に実施したとのニュースがあった。発表した。

日経 5月7日 九電、種子島で再生エネ発電の出力制限実施 5日、全国で初

出力制御(制限)の実施は全国の電力会社で初めてと報じられており、出力制御(制限)はどのようなことであり、何故実施されたか、また将来日本各地に広がるのかを考えてみたいと思います。

1) 九州電力の発表

九州電力の発表はここにあり、9時から16時まで1.0MWの出力制御を実施したとあります。

2) 九州電力の説明

九州電力は4月28日にこの発表をしており、添付されているこの説明に必要性等が書かれている。その4ページに5月3日の需要予想が書かれており、昼間は15MW程度と予想されており、ピークは19時頃に22.5MW程度になる見込みとのこと。

種子島は、九州本土や他の島とは送電線でつながっておらず、島内において発電と消費が完結している。種子島の発電設備は、説明5ページにあり、ディーゼル発電が合計で9基40.5MWと太陽光発電10.739MW及び風力0.66MWの合計11.399MWの再生可能エネルギー発電設備があり、発電設備合計では51.9MWである。これに加えて、蓄電池3MWが存在する。

太陽光発電及び風力発電は、出力変動が激しい発電設備であり、運転には太陽光発電や風力発電の出力変動を吸収する仕組みが必要である。この吸収する役割を担っているのがディーゼル発電と蓄電池である。4ページの図にあるように九州電力は昼間の電力供給を6MWディーゼル2基と3MWディーゼル1基を50%出力で運転しディーゼルで7.5MWを確保し、15MWの需要であれば、7.5MWが太陽光と風力になる。この太陽光と風力の7.5MWが変動しても、ディーゼルを最大出力にすれば7.5MWを生み出せるとの計画である。ディーゼルのガバナーによるコントロールであるが、応答特性を補完する目的で、蓄電池も設置し、周波数安定を含め万全を期している。それでも1.0MW分の太陽光は出力制御せざるを得なかった。

3) 日本各地に広まるのか?

種子島については、太陽光と風力の割合を50%以内とし、50%を越える場合や、通常以上の変動が予想される場合は、再生可能エネルギー発電設備の出力制御をするというのが九州電力の方針と理解する。なお、出力変動を吸収できなかった場合は、どうなるかというと、九州電力は需給バランスの確保が困難と表現していますが、別の言葉で言うと、停電です。しかも、種子島全島停電もあり得る。発生すると、予期せぬ通知なしの停電であり、場合によっては大変です。

では九州本土や他の電力会社の場合はと言うと、その話の前に、種子島で対応能力が高いことが一つ認識しておく必要がある。それは、出力変動を自らが行って電力系統の安定に貢献する能力が高いディーゼル発電が電源設備の主体であることです。一方、そのような能力が全くないのが、原発です。次いで石炭火力も、短時間の出力変動への対応は能力が低いのです。逆に出力変動能力が非常に高いのが水力です。北海道、本州、四国、九州は水力があり、揚水発電も上池に水があれば、一般水力と全く同じです。

なお、送電線容量により制約を受けることもあり、実際に太陽光と風力が何パーセントになった時に出力制御をせざるを得なくなるのかは、シミュレーション等を実施しないとならない。しかし、太陽光と風力がある限界以上になった時には、出力制御をせざるを得なくなるのは確かです。

でも考えれば、電力供給において、出力制御は当然のことです。原子力以外は、皆やっているのですから。再生可能エネルギーの中でも、大規模水力は出力制御が、その中心的役割とも言える面がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月 4日 (月)

憲法改正の議論

昨日は憲法記念日であったが、マスコミ報道を集約すれば、改憲を望む声が増加していると思える。しかし、そのような中で、改憲派より護憲派が増加していると報じていたのが、日経新聞であった。

日経 5月3日 憲法「現状維持」44%、改憲賛成を上回る 日経調査

日経記事の全文を読むには登録が必要であり、このグラフも登録会員でないと開かないかも知れないが、2004年や安倍内閣発足直後の2013年には55%程度の改憲賛成が、今年は42%に下がっている。1552世帯への調査で1026件の回答が得られた結果の分析であり、これをどう判断するかは、人それぞれかも知れない。私は、このような世論調査の結果からして、憲法改正は早急にすべきことではなく、十分な議論を行った上で、問題点を明確にし、国民の多くが納得できる状態で、必要なら憲法改正へと向かうべきと考える。

日経は、5月5日の社説においては、この憲法のどこが不備かもっと説明せよ を掲載していた。基本的には、この日経社説に賛成する。但し、その後半部分の中にある緊急事態条項の新設については賛成しない。何故なら、緊急事態における政府対応については、法を整備することで十分と考えるからである。行政機能がまひした時の自衛隊や警察・消防による臨機応変の活動と言っても、具体的なシミュレーションを実施しないで考えると危険である。必要な情報が把握で切れいる状態で最適な活動ができるのである。そのような情報収集は、やはり自衛隊や警察・消防の任務とするより、必要ならその任務を遂行する組織を作り、対応することが良いのである。現憲法において、そのような法整備は可能である。東日本大震災の福島原発事故対応に自衛隊派遣を実施しないまずさは、当時の内閣のデタラメさであり、憲法を理由にしてはならない。

私は、現法の前文が好きである。例えば、次の部分も大好きである。

・・・ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

前文は「日本国民は」で始まっており、「われら」とは日本国民です。「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」との文は、その通りであると支持します。

日本には、生活保護の制度があり、生活保護は次の25条の第1項によるものです。

第25条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 
 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第2項の文の主語は「国」となっている。

私は、これを政府、地方公共団体、国会、裁判所、国民、日本に事務所を有している法人等を含め、全てであると考えている。税金であれ、保険料であれ、負担も必要であり、制度の設計も実施も、年金・医療保険・各種福祉制度については、政府、地方公共団体、国会、裁判所、国民、法人等を含む国全体が努力して最適なものを作り上げていく必要がある。

本ブログの冒頭において護憲なる言葉を使った。しかし、考えれば不適切な言葉である。何故なら護憲とは当然のことであり、必要な改正を求めるのも護憲と言える。言葉としては、改正論者、維持論者(又は反改正論者)が正しい。但し、憲法99条の憲法尊重・擁護義務は公務員のみならず国民全ての義務と考える。俺は憲法○○条に反対であるから、基本的人権は認めないなんて許されない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月 3日 (日)

セウォル号沈没の原因に関するブログの一部訂正

セウォル号沈没の原因としてこのブログを書きましたが、一部に誤った記述があり訂正します。

訂正すべき箇所は、10ノットの速度で19秒間45度旋回した場合に、働く横Gは0.2Gであるとした部分で、1桁間違っており、0.02Gが正しく訂正いたします。

その結果、この部分に関する文章は次のように訂正します。

------------------

3) セウォル号の沈没原因

セウォル号に関する報道には、過積載であり、その為バラスト水を十分に積載できていなかったとする内容がある。セウォル号の場合は、過積載もバラスト水不足も重心位置を上昇させる。また、沈没寸前には相当急な急旋回をしている。10ノットの速度で19秒間45度旋回したとの話がある。もし、このような旋回をしたとなると、働く横Gは00.2Gである。転覆させるモーメントは、重心位置と浮心位置の垂直方向の距離に対する横Gであり、これに対する抵抗する力は傾斜した時の復元力モーメントである。

仮にセウォル号の復元力曲線が、上の想定曲線通りであったとすると、重心位置が船底から10.5mの場合の復元力モーメントは最大0.6Gmである。一方、転覆させるモーメントは浮心位置が船底から8mであったとして8m x 0.02G = 0.16Gmである。

復元力モーメントが0.6Gmあれば、0.16Gmより大きいので問題がないように思ってしまう。しかし、風による転覆モーメントが加わった時や波の影響によりローリングをしていた場合には、転覆の危険性は高くなる。更には、セウォル号のようなフェリーの場合には、積み込んでいるトラックの固縛がはずれ傾斜した方に貨物が偏ってしまう可能性もある。セウォル号の場合、中央にあった100トンの貨物が横に10m移動したとすると0.1GMの転覆モーメントが生じると予想する。上の想定曲線のように、重心位置が船底から10m程度であれば、0.9GMの最大復元力も期待できるので、大丈夫と思う。しかし、重心位置が船底から10.5m以上あると、危険性は非常に大きくなる。

------------------

間違った記述をしたことに対してお詫び申し上げます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月 2日 (土)

将来の電力コストと電源構成

将来の電力コストと電源構成はと、問われたならば、そんな難しいことは私には分かりませんと答えるのが、この問題に対する正解であると考える。

しかるに、経済産業省は原子力発電比率を20~22%とし、原子力が発電として最も安いコストとする報告を出したとのマスコミ報道が多くある。例えば、次のような報道である。

日経 4月28日 原発比率、30年に20~22% 電源構成案を公表 経産省、再生エネは倍増

読売 4月28日 発電コスト、最安は原子力…経産省が試算示す

どの報道も同じような内容であり、他の報道は省略する。なお、問題はそもそも論にある。すなわち、日本の電力供給は計画経済・統制経済ではないことである。それなのに何故という疑問である。

役所がすべき仕事は、統計を整備し発表し、国民と産業に必要な電力が供給されるようにルールを整備する案を考えることである。この点を含めて本問題は考える必要がある。その為には、マスコミ報道ではなく、直接に経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会と発電コスト検証ワーキンググループの資料を読む必要がある。双方共経産省のこのWebからダウンロードが可能である。その中で、マスコミ報道の元となっている4月28日資料の長期エネルギー需給見通し 骨子(案)はここにあり、4月27日の長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)はここにある。

資料は、報告書の体裁ではなくプレゼンペーパーの体裁であり、論理が明確ではなく、羅列状態である。当面は討議資料としてしか読むことができないが、計画経済ではないから、将来の電源構成を決めることは役所の仕事ではなく企業競争の結果である。しかし、一方で業界を意図的にリードしたいのだと読めてしまう気もする。国民としては、一つの参考資料である。豊かな日本を作るために、自らの意見を述べることが正しいと考える。

ちなみに、原子力について、経産省プレゼンペーパーは何と言っているかを参考として以下に記載する。

原子力発電コスト10.1円/kWhは本当か?

「各電源の諸元一覧」とするこれが全ての電源のコスト計算の前提となっている。原子力については稼働率を60%、70%、80%の3通りで実施したとあるが、10.1円が計算された根拠が結局は不明である。稼働率により原子力発電コストは、大きく変動するのである。次の表は、日本原電を含む原子力発電10社の原子力発電とコストの実績である。

Nuclear20155

今回のコスト予想計算は、10.1円であり、安全対策費等を見込んだ結果、2010年度の6.47円より高くなっており、妥当と思える。しかし、その2010年度でさえ稼働率は66.5%であった。即ち、60%、70%、80%の3通りは、いかなる根拠で選ばれたのか不明であり、希望数字を書いたと思える。

従来から原発は無事故を大前提とし、需要追従の運転はせず、常時設計出力で運転し、異常があれば停止する運転をしていた。定期点検でも徹底的に検査をし、稼働率を上げることよりも安全確保を最優先で管理していた。今後、運転する場合は、従来よりも更に一層の安全を目指すのである。そう考えると、70%、80%の稼働率はキチガイである。10.1円が稼働率80%の場合とするなら、40%となった場合は、20.2円である。そうなると石油火力や太陽光と風力に次いで高コスト電源となる。

原子力発電は、大リスクの塊である。従い、原子力依存度は可能な限り低くしておくのが、経済的に最も有利な選択であると考える。

実は、10.1円だって、80%の稼働率が実現できたとしても、そもそも不確実な数字である。核燃料再処理費が0.5円で高レベル廃棄物費用が0.04円としているが、六ヶ所村再処理工場の見通しも「もんじゅ」の見通しもないのに費用が計算しており摩訶不思議なのである。低レベルの除染廃棄物の処理場で困っているのに、どうして0.04円で高レベル廃棄物を処理できるのか、鬼が笑う以上のばかげた計算と思える。

数字には、前提や仮定がつきものである。考える際の一つの参考であり、また前提や仮定を別の数字に変化させて様々なことを考える必要がある。ビジネスとは数字は変化することを前提に考えねばならず、電力供給も一つのビジネスである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »